真剣で私に恋しなさい!-きみとぼくとの約束-   作:chemi

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『水上体育祭5』

 

『9人にまで人数が減って3分が経過したが、今だ脱落者がでていない! 2人を相手取る葉桜清楚がここまで粘るとは誰が予想できた!? 依然3-S陣地からは熱烈な清楚コールが続いている!』

 

 一息置いて、準が言葉を続ける。

 

『そしてそして、もう一組2人を相手取るのは凛! ここまで順調に落としてきた男だったが、S女2人の責め……いやSクラス2人の攻めに苦しんでいる!』

 

 静かに観戦していたヒュームは、小さくため息をもらす。それに気づいた紋白が彼に尋ねた。

 

「ん? どうかしたのかヒューム?」

 

「いえ、ただあの馬鹿者が調子にのっているので、どうやって教育してやろうかと――」

 

 紋白にドリンクを渡したクラウディオもそこへまじる。

 

「あれくらい許してやってはどうですか? 昔の遊びというものはシンプルな分、久々にやると楽しかったりするものです」

 

 紋白は2人の会話に首を傾げた。それを見たクラウディオがヒントを与える。

 

「予選から今までの凛の戦いぶり、紋様はどう思われますか?」

 

「ふむ……見事に戦っているのではないか? 予選においても、全員……! いやまさか……しかし」

 

 紋白は何か思い当たることがあるのか、真剣に凛の戦いへと目を向ける。そして、自分の考えが正しいとわかり、クラウディオへ顔を向けた。

 

「はい。今、紋様がお考えになった通りかと。凛は手を抜いたりはしておりませんが、どうもその一つに熱中しているようです」

 

「フハハハ。凛も案外子供っぽいところがあるのだな。確かに思い至れば簡単なこと。誰かがそれに気づけば……あやつを倒す切欠にできるやもしれん。ヒュームとクラウディオは誰が勝つと思う?」

 

 ヒュームは整えられた髭を一撫ですると、舞台に向けていた視線を紋白へ向ける。

 

「そうですね――」

 

 そこに、テンションの高い声がスピーカーを通して響き渡る。

 

『ここで学長がお茶目に放送ジャッーク! 皆なかなか楽しんでおるようで嬉しいぞい。しかし、この状態が続くのも飽きるじゃろ? というわけで、この特製㊙ボタンをポチッと……皆舞台に注目じゃ』

 

『ちょ! が、学長……あっ行っちゃったよ。それにしてもあの赤いボタンは…………おいおいおいおい! あれただの舞台じゃなかったのか――!?』

 

 観客が見つめる先の舞台では、何やら煙を吐き出していた。

 いきなり起こった変化に、観客はざわつき、参加者たちは硬直する。

 ――――この舞台……いやこれはチャンス!

 凛は、仕掛けによって体勢の崩されたマルギッテへ、トップスピードで突っ込んでいく。その混乱に乗じたのは彼だけではなかった。

 

「おもしろい仕掛け作ってくれてるねー。隙あり!」

 

 由紀江の印へタッチを決めたのは――燕。続いて、大和の声が海上に木霊する。

 

「小雪! ゴー!」

 

「了解だよーん。そりゃー!」

 

 小雪はハイキックから、清楚の防御をすり抜けるようにして、空いたわき腹へと左足を食い込ませる。驚くべきは、そこから彼女の体を足一本ですくいあげるようにして、海へと放り投げる脚力だった。すぐさま、近くの小船が救助に向かう。

 

『ぶ、舞台が煙をあげていたかと思えば、外周がどんどん切り離されていくぅー! その混乱の隙を突かれた黛由紀江、マルギッテ・エーベルバッハはタッチアウト! そして、足一本で葉桜清楚をコースアウトにしたのはなんと榊原小雪! これから俺を蹴るときはちゃんと手加減してくれることを切に願うぞ!』

 

 6人は小さくなった舞台で互いを見やった。凛が一番に口を開く。

 

「いやまさか舞台を切り離す仕掛けがあったとは……外周から移動しといてよかった」

 

 凛の右手にいた弁慶が、あくまで平静を装いながら答える。

 

「わざわざ競技一つのために、こんなことするとは普通思わないって。というか、また凄いメンバーが残ったもんだ。やっぱ主の加勢に行っとくべきだったかなー」

 

「お? ということは、次は弁慶が私の相手ということか? 私ならいつでもウェルカムだぞ」

 

 百代は片手を上げると、弁慶に手の甲を向け、向かって来いと手招いた。彼女の左にいる燕はニコニコしたまま、何も喋らない。間違いないのは、一番最初に動くことはないだろうということだ。

 小雪が大和へ問いかける。

 

「大和―これからどうするの? 誰狙う?」

 

「そうだな――」

 

 大和は小雪へ耳打ちをする。彼女はそれに頷きを返し、その目は弁慶から百代へ、次に燕、最後に凛を捕らえた。

 

「ここは年長者がリードしてやるか!」

 

 大和の耳打ちが終わる前に、百代が動き出した。向かう先は――。

 

「後ろに燕姉がいるのに大胆だなぁ。まぁこっちにも弁慶がいるんだけど」

 

 構えをとる凛。百代は外周ギリギリを走り、あと一歩で間合いに入るところで右足を強く踏み込み、左へ跳ぶ――そこから止まることなくまた右に跳んだ。その動き――スピードを落とさずジグザグに跳び、射程に入った彼に向けて右足を振りぬく。

 凛の目に飛び込んでくる百代の右足。その後ろには微妙な距離を保っている燕。さらに後ろに小雪と大和。右端にチラと見えた防御の隙を狙う弁慶。

 凛は迷うことなく百代の足を左腕で上へ弾き、即座に右手で彼女の左手を掴み、引っ張ると同時に、印を狙われないよう自身の体を回転――彼女を弁慶との障害へと利用した。

 弁慶に背をさらすことになった百代は、一旦凛を置いて、勢いのまま彼女へ回し蹴りを放つ。強制的にタイマンの状況へと突入する2人。

 そして、包囲網を抜け出した凛を待っていたのは、燕だった。

 凛は流れるようにステップを踏み、燕に対して攻勢にでる。しかし、虚を織り交ぜたそれも、まるで彼女は全てがわかっているように完全に捌ききってみせ、彼が左足を踏み込んだ瞬間――彼女は思わず口角を吊り上げた。

 

「凛ちゃんなら……そうくると思ったよ!」

 

 これ以上はないというタイミングで、右の突きをかわし懐へ入った燕。あとは印に左手を伸ばすだけだった。

 そこに届く落ち着いた凛の声。

 

「奇遇だ。俺もそう思ってたところだよ」

 

 刹那の逡巡――燕は手を伸ばす。凛の印へのタッチと背中に指が当たる感触は同時だった。少なくとも彼女はそう感じた。しかし、彼はそこで止まらず、先へ走り出す。

 そこへ響き渡る判定の声。

 

『タッチはほぼ同時に見えたが…………僅差を制したのは……りぃーーん! 惜しくも敗れた松永燕! 突きをかわした瞬間、勝ちがきまったと見えたが、凛の快進撃は止まらない!』

 

 燕は間合いからすでに離れた凛を見た。彼女の後ろにいた小雪は、勝者の隙をつくため待機していたが、勝者がどちらかわからない状態に動きがワンテンポ遅れる。

 あの逡巡がなければ。燕はそこで頭を振った。

 

「そのあとも勝負は続いていたんだもんね。2人だけの勝負じゃない……勝ちが頭をよぎって、後ろの小雪ちゃんにも気を配れないようじゃまだまだか。いや、誘い込まれた時点で――」

 

 燕は言葉を切って海へ飛び込んだ。青い海が彼女の熱くなった体を優しく包む。

 

「うーん……凛ちゃんと大和くんには、カップ納豆の着ぐるみ着てもらおうと思ったのに、残念」

 

 燕の気持ちを知らず、凛は内心焦っていた。

 ――――あ、危なかった。予想ではもう少し余裕を持って勝ちを拾えたはずなのに……。燕姉も強くなってる。これから真剣勝負が楽しみだ。

 凛は棒立ちの大和へ向かい、さらに加速していく。

 ――――小雪がくるのは3歩あと。

 凛がさらに一歩踏み込んだところで、予想に反して大和も逃げることなく真正面から向かってくる。それでもスピードは落とさない。

 あと一歩で互いの手が届く位置。そこで大和が突然声を張り上げた。

 

「4本だ!」

 

 その声が響いた直後、水しぶきの音が参加者の耳に届く。

 

『なぁぁーんと! 苦戦を強いられていた弁慶! まさかまさかの捨て身のタックルで自分ごと海へ落下ァァ! 優勝は時間の問題とも思われた川神百代もここで脱落だぁぁ!』

 

 凛はそれに意識を取られることなく、至極シンプルに、大和の印――彼の頬へ平手を繰り出した。しかし、そのスピードは腕がブレて見えるほどだった。

 当たる――。

 脱落していった実力者たちは確信した。

 

「直江の負けかなぁ」

 

 誰かがつぶやいた一言は、多くの者の気持ちを代弁していた。

 

 

 ◇

 

 

 ――――なんだ?刺すような……視線?……ッ!

 背筋に寒気を感じた凛は、咄嗟に手を引いた。間をおかず、彼の腕があった場所を貫くように飛来する矢。紫色にカラーリングされたそれは的を失い、そのまま地面に突き刺さった。あと少しでも引くことを戸惑っていたら、腕は弾かれ、下手すれば体勢を崩されていたかもしれない――それほどの威力がそれにはあった。

 ――――体を狙われていたら、避けられたか?こんな隠し玉まで用意してたとは……恐れ入る。でも……。

 凛は手を引いたことで、大和に一瞬のスキを与えていたが、彼がそこをつくことはなかった。

 

「さすがに、目の前をよぎる矢に体は反応してしまったようだな! 大和!」

 

 大和は眼前を通り過ぎる矢に、思わず体を仰け反らせてしまっていた。連射はないと踏んだ凛は、大和の頬へ手をやる。

 軽い音は2人以外に聞こえることはなかった。

 

『どこからともなく飛んできた矢! というか、誰が弓引いたんだぁぁ!? 明らかにその人物はこの浜辺にはいない! しかし、大和の命運もここで尽きた! 残るは2人! 一体誰がこの組み合わせを想像できた――――』

 

 準の声はまだ続いていたが、凛にそれを気にしている余裕はなかった。

 ――――残るは小雪。一旦距離をとる。

 凛は小雪を視界に納めるため、反転しそのまま半歩バックステップ。彼女は彼の予想通り真後ろから迫っていた。しかし、その距離が問題だった。

 小雪の一足は凛の予想以上だったのだ。加えて――。

 

「リンリン、御用なのだ~♪」

 

 小雪は何を思ったか両手を広げて、無防備に凛を捕まえに来たのだった。その無邪気な行動は、図らずも彼の虚を突くこととなる。

 ――――これ避けると小雪転んじゃう?

 この瞬間、勝敗は決まった。

 

 

 □

 

 

 大トリを飾るのは、水上歌合戦だった。その参加者はほぼ女子生徒。この祭りはつくづく男を喜ばせるものだった。

 格闘戦で使われた舞台はそのままに、わざわざ色々とセットを組み立てる凝りよう――そこには、学長のこだわりが見え隠れしていた。

 それを休憩がてら眺める凛は、隣へ来た大和へ声をかける。

 

「それにしても驚いた。最後の矢は、大和が体を仰け反らせなかったら、どっちに転んでいたかわからなかった。見事なもんだったよ」

 

「あーあれな。正直、俺も印が頬にくるとは思ってなくてな。事前に与一には『俺の印に触れそうな瞬間を狙ってくれ』っていうお願いをしてたから、まさにそのとおり実行してくれたんだけど――」

 

「まさか、あんなギリギリをあの威力でくるとは想像できなかった、と」

 

「そういうこと。与一の精確さを読み違えていた」

 

 大和は参加賞でもらったジュースに口をつけた。

 

「でも大和は俺が手を出した瞬間、体を防御することもなかったな。あのまま胴を狙う可能性だって捨て切れなかったのに……むしろ俺の脇を狙ってた」

 

「それには自信があるぞ。凛……おまえ、あの戦いで印だけ狙ってただろ?」

 

 凛はハッとして、大和の顔を見た。彼はその様子に苦笑をもらし、言葉を続ける。

 

「気づいたのは英雄を倒したときだ。蹴り一発で決めて、キャップへ向かえばよかったのに、わざわざ狙いにくい印を狙った。そのときピンときたんだ」

 

「ほうほう」

 

「燕先輩も気づいてたんじゃないかなぁ。懐に思い切り飛び込んだわけだし」

 

 凛はその言葉を聞いて、空を見上げうなった。

 

「ありえるなぁ。かなり楽しかったからな、あのルール……こだわりすぎたか。ん? まさか小雪のあの行動と関係あるのか?」

 

 大和はニヤリと笑う。

 

「一応伝えといた。本当は俺が時間稼ぎ、その間に、小雪に突拍子もない行動をとってもらって、凛をアウトにしようというのが作戦だったんだけどな」

 

「いや見事に思いがけない行動だったわ。蹴りなら完璧避けられた。冗談抜きで。でも、あのときの小雪からは……なんて言うんだろうな。攻撃の意思みたいな、こうピリッとくるものがなかったんだよ」

 

 そこに後ろから柔らかい感触が伝わってくる。それを追いかけるようにして、微かな甘い香りが凛の鼻をくすぐった。

 

「それで凛はまんまと小雪に抱かれたのかぁ? 失態だな。変態だ」

 

 百代は座っている凛に全体重をかけながら、文句を垂れる。

 

「変態ってそこまで言う? というか、その格好で抱きつかないでって言ったでしょ。モモ先輩」

 

「なんだよー? 小雪はいいのに私はダメなのかー?」

 

「なんかご機嫌斜め? もしかして負けたから?」

 

「べっつにー。で……もう何を願うのか決めたのか?」

 

 百代は離れないまま、凛に問いかける。

 

「いやそれが、ただの思いつきで言っただけだし、あんまり真剣に考えてなかったんだよね。だから今も考え中」

 

 それを聞いた大和が、声を出して笑う。

 

「なんだよそれ? 言いだしっぺだったのに……」

 

「だったら私が考えてやろう。……んー今みんなが着ている水着の肩紐を下ろす!」

 

 凛が即座にツッコむ。

 

「それこそただの変態だろうが! というか考えただけでドキドキが凄い。しかもエロい! あっモモ先輩の前髪クロスをみんなでいじるとか」

 

 そう言いながら、肩に顎を乗せる百代へ手を伸ばす。

 

「うあーやめろよ! 約束破る気か!?」

 

 百代はハエでも追っ払うかのように、凛の手をパシパシ叩き、最後に彼の頭を軽くはたく。彼はその慌てように吹き出した。

 

「それじゃあ……大和に無言でモモ先輩の案をやってもらう、とか」

 

「おまえそれ……俺を社会的に抹殺する気か? 姉さん! 変な案だすから、話がおかしな方向に走り出しただろ!?」

 

「いや、それはそれでおもしろそうだな」

 

「この2人、頭おかしいんじゃない!?」

 

 大和の叫びに、2人は声を合わせて笑った。凛が笑いをこらえて喋りだす。

 

「んなことさせないよ。やっぱ無難なとこで、文化祭あたりにでも、俺の前では1日語尾に『にゃー』をつけてもらう、とかにしようかな?」

 

「そんなことでいいのかにゃ。軽くすぎる気もするにゃん?」

 

 百代はかなりノリノリで話し出した。大和はそれを見て、盛大にため息をもらす。

 

「俺が語尾に『にゃー』つけて誰が得するんだ?」

 

「とりあえず一言やってみ。それで判断する」

 

「なんで俺がこんなことをするんだにゃー」

 

 完璧なる棒読み――そこにはやりたくないという意思が確かにこもっていた。凛もそれを聞いて、冷めたようだ。

 

「確かに男にされても、なんだかなぁって感じだ。モモ先輩の『にゃー』で癒されよう」

 

「しょうがない男だにゃん♪」

 

「よし! 大和には他の何かで、他の先輩方にはこの『にゃー』を採用!」

 

「清楚ちゃんたちには私が伝えといてやるにゃん。それじゃあな」

 

 百代は、凛と大和の頭をポンポンとリズムよく撫でると立ち去っていった。

 

「そういや、大和は俺が向かったとき、4本って叫んでたよな? あれなんだ?」

 

「あれは弁慶との裏取引の条件だ。決勝始まるまでに成立しなかったんだが、姉さんに押されてるのが見えたから、絶好のタイミングだと思ってな。クマちゃん経由で仕入れる特別な川神水を4本つけるって意味だったんだ」

 

「気前いいねー漢だね」

 

 その言葉に、大和はガックリと肩を落とした。

 

「お金がさぁ飛んでいくんだ……でも姉さんを倒すには、一番の方法だったからな。これで凛に勝ってたら、知り合いの店に5人を放り込み、元どころかプラスにしようと思ってたんだけど……ハハハ」

 

「おお、そんなこと考えてたのか!? というか、知り合いの店って言い方……如何わしくない?」

 

「そんな店じゃないわい! ちゃんと――――」

 

 それからもたわいない会話をしていると、クリスの歌声が聞こえてくる。2-Sの方からはマルギッテの合いの手が、一際大きく目立っていた。

 凛が惜しむようにつぶやく。

 

「あー体育祭もこれで終わりか……なんかあっという間だったな」

 

「だな。俺はかなり疲れたけど。今日は爆睡だ、間違いない」

 

「明日は休みだし、ゆっくり寝れるぞ。ま、期末が近づいてきてるから、のんびりもしてられないがな」

 

「岳人とワンコの勉強を見てやる必要があるな……」

 

「みんなで集まってやるのもいいかもな。俺もそれなりに余裕あるし」

 

「そりゃ助かる――――」

 

 歌合戦は、燕の持ち歌『ねばれ納豆小町』で大いに盛り上がった。

 体育祭の結果はというと、3つの軍がそれぞれピッタリ同点で引き分けに終わった。

 

 

【おまけ】

 

 

 後日、Love川神のHPを一人の男の子が開いた。その中の体育祭をクリックする。

 

「いらっしゃ~い。Love川神にアクセスしていただき真にありがとうございます! ここからは、納豆小町ことこの松永燕が司会&進行を務めてまいります。どうぞよろしく!」

 

 デフォルメされた燕が、仰々しくお辞儀をした。そこに現れる百代と準。

 

「こら燕! 何勝手なこと言ってるんだ。私も入れろ!」

 

「ついでに言うと、俺もなんですがね……紋様どこいった!?」

 

「おまえはだまってろ」

 

 燕はこめかみに汗をたらす。

 

「まぁまぁ喧嘩はのちほど。早速、体育祭へゴー!」

 

 次々と競技が流され、3人が解説や裏話を語る。加えて、1位となった選手のインタビューも流された。途中で紋白が映ると、準が興奮して第2形態へ変化したりしていたが、それ以外は順調に進んでいく。

 そして、競技は水上格闘戦へ。最初に予選のハイライト。準に加え、紋白と彦一が解説に加わり、不思議な空気感のまま進む。決勝では、まずファイナリストの意気込みが語られ、その後競技開始。

 その様子は、スローモーションでタッチの部分を見せたりするなど工夫が凝らされていた。

 最後に優勝者と準優勝者の2人が映るが――小雪は途中でどこかに消えた。

 凛は気にすることなく締めに入る。

 

「――――と、俺もここに来て2ヶ月ですが、毎日刺激的な日々を過ごしています。そして、今この映像をご覧になっている方で、興味をもたれた方はぜひ一度学園に足を運んでみてください。学校説明会もこれからどんどん行われるので――」

 

 ここでカメラが引いて、生徒たちが凛を中心に勢いよく集まってくる。

 

「「お待ちしてまぁす!!」」

 

 声を揃えたところまではよかったが、勢いあまって崩れる前方――それを踏まえての男子構成――に、わーきゃーと大騒ぎ。最後に、虎子がカメラに向かって走ってくる。それを追うように、彼女を指す矢印と『この人が生徒会長』という文字。

 

「楽しみにしてるよ。シーユーアゲイン!」

 

 ニパッと笑い、手をふる虎子。そこでエンドロールが流れる。

 男の子はそこで画面を閉じた。

 




水上体育祭……本当は3話で終わるはずが、気づけば5話に。
楽しんでいただけると幸いです。

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