召喚されたハジメ達を出迎えたのは、異世界トータスの聖教教会、その教皇の地位に就いているというイシュタルと名乗った老人だった。
クラスのリーダー的存在である天之河光輝を先頭に大広間へ通され、イシュタルはハジメ達が召喚された経緯について語った。
トータスに存在する種族の内、人間族と魔人族の間では長い間戦争が行われおり、戦力が拮抗した結果ここ数十年大きな戦争は起きていなかったが、魔人族による魔物の使役により均衡が崩されつつあるという。
そんな中、人間族が崇める創造神であるエヒトが救いの神託を下し、ハジメ達が召喚された。
召喚された者には力が備わりそれを以って人間族を救ってほしいという。
それに異を唱えたのが唯一共に召喚された教師、畑山愛子だった。
子供を、教え子を戦争に巻き込む事など許せない。即刻元の世界に返して欲しいと抗議する。
だが、イシュタルは愛子にそれは不可能と答える。
召喚を行えたのは神であるエヒトだからこそ。人間である自分達では異世界に干渉するような魔法はつかえないという。
その言葉に生徒達はパニックになる。
誰もがうろたえる中、イシュタルに侮蔑の感情が生まれた事に気づいた者は極僅かだった。
そんな中、光輝がテーブルを叩き生徒達の注目を集める。
それを確認した光輝はおもむろに話し始める。
現状イシュタルに文句を言っても意味がない。そして自分達が何もしなければ、人間族の存亡にもかかわる。人間族を救うために召喚されたなら、それが終わればエヒト神も返してくれるだろう。イシュタルがそれに同意したことで、改めて光輝は戦う事を宣言する。
世界もクラスメイト達も守って見せると。
堂々とした振る舞いの光輝に希望を感じたのか、生徒達もそれに賛同していく。
愛子先生の訴えも空しく戦争に参加する事が決まった。
それにイシュタルは満足そうな笑みを浮かべている。
だが、いくら力を持っていると言っても、生徒達は戦いとは無縁の世界で生きてきた。
死ぬ気の炎を扱えるハジメ達という例外はいるものの、それ以外の者にはいきなり魔物や魔人族との戦いに挑むのは不可能だろう。
それも見越して教会本山がある神山の麓のハイリヒ王国にて受け入れ態勢が整っているという。
そこへ向かうためにイシュタルが先導していく中、光輝はハジメ達に近づいてくる。
「あの場はハジメでも同じ事をしていたよな?」
「ああ、実際に存在し力を持った神を崇める宗教相手に、現時点で機嫌を損ねるのは不味い」
「あのイシュタルって人は光輝を私達の中心人物と判断していたわね」
「なら光輝君がクラスを率いている間に、情報収集と皆に力を付けて貰う事を優先だね」
香織の幻術で周りの者はその会話に気づいていない。
情報も無く無力なままで何の庇護下にも入っていないのは危険すぎる。
そしてこのままでは、彼らは命がけの戦いに巻き込まれる。
ボンゴレファミリーとして、容易く許容することは出来ない。
それでも現状では他に有効な手段なども存在しない。
光輝という理解者がいても、戦力が少なすぎる。
せめて自衛できる程度の力は付けて貰う必要がある。
ハジメ達は歯がゆい気持ちを感じられずにはいられなかった。