魔王生徒カンピオーネ!   作:たけのこの里派

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*注意事項。
・この作品は「魔法先生ネギま!」を主軸にした「カンピオーネ!」とのクロスオーバー作品である。
・唯でさえ誇大解釈極まりない拙い神話の解説がそもそも間違ってる可能性がある。
・作品のストーリー展開上原作と時系列的に間違っている箇所が数ヶ所ある。
・原作既読済みにはラスボスの正体がモロバレである。
・「そこはちゃうんやで」という致命的な相違、無理な展開が発覚した場合は出来るだけ修正しますが、どうしようもないところは生暖かい目でスルーしてください。
・目を覆いたくなるような駄文である。

以上の点が受け付けられない方は素直にブラウザバックを推奨します。
また注意事項が増えたりするかもしれませんので、ご了承ください。


プロローグ
第一話 始まりは絶叫と共に


 

 

「──────特異な者が何故特異であるか等と疑問を持つな。そこに意味は何も無い」

 

──────カール・クラフト=メルクリウス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明治中期に創設され、幼等部から大学部までのあらゆる学術機関が集まってできた都市が存在した。

 

 これらの学術機関を総称して麻帆良学園と呼ばれ、一帯には各学校が複数ずつ存在している。

 そんな学園の中央に聳え立つ、樹高270mという世界に類を見ない巨木、正式名称神木・蟠桃(しんぼく・ばんとう)

 通称世界樹の広場に、一人の少女が佇んでいた。

 

「…………」

 

 整った顔立ちに感情の起伏が少ない表情と左右違う色の瞳を持ち、その綺麗なオレンジの長髪をツインテールに束ね、麻帆良学園初等部の制服を身に纏っている少女。

 彼女の名は、神楽坂明日菜。

 

 浮世離れした、まるで王国の姫君の様な雰囲気を醸し出しているが、腕や頬に付けてあるガーゼや絆創膏が彼女を麻帆良学園の生徒足らしめていた。

 静かに彼女は、聳え立つ世界樹を眺めていたが、その静寂を破る者が現れた。

 

「っと……居た居た。オイ! 神楽坂ッ!!」

 

 程良く伸ばした黒髪に首に巻いたヘアバンド。そして小学生離れした雰囲気をもつ大人然とした奇妙な少年だ。

 その少年を明日菜は知っている。

 彼女のクラスメイトであり、クラスの纏め役にして数時間前に自分ととある少女の喧嘩を止めた張本人だ。

 名前は確か──────

 

「水原……、皐月」

「ンだよその呼び方。クラスメイトにフルネームで呼ばれんのは疎外感感じるわぁ……」

 

 どうやら少年は明日菜を探していた様だ。

 息が少し切れており、それなりに汗もかいている。

 麻帆良学園の敷地は膨大な広さであり、もし学園中を探したのであれば、息ぐらい切れて当然である。

 

「……何?」

「何? じゃねェよ。ヒューマノイド・インターフェースかおのれは」

 

 皐月はブツブツ文句を言いながら、背負っていたランドセルから数枚のプリントを取り出し明日菜に渡した。

 

「ホレ、連絡書類忘れただろお前」

「……こんなの、先生にやらせればいいのに」

「止めい嬢ちゃん。転入早々雪広と喧嘩やらかしてキツいってのに、そんな口利かれたら泣くぞあの人」

「嬢ちゃんじゃない。それに、同い年」

「嬢ちゃんだよ。俺にしてみれば」

 

 プリントを明日菜が受け取ると、明日菜の隣に腰掛け、溜め息を吐いた。相当疲れていたのだろう。

 明日菜もそうだが、皐月も違う意味で他のクラスメイトと比べ異彩を放っていた。

 

「で、どうだ嬢ちゃん? この学校は。まぁ喧嘩やらかしてどうだも糞も無ェだろうが」

「ガキばっか」

「手厳しいなァオイ」

「……皐月は、ガキじゃない」

「……あれま。ソイツはどうも」

 

 精神の成熟度。皐月のソレは高校生や大学生の域であった。

 ランドセルから取り出した缶コーヒーなどまさにそれだ。

 

 まぁ、それも当然と言えば当然なのだが。

 

「友達は出来そうか?」

「いらない」

「一言かよ。一匹狼気取っても楽しくねぇぞ?」

「楽しい?」

「そうだ。馬鹿騒ぎするにも勉強するにも、一人じゃ何も楽しくねぇ。馬鹿騒ぎしろって訳じゃないがな」

「…………」

「別に友達百人作れなんて言わない。俺も作れるか解らんしな。ただ、マザコンファザコンを自称する俺が戴いた、母さんの有り難い言葉をくれてやる」

「有り難い言葉?」

「あぁ、それはな『百人の友達よりたった一人の親友』ってヤツだ」

「百人より、一人……」

「別に一人って訳じゃ無いがな。つまり十年経ったら忘れちまう百人より、絶対に忘れない少数が良いと思うぞ、俺はな」

「忘れ、ない? それは、大切な事?」

 

 

 皐月の言葉は、()()()()()()()()()()明日菜の中に、酷く響いていた。

 そして彼女は皐月に問いを投げ掛けた。問うてしまった。

 

 大切な何かを忘れる事は、いけないことなのか。

 即ち、自分にとって害なのか。

 

 

「……オイ、大丈夫か? 顔色悪いが……」

「答えて」

「……あぁ、大切だと思うぞ。その少数の親友が、自分の人生を決定付けるモノになるかも知れないんだからな。それに、そんな大切な奴を忘れるなんて、絶対に不幸だし、嫌だろ」

 

 そして明日菜は思ってしまった。忘れる事は、嫌な事だと。心の底からそう思ってしまった。

 瞬間、脳裏に誰かが映り、同時にノイズが走る。

 

 

 

『────何だよ嬢ちゃん、泣いてるのかい────』

 

 

 

「ぁ──────―」

 

 そうだ。私は■■にならなきゃならない。だって、それが約束だから。

 私が勝手に一人でした、約束────

 

「私、前が無い」

「前が無い……? 記憶喪失なのか?」

「そう。だから私、思い出の大切さが解らない。友達も、いない」

「そっかァ……そらァ難儀なこって」

 

 ポンと、明日菜の頭に皐月の掌が乗せられる。

 いつの間にか明日菜の目から涙が流れていたのだろう。皐月はそんな明日菜を見て困った様な表情を浮かべ、慰める様に、諭すように頭を撫でた。

 

「だったら今から作りゃイイ。俺も手伝うしよ。友達も思い出も。ガキが達観して黄昏るより、そっちの方がずっとずっと良い」

「ッ」

 

 頭に施された何かが、どんどん解かれていく感覚が広がっていく。

 皐月にとって、それは泣いている女の子を慰める言葉だった。

 

『幸せになりな嬢ちゃん。アンタにはその権利がある』

 

 そして同時に、目の前の苛酷な運命を背負っている少女への、無力な自分からのせめてもの────。

 

「────ぁ」

 

 それが彼女にとって、何処までも致命的な言葉とも知らずに。

 

「────あぁ、ぁああ、ぁああああああああああああああああああああああああアあああああアあああああああああああああああああああああああああッ──────!!!!!?」

 

 急激に暗転する意識の中で、

 

「──────────ガトウ、さん」

 

 その名が明日菜の口から漏れた瞬間、彼女は頭の中で何かの鍵が外れた音を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

第一話 始まりは絶叫と共に

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ、ありのまま、今起こったことを話すぜッ。

『クラスメイトがイキナリ泣きながら叫んだと思ったら意識を失った』

 な、何を言っているか解らないと思うが、俺も何が起こったか分からなかった……! 

 

 ま、まぁ取り敢えず自己紹介しよう。

 俺の名前は水原皐月。

 父親が日本人で母親がヨーロッパ人のハーフなんて珍しい生まれの、肉体年齢七歳で、精神年齢二十代後半のピッカピカの小学一年生である。

 

 肉体年齢と精神年齢がズレにズレまくってる? これは前世を合わせると、だ。

 つまり、俗に言う転生というヤツらしい。

 転生と言っても、テンプレの如く神様のミスで死んだり、特典を貰ったりなんて展開では無い。

 死んだ記憶が無く、いつの間にか赤ん坊として産まれていた感じだ。思わずキング・クリムゾンを喰らったと思った俺は悪くないと思う。

 特殊な能力も無いし体が特別強い訳でもない。子供の頃から走ったりして、少々周りより体力がある程度だ。

 しかし厄介な所が、前世の記憶がある────つまり精神と肉体との差異である。

 幼児が玩具で遊ばずに新聞漁ったり、黙々とランニングに勤んでいるのだ。今思い返してみてもキモすぎるだろう。

 

 だが新たな両親は、そんな俺の不安を嘲笑う様に裏切ってくれた。

 

 そんな異常な行動を許容するだけでなく喜び、更には前世の記憶を持つ俺を認めてくれたのだ。

 そう、既に俺は前世の記憶を持っている事を話しているのだ。

 にも関わらず俺を受け入れてくれる親。

 転生者故の世間との疎外感(笑)に苛まれていた傷心中の奴が、これでファザコンマザコンにならない訳がない。

 まぁそんなこんなで数年が流れ、小学校に入学したのだ…………麻帆良学園に。

 

 学園と言うには余りに広すぎる土地で、外と較べてロボットをナチュラルに造っているオーバーテクノロジー極まりなく、オリンピック入り又は優勝間違いなしの出鱈目な能力の生徒達。

 敷地内に島すらあり、その島にある図書館に地下があり、更に下層に降りれば命の危険すら存在する、世界文化遺産確定の巨大な“図書館”。通称『図書館島』。

 止めは一年に一度“発光する”という出鱈目極まりない、ギネスや世界遺産確定のバベルの塔三塔分に値する巨大過ぎる樹木、『世界樹』。

 そんな常識に喧嘩を売りまくっている非常識の塊の様な学園を、俺は知っているッ! 

 そう、『魔法先生ネギま!』の舞台となる学園都市だッ!! 

 

 どうやら転生する際に次元を一つ間違えたらしい。

 なるほど解らん。

 訳が解らん。

 

 しかしまぁ開き直ってみれば、比較的安全な世界で安心した。

 これが、道化師みたいなデブが人類ブチコロ兵器を大量生産してる某灰色の世界や、〇ンコ型宇宙兵器の地球侵略が起こる世界や、巨人が闊歩し人類の生活圏が蝕まれている様な、日常的に死の危険がある世界ではないのが幸いである。

 一応この世界に存在する死亡フラグの殆んどは原作重要キャラのみ。そして俺は原作主人公の様に英雄の子などの特別な出自ではないからほぼ関係が無い。

 そりゃあ美人揃いの原作キャラは魅力的だが、それだけで死亡フラグ溢れる原作介入をしたいとも思わないし、そもそもできない。

 故に俺にとって、死亡フラグや原作は程遠いモノになると思っていた。

 

 ────悉く原作キャラと絡むまでは。

 

 初等部一日目で、死亡フラグ発生率第三位である近衛木乃香と隣同士になり、更に数ヵ月後には死亡フラグ発生率第二位の神楽坂明日菜がクラスに転入してくる始末。

 

 アレ? アスナは兎も角、時系列的には木乃香はまだ京都じゃね? 

 

 そんな俺の疑問を置き去りに、第一回後の委員長こと雪広あやかvs後のバカレッドこと神楽坂明日菜の戦いが開始された。

 暫く微笑ましい殴り合い(もとい)じゃれ合いを眺めていたが、先生が本気で涙目になってきた為、止めに入った。

 まぁそれのせいで明日菜にプリントの配布がされなくて、下校後に何故か俺が届ける羽目になったのだが。

 そして二時間ほど歩き回って漸く見付けた挙げ句コレだよ。

 

 何か悪いことしたか俺? 確かに我ながらクッサイ事言ったかも知れんよ? 泣いちゃった子に酷いことは言えんよ。

 でもね、叫びながらぶっ倒れるとは思わないもの。おじさんそんなにキモかったか? 

 ナデポならぬナデ叫。上手く出来てないし下らんわ。

 て言うかこの後どうすんの。

 

 携帯で保護者に来てもらう────連絡先シラネ。

 ならば連れてく? 気ィ失ってんのに? 

 まぁおんぶするのも吝かじゃ無いよ? でも何処に? 

 この時期なら例のあの人、あの現代のナマハゲん所の別荘で修行してたっけ。

 そこまでおんぶ? マジかよ。

 

 そんな、本日数回目の溜め息をつきながら、彼女の保護者である高畑・T・タカミチを求めて、俺は動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 魔法世界において、英雄、ヒーローの代名詞を聞くと、ナギ・スプリングフィールド、ジャック・ラカン等、先の大戦の立役者の紅き翼を答えるように、恐怖の代名詞を問えば誰もが同じ名を挙げるだろう。

 

 ──────エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。

 

闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』『不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトゥ)』『人形使い(ドール・マスター)』『悪しき音信(おとずれ)』『禍音の使徒』『童姿の闇の魔王』。

 数多くの異名と逸話を持つ生きる伝説。600万ドルという史上最高額の賞金首。

 その実力は()()使()()()()()()間違い無く世界最強クラス。

 何より彼女が悪の代名詞とされている最大の理由は、彼女が人ならざる真祖の吸血鬼、600年を生きる不老不死であるからなのだ。

 その恐ろしさは、魔法世界で子供を寝かしつけるために、彼女の名前を出して脅かす風習がある程であり、決して少なくない数の彼女を題材とした伝説が存在している。

 しかし数年前、彼女は彼の英雄『千の呪文の男(笑)(ナギ・スプリングフィールド)』と戦い、封印又は討伐されたとされ、その指名手配は解除されている。

 その彼女が、今も麻歩良学園に封印されていることを知ってる人間は限られていた。

 

「ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙……」

 

 アレから更に数時間後、皐月は明日菜を背負いながらタカミチを探して三千里、と言うほどでもないが、試行錯誤の末にエヴァンジェリン宅を調べ、最終的にエヴァンジェリン宅であるログハウスに辿り着くことに成功したのである。

 しかしこの時、皐月は満身創痍を通り越して、某蒼炎の騎士の如く、地獄の底から湧き上がってくる様な唸り声を上げ、まるでゾンビのごとき相貌に成り果てていた。

 黒髪から覗く様にある瞳はまるで餓虎。

 どんな小学生だ。

 

 気の強化なんてものは勿論出来ず、精々同世代に比べれば体力が有る程度の膂力しか持たない皐月が、自分と大差ない少女とランドセルを背負い駆けずり回ったのだ。こうなったのも必然である。

 しかし、問題は此処からだった。

 

「呼び鈴にッ……届かないッ……!」

 

 というか、明日菜をおぶり二つのランドセルまで装備した皐月は、完全に両手が塞がっていた。

 更にドアノブこそ皐月でも届く高さだが、森に隣接しているエヴァンジェリン宅は、そもそも子供が来る設計をしていない。

 人一人背負った皐月が呼び鈴を鳴らす事など不可能だった。

 ならば方法は一つ、叫んで呼ぶしか無い。

 

 しかし相手は呪いが無ければ自宅警備員クラスの怠け者である600年を生きるロリ。

 ありがちな呼び掛けに応じるとは思えない。

 故に皐月は、彼女が絶対に反応するであろう言葉を選んだのだった。

 

 

エターナルロリータのキティちゃんいらっしゃいませんかァ──────!!!!

だァあああああああれがッッッ! エターナルロリータだぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッ!!!!

 

 

 ドアを蹴り飛ばすように現れた金髪の美少女を見て、皐月が『あ、こいつチョレェ』と思ったのは秘密である。

 なお、彼は疲労で冷静な判断が出来ていない。

 

「良かった良かった。コレで反応してくれなかったら『ロリBBA乙』とか『ネギ&ニンニク入り落とし穴で泣いちゃう闇の福音www』とか言わないといけなかったから」

「喧嘩売ってるよな貴様!? 今すぐに買ってやろうかァ!! て言うか何故知ってる!?」

「────どうしたんだいエヴァ?」

 

 すると家の奥、顔を真っ赤にして、今すぐにでも飛び掛からんとしている金髪の美少女の後ろから、長身のYシャツを着たラフな格好の、皐月が知るよりも数段若い白髪の眼鏡をかけた男性が現れた。

 

「高畑・T・タカミチさんですね? 預かり物御届けに参りました」

「って、アスナ君!?」

「ああ゙!? タカミチ、貴様の知り合いか!?」

「えっ、ちょッどうしたんだエヴァ!?」

「済みません、自分が少々『そりゃコクってもフラれんだろププー! テメェの身体見てから出直せロリ』とか言っちゃったんで」

「うわぁああああああああああああああああああああ!!!」

「何処に行くんだエヴァ!?」

 

 ────コレが後に『炎の王』()()皐月が、『義姉(あね)』と呼び慕う女性との出会いだった。

 

 

 

 




速攻ぶっ壊れた記憶封印については次回。

初見の人は初めまして。ほかの作品から知って頂いている方はこんにちは。
大学が始まって並行して就活しているこんな時に新しい作品を投稿する阿呆です。

修正点は随時修正します。
感想待ってまーす(*´ω`*)


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