魔王生徒カンピオーネ!   作:たけのこの里派

26 / 49
明けましておめでとうございます。
今年はじめての投稿ですね。
……今年初めての投稿がこんな話で良いのだろうか。

修正指摘され過ぎぃ!
本当に申し訳ない


第二十四話 必然の想定外

 「────想定外の事は起こる、必ず起こる。それが戦だからな」

 

────土方歳三義豊

 

 

 

 

 

 

 

 

 賑やかな、常に灯りの尽きない麻帆良学園の光が消えた。

 

 年に一度の、ほんの数時間程度の学園都市全域の点検作業。

 所謂、大停電である。

 

 表向きには唯の点検作業だが、その実学園全域の停電は電力によって展開している麻帆良大結界の消失を意味していた。

 

 大結界によって高位の魔物の類いは侵入した瞬間に弱体化され、場合によっては消滅、または召喚の解除を余儀無くされる。

 

 そんな結界が解除されたのだ。

 世界樹を筆頭に麻帆良学園を狙う侵入者達は、普段投入できない戦力を投入してくるだろう。

 

 そんな暗闇に包まれた麻帆良学園に侵入した術者によって召喚された鬼が、頭を上げて溜め息を吐く。

 そんな鬼の様子に、烏頭の修験者が首を傾げた。

 

「どうした? 御主が怖じ気付くとは思えんが」

「怖じ気付くというのは否定するが、何じゃろうのぅ……今回はアカン気がするんじゃ」

 

 鬼の脳裡に、結界の存在を知り、尚且つそれが解除される情報を得た術者の、技量にそぐわぬ心持ち────有り体に言えば小者極まりない反応を見たときのことが思い浮かぶ。

 だがそれ以上に、鬼には種族的な本能が、目の先に見える学園が死地のソレだと訴えていた。

 尤も、召喚された身である鬼にとっては、致命傷さえも送還と同時に無かったことになるのだが。

 

 そんな鬼の嫌な予感に苛まれた仏頂面から目を逸らし、烏頭の修験者は強者との戦いに胸を躍らせる。

 

「────さぁ、行くぞ!」

 

 術者の命により、麻帆良への進軍を開始する。

 感覚を研ぎ澄ましたり感知の術を使えば、鬼達と似たような侵入者達の進軍を認知できるだろう。

 そしてその中に、異様な気配を持つ屍達はまだ無かった。

 

「────『無極而太極斬(トメー・アルケース・カイ・アナルキアース)』」

 

 突然、若い娘の声が聴こえたような気がした。

 

「……はァ?」

 

 彼等の見た次の光景は、歪み切って消滅していく自身の身体だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

第二十四話 必然の想定外

 

 

 

 

 

 

 

「おー、始まっとるなー」

 

 第一防衛線で侵入者が禍払いの一撃によって吹き飛ばされ崩壊していく様を見ながら、暢気な声を出したのは、巫女装束姿のこのかだ。

 その手にはアーティファクト『雷上動』が握られている。

 

「今の処、死せる従僕は姿を現してはいないようだな」

 

 漫画やアニメに出てきそうなゴツい狙撃銃を構え、戦場を俯瞰している真名が、スコープを覗きながら隣で控えていた。

 

「しかし、東西に禍払いと最強クラスを配置とは」

「アスナにはエヴァちゃん、アカリちゃんには神獣(フェンリ)。対空にせっちゃんと真名やんが」

「そして遊撃に茶々丸さんと兄さん────有り体に言えば難攻不落かな?」

 

 城攻めに於いて、攻める側は城側の三倍の兵力が必要とされる。

 侵入者は平時の何倍もの質と量を投入してくるだろう。

 

 だが、その質と量の大半は手っ取り早く数を揃えられる召喚術による妖怪や魔物、或いは悪魔だろう。

 少なくとも、皐月が関西呪術協会に君臨してから麻帆良学園に侵入しようとする日本の術者は激減している。

 学園に侵入してくる様な輩に、白兵戦が得意な強者など殆ど居ない。

 

 そんな連中にとって、禍払いの少女二人は鬼門でしかない。

 

 アスナは『紅き翼』譲りとも言える一撃で広範囲を薙ぎ払い、だめ押しに雪姫が一切合切吹き飛ばしていた。

 アカリはどこぞの練鉄の英雄や英雄王、神の泥人形さながらの剣群で、フェンリが嗅覚で感知した侵入者を丁寧に潰して回っている。

 

 そして仮に逃げ回り彼女達から逃げ仰せたとしても、白いアース神族の知覚能力を持つ魔王とそれに侍う天女が待っている。

 

「おっと」

 

 不意に真名が、ズガンッッ!! と狙撃を行う。

 何を撃ったのか、このかは解らなかった。

 

「学園長も事後処理が大変だろう。あの様子では森が更地になってしまう。恐ろしいものだよ」

「いや、おっとで何か撃ち落とす真名やんも怖いで?」

「本領を発揮した君ほどではないさ。尤も、今回は君の出番は無さそうだな」

「医療班は仕事が無いのがええねんて」

 

 そう老いた医者のような事を言うこのかに、真名は静かに畏怖する。

 魔王にして魔王にとっての絶対に等しい皐月を除き、仮想敵として魔王一行を想定した場合最も厄介なのがこの少女なのだと。

 

 彼女もこの数年で、見違えるように成長した。

 前線で戦いがちのアスナやアカリ、刹那に隠れ目立たないが、彼女も同様の領域に達していた。

 最強クラスの壁超え勢と言える雪姫やナギ・スプリングフィールド達のような最強クラス上位には及ばないものの、その一歩手前とも言える準最強(アーウェルンクス)クラスに、である。

 

(攻略するなら本来、回復役を真っ先に潰すのは定石だが……)

 

 元より神祖に匹敵する規格外の呪力を誇り、その呪力によって成される治癒能力を自身に掛け続ければ不死身に近い。

 周囲を一瞬で癒し、自身も不死の上位に匹敵するほどの治癒能力を有する準最強クラス。そのポテンシャルは最強クラス上位にさえ食い込むだろう。

 

 仮にアスナや刹那を倒そうが、彼女が健在であるならば直ぐ様全快させる一行の要。

 それが彼女、近衛このかだ。

 

「────む」

「どないしたん?」

「本命だ。兄さんも知覚してるだろう。アスナ達に配置換えを連絡してくれ」

 

 半魔である真名の固有技能である魔眼が、尋常ではない呪力と死者特有の気配を視認した。

 死して尚、囚われ続ける哀れな亡者────『死せる従僕』が、麻帆良学園に侵入した。

 

「雪辱戦やで……!」

 

 このかが、想い人譲りの凄絶な笑みを浮かべる。

 三年前、ヴォバンの招神儀式の生け贄に拐われた彼女は、確かに皐月によって救われた。

 だが、そんな囚われのお姫様という役回りは、皐月の隣に立たんとする彼女にとって耐え難い屈辱であった。

 

 此度の戦いは、まさに雪辱の時である。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 『死せる従僕』の侵攻。

 ソレに伴い、配置が変わる。

 東西に分かれていた魔王一行は、片方に戦力を集中する。

 

 何故なら、魔王にとって三下に過ぎない聖騎士や大魔術師達は、しかし世間一般に於いて最強クラスと呼び名を変える。

 勿論全ての『死せる従僕』が聖騎士クラスな訳ではないが、しかし多勢に無勢。

 幾ら彼女達でも、勝てると断言できるのは雪姫とフェンリのみだった。

 何より気を付けなければならないのは、『死せる従僕』に殺害された場合、同様に『死せる従僕』に成り果てることだ。

 聖騎士クラスを一体でも逃し、市街地に入れてしまえば、麻帆良学園は死都となるだろう。

 

 万に一つも負ける訳にはいかない。

 

 雪姫や茶々丸、フェンリを含めたアスナ達は結集して東側を死守する。

 如何に最強クラスの聖騎士複数体でも、思考が鈍った状態ならばアスナ達なら相手にするのは問題は無い。

 何より、アスナとアカリは彼等にとって相性が最悪である。

 

 そして西側は魔王たる皐月が君臨する。

 一人足りとも残りはしない。

 

 それは事実だった。

 

「カッ────ヒャははははははははッ!!」

 

 皐月が陣取ったのは、麻帆良学園と外を繋ぐ物の一つである大鉄橋だ。

 しかし其処は最早地獄の門と化している。

 

 橋は全てカグツチの神殺しの属性を付与された、アグニの浄火によって覆われていた。

 それも、死せる従僕が進軍を行っていた最中に行われたのだ。

 

「『敵をとり籠めて火ィ付けるのは気分がいいなぁ』成る程至言だ、これは愉しい。比叡山焼いた信長は、本当に素晴らしい文化を日本に遺してくれたよ。そんで自分も焼かれちゃ世話ねェけど」

 

 外道である。

 不浄の存在である『死せる従僕』が足を踏み入れよう物ならたちまち炎上、囚われた魂が昇天するだろう。

 そんな炎浄網を逃れんと、魔女術による飛翔術、または魔術による水上歩行で川を渡ろうと橋を飛び降りたとしても────

 

「あはははは────あぁ、そこも比叡山だ」

 

 毘沙門天の権能で造られた近代兵器にも似た防衛神器が、水中で発動し悉く絨毯爆撃の如く撃ち落としていく。

 稀にそれらを突破する聖騎士クラスの亡者がいるものの、未来予知に匹敵する知覚能力を持つ皐月が見逃す筈は無い。

 灰燼の魔王はそんな突破してきた強者を丁寧に焼いてしまう。

 

「まぁ、炎は死者にとって弱点の一つだしな。こんだけガンメタ張ってんだ。通すわけねェじゃん」

 

 当然だろう。

 仮に元の生者がどれだけの力量の古強者であろうと、死せる従僕となり思考が鈍化して弱体化。

 そんな神獣や従属神にさえ劣る者がどれだけ集まろうと、こと火力に特化したこの羅刹王にとって塵芥に等しい。

 

 加えて毘沙門天の権能は神具の創造。

 材料に光源が必要だが、要は一度作ってしまえば作動自体に権能行使は必要がない。

 権能の同時行使での負担が無いのだ。

 

「さて、問題はアッチなんだが……」

 

 皐月は、初めてのお使いに出す娘に対するような心配を反対側に向けていたが、直ぐ様その視線を学園外に戻す。

 死せる従僕を操るヴォバン本人が万が一にやって来ている可能性があるからだ。

 

 ヴォバンの身体を蝕む神殺しの炎を消すには、それ相応の権能か神器、或いは皐月本人が死ぬか解除するしかない。

 かの狼王は小細工や無用な策を弄するタイプではないのだから、本当に本人がやってくる可能性は捨てきれない。

 

 卓越した権能による知覚を、外部に向けていた。

 とは言え、今そこまでの距離を観ることは出来ない。

 カグツチとアグニの権能の同時使用。

 幾らルーンで負担を軽減していても、如何せんヘイムダルの権能の精度は落ちる。

 それでも隠密系の権能を持たない、 魔王特有の莫大な呪力を持つヴォバンが居た場合見付けるのには十分過ぎるものの筈であった。

 

 それ故に、彼は気付けなかったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、大橋の反対側の森にて、剣閃が煌めく。

 

「────斬岩剣ッ!!」

 

 その咆哮と共に、刹那の夕凪が振るわれた。

 奥義の一撃を、しかし囚われの亡者は確りと受け止める。

 

「っ!」

「────」

 

 そのまま、刹那と思えぬ動きで大剣を捌き上段に跳ね上げた。

 その瞬間刹那は夕凪を手放し、亡者に蹴りを入れる。

 亡者は剣の腹で受け止めるも、単純な膂力では烏族である刹那に軍配が上がるのか後方に蹴り飛ばされ。

 しかし、それも自ら後ろに下がって衝撃を緩和していた。

 

「────」

 

 蹴り飛ばされた亡者の背後、そこに爆炎を伴った禍払いの、凡百の術者が受ければ塵に変わる斬撃が迫る。

 

 だが、反射的に体勢を無理矢理変えて身に纏う甲冑を外す事で、爆撃と斬撃に障害物を作り、生じた爆風で間合いを稼いだ。

 如何に岩を容易く切り捨てる一撃でも、聖騎士の甲冑の魔術防御は兎も角、素の肉体強化を突破出来ない。

 

 如何に禍払いでも、障壁や魔力弾などなら紙屑同然だが、肉体と密接な強化の魔術だけは突破するのは難しいのだ。

 それこそ、それのみを断ち切るほどの集中があれば、まつろわぬ神の肉体さえ傷を付けられるのだが。

 この乱戦でそれは愚行だろう。

 

「ぬぅ、強い」

「というより、上手いです」

 

 そう言いながら、襲い掛かってくる雑魚を切り捨てる。

 

 距離を取った亡者は、思考が鈍化してるとは思えないほど俊敏であった。

 圧倒的な実戦経験と積み上げた技量の差が、基本性能では勝っているアスナと刹那を、二人が雑魚を蹴散らしながらの戦いとは言え、かなり苦戦させていた。

 

 傷こそ致命傷を受けることは一度もなく、小さな傷はこのかの治療が即座に飛んでくる為、あってないようなもの。

 だが、押し切れない。

 

「────何を馬鹿正直に戦っている。頭を使え頭を」

 

 声が響くと同時に、大量の氷槍が亡者を囲むように飛来する。 

 それは即席の氷の檻だ。

 

 魔法使いならばそのまま空いている空を飛行して抜けようとするだろうが、生憎と亡者はイタリアの聖騎士だった。

 飛翔術とはヨーロッパに於いて魔女の術。

 一部の例外を除き、騎士は空を翔ぶことは出来ない。

 

 勿論例外はある。

 『聖絶の言霊』。

 使用者に『聖なる殲滅の特権』を与える欧州戦闘魔術の最高秘儀。習得には聖騎士級の武芸と魔力が要求されるが、神獣・神霊に対しては非常に有効な対抗手段となる。魔女の素質を持たぬ者でも、短距離の飛行が可能になるなどの効果もある。

 だが、それには呪文の詠唱が不可欠。

 それなら跳躍術で氷壁を足場に駆け上がるか。

 否、それ以前に氷檻を剣で斬り破れば────。

 

「────『氷神の戦鎚(マレウス・アクイローニス)』」

 

 そんな、生前ならば瞬時に決断できるはずの思考に、亡者は囚われる。

 そして其れ故に、現れた巨大な氷塊が蓋をするように押し潰してくるのを逃れる事が出来なかった。

 

 氷塊の上に立つのは、長い金髪を月光で煌めかせる、地球における魔法使い最強。

 『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』たる雪姫(エヴァンジェリン)である。

 

「雪姫先生!」

「流石エヴァ。私達とは年期が違う。歳が違う」

「……葛葉にそのノリを言うなよ? 本気で殺されるぞ?」

 

 肉体年齢を自在に操作できる雪姫は平気だが、年頃を気にする妙齢の女性にとってそれは宣戦布告である。

 下手をしなくても、殲滅戦を実行し終えるまで止まらないだろう。

 ゴホン! と刹那が空気を変えるように咳払いをし、それに雪姫が応じて話題を戻す。

 

「連中の最大の弱点は、思考の鈍化だ。高速戦闘中、相手が直感を働かせる様な場面を作るな。敢えて、思考する余地を与えろ。詰め将棋の様にな」

 

 アスナ達とエヴァンジェリンの戦い方の差はそれだった。

 咄嗟の判断は直感で凌がれかねないが、思考させればそれ自体が隙となる。

 周囲をよく見れば、茶々丸と雪姫によって10人は居た聖騎士が過半数を切っていた。

 

「キチガイとしてはゴリ押しがしたい。ジャックみたいに」

「比較対象を考えろ、比較対象を」

 

 アスナの語るキチガイ筆頭、『千の刃』ジャック・ラカン。

 それに異論を挟む者は居なかった。

 

「あのバグにあってお前達に足りないもの、それは経験だ。こればかりは時間をかけて積み重ねるしかない」

 

 事実、ラカンには40年以上に渡って積み重ねた経験がある。そしてそれこそが彼を魔法世界の最強クラスでありバグ足らしめる要素でもあるのだ。

 アスナ達はまだ十年も鍛練を重ねていない。

 努力の時間と経験の密度が段違いなのだ。

 

「さて、次に行くぞ」

「承知!」

「レベリングだー」

 

 雪姫の先導に掛け声をあげる。

 

 ────そんな掛け声を耳にしながら、フェンリの背に跨がるアカリは己のアーティファクトを振るう。

 

「『断刀(エクスキューション)、二十三本配置』」

 

 言霊によって大量のギロチンが虚空に生み出され、戦闘機の編隊の様に主の周囲に追従する。

 

「ウォン!」

「射出」

 

 そして騎乗している銀狼からの指示で、断刀がミサイルの様に射出される。

 木々を器用に避けていき、出会い頭の亡者を完全な死角から飛来した禍払いの剣弾が刈り取っていく。

 

「次」

 

 それの繰り返しである。

 

「次」

 

 その瞬間だろう、森の木々に身を隠していた亡者も。

 影を縫ったように現れた亡者も。

 空を駆けようとした魔女の亡者も。

 

「次」

 

 射出した剣弾の数が次第に増える。

 亡者を仕留めた剣弾は消えずそのまま戦列に戻り、そしてその量は弾幕という表現すら超えた。

 最早濁流と形容すべき量に膨れ上がり、視界を覆うほどの刃群が殺到して、亡者達を木々ごと波に浚われた様に呑み込んでいく。

 

 瑞葉燈のアーティファクト、『千の鋒(ミッレ・アウテム・フェッルム)』。

 己の魔力によって様々な形状の武具を形成する、奇しくも嫌悪する『紅き翼』の一翼の二つ名を持つ者の所持しているアーティファクトと同系統の物であった。

 何より質が悪いのは、形作られた全ての武器が王家の魔力、即ち禍払いの魔力で形成されている事である。

 物理防御で防ぐには単純威力が高すぎる上、魔術防御など紙に等しい。

 残る手は回避だけなのだが、ここにダメ押しの殺人術が加わり、不意討ちならば回避は不可能に近い。

 それこそ皐月の様な権能で力押しで防ぐか、雪姫の様な再生能力で凌ぐしかない。

 

 聖騎士、大魔導師クラスがほんの僅かというのもあったろうが、しかし雪姫や茶々丸すら越える速度で敵を殲滅していき、遂には。

 

「わふ」

「範囲内のエネミーの殲滅を確認。次に行きましょう」

 

 とは言え、決して気を抜ける相手ではない。

 目の前の敵に集中し、彼女達は着実に己の役割を全うしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 『死せる従僕』。

 成る程通常とは違う相手ではあった。

 だが、何よりその権能の主が小手調べや手駒レベルで扱っている様に、然程脅威ではなかった。

 

 実戦経験の薄いアスナ達でも十分処理でき、雪姫や茶々丸といった歴戦の術者が未熟を補えばより万全だろう。

 弱点を突き、確実に対処していけば、そこまで難しい相手ではなかったのだ。

 

 万が一彼女達が突破されても、真名や楓、何より魔法先生が残りを処理するための防衛線を張っている。

 

 というよりかは、死せる従僕が侵入してからは通常の侵入者は基本的にスルーしている。

 勿論目につけば片付けているが、それらは基本的に防衛線で魔法先生達が対処をしているのだ。

 結果、その分担作業は上手く行き。

 麻帆良学園の住宅地に入れた侵入者は、麻帆良学園の防衛における魔法先生や魔法生徒の欠員、負傷者は、共に皆無だった。

 

 だが決して忘れてはならないことがある。

 そもそも戦場に於いて『あり得ない』などあり得ないのだと。

 

「───ウォン!!」

 

 そもそも麻帆良学園の魔法先生や、皐月達ですら想定などしていなかった。

 最初に気付いたのは、魔王に次いで知覚能力が高いフェンリと、共に居たアカリ。

 

 気付いたフェンリが即座にその現場に辿り着き、その場に居た召喚された魔物の頸を咬み千切る。

 頭部を喪った魔物は現界を維持できずに送還される。

 

「……学園側、いえ皐月様に連絡を」

 

 そもそも防衛ラインとは戦場と非戦場とを区切る物。

 それは学園側の魔法先生ですら、学園長を除けば刀子と神多羅木のような凄腕しか入り込めないレベルの戦いである。

 そんな捲き込まれれば容易に死にかねない戦いに、それだけの力量を持たない魔法生徒や先生を入らせないのは当然であった。

 

「二名、一般生徒を確認。名前は綾瀬夕映と宮崎のどか。内一名、宮崎のどかは────」

 

 そんな護るべき防衛ラインの外に、第三者が入り込むなどあってはならない。

 いくらアスナ達と言えど、そんな想定をしてなど────戦えないのだから。

 

「────()()()()()()()

 

 そんな報告が、余りにも呆気なく彼等に伝わった。




原作でも屈指の人気キャラを殺していくスタイル。
原作キャラ死亡のタグを付けてからこうなるのは決まっていたのだ!
要するに


↑東

戦場

魔王一行無双

現場

────防衛線 このか&真名
魔法先生、生徒が防衛

まほら中心地、住宅街

────防衛線(西側)

魔王

大鉄橋

↓西

と言った図です。
皐月は一番遠くて知覚出来ず、即死故にこのかのアーティファクトも通じない。
そんな不運の重なった結果と言えますね。

基本的にfateの方が筆が乗りやすいので、此方の更新が遅れがちになり申し訳ありません。
エタるのだけはしたくないので、牛歩更新ですが御待ちください。

取り敢えず言えることは、作者はハッピーエンド至上主義者です。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。