艦隊これくしょんー黒から白へ変わる物語・改ー   作:きいこ

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というわけで性懲りもなくまた書いていきます。しかも今度は改稿(リメイク)です。よければまたお付き合いください。


第一章「幕張鎮守府編」
第1話「着任1」


『深海棲艦』

 

 

それはある日海から突如として現れた謎の生命体。

 

 

ヤツらはその姿を現すや否や世界各地を航行している貨物船や客船といった船を攻撃し始め、各国の航海路(シーレーン)は瞬く間に寸断されてしまった。

 

 

隊列を成して海上を移動する事や、その攻撃方法が大砲や戦闘機によって行われる事からヤツらは“軍艦”と例えられ、『深海棲艦』という船にちなんだ名前が付けられた。

 

 

深海棲艦は通常の兵器による攻撃をほとんど受け付けず、対処に手を拱いていた人類は陸地での籠城戦を余儀なくされた。

 

 

 

 

『艦娘』

 

 

深海棲艦の出現から約1年後に人類が造り出した対深海棲艦用の人造人間(ホムンクルス)であり、現時点で深海棲艦に対抗できる唯一の手段である。

 

 

深海棲艦に対抗する兵器という事から彼女たちも“軍艦”と例えられ、艦娘たちにはかつて存在していた軍艦の名前が与えられている。

 

 

そんな艦娘による艦隊を指揮する人物はかつて存在した海軍の司令官の名を借りて『提督』と呼ばれ、提督と艦娘が身を置く拠点は『鎮守府』と呼ばれた。

 

 

深海棲艦と艦娘の勢力は拮抗(きっこう)しており、人類は未だ反撃の狼煙(のろし)を上げられずにいた。

 

 

 

 

 

東京都新宿区。日本全国にある鎮守府を取りまとめる総本山である『大本営』の一室でふたりの男が机を挟んで向かい合っていた。

 

 

「南方彰訓練提督、本日付けで幕張鎮守府への正式な配属とする」

 

 

そう言ってもうひとりの男にいくつかの書類を渡すのは海軍の最上位階級である元帥の階級を持つ八木崎(やぎさき)幸平(こうへい)。年齢は50代も終わりに差し掛かるといったところで、随分と白髪の目立つ髪は所々薄くなっている、制服の状態と顔立ちからかなりくたびれた印象を受ける。

 

 

「…幕張鎮守府ですか、士官学校や訓練提督時代には聞かなかった名前ですね」

 

 

そう言葉を返し書類を受け取るもうひとりの男は南方(みなかた)(あきら)。年齢は20代になったばかりで、八木崎元帥とは対照的に若々しさが目立つ。短く切った黒髪に海軍の帽子を被り、制服はきちんと着こなしているのを見ると真面目そうな印象を受けるが、切れ長の目がやや強面の印象を持たせる。

 

 

「幕張鎮守府は設立されてからそう年月が経っていない比較的新しい鎮守府なのだが、前任の提督が鎮守府運営法違反や艦娘不当接触罪の常習犯でな、そこにいる艦娘たちが心に深い心傷(きず)を負ってしまい人間に対して強い恨みを抱えているんだ、そこで君には幕張鎮守府の提督として、ここの再建を頼みたい」

 

 

「…八木崎元帥、失礼を承知でお言葉を返させていただきますが、自分は訓練提督を終えたばかりで正式に提督として現場に立ったことのない若輩者です、そのような鎮守府の再建となれば自分の他にも有能な人材はいらっしゃるかと思うのですが…」

 

 

戸惑いの感情を含ませながら南方はそう言葉を返した。訓練提督というのは士官学校を卒業した提督候補生が指定された鎮守府の提督の下で一定期間の実地研修を受ける『提督見習い』の事を言う。

 

 

実際に提督の側で鎮守府の仕事や艦隊運用のノウハウなど、学校では得られない現場での知識や経験を培い、晴れて提督として鎮守府へ配属となる。

 

 

「謙遜する必要はないさ、君は士官学校時代に座学、実技共に他の候補生より抜きん出た成績を納めたと聞いているよ、それに近年提督による艦娘不当接触罪が目立つ中で君は訓練提督時代も真っ当に艦娘たちと向き合っていた、その優秀さを買って私から推薦させてもらったんだ」

 

 

そこまで言った後、八木崎元帥は“どうだい?引き受けてはくれないかね?”と改めて南方に問いかける。正直見習い上がりの自分がそこまで評価される事に若干のむず痒さを覚えなくもないが、八木崎元帥にそこまで言わせているのであれば自分から返せる答えはひとつしかない。

 

 

「分かりました、この南方彰、幕張鎮守府への着任と再建の命をお受けします」

 

 

南方はそう答えると、改めて背筋を正し敬礼をする。

 

 

「ありがとう、君の働きに期待しているよ」

 

 

「はい!」

 

 

南方は軽く一礼すると、八木崎元帥の執務室を後にする。

 

 

「……南方彰、上手くやってくれるといいが…」

 

 

一抹の不安を滲ませながら、八木崎元帥は誰に言うでもなく独りごちる。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、とりあえず鎮守府に戻って準備しておかないとな」

 

 

執務室を後にした南方は幕張鎮守府へ向かう準備をするべく、訓練提督の時に住み込みで仕事をしていた横須賀鎮守府へと戻る。

 

 

「よお南方、元帥殿の話は終わったか?」

 

 

廊下を歩いていると、向かい側から見慣れた顔の男が歩いてきた、自分がいた横須賀鎮守府の雨宮(あまみや)辰樹(たつき)提督だ。年は以前本人が50代に突入したと哀しげに語っていたのを覚えている、身体に色々ガタが来ているのが悩みのようだ。

 

 

「お疲れ様です雨宮提督、幕張鎮守府への着任が決まりました」

 

 

「ま、幕張鎮守府だと!?だってあそこは…!」

 

 

雨宮は目を剥いて思わず声を大きくするが、すぐに気付いたのか慌てて今度は小さな声で話す。どうやら幕張鎮守府の事情は提督であれば知っているような事ではあるがあまり大っぴらにはしたくないような内容らしい。

 

 

「はい、八木崎元帥から鎮守府再建を任されました」

 

 

「…そうか、正直言ってお前には少々荷が重いと思うが、お前の優秀さは俺もよく知っているし、何より元帥殿のお考えがそうなら俺もお前を信じて送り出そう、しっかりやれよ」

 

 

「ありがとうございます!雨宮提督にそう言っていただけるのであればとても心強いです!それでは自分は鎮守府に戻り準備を始めます」

 

 

「おう、しっかりな」

 

 

一礼して去っていく南方を見送ると、雨宮はノックをして八木崎元帥の執務室へと入る。

 

 

「八木崎元帥、雨宮辰樹、召集に応じて参りました」

 

 

「おお雨宮か、本年度の鎮守府の運営状況、及び予算について話そうと思っていてな、まずは昨年度の報告から聞きたい」

 

 

「はい、ご報告させていただきます」

 

 

それから雨宮と八木崎元帥は仕事に関する話をいくつか交わしていき、それも終わりというところで雨宮があの話を切りだした。

 

 

「ところで八木崎元帥、南方の事なのですが…」

 

 

「あぁ、その事か、事前に主戦力鎮守府の提督を集めた大会議で決まったとおり彼を推薦したよ、気恥ずかしそうにしていたがね」

 

 

「あいつらに任せて大丈夫でしょうか」

 

 

「心配はいらないさ、何かあれば我々が手を貸せばいい、あとは信じよう」

 

 

「…そうですね」

 

 

雨宮はそう八木崎元帥に返すが、胸に残る一抹の不安は消えないままだった。

 




次回『幕張鎮守府着任』

こらそこ!前の方が良かったとか言わないの!
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