艦隊これくしょんー黒から白へ変わる物語・改ー   作:きいこ

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何気なしに前回の更新日時を見たら11話の投稿から3ヶ月弱経っていることに驚き。一月くらいの感覚でした…。

とうわけで今回はとりあえずこれだけ更新します。

オリジナル小説として『虚構勇者』というのを書き始めましたが、異世界ファンタジーは描写に語彙力が求められるので中々に大変ですね。


第12話「純黒の白いハンカチ5

「さてと、明日以降は軽巡以下の艦娘たちの面会も視野に入れつつ動いていこうかしらね」

 

 

金剛は今日の面会の進捗状況をノートに書き込みながら予定を立てていく、今週中には軽巡や駆逐の艦娘の面会を終え、一通り全員と話をすることを目標としている。

 

 

「…そろそろ青葉と鈴谷が南方のリンチを始めている頃よね、まずは警告代わりに手を抜いて痛めつけてあげてって言っておいたけど、明日どんな様子になってるのか…見物だわ」

 

 

金剛は意地の悪い笑みを浮かべると、“今後どうやって南方を苦しめていくか”という計画を心底楽しそうに考えるのであった。

 

 

 

 

「…いい加減観念したらどうですか?“もう二度と鳥海に関わらない”、ただそう言ってくれるだけでいいんですよ」

 

 

青葉はため息を吐きながら何度目になるか分からない台詞を口にする、“呆れ”を通り越して“哀れ”という感情を含ませた視線の先には両手両足を縛られた南方が転がっていた、最初の腹パンでうずくまった南方をポケットに隠し持っていたロープで素早く縛り上げ、身体の自由を奪った上で再度鳥海に関わるなと警告を発したのだが…。

 

 

「…断る、何度でも言うぞ、俺はみんなを救うためにここに来たんだ、どんな目に遭ったって絶対にその役目を放棄するようなことはしない!」

 

 

既に身体に何発も蹴りを食らい、白い海軍の制服に靴跡を付けられながらも南方ははっきりと青葉の警告を拒絶した。

 

 

「本ッ当にしつこいよね~、あんたのその一方的で独善的な正義感が鳥海のトラウマを余計に刺激するだけだって何度言ったら分かるの…よッ!」

 

 

最初は演技でやっていたことであったが、あまりにも南方が答えを変えないことにイラついてきた鈴谷がこれまでより強い力で南方の腹を蹴り飛ばす。

 

 

「ごほおっ…!」

 

 

内臓に伝わる強い衝撃と共に吐き気を覚える南方、何とかこらえようとしたが、さらに青葉が追撃で下腹部を踏みつけてきたため、耐えられず提督室の床に吐瀉物をぶちまけた。

 

 

「うわ~、ゲロっちゃったよ、きもーいきたなーいさいてー」

 

 

鈴谷は汚物を見るような蔑んだ視線で咳き込む南方を見下ろす、金剛からはそれなりに手加減をするように言われていたが、これぐらいなら許容範囲内だろう。

 

 

「今日の所はこれぐらいで勘弁してあげましょう、ですが明日以降も鳥海に接触しようものなら、もう容赦はしませんよ」

 

 

容赦はしない、という最後の部分だけ声のトーンを落として青葉は再度警告する、そしてそのまま鈴谷と共に提督室を出て行った、ついに南方を縛っているロープを解くことは無かった。

 

 

「…………」

 

 

誰も居なくなった深夜の提督室で、南方はひとり縛られた状態で転がっていた、身体は青葉たちに暴行された箇所があちこち痛む、おそらくいくつかは痣になっているだろう、すぐ横では自分が吐き出した吐瀉物がむせかえるような臭いを放ちながら水溜まりを作っている。

 

 

自分は何故、こんな目に遭っているのだろうか、自分はただ艦娘たちを救いたいだけなのに…

 

 

「うぅ…ぐっ…」

 

 

気付けば南方は嗚咽を漏らしながら涙を流していた、今受けた仕打ちに対して艦娘たちに怒りや悲しみの感情が沸いた訳じゃない、彼女たちが受けてきた仕打ちを考えれば、提督という存在に対してこのような行為に出てしまう気持ちは理解できる、しかし自分はそんな彼女たちの歪んだどす黒い感情を溶かし、救うことが役目のはずだ、つまりこれは自分の力が及ばなかった事に対する罰なのだ。

 

 

「くそっ…!くそっぅ…!」

 

 

そんな自分が悔しくて、情けなくて、悲しくて、南方は涙を流し続けていた。

 

 

 

 

「金剛さん、今戻りましたよ~」

 

 

南方を好き放題リンチして気分が良くなった鈴谷と青葉は上機嫌で金剛の部屋へとやってきた、今回の“警告”の内容とそれに対する南方の反応を報告することになっている。

 

 

「お疲れ様、どうだった?」

 

 

金剛が青葉たちに首尾を聞いたが、青葉は首を横に振る。

 

 

「だめですね、鳥海と関わるなって何度言っても考えを曲げることはしませんでした、余程意志が固いんだと思います」

 

 

青葉の報告を金剛はノートに書き込んでいく、意志が固いという見解に関しては金剛も同意見だが、この場合の意志とは“純粋に艦娘たちを救う”事ではなく“新米提督を演じるために苦痛に耐える”という意味だと金剛は考えていた。

 

 

 

「あんまり頑固なもんだからアタシがアイツのお腹を踏んずけてやったのよ、そしたら勢い良くゲロっちゃってキモかったわ~」

 

 

鈴谷が武勇伝を語るように得意げに話すが、それを聞いた金剛の顔が険しくなった。

 

 

「えっ、そのゲロってそのまま残ってるの?」

 

 

「だと思いますよ」

 

 

「…なら今から掃除に行かないといけないわね、においが染み付いたらイヤだし、何か提督室に行くのに都合のいい口実を考えないと…」

 

 

金剛ははぁ…と息を吐くとノートを閉じて立ち上がる、打ち捨てられたも同然の状態の南方は放置しておいて構わないが、吐瀉物を吐き出したとなれば話は別だ。あの部屋は部分的に絨毯も敷かれているし、もしその上に吐き出されているのであればケアをしないと後々厄介なことになる。

 

 

「…ごめんなさい、少しやりすぎました」

 

 

「別に構わないわよ、それくらいやっておいた方が幕張鎮守府(ここ)の状態の深刻さをより強く訴えられるだろうし、なにより面会で会いたくもない提督に毎日会わされてるあなたたちのストレス発散にもちょうどいいわ」

 

 

申し訳無さそうに謝る鈴谷に対して金剛はそう返すと、掃除道具を準備するべく倉庫へと向かった、その道中でどのような口実(シナリオ)で提督室に行くかを考えていたが、“自室で休んでいたら廊下を歩いていた青葉たちが南方をリンチしたことを得意げに話しており、それが部屋にまで聞こえてくるほどの大声だった”…という内容に決まった。

 

 

「ひょっとしたらあいつ、今頃惨めになって泣いてるかもね」

 

 

そんな予感を胸に秘めつつ(実際には当たっているが)、金剛は運搬用の台車にモップ、雑巾、水の入ったバケツ等々を乗せると、それをゴロゴロと押して提督室へと向かう。

 




次回「ヒビ」

小さいながらも、それは確かに南方の心に…
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