艦隊これくしょんー黒から白へ変わる物語・改ー   作:きいこ

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新しい艦これ小説の案が浮かんだけど瑞鶴の話も完結させないとなぁ…とか考えてる今日のこのごろです。

※追記:何件か報告が来ていたのですが、本文中の海妖学は誤字ではありません。


第13話「純黒の白いハンカチ6」

青葉と鈴谷がリンチを終え、いい気になって帰っていってからどれくらい経っただろうか、いや、この場合はどれくらい自分は惨めに泣いていたのか…と形容するのが正しいのかもしれない、ほんの数分かもしれないし、もしかしたら30分くらいは経っているかもしれない、いずれにせよこのまま不貞腐れたように寝転がっているわけにはいかない、なんとか手足のロープを解いて抜け出さなければ。

 

 

「ふんっ…!!」

 

 

南方は身体をあちこちの方向へよじり、ロープを緩めようとする、しかしロープはしっかりと結ばれているようで、解けるどころか緩む様子も一切無い。

 

 

「あいつら…無駄にきっちりしてるな…」

 

 

そんな愚痴をこぼしつつ、何とか抜け出す方法はないものかと考えていると、ドアの向こうから何やらゴロゴロと車輪を転がすような音が近付いてきた、音から察するに手押し台車かなにかだろう。

 

 

(まさか青葉たち(あいつら)、他に拷問道具でも持ってきて続きをしようってんじゃ…?)

 

 

そんな考えが頭を過り、冷や汗を流す南方だったが、それはすぐに杞憂だと分かった。

 

 

「…金剛?」

 

 

部屋に入ってきたのは金剛だった、掃除道具を乗せた台車をゴロゴロと転がしながらこちらにやってくる。

 

 

「部屋で休んでたら青葉と鈴谷があんたをリンチして楽しかったって話を大声でしてたのが聞こえてきたのよ、別に放っておいてもよかったんだけど、あんたがゲロったってことを言ってたから様子を見に来たの、におい付いたら厄介だしね」

 

 

そう言うと金剛は南方の手足に結ばれていたロープを解くと、台車に乗せられていたモップを手渡す。

 

 

「あんたも掃除手伝いなさい、幸い絨毯の上には出さなかったみたいだけど、それでも吐瀉物の後始末は楽じゃないんだから」

 

 

「…あぁ、分かった」

 

 

南方は素直にモップを受け取ると、金剛指示通りに後始末を手伝い始める。

 

 

「結構手慣れてるんだな」

 

 

「精神がおかしくなって吐くような子もいたからね、経験はそれなりにあるのよ、それよりあんた、随分と派手にやられたみたいね」

 

 

「…結構手厳しいやつらだったよ」

 

 

「その腫れた目を見たらなんか察せるわ」

 

 

「こ、これはえずいた時に出たものだ、決して泣いていた訳では…」

 

 

「はいはい、そういうことにしておいてあげるわ」

 

 

南方の言い訳を興味なさげにスルーする金剛、その後は指示出しやそれに対する受け答え以外の会話らしい会話も行わず、黙々と掃除を進める。

 

 

「…………」

 

 

そんな沈黙の空間に南方は若干の居心地の悪さを覚える、そういえば自分を救出しに来てくれた事に対する感謝と掃除を手伝わせている事に対する謝罪をまだしていなかった、それに気づいた南方は金剛にそれを伝えようと口を開く。

 

 

「金剛…助けに来てくれてありがとな、あと片付け手伝わせてすまない」

 

 

「別にあんたを助けに来たつもりはないわよ、吐瀉物のにおいが床に染み着いたら厄介だと思っただけ、あんたの縄を解いたのも、一応提督としての仕事はしてるわけだし、それが滞ったら困ると判断したから、要は仕方なくよ」

 

 

「分かってるよ、それでも伝えておきたくてさ、ありがとう」

 

 

南方が言うと、金剛は“そう…”とだけ答えて顔を逸らす、その表情は伺い知れないが、気恥ずかしいのだろうか。

 

 

 

「…………」

 

 

 

その際、金剛がとても小さな声で何かを呟いたようだったが、それが南方の耳に入ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

「さてと、これだけやれば十分よね」

 

 

それから約20分間せっせと掃除を行い、ようやく金剛の満足のいく状態となった、嘔吐物はきれいに取り除き、消臭や念のための消毒も入念に行った。

 

 

「それじゃあ私は掃除道具(これ)を片付けたらその足で部屋に戻って休ませてもらうわね」

 

 

「片付けくらい俺がやるぞ?」

 

 

「あんたはさっさと寝なさい、さっきのことで色々と消耗しただろうし、明日だって仕事や面談があるんだから」

 

 

金剛は有無を言わせぬ様子で南方に言う、なんだかんだで心配してくれているのだろうか、と心の中で少しだけ自惚れてみる。

 

 

「…分かった、それじゃあ後は頼むよ、おやすみ」

 

 

「はいはい」

 

 

ここは金剛の言葉に甘えよう、そう思った南方は提督室を後にした。

 

 

 

 

 

 

「…やれやれ、やっと出て行ったわね」

 

 

金剛は今し方南方が出て行った提督室のドアを見ながらため息を吐く。自分もさっさと掃除道具を片付けて休もう、そう思いながらテキパキとバケツやモップを手押し台車に乗せていく。

 

 

『分かってるよ、それでも伝えておきたくてさ、ありがとう』

 

 

その途中、南方のあの言葉が脳内で繰り返し再生される、何も知らない純情な艦娘が聞けば提督から感謝の言葉をもらったと喜ぶのだろうか。

 

 

「…私は騙されない」

 

 

今し方小声で呟いた言葉を、金剛は再び口にするのであった。

 

 

「さてと、片付けも終わったことだし、私もそろそろ部屋に…」

 

 

金剛が提督室を出ようとしたとき、ふと提督室に備え付けられていた本棚に目がいった、昨日までは何も無かったのにいつの間にやら色々な本が収められている。

 

 

「あいついつの間に本なんて買ったのかしら、それか持ってきたとか?」

 

 

どんな本を持っているのだろうか、少し気になった金剛は本棚に入っている本の背表紙を目で追っていく、一通り目を通してみたが、艦娘や艤装に関する知識や基本的な戦術が書かれた教本のようだ、雑誌や漫画などの趣味に関する本も探してみたが、そういう類の本は一冊も無かった。

 

 

「これ…全部士官学校で配られる海妖学の教科書じゃない、こんな所でも新米アピールだなんて…」

 

 

いろんな意味で徹底しているヤツだ、金剛はそんな事を思いつつ、南方の机に視線をやる、机の上には私物と思わしきラジオが置かれていた。

 

 

「…そういえばラジオって聞いたこと無いわね」

 

 

南方は自室に引っ込んでいるから少なくとも翌朝までここに来ることはない、ならば少しいじってもバレはしないだろう、そう考えて金剛はラジオの電源スイッチを入れる。

 

 

『…それでは次のニュースです、来週から始まる議員選挙に伴い、各地では白熱した街頭演説が繰り広げられています』

 

 

どうやらニュース番組をやっているようだ、スピーカーからはキャスターの淡々としたニュース原稿の読み上げから一変、街頭演説とやらの弁舌が大衆の雑踏の音と共に聞こえてくる』

 

 

『私が議員になった暁には、この国を未来へ導きます!昨今の日本は旧文明の遺産(オーパーツ)の再生に躍起になるばかり!第三次世界大戦で失われた古き時代の文明はもう忘れましょう!これからは未来に目を向けて…!』

 

 

熱弁している議員らしき男の話を最後まで聞くことなく、金剛はラジオの電源を切る、ずっと鎮守府の中にいて“外の世界”を知らない金剛には演説の内容の半分も理解できなかった。

 

 

「何というか、大変なのは海軍(ここ)だけじゃないって事なのかしらね」

 

 

そう雑に片付けると、金剛は今度こそ手押し台車を押して提督室を後にした。

 

 

 




内容まだ決めてないので次回予告は無し(おい
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