艦隊これくしょんー黒から白へ変わる物語・改ー   作:きいこ

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ちなみに艦娘の容姿についてですが、特に言及していないものに関してはゲーム通りの姿となります。


第3話「着任3」

「ここが幕張鎮守府の提督室よ」

 

 

 

金剛の案内で提督室に着いた南方は中へ入ると内装を見渡す、執務机にいくつかの棚、応接用のソファと机がワンセットと、シンプルなレイアウトである。

 

 

「意外と綺麗なもんだな、もっと荒れてるかと思っていたが」

 

 

「八つ当たりとしてここで暴れてるとか思ってたの?お生憎様、ここの娘たちはそんな精神的余裕すらないのよ、むしろここで暴力や辱めを受けた艦娘の方が多いから近付きたくないってみんな言ってるわ」

 

 

「…艦娘不当接触罪が日常的に行われてたってのは本当だったんだな、全く反吐が出そうだ」

 

 

南方はそう吐き捨てるように言った、艦娘不当接触罪とは艦娘への肉体的、精神的、性的暴力を振るった者が問われる罪だ。度を超した体罰や合意の無い性的行為などが含まれる。

 

 

「善人ぶらないでくれる?提督である以上今のあんたもその括りに入ってるんだからね」

 

 

「…早くその括りから抜け出せるように頑張るよ」

 

 

いつ危険因子として殺されてもおかしくない状況だということを実感させられつつ、南方は執務机に座ってとある書類を取り出す。

 

 

「金剛、早速で悪いけどこの書類を見てほしいんだ」

 

 

「何それ?」

 

 

「事前に元帥から受け取った幕張の所属艦娘リストだよ、ここにどんな艦娘がいるかが書かれているんだが、内容に間違いがないかどうかを確認してほしい」

 

 

そう言って渡された書類を金剛は何も言わずに受け取り、内容に目を通していく。

 

 

「あんた、ペンか何か…何でもいいから筆記用具は無い?間違っているところがあるから添削してあげる」

 

 

南方は胸ポケットに入っていたボールペンを渡すと、金剛はリストに書かれているいくつかの名前に打ち消し線を引いていく。

 

 

「はい、これが今幕張鎮守府(ウチ)にいる艦娘よ」

 

 

金剛から返ってきたリストに改めて目を通す南方だったが、すぐに目を剥くことになった。

 

 

「…これ、間違いじゃないよな?」

 

 

「当たり前じゃない、逆にこんな古いリスト渡されてこっちがビックリしたわ、いつのデータよそれ」

 

 

リストに書かれていた何十体もの艦娘の名前は、そのほとんどが打ち消し線で消されていた、南方は新たに紙を取り出すと、残っていた艦娘の名前を改めて書き出していく、その結果…。

 

 

○戦艦

・金剛/金剛型1番艦

・長門/長門型1番艦

・榛名/金剛型3番艦

・大和/大和型1番艦

 

 

○空母

・加賀/加賀型1番艦

・瑞鶴/翔鶴型2番艦

・ヨークタウン/ヨークタウン級1番艦

・瑞鳳/祥鳳型2番艦

 

○重巡

・青葉/青葉型1番艦

・鳥海/高雄型4番艦

・鈴谷/最上型3番艦

 

○軽巡・雷巡

・北上/球磨型3番艦

・由良/長良型4番艦

・川内/川内形1番艦

 

○駆逐

・朝潮/朝潮型1番艦

・不知火/陽炎型2番艦

・秋月/秋月型1番艦

・神風/神風型1番艦

・雪風/陽炎型8番艦

(ほむら)/暁型6番艦

 

○潜水艦

・伊8/巡潜3型2番艦

 

○特殊艦

・明石(工作艦)

 

…以上が現状幕張鎮守府にいる艦娘という事になる。

 

 

「……………」

 

 

「何よ、頭なんか抱えちゃって」

 

 

「いや、早くも出鼻を挫かれた気がしてね、まさかこんなにも食い違いがあるとは…」

 

 

「…大本営がここの実体を把握してないんじゃないの?そもそもそのリスト、ずいぶん前の物よ、職務怠慢もいいところだわ」

 

 

金剛は呆れたように言うが、その視線はどこか泳いでいる。実はこれまでに何度か大本営の人間がここの現状調査に来ていたのだが、先程の南方のように機銃や副砲で脅迫して追い返していたのだ。

 

 

つまりリストのデータが古いのは金剛たちのせいでもあるのだが、金剛は何も言わずに黙っていた。

 

 

「…はぁ、仕方ない、とりあえずここの艦娘たちに着任の挨拶をしよう、艦娘の人材について考えるのはその後だ」

 

 

「なら私が艦娘たちに声をかけてくるわ、あんたが放送で呼んだって誰も来ないだろうし、私が集めてきてあげる」

 

 

「そうか、ならお願いするよ、ありがとう」

 

 

南方のお礼に金剛は何も言葉を返さず提督室を後にした。

 

 

「…最初はいきなり機銃を向けられて驚いたけど、こうして話してみるとなんだかんだ分かってくれるんだな」

 

 

あくまでも見極め期間だということは南方も重々承知しているが、この見極め期間自体を設けてくれている辺り、心傷(きず)付いていても根は悪い艦娘ではないのだろう。現に鎮守府に提督(にんげん)を入れたがらないのも艦娘たちのトラウマを蒸し返さないようにという仲間思いから来ているはずだ。

 

 

「…つまりそれだけ真剣に俺を見極めようとしているって事だ、なら俺もそれに応えないとな」

 

 

南方は両手で頬をパンっと叩き、改めて気合いを入れ直す。

 

 

 

 

 

「長門、榛名、ちょっといいかしら」

 

 

一方、艦娘たちを集めに行った金剛は、とある部屋の前で扉をノックし、中にいる艦娘を呼ぶ。

 

 

「どうした?金剛、何かあったのか?」

 

 

それからすぐに扉が開き、中から2体の艦娘…長門と榛名が姿を現す。

 

 

「さっき新しい提督が流れてきたわ、着任の挨拶をしたいんだって」

 

 

それを聞くと、長門と榛名は露骨に表情(かお)を歪ませる、まぁそうなるだろうなということは金剛にも分かっていた。

 

 

「またなの?最近の提督の風紀はどうなってるのかしら…、それでどうするの金剛?挨拶をするなら艦娘たちを集める必要があるけど、何体集まるか…」

 

 

鎮守府の艦娘の状況をざっと思い起こしながら榛名が言う、しかしもちろん金剛がそれを想定していないわけではない。

 

 

「実はその事で相談したいことがあるんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから15分後、艦娘が集まったという金剛の報告を聞いた南方は食堂へ向かうが、その光景に再び唖然とする。

 

 

 

「…ある程度予想はしていたが、これは重症だな」

 

 

食堂に集まったのは金剛、長門、榛名、加賀、ヨークタウンの6体のみであった、おまけにその全員が不機嫌そうな表情を隠そうともせず南方を睨みつけている。

 

 

「わざわざ出向いてきたのに何その態度は、提督って生き物はやっぱり勝手な奴ね」

 

 

南方の言葉にヨークタウンがイラついた様子で食ってかかる、長い銀髪に黒い軍服と帽子を被った艦娘だ。

 

 

(…確かにそうだな、今は集まった事だけでもありがたいと思わないと)

 

 

「…すまない、無遠慮な発言だったな、許してほしい」

 

 

南方はそう言ってヨークタウンに謝罪するが、当の本人は何も言わず南方を睨んでいる。

 

 

「では改めて、本日より幕張鎮守府へ配属となった南方彰だ、俺はここにいるみんなを救うために来た、前任がしてきたような事は俺は絶対にしない、これから同じ鎮守府の仲間としてよろしく頼む」

 

 

南方がそう言って挨拶を終えると、一番後ろに控えていた長門が前に出る。

 

 

「ではこちらかもひとつだけお前に言っておくことがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我々はお前のことを提督だと認めるつもりはない、金剛の意志を尊重して見極め期間とやらの間はお前を殺したりはしないが、お前の指揮下に入るつもりは無いぞ」

 

 

その場にいた艦娘の全員が、長門の言葉に頷いた。




次回「提督活動開始」

しかしそれは前途多難の一言に尽きるもので…
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