艦隊これくしょんー黒から白へ変わる物語・改ー   作:きいこ

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今回から話が動いたり動かなかったり。




第7話「台本」

「…………」

 

 

大和の話を一通り聞き終えた南方は何と言って良いか分からず、顔を俯かせていた。本当は何か言わなければいけないハズなのに、言葉が頭の中で浮かんでは消えていく。

 

 

 

「…私のせいなんです」

 

 

するとそんな南方の様子を察したのか、先に大和が口を開いた。

 

 

「多分あの娘たちは、みんなを守ろうとして犠牲になることを選んだんだと思います、本隊である私たちが大損害を負っている中帰投すれば、自分たちはおろか他のルームメイトの娘たちも解体されてしまう、ならここで自分たちが“盾”としての役目に殉じれば、他のみんなは守れる、そう…考えたんだと思います」

 

 

大和は消え入りそうな声で言う、おそらく“あの日”からずっと考え続けていたのだろう。

 

 

「…つまり、私たち本隊が駆逐艦たちを庇って余計なダメージを負わなければ、私がみんなを守って一緒に帰ろうだなんて考えなければこんな事には…!」

 

 

「それは違う!」

 

 

悪い方向に思考が行きそうになるのを感じ、南方が慌てて止める。こういう場合は無理矢理にでもプラス方向に思考を持って行かなければどこまでもマイナス方向にズブズブと落ちていってしまう、そう感じた南方は何とかしなければと必死に頭の中で言葉を探す。

 

 

「それは違うぞ大和、矢島は初めから駆逐艦たちを処分する気だったんだ、駆逐艦たちを守ろうとすれば大和たちのダメージが増えて盾としての役割を果たせないと判断されるし、矢島の言うとおり盾として使えば駆逐艦たちは轟沈してしまう、そして敵が強力な姫級であれば駆逐艦たちを守りつつ自分たちのダメージを極力無くす…なんて器用なことも出来るはずがない、お前は初めから矢島の作った袋小路にハメられていただけだ、お前が自責の念を負う必要なんて無い!」

 

 

「…うっ…ひぐっ…!うぅ…!!」

 

 

気付けば大和は必死に嗚咽を堪えながら泣きじゃくっていた、まるで今まで抑えていたモノが溢れ出るかのように…

 

 

「話してくれてありがとう大和、俺は矢島のように艦娘を扱うつもりは無い、何度も言うが、俺はお前たちを救うためにここに来たんだ、だからもう…そんな悲しいことを考える必要は無いんだ」

 

 

「…ううぅっ…!!うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

今まで溜め込んでいた全てを吐き出して、ぶちまけるように、大和は泣いた。

 

 

 

 

「…すみません、お見苦しい所をお見せしてしまって…」

 

 

ひとしきり泣いて落ち着きを取り戻した大和は、恥ずかしそうに顔を伏せる。

 

 

「気にする必要はないさ、こうして大和の気持ちを聞くことが出来たんだから、むしろ嬉しいよ」

 

 

「ふふっ、あなたは変わってますね」

 

 

大和は悪戯っぽく笑うと、やがて意を決したように言った。

 

 

「南方さん、いえ…提督、私はあなたの事を信じてみようと思います」

 

 

「ほ、本当か大和!?」

 

 

大和の言葉に南方はつい食い気味になって聞き返す。

 

 

「はい、こんな風に寄り添って話を聞いてくれた人はあなたが初めてです、あなたなら信じられる…そんな気になりました」

 

 

「…………」

 

 

この時、南方は嬉しさのあまり飛び上がりそうになった。最初はこちらを拒絶していた彼女が自分の声に応えて自分を信じてみようと思ってくれた、これほど嬉しいことがあるだろうか。

 

 

「ありがとう…ありがとう…!大和…!」

 

 

 

 

 

 

「…驚いたな、まさか大和があそこまで人間に心を開くとは」

 

 

「そうね、私も驚いたわ」

 

 

長門と金剛は心底驚いたように言っているが、その表情はどこか笑っているような気がした。

 

 

まるで堪えきれない感情を必死に抑えているかのように…。

 

 

 

 

「まさかふさぎ込んでた大和にあそこまで言わせるとはね、一体どんな魔法を使ったのよ?」

 

 

「俺は何もしてないさ、大和が俺を信じてくれたおかげだよ」

 

 

「ぶふっ!」

 

 

南方がそう返すと、金剛が掛け値無しに吹き出した。

 

 

「な、何だよ…何か可笑しいことを言ったか?」

 

 

「えっ!?い、いえ…あなたがあまりにもキザでカッコ付けた台詞を言うものだからつい…」

 

 

金剛はわたわたと取り繕うように言う。南方としては至極当然の事を言ったつもりだったので、少々胸中複雑になる。

 

 

「さてと、まだ時間もあることだし、もう少し艦娘たちの部屋を回ってみようかな、瑞鶴にするか他の艦娘にするか…」

 

 

「あ…!そ、そうだ南方!実は鎮守府の施設のことで相談したいことがあるのよ!悪いんだけど面会はまたの機会で良いかしら!?」

 

 

南方が次の面会の予定を立てようとすると、金剛が突然慌てたように話を持ちかけた。

 

 

「お、おぉ…?別に構わないが、どうした?やけに慌ててるようだけど…」

 

 

「じ、実は…前任が居なくなってから各種施設に管理の手が入らなくなってるのよね、そのまま使い始めて問題が起こってもアレだから、確認作業を一緒にお願いしたいのよ、あんたの着任が済んでからって思ってたんだけど、面会スケジュール組んでてすっかり忘れてて…」

 

 

金剛は“あはは…”と恥ずかしそうに事情を説明した。金剛の言うとおり工廠のシステムや入渠ドックは定期的に専門家が鎮守府まで赴いてメンテナンスをしている、しかし今の幕張鎮守府の状況を鑑みれば放置されるのも頷ける。

 

 

「…確かにそれは問題がないか見て回る必要があるな、じゃあ一度提督室で確認事項をまとめてから作業にあたるか」

 

 

「了解したわ」

 

 

南方は金剛と共に提督室へ戻るべく廊下を歩いていく。

 

 

 

その時、南方の半歩後ろで金剛がホッとしたように胸をなで下ろしていたのだが、南方がそれに気付くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…今日も色々あったな」

 

 

その日の夜、南方は自室のベッドで横になりながら今日のことを思い返していた。鎮守府の各施設の確認作業は特に目立った異常は無し、念のために近日中にメンテナンスを要請する事となったが、あの様子であればすぐに使い始めても問題ないだろう。

 

 

「それにしても、大和が心を開いてくれて本当に良かった、この調子で他の艦娘たちの心傷(キズ)も癒せれば良いんだけどな…」

 

 

今日大和から言われた言葉を思い返しながら南方は言うが、そう簡単にはいかないだろう。

 

 

「より、気を引き締めていかないとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和は無事に心を開いて南方に信用を寄せ始めた、南方はそれを受けて益々やる気になって…いやぁ滑り出しは順調順調、本当に優秀な男ね南方は」

 

 

金剛はご機嫌な様子で自室の机に向かって何やらノートに書き込んでいた、そこには今日の大和の様子や南方との受け答えがこと細かく書かれていた、どうやら面会の途中経過をまとめた物のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしそのノートには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の大和の台詞だって、全部私が考えて仕込んだ演技なのに、あいつはそれに気付きもせずに自分の手柄だと思いこんで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本っ当に優秀な主演(ピエロ)だわ」

 

 

 

 

 

 

 




次回「監督と役者」

次回から金剛視点で話を振り返ります、つまり結局進んでなかったり。

リメイクと言いましたがこの流れを止めるとは言っていないのでセーフということで。
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