AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような… 作:aF
「うーん……怪物祭、怪物祭と言いますけれど私は決して獣性が理性に屈服するのを見て万歳するわけでも、街角のカフェでのんびりと歓声を音楽に本に浸れるわけでもないんですよねぇ……」
スピネ、絶賛行動選びに迷い中。あの日から幾日かが過ぎ、ベルに特訓をつけ、アイズとの特訓を見守り、時にアイズにも教導を施して、と教導だらけの日々を送るなかで、「怪物祭」の存在を知った、というか思い出した。
下手に原作を知っているせいで遊ぶに遊びきれず、悶々としているスピネは、ひとまずヘスティアとベルに2万ほどを手渡して彼らを外へ行かせた。
その後に、ふと今日ってモンスターが脱走するとかそんな手筈だったのではー? と思い立ち冷や汗が流れたが、原作よりも三倍強い(誇張)ベルが簡単に負けることはせんだろうと思考を放棄したところであった。
その結果として、「じゃあどうすりゃいいかな」と迷うわけである。
「あそうだ、裏路地巡りでもしながらガネーシャ・ファミリアの方まで動いて原作と異なる動きをしたモンスターを排除してしまいましょうか、脱走はほぼほぼ確定事項でしょうしね……」
結論が出たらしい。
「で、ノリで来てみたはいいものの……相変わらずひっどいセンスですね【アイアムガネーシャ】……っと、もう始まりかけてるんですね?」
あまりにも珍妙奇天烈なホームと、その前に倒れ伏す2人の門番。 間違いなく魅了のそれであり、上気した頬からでも十分であった。
魅了への耐性をスピネは持ち合わせていなかったのだが、それについてはあまりにも雑な解決手段を持っていた。
「魅了……それって五感依存ですよねぇ……悲しいことに五感ってアーティファクトと『工房』さえあれば余裕で代用できるんですよね……」
そう、目と耳と鼻と……そういった情報リソースを自発的に得る手段を自ら塞ぎ、スピネのアーティファクトにより操作されるアナライズたちに周辺マップを脳内展開させた上で音、声などを機械的なものへすり替えて実際の声を聞かず姿を見ない、という強引すぎる荒業があったのだ。
で、なぜこの方法は過去形で表されたのか? というと。
実は最近、スキルを獲得したのだ。【英雄導道】(ヒロイック・テラー)という名を持つそのスキルは、自らが教え導く者に対して成長の補正を与える効果と共に、精神に対する干渉を無効化して精神を安定させる効果を与えた。
理想的な教師用のスキルのように見えてここまでピンポイントでフレイヤメタになるのもなかなかないものなので例の転生神の作為を感じそうになったのだが、おかげでやりやすくなるだろうことは想像に固くないのでありがたく受け取ることにしたのだ。
ステータス自体も伸びに伸び、恐らくは偉業さえ果たせばレベルアップもできるかもしれないとはヘスティアの言葉だが、恐らくかなり難しいだろうなと察しはついていた。
そうしているうちに、モンスターの檻が数多置かれ、全て空になっている倉庫へとたどり着く。
「っと……そんなくだらないこと考えてる暇はありませんでしたね……」
「そこでなにをしていたんですか美の女神フレイヤ、答えなさい」
そこにいたのはまさしく絶世の美女と呼ぶに相応しい存在。焔を思わせるドレスに身を包み、神威と呼ばれる圧の中に確かに不思議な香が舞っている。
「そういう貴方は何者なのかしら?」
「ヘスティア・ファミリア所属、スピネ・モデスト」
「そう……スピネ、貴方は空っぽ、なんにもない……私が見るにもそうなのだから貴方も空虚を感じるのではなくて?」
「貴女、質が悪いですねぇ……嫌われますよ?」
自分が一番わかっているのだ、自分が空で、人任せで、無責任で。そんなことは、社畜時代から知っている。変えようとも、思わなかった。だから、どうでもいい。切り捨てろ、そんな思いは。
「でまあ、質問に答えてくださいな」
「あらつまらない……見ての通りよ? そしてわかったところでどうするつもりなのかしら」
「別にどうも? 答え合わせみたいなものですから」
お互いにつかめない会話が続く中、一言で空気が張り詰めた。
「貴方みたいな空虚、輝きの側には不相応。あの子の憧憬のひとつが貴方なんてとてもじゃないけれど許せはしないわ?」
「私が憧憬の片割れですか、とんでもない憧れを抱かれた物ですね……で、私の背後から近づく獣のような気配、剥き出しの闘志の持ち主さんはなんの御用で?」
キィン!! と弾ける火花、剣が立てる音。
「我が主神の命だ……悪く思うな……よ!!」
「さすがに無理なものは無理ですっ!!」
派手に弾き飛ばされたエッジアーティファクト、振り下ろされ切った大剣。2mほどの巨身から剣気を振り撒くその姿まさしく【都市最強】。
「貴方の主神は……消えちゃいましたね」
「それが俺の役目だ、ここでお前を滅することもまたそうだが」
「そう簡単に行くと思います? 【ゲートオープン】」
並び立ち攻撃を開始するアーティファクトに対して【猛者】の行動はただひとつ、ロキ・ファミリアの焼き直し、されどそこは絶対強者。床を切り上げ盾として……そのまま剣を振るってアーティファクトの中へ、絶対的な剣撃の前に粉微塵に散るアーティファクトたち。
「ぬぅぅぅぅぁぁぁあ!!!」
「なんという暴力、笑うしかないですね?」
「次は貴様だ!!」
「そう甘くはないと……言ったはずです!」
黄金の盾が割って入り、その攻撃を受け止め散った。
「仕切り直しです」
「フレイヤ様は仰られた、お前は輝きの側に要らず、お前は孤独がよく似合うと。よくわかるぞ、貴様のソレには俺たちが武器を使い込むような、愛着がない。武器すらもお前を愛さぬ、武器をお前は愛さぬ。どうしてお前が孤独以外の場にあれようか」
「それでいいんです、どこまでも私は独りで」
けれど。
「彼の側に不要という言葉だけは……少々放っておけない」
「自ら孤独を望むというのになにを言うのだ?」
「彼に乞われた、彼に誓った、あの子は私が輝かせる宝石の原石、であるならば」
──―例え美の女神とて、触れること能わず。
「俺の前でフレイヤ様を引き合いに出すとは言ってくれる、後悔するなよ……!」
「【近代進化機械外装:音速機構】……それはこちらの台詞です、あなたの主神に告げなくてはね」
2人の間に静寂が満ちる。そして、激突。
「「おぉぉぉおぉぉぉぉ!!」」
「ハァァァ!!」
「せいっ!!」
力負けする、とっさに武装をパージし砲口を向け四連射。剣の腹で受け止められた。
そのまま反動を利用して高速機動を行い……
「【ロードオメテクトル】!!」
「ぬぅぅぅぅぅおおおぉお!!!!」
有り得ないことに、光と剣が拮抗し、消し飛ばされた。
「そんな馬鹿な、脳筋すぎるでしょう!? 単純に光の砲撃に力で勝つってどんな生命体なんですか!!」
「【都市最強】だ、舐めてくれるなよ」
「【都市最強】がゴリラの称号にしか見えない……!」
戦局は途端にオッタル有利へ。
「【猛者】、場所変えです。ついてこれますか!?」
「追わせてもらう、俺は戦の猪故に」
混乱する街中を駆ける。空を駆け、時折砲撃を加える。オッタルはオッタルで屋根上やら壁やらを利用して追いながら、俺の放った弾を利用して周囲の花のようなモンスターを斬り飛ばしていた。
てんやわんやしているがゆえに誰も門破りが行われたことなど気づかない。オラリオを抜け少し離れた平野へと到達し待つ。
「おぉぉぉおぉぉぉぉ!! ハァァァ!!」
「ふはっ! 本当に追ってくるなんて!」
「まだ戦いは終わらぬ故な!!」
「ここからは……自重なし、本気で行こうじゃないか【猛者】……そのためにここを選んだ、生きるか死ぬか、上等だ!!」
「望むところだ……!!!」
2人の雄が立つ。かたや【都市最強】と言われてもなお研鑽を続けた剣士。かたや未だ名を持たず、道化の神とその眷族に勝利を刻み付けた技師。
互いに全力の走り、下から掬うオッタルの巨剣と上から振るうスピネの【神剣】が衝突する。
「「ッ!!」」
互いに異様な重みを感じ、再度激突。次は横に薙がれた神剣を巨剣が盾として受け、そのままに剣を手放したオッタルがその身から膂力の塊たる蹴りを放つ。
それに対して【音速の機構】のバーニアをふかし、風圧を浴びせながら急速なバックで離脱する。
オッタルが剣を取り構え直すのと、スピネが着地して体勢を整えたのは同時。
オッタルが突撃し……スピネは。
「【ゲートオープン】【オートメーション】【アーティファクトコール】軛を外せ古代の先駆! 【機構の解放】新生しろ友よ! 【パラダイムシフト】!!」
アーティファクトを展開する択をとった。
「一斉掃射ッ!!」
「ぬぅおぁ!!? だが!!」
「ありがとうプロテクト……助かった」
一斉掃射の弾幕に晒されながらも大剣を投げこちらへの致命を狙う【猛者】に瞠目する。
大剣の投擲を無力化し堕ちた黄金に目を向けることなく感謝のみを述べる。
「雑兵ごときが群がろうが無駄だ……!!」
次から次へと倒れゆくアーティファクト、光を増す神剣。
「そろそろ……こちらから行きます!!」
「来ぉぉぉぉぉい!!」
「神剣能力解放コード……【ダインスレイブ】! 失われた先駆の命! 無駄にはしない……!!」
神剣の能力。本来同族を守るための剣であるがゆえに、同族を犯す者へ絶対の一撃を加えんとする強化能力。そこへ加わるは星の光、故に絶対の一合となるだろう。
「ふはっ……ふははははっ!! 良い! 俺も錆びていたようだ、剣から錆びが浮き……取れて! 俺は俺自身を取り戻した!!」
「【猛者】……いやオッタル!! 次の一合で勝敗を決しましょう……!!!」
「良いだろう!! 受けて立つぞ!!」
2人の剣気が高まる、まさしく神話の決闘、英雄の激突。
「【星となって散りたる友に捧ぐは我が至高の剣】……【調和を以て為すは絶対の正義、顕現するは正義の番人。悪徳、美徳、傲慢、謙虚。天の七つの美徳を以て地の七つの悪徳を討ち、人は満ち足りるを知る】」
「【銀月の慈悲、黄金の原野、この身は戦の猛猪を拝命せし。駆け抜けよ、女神の真意を乗せて】」
「宣誓コード解放……【プシュコマキア】! ここに詠唱は結実する……【ステラカリバーン】!!」
「【ヒルディスヴィーニ】ィ!!!」
【プシュコマキア】の宣誓により、この世に滅んだはずの機構神、その遠き似姿が具現する。その身から放たれた神々しき光がスピネを包み、その存在……【アブソリュート・モデスト】が幾本にも放たれ、スピネの前に収束してただ一本となった特大の光砲を放った時。
道化の神、閉ざす者の眷族を穿ち決め手となった一撃が、その光を追うように、まざりあって駆ける。
【猛者】は、ただ信じている。己の一撃が、『アレ』を砕くのだと。勝つのは、女神に寵愛されし己であると。
階層主たるウダイオスと呼ばれるモンスターを一撃で砕ききる絶技が、ここに放たれた。
衝突の轟音は、オラリオにも轟く程で。
「「………………」」
互いの技を、互いの技が喰らった。まさしくそういうべき奇跡だった。互いに突きつけた武器、特大の大剣は少しでも動かせば容易にスピネの首を裂くだろうが、そうなれば自らの方へ未だ向けられる彼の腕と腰の砲を受け、吹き飛ばされるにちがいない。
オッタルは、そう考えて、剣を下ろす。
同時に、スピネもその身に纏った白鎧を送り返す。
「今回は……引き分けか」
「決着……つきませんでしたしね」
「また戦う機会もあるだろうな、我が主神のことだ」
「どうでしょう、もう戦うことはない気がしますよ」
不思議な満たされたような感覚が今のスピネとオッタルでは共有されていた。
「それはなぜだ……?」
「孤独ではなくなったからですよ。勝敗で物事を推し量れなくなって」
「そうか、対等……俺もまた欲しかったことを思い出したぞ。【都市最強】である限り、対等な競う友が……あの街には居なかったことを改めて思い出した」
どうあがこうが虚であることからは抜け出せない。それでいい。そこが俺の居場所? それでもいい。
「今度酒でも飲みましょう、オッタル」
「フレイヤ様の警護に当たらねばならんが……まあ、他のものに任せられる日があれば、必ず赴こう」
──―我が戦友、スピネ。
あぁ、と。対等な人間を知る、見つける。それはこんなにも満たされるのだと、気付いた。なにもない虚な心が、小さい火だけが灯るなにもない空間へ。0と1、その差は大きいと誰かは言う。
2人の雄は引き分けて、勝ち負けで得られぬ友を得た。それは2人の雄にとって、勝つことよりもなお勝ちだと思えた瞬間だった、と後に2人は述懐した。
それを天に最も近い塔から見守る神1人。
「虚な子が輝きを得ることはない、でもオッタルの力で灯された灯火はきっと消えない」
「なにもない子は壊れてしまいやすい。あんな美しい輝きを、あんなに大きく放つ子の側で壊れてしまえば輝きがくすむ……それだけはダメだったから、オッタルを差し向けたのに」
「まさか仲良しこよしで火が燃えるとは思わなかったわ……想定外も想定外、ね」
「虚な子もなにもない場所に火ひとつとはいえやっと物を心に置けるようになったみたいだし結果的には良かったのかしら……」
「とりあえず……オッタルにはすこし休みをあげようかしら?」
どういった意味か、彼女はため息をひとつついて。煌めく星空の下、自分の子に対する労いの言葉と、どのくらいオッタルを任から外すかを考え始めたのであった。
いつも感想、評価ありがとうございます。心の励みになっておりますのでこれからもよろしくお願いいたします。
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これからも出してええんやで(寛容)
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オリキャラ2人はいかんやろがい!