AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような… 作:aF
ベル、アイズとの鍛練を終えたスピネは、ダンジョン入り口付近までやってきていた。階層主ゴライアスの復活予定日は今日であるという情報の元、ハイパースピードマラソンをオッタルと敢行する予定を昨日2人で立てていたのだが、それの合流場所というのがダンジョン入口付近の広場の噴水であったのだ。
「あ、お待たせしてしまいましたかね? 申し訳ない」
「待ってなどいない、不足気味のポーションを手に入れるためさっきまで店回りの最中だった」
「結局早く【戦いの野】を出てきてくれたのは変わらないですよね?」
「お前とダンジョンへ赴くのはファミリアの者とは違う喜びがある、つい逸ってしまった」
「それはそれは、ありがたいありがたいっと」
2人は無事に合流すると、互いに持つモノを入念に確かめる。なにも問題がないとわかり、頷き合ってから、
「ではスピネ。今日のお前のダンジョンに潜る上での課題はなにか聞かせて貰おうか?」
「昨日あなたと別れるまでは剣の技磨きだったんですが……ちょっと話が変わりまして、新たなスキルを得たのでそれの運用試験をしようかと。かくいうそちらは?」
「いつも通りだ。剣を鈍らせる訳にはいかんゆえ技、力に満ちた剣を振るうことに終始するだろうな」
互いの課題を確認する。ダンジョンの中層や上層をメインに据えてただ潜るとオーバーキルになりがちな2人であったが、課題を定めて動くことで実践的な学びをしつつ18階層のリヴィラなどで2人で打ち合う訓練をして高めあうと言ったことが可能となり2人はより一層強さを増していた。
「新たなスキルとやらは何が出来る」
「機械の触手を呼び出し使役するといった感じです。アーティファクトと同時に運用することで制圧力が高まりましたよ」
「そうか……今日の打ち合いも刺激が強いものになりそうだ」
ダンジョンに潜り始めてからまだ一時間ほどだが、レディミス式飛行移動により2人は既に12階層を駆け抜けていた。
「いつ乗ってもこの飛ぶものだけは慣れる気がせんぞ……」
「そう言いながら武器振って定期的にモンスターを土に調和させるのは説得力なくなる奴ですよ?」
「お前もお前だ、なぜインファントドラゴンの死体を機械に運ばせているのだ……?」
「お昼ごはんですよ?」
「は?」
「え?」
さて、スピネの貴重な趣味のひとつは料理である。これには酒のツマミ、自炊しなければならないという必要に駆られた、大学で特に意味もなく調理師資格を取ったという3つの要因が絡み合っている。
そして物を無制限に持ち込めるという『工房』による運搬のインフレを受け、最初は地上で作った自作の料理を持ち込んでいたのだ。が、ある日。
「ミノタウロス……もしかして食える?」
控えめに言ってイカれている思考であったが、気付いただけでは無価値、実行しなければわからないという信念に基づきミノタウロスを解体、血抜きしムッキムキな筋肉部や、その奥の柔らかい部位をそれぞれ焼いて喰らって一言。
「いやおいしっ!? 筋肉部、筋特有の臭みが全然ないじゃないですか……それに柔らかい部位はそれこそ和牛クラスです、よく動き引き締まった筋肉を持つ生命体とは思えないほどの美味……!」
脂がほどよく乗っていてくどくない。それでいて濃厚な肉の暴力的な旨味を舌に叩き込んでおり、持ち込んだ岩塩との相性は抜群である。とっさに【万能者】に金を積んで依頼、製作してもらった炊飯器から米を出し喰ってまた肉をつつく。
ミノタウロスが予想の三千倍旨かった、それはスピネの食への探求心を爆発させた。ダンジョンの【食糧庫】とは彼にとって食える奴が集まる楽園に近づきつつある、モンスターの餌があるから【食糧庫】? 否、モンスターが食糧だから【食糧庫】。
そしていろいろなモンスターを喰らってわかったことは以下のとおりだ。
魔石をブレイクしても消えなくする条件は【調理する】こと。なにを基準にしているかは不明。魚のモンスターは内臓を取り除いておろした時点で魔石を砕いても消えなかったが、牛にk……ミノタウロスは火を通さなければ消える。
あくまで料理として完成している、と認められる必要があるのか、と考察したが彼にはよくわからなかった。
また、口に入って咀嚼してしまえば消えることはない。これは【食べる】行為が基準になっているのであろう。
ここまで考えて、自分以外にモンスターを食おうとする人類がいないことに気付いて無言で手元のメモを仕舞い込んだスピネだった。
「昼飯だと? インファントドラゴンが、か!?」
「ドラゴン種共通ですが……尻尾の肉が旨いんですよ……ボリューミーで脂が乗ってて……ふふふふふっ……!」
「そ……そこまで言うなら俺にも分けてもらおうか……」
「お任せあれ! モンスターの調理! スピネ・モデストが請け負った!!」
テンションがぶっ壊れているのはドラゴンの肉があまりにも旨いことを改めて思い出したからだろう。
「~♪」
「参った、俺の目が可笑しくなったか? どうにもこの骨を中心として火の上で回されている肉が旨そうだ」
「~♪ 上手に焼けました~!! っと、オッタルさんはいい目を持ってると思いますよ? これで焼き上がりです」
18階層までたどり着いたスピネはインファントドラゴンの尻尾の肉を、野性的に丸焼きにしたそれと、丹念に処理されいくらかの香辛料と野菜とともに炒められたそれに調理し、オッタルは呆然とその調理を見ていた。あれよあれよと品がならび、米が現れて気がつけば食事である。
「それでは食べましょうオッタルさん、いただきまーす!」
「あ、あぁ……我が主神に此度の糧の恵みを感謝致します、いただきます」
2人はそれぞれに食べ始めたわけだが。
「むっ!? なんだこれは!? これが、これがモンスターの肉だと言うのか……信じられん旨さだ!」
「おぉっ♪ やっぱりメレンの塩を買って良かった……! 岩塩では負けてしまいます、なんという肉汁でしょう! おいしっ!」
「……肉の圧倒的な旨味が葉野菜と絡まり俺に米を食え、と訴えるようだ……スピネ、おかわりなど頂戴できるだろうか?」
「気に入っていただけたようでなにより! もちろんここに米のおかわりがありますよ、はい」
「ありがたい」
結果として魔物を食として見れる人物が一人増えることになったのは言うまでもない。
「いやまさかスピネがここまで料理が上手いとはな、これほどの飯を喰って訓練してよく眠るのなら成長するに決まっている、ベル・クラネルの将来が楽しみだ」
「そうですね、彼は羽ばたけますよきっと。それこそ貴方の主神の目が眷族に向かなくなりそうです」
「大丈夫だ、あのお方に限ってそれはないはず……ないだろう、きっとないと信じよう」
【フレイヤ・ファミリア】団長兼護衛オッタルは、将来ある若者の未来を見る先に一瞬不安を抱いた自分に驚くも即座に己を取り戻しスピネに頼みごとをした。
「スピネ、いつかでいい。【戦いの野】に来て腕を振るってくれないか」
「構いませんよー? 彼らの中でこれが嫌い、苦手というものがある人がいるなら、それとなーく聞き出して伝えてくれれば、配慮するなり好きになれる献立作るなりしますからそれだけお願いしますね?」
「あぁ、わかった」
料理は全てに通ずる一芸だ、これは間違いないなとスピネはふとそう思った。最初の触手を用いた戦闘の確立などという目的をすっかりまるごと忘れて先に進みながら。
それに気付いたのは帰った後、なにかを忘れたような気がしてもやもやした頭の中で今日はもともとなにをと考えてすぐであった。
「あぁ……忘れてましたがまあ……なんだかんだ無意識で使う程度には使いましたからいいですかね?」
そんなことよりも飯である。英傑を導く先導者は今日も彼にとっての理想の栄養が含まれる飯を食わせてやるべく献立を考え出した。
というわけでシリアスは抜けたのでシリアル回です。オッタルとダンジョンデート(違)回でもあります。
なにげに気がついたら10000UAを越えていてとても嬉しく思います。いつも本当に拙作をご覧いただきありがとうございます!!
普通に考えて(スピネの外見が女の子よりだから)知らないファミリアの娘に飯作られてる【猛者】って異常が過ぎますよね。
次回、『因縁を飛び越えるのはいつだって食文化』
シリアル予定!!
オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…
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これからも出してええんやで(寛容)
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