AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような…   作:aF

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今回は長く、普段の倍の6000字くらい書いてしまいましたがそれが勢いというものです。


第十八話 強襲、【強竜】

 あの食いに食い、腹のはちきれんばかりに飯を食う三人をにこやかに見守った宴から何日だろうか。スピネはオッタルとダンジョンの深くへと潜っていた。

 

「始動、展開……発動! どうせやるなら全力で! 【天地侵攻】!」

 

 現れた遮断の触手が攻撃を防ぎ、その隙を逃さんと言わんばかりにうねる蹂躙の触手が骨でできたそのモンスターの腕へと食らい付く。さらに怒りに身を任せ離脱する触手へ攻撃を加えようとしたそれは目の前の光の束……レディアントの砲撃を見逃した。

 

「GuGYAAaaa!!!??」

「骨とて痛みはあるのですか、なんとも不思議なことですけれど……考えてはいけないものでしょうね」

「なんだこれは……凄まじい、いいスキルを手に入れたようだな」

「かくいうオッタルさんは未発表とはいえレベル8に到達したらしいじゃないですか?」

「誰から聞いたんだ……」

 

 オッタル、レベル8の境地に至る。それは密やかに囁かれる噂話でも話題としてあがっていないほどには隠されたものなのだが。

 

「フレイヤ様が嬉しそうに語ってくださいました」

「フレイヤ様……」

 

 彼もまた、胃薬が必要になる日が近いのかも知れないが、この場において最も哀れなのは間違いなく雑談ついでに「その場から動かない」「剣を生やす能力は遮断でほんとに遮断できる」「そもそも数でAFに勝つとか不可能だから」「もう勝負ついてるから」という理由から一方的にボコられている階層主のウダイオスだ。

 

 なんなら黒かったりするのだが、全く関係ない。動けないなら関係ない。なぜか湧き時間を無視して早く湧いた黒いウダイオスの原因が自分にあるかどうかは知らないが強敵が湧いたと聞いてかけつけたスピネは、ウダイオスの性質を理解したあと一言言い放ったのだ。

 

「うん、今から暇ですし雑談でもしましょう!」と。

 

 冗談だろうとオッタルが考えているうちにパターンハメのような状態に黒いウダイオスが追い込まれていたのだ。巨大な黒剣の、骨兵を巻き込んでの重厚な一撃も、「パターン崩さないで貰えます?」と言いながら彼が飛ばした黄金の盾が防いでしまった。

 

 もはやなにかすることさえ許されなかった黒いウダイオスが消滅するまで、そう長い時間はかからなかった。

 

 

 

「さらばウダイオス! できればぶちギレすぎて転生しないでくださいね!!」

「あぁ【異端児】か……ベル・クラネルも災難だな、あのような者に目をつけられるとは」

「誰があのような者、だ」

「む」

「あっ」

 

 のっしのっしと足音がして、振り返って見ればそこにはミノタウロス。されど普通のミノタウロスとは異なる理性を宿す瞳がある。厳密に言えば、ミノタウロスの近縁らしいブラックライノスの【異端児】な彼。

 

「こんにちはアステリオス」

「久しいな、雷光の名を持つ精良な武人」

「あぁ、ふたりとも無事でなによりだ。スピネ殿、我が憧憬は……?」

「英雄に向け、一歩踏み出したというところでしょう」

 

 スピネの黙認の元オッタルに育てられ、ベルと死闘を演じたミノタウロスは、高い知性と理性持つモンスター、通称【異端児】の最高戦力の片割れへと転生した。その名はベル・クラネルの切り札にして最後の一撃の炎雷より転じて雷光を意味する、アステリオスという。

 

 ちなみにオッタルが彼らを知っているのは、フレイヤがオッタルに「ダンジョンの中で日夜輝き続ける魂があるから調べて」と命じ、スピネにそれの手がかりがないかと聞いたもののスピネも首を傾げ、2人でダンジョンアタックをしてみたところ未発見領域を発見。そこにいる【異端児】たちと接触したためである。

 

 現状【フレイヤ・ファミリア】、【ヘスティア・ファミリア】の主神とオッタル、スピネ。それにいつもの裏メンツしか【異端児】については知らない。スピネがオッタルにファミリアの仲間にも口外禁止、と口止めをしたためである。

 

「そうか……我が憧憬が我が前に次に立つのはいつになるやら、期待が増す」

「ところで……スピネ、あの娘は?」

「うわ待って、前アステリオスが言ってた子ですよね? あなたがヤバイって言ってた子ですよね? 来るなら私逃げますよ!?」

「手遅れだスピネ殿、強いて言うなれば早いか遅いかだろうよ」

 

 バサリ、と翼が空気を打つ音がする。異様なまでの圧が彼らを襲い……それは攻勢をかけようとして。

 

「助けて遮断!!!」

「そんなのありなのです!? へぶんっ!!」

「いや……怖すぎる……」

 

 遮断の触手により弾かれ地に転がる。

 

「……なんだ、この娘は」

「オッタル殿、スピネ殿。紹介しよう、我らが【異端児】の最高戦力。ヴィーヴルの突然変異種、兼ねて強化種という怪物じみた器に転じた泉を守る竜、名を白黒より転じて……」

「アーテルバス、みんなはアデルって呼ぶけどね!」

「あなたが空に焦がれず人に焦がれる異端の異端児のもう片方でしたか」

「そー。私はね……ずっとあなたと会える日を待ってたんだよ?」

 

 一番最初に己の力を試すため、己の力を以て撃滅した一頭のカドモスがいた。彼女は、そのカドモスの生まれ変わりなのだとそう語り、聞くスピネに言葉を続ける。

 

「あの日私の前に立ったあなたを迎え撃とうとして、私は負けた。抵抗さえ許されず、一方的に屠られた。強竜、その名を示すことさえ許されず、貫かれた……」

 

 そうだ、あの時の竜はそうだった。レディアントの光に貫かれ、何が起こったかもわからず、【アーティファクトネメシス】の前に命を落とした。

 

「それが、なによりも悔しかった。竜として戦うことができない弱い私が不甲斐なかった。再戦を、強くなって再びあの白黒の前に立とうって、決めた」

 

 スピネはその言葉を聞いても、無言を貫いた。その重さに、当時の自分の考えていたことを思いだして気まずくなったわけではない。

 

「再戦だよスピネ・モデスト。守る泉はもうないけれど……守れなかった竜の誇り、それを取り戻してみせる!!」

「くくっ……ははっ!! いいですよ、望むところだ……アステリオスでさえあんなに強かったんです、私を越える、打ち倒す、そのためだけに生を得たあなたがどれほどか……楽しみでならない!」

「ふむ、では俺が審判を。アステリオス、お前は死なぬように制止の役を任せてもいいか?」

「構わん」

 

 オッタルとアステリオスはウダイオスのいたそのルームの脇へと避け、アデルとスピネが対峙する。

 

「致命傷は避けろ。気絶するか降伏により勝敗がつけば終わりとする」

「わかりました、よろしくお願いしますねオッタル」

「やっと……やっと願いが叶う……ありがとう、猪の人」

 

 2人はそれぞれに構える。スピネは両腕を広げ、触手とアーティファクトを呼び出した。一方のアデルは『白い天使のような』翼を広げ……『6枚へと増やした』。

 

「なっ……」

「私は突然変異種……神に仇なすこの迷宮で神に仕える天使を模す特異な翼を三対六枚持つ者!」

「なるほど、なるほど……セラフィムですか、また面白いものだ……心疼く」

 

 オッタルに合図を任せた2人は、時を待つ。すぐに時は訪れた、それはオッタルの声。

 

「それでは……始め!!」

 

「「……はっ!!」」

 

 轟音が鳴り響く。アデルの手にはなにもない、しかしその身は竜人なれば爪は武器である。それと打ち合ったのはエンシェント、粉々に砕けて消えるそれに目を向けず、次から次へとアーティファクトを操る。

 

「甘い甘い、あのときみたいに強く! あのときみたいな光が見たいんだ!!」

「お望みですか、では叶えましょう! 【機構の解放】……!!」

 

 光がアーティファクトたちに纏わりつき、より一層の強化を施す。そして対するアデルは。

 

「【六翼ありて聖なるかなと謳う愚者よ、この身は獣。その証明に謳われた翼を以て示そう、我が夢を追うために翼よ変じよ】」

「ふくっ! ははっ!! 詠唱……! そうです! そうこなくては私に勝つなどそれこそ夢のまた夢!」

 

「バカな! 仮にも知性があるとはいえ! モンスターが魔法だと!!」

「落ち着いてくれ、あれが奴が最高戦力たる所以。特異な、恐らく奴にしか使えぬ特殊な魔法。名を……」

 

「「【熾天竜の片翼】」」

 

 詠唱が結実する。三対六枚のその翼が消え、彼女の背に新たに翼が現れる。それは赤く紅く朱く、暗く黒い『対ですらない一枚だけの翼』。

 

 ふと見渡せば六枚の翼がフワリと浮かんでいた。それらは宙で集まり、空中で剣を作り出す。

 

「それは……?」

「聖剣、とでも言うべきなのかな? それとも私が持つがゆえに魔剣? 銘は【セラフィムウィング】、翼より出でて共に夢見る私の剣!」

「素晴らしい……続きと行きましょう」

 

 実際のところ、スピネの戦闘スタイルはひとつの言葉に表され、それは【器用万能】である。ひとつの戦闘スタイルに固執せず、アーティファクトの行使による静のスタイルと【音速機構】を用いた動のスタイルを使い分ける。他にもさまざまな戦術が用意され、その全てに対応できなければ潰される。それがスピネの戦いだ。

 

 しかし、アデルは仕掛けられた罠を越え、剣を振るう。アーティファクトを砕き触手を斬り光さえ弾いて己の誇りを砕いたアイツへ一撃を、と迫る。

 

「あはっ」「ふふっ」

「「ははははははははっ!!!」」

「面白い……面白いですアーテルバス! ここまで来ましたか!! あのアーティファクトの軍を抜け! 触手たちを一刀の元斬り伏せて!!」

「終わりだ……スピネ・モデスト!!」

 

 凄まじい気迫、片翼はアデルに凄まじい強化を与えている。それこそ今の彼女をステータスで表すなら、レベル8のそれよりも高くなることは間違いない。だが、それを言うならスピネもまた、とんでもない強化を残している。

 

「終わらないし終わらせない……!」

「なにそれーっ!?」

「【機構の神剣】……!!」

 

 抜刀された神剣の本来の効果により彼に倒れたアーティファクトの数に比例する強化が入る。咄嗟の対応、速度で上を行かれているという状態にスピネは笑みを浮かべた。

 

「ちぃっ!!」

「おっと! 逃がしもしない!!」

「なっ……!? 鎌……!」

 

 真紅の鎌が彼女の剣へと絡み付き、引っ張るようになっていたが、彼女は躊躇いなくセラフィムウィングを放り出して距離を取る。

 

「戻ってきて! セラフィムウィング!!」

「わぁ……素敵ですねぇ、呼び声に武器が答えますか」

「もう一度……!!」

「っと、危ないじゃ! ないっ! ですかって攻めが苛烈なんですよこん畜生!」

「あぶなっ!? ちょっちょっとまってあーっ!! ぶないなぁもう!! 喰らえーっ!!」

 

 蒼い槍が攻めるアデルを貫かんと飛翔し、アデルは複数あったそれを頬をひきつらせながら回避。手元に魔力を集め、光の束、まさしくレディアントの砲撃と酷似したそれが放たれる。

 

「本家本元はこれですから! 負けるわけにはいかないんですよねぇ!!」

「まだまだこんなもんじゃない!」

「こちらもですよ!!」

 

 最終的に光は互いを打ち消して消え、そして、最後の差し合いへ。

 

「答えてセラフィムウィング、背負った竜王も私に力を! 【黎明の光焔】!!」

「『工房』、その全てを出しきります!! 全門一斉解放!!」

 

 光が剣に収束する。それもまた、道化の眷族や都市最強と渡り合った星の力に似ていて。どこまで自分と同じ技を使うのか、自分とはこんなにも違うのにと。そう心の片隅の疑問が浮かび、それを捩じ伏せて『工房』のアーティファクトを展開、最大級にチャージした射撃を準備させる。

 

 光が剣の振りと共に放たれて、光とプロテクトが激突した。一機、また一機と障壁を貫通する光。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!」

「させない! そんな、負けるわけには、負けるわけには! 負けるわけには行かない、私は勝ちを……価値を示さなければ……!!」

 

 プロテクトが止めきれず、ついにすべてのプロテクトが吹き飛んだ。

 

「ぁ……けど! けど!!」

 

 それは絶望に近い状況。されど、諦めるには早いと己を叱咤する。

 

「私を……止めた触手……! それに……アーティファクトが攻撃を加えて……!」

 

 遮断の触手が受けきれていたらプロテクトでも受けれていた。より短い拮抗で触手は消滅する。相殺を願われ放たれた砲撃も、無意味と言わんばかりに光は迫る。

 

「でも!! それで最後!! それでもう! なにものこってないでしょーっ!?」

「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 最後の、最後の希望はあのスキルだ。できるのかできないのかではない。やるしかない。もはやアーティファクトのほぼ全てが光の前に消えた。そして、今残った蹂躙、遮断も消えようとしている。

 

 これを使った時点で、スピネの矜持としては負けだ。だけど、勝負に負けてやる気はさらさらない。

 

「だから、どうか。力を貸してくれメイシア……」

 

 えぇ、任されました♪ と。脳裏に、そんな声が響いたような気がした。そうして、私は沈む。『私』が登るのを見届けて。

 

 

 

 青い光が突如として輝き、それから少しして、極光がついに霧散した。周辺に散らばる破片は消え去らず壊れたアーティファクトたちの遺骸。

 

 霧散した光の中から現れたのは、スピネではない謎の人物。少なくともスピネはメガネ巨乳ではない。なにより服装からして異なっているのだ。しかし。

 

「これもまたスピネさんの力ですね、私がこちらに出てこれる、なんて」

「あなたは……一体?」

「私はメイシア。【粛清の英雄】などと呼ばれていたこともあります。スピネさんの心のなかに住まう魂の1つなんですよ?」

 

「スピネ……あのスキルを、使ったのか」

「あれは一体……なんだというのだ?」

「己の身体にある別の魂を己の身体に呼び出して『上書き』することで一時的に呼び出した魂に全盛期の肉体を与えて復活させるスキル……スピネは使った時点で個人的には負け、と言っていたな」

「そんなものが……」

 

「まあ、私がなんなのか、とかはいいんですよ」

「なにを……っ!!?」

 

 凄まじい剣圧。【粛清の一刀】と呼ばれる力を詠唱もなく行使しつつ剣を構えるその姿はまさしく英雄。

 

「あの力で、呼ばれた私がすることはひとつ」

「っ……こちらから行きます!!」

「勝利を、捧げましょう」

 

 リンと、剣にあるまじき音が響く。

 

 キンッと、高く鋭い音。

 

 カランと、武器が転がる音がして、再び青い光が輝く。

 

「っ……私の……負け……?」

「うぁ……燃費が悪すぎます……もう、終わりですか……」

「スピネ……」

 

 武器を弾き足で抑え、剣を首に突きつけたのは、メイシアに非ず、スピネであった。

 

「さすがに……っ、魂に合う全盛期の肉体を己の肉体に上書きする、というだけあってかっ……精神力の持ってかれようがすごいです……審判?」

「あぁ。審判たる俺、オッタルは勝者をスピネ・モデストと認める」

「あ……ごめんなさいオッタルさん、どうにか立ってますかもう……あとは……任せても?」

「あぁ、わかった」

「お願いしま……っ」

 

 どさり。【精神枯渇】を引き起こしたスピネの身体をアステリオスが支え、オッタルが持つ。

 

「大丈夫だろうが、安静な場までつれていきたいな」

「私たちの村がひとつ上にあるからそこで休ませるといいと思うよー」

「そうしてくれると我々としても彼が目覚めたとき話がしやすいしな」

「そうか、では甘えさせて貰う」

 

 猪人、ミノタウロス、竜人。スピネで繋がったものたちは、スピネのために肩を並べた。人とモンスターとが、並ぶことができるかの答えのひとつが、ここにはあるのかもしれなかった。

 




・アーテルバス(アデル)

一話で回想と能力チェックにぶち殺されたカドモスの転生した、ヴィーヴルの変異種兼強化種の【異端児】。三対六枚の神々しい翼を広げ戦闘するが、本気になれば巨大な竜の翼を背から出現、六枚の翼を剣にしてスピード、攻撃ともに莫大に上昇させ攻撃を仕掛ける。本来六枚翼の『天使形態』では翼から光を放てたりなどしたのだが、出し惜しみなしした結果出番が消えた。
レベルで表すと『天使形態』がレベル7、【熾天竜の片翼】ありでレベル8クラス。
『工房』などについて理解のないままアーティファクトのみで倒されたにも関わらず、『工房』の一部兵器の能力を受け継いでいるが、アーティファクトが『工房』ひいては管理者であったマキナの意思を内包しており、意思を覗き込んだ結果『工房』を覗けてしまったことが要因である。

本作オリジナルキャラ。名前は白を意味するアルバスと黒を意味するアーテルより。愛称のアデルはなんとなくです。また、アステリオスとアーテルバスのように対比したときに名前に似た響きを持たせたかったのも理由のひとつ。



今回の決着はかなり好き嫌いがわかれるとは思っておりますが、これからの参考としたいので感想、評価、お待ちしております。

オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…

  • これからも出してええんやで(寛容)
  • オリキャラ2人はいかんやろがい!
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