AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような… 作:aF
だってそうとしか言えないんだもん!!
「アポロンたちから今夜の宴への招待が来たんだ」
「へぇ?」
「君たち眷族を連れて行ってもいいことになっている、ふたりともダンスに心得は?」
そんな会話から1日が始まる【ヘスティア・ファミリア】。
「ダンス……まあできなくはないですよ、社交もストリートも舞踊も行けます」
「あはは……すいません、心得なんてありません……」
「ベルくんが普通だから気にしなくてもいいと思うな……」
なんでもできる男、スピネ・モデスト。趣味的にも完璧であった。これは付き合いで社交ダンスすることもないだろうと思っていたらなんだかんだ社内交友会でやることになったことや、彼がゲーセンにストレスをぶつけにいった際にやるゲームがダンス◯ボリューションだったことが影響している。
「今回の宴ではね……余興として出し物を出す必要もあるそうなんだ」
「「な、なんだってー!!」」
「ははっ……神がやることを前提としているね、曲のスコアを音楽をメインにしているこのファミリアに出してくれればとのことだ」
恐るべしアポロンと震撼するベルとそんなに私のダンスがみたいかとにこにこするスピネ。対照的ななんだってーであった。
「しっかし驚いたよ……まさか作曲までこなせるとは……」
「まあ……昔取った杵柄です」
『工房』とマキナがやってくれました。貫禄の匠クオリティである。わざわざこれをやるためだけに作った魔力カートリッジを二本も飛ばしたというのは内緒。
渡したスコアはピアノが主体となる神秘的な曲。その曲に合わせられた踊りは躍動感がありながら神秘的な雰囲気を持ち静と動が分けられ、妖艶でもあった。
その踊りを見たヘスティアとベルは、
「なんで君は女じゃないと言い張るんだい?」
「その踊りは女の人のものですよねスピネさぁん……」
との言葉を残したそうだ。相当破壊力があったらしい。
ちなみにこの振り付けをつけたスピネは「かっこよく踊れる振り付け」を目指したと述べているが、当然誰にも信じられてはいない。
「ヘスティア様、準備はできましたかー?」
「スピネくん、ま……って……?」
「どうしたんですか……は?」
「おおすごい、ベルくんのその抜けた顔久々に見ました」
驚いて絶句するのも当然だろう。わざわざスピネが【魂割朋友】の効果を用いて、肉体を【粛清の英雄・メイシア】……すなわち茶髪眼鏡巨乳のそれへと変えていたのだから。
「この間それ使ったときは魔力切れで死にかけたんだろ!? なんでわざわざ……!?」
「スピネさんやっぱり女の人だったんじゃ……」
「はーい、ベル・クラネルくんSANチェックですね!」
「君のせいだろう!?」
「あ、魔力に関しては魂の入れ替えとそれによる全盛期の力の行使に八割の魔力を使っていることが判明したのでメイシアに任せたりしなければ大丈夫です!!」
「なんというか……リリが聞いたらキレそうですね……」
リリルカ・アーデの十八番、【シンダー・エラ】と似たような使用法もできる、という事実にドン引くベル。
【シンダー・エラ】はスパイ的運用も可能なのでそこで区別がついているが、普段の変装、という用法で見ればそうかわりないあたりリリルカはキレていいと思うベル。
「普段の私含めて5パターンしかないので彼女の十八番を奪うことにはなりませんけどね流石に……」
「まあ……いいや!! ところで! その服いったいいつ買ったんだい!?」
「『工房』製ですよ? 『工房』を崇め奉れ……」
「ボクのこのドレスもベルくんのあのスーツも?」
「『工房』の特注品ですよ、素晴らしいでしょう?」
「ドン引きだよ」「なんで……?」
ヘスティアには優美な、それでいて小柄な体格から来る可愛さを押し出した白と水色を基調とし、そのアピールポイントを存分に活かした上品さを崩さない露出と金の縁取りによりアクセントを加えられ、フリルも多少ある華やかなドレスを。
ベルにはその目の赤を基調とした深い赤を持つアクセントとして緑の徽章が襟元についたコートと深い黒のズボンで構成されたスーツの一式を。
スピネ本人は、己の主神のドレスを踏襲する形で白と深い青を基調とした清楚な印象を与える素肌の露出が限りなく低いワンピースに近いドレス。スカート部分からは絶対領域を完備したストッキングを着用している。縁は銀で飾られ、ヘスティアと踊ることでヘスティアを引き立てる役を果たすだろう。
今使っている体が女性の体であると言っても、心が自称男性である人物が着るにはあまりにも女性に寄りすぎていた。
「スピネくん……男を諦めたのかい?」
「いや別に……強いていうなら威圧です威圧」
「威圧?」
「自分達が敵に回したはずの『男』が女になってたらクソ怖いじゃないですか」
「「確かに……」」
ちなみにスピネの本心はというと、あの太陽神が驚きドン引く面が見たいというだけだったりする。ついでに【ロキ・ファミリア】の面々やフレイヤとそれに同伴するオッタルの驚く顔も見たいのだが。
時は移ろい、夜が、宴が始まる。
「紳士淑女の諸君! よくぞこの館へ集まってくれたと感謝する! 此度の宴は趣向を変え、新たなる風を流してみようと思ったが、どうだろうか、気に入ってもらえただろうか?」
自慢の眷族を連れ、宴において他の神々らと子の良さを語る。それこそが宴の趣向なのだとアポロンは謳う。
「また今宵は招待させてもらったいくつかのファミリアからの余興もある! 楽しんでいってくれたまえ!!」
そんな台詞を吐きながらもちらっちらとベルのほうを見る目に対して、スピネはばっさりと一言。
「イヤな目線ですねぇ……ベルくん、気分悪くないですか?」
「はい……じっとりとした……なんでしょうね?」
「よーくわかる、だからこっちで決着をつけるよ」
「ヘスティア様、相手方の要求は【全て受け入れて貰っても構いません】。何があろうと勝ちますので」
「わかった、でも君たちに無茶させたくはないからそれなりの着地点を見つけよう」
「頼みます」
そうして別れようとした時。
「おーいヘスティアー!」「久しぶりね」
「げっ、ロキ、フレイヤ! それに……ヴァレン某くんと……フレイヤのところの都市最強くんじゃないか!!」
神々、襲来。と言ってもいつものメンツみたいなところはあるのでよかったよかったと胸を撫で下ろす。
「ベル……かっこ、いいよ?」
「その……アイズさんも、似合ってますよ」
「「……~っ!!」」
悶える2人の近くでは。
「お前は……あのときの女……? まさか、スピネか?」
「あら、すっかり女のそれね?」
「驚かれたようでなにより。その通りですよオッタル」
「は……はは……そんな使い道もあるのか、驚いたなどという言葉では足りぬ衝撃だ……フレイヤ様、情けない所をお見せして申し訳もなく……」
「私もとっても驚いて……感想が出てこないわ、気にすることないのよオッタル」
彼の思い通りドン引く2人に愉悦を覚えるスピネが笑っていた。
「はぁ? この子が、スピネ・モデストやと? ついに女になったんか?」
「ぇ……ベルは、渡さないよ?」
「違いますから、一時的に変わるってスキルですからね? ご安心くださいね?」
笑っていたら突然なぜか危ない想像をするアイズに咄嗟に弁明し、生を繋ごうと試みるも、ベルは渡さないの一言で終わらされてしまう悲しみを背負いロキの声を聞く。
「それはそれで残念やなぁ」
「そんなのですからリヴェリアさんにいつまでたっても退屈しないなどと言われるのですよ?」
「そんなこといっとったんか……照れるなぁ、ここにはおらんけど会場には一緒に来たしからかっておくか!」
「「褒めてない(……と思う)」」
「アイズたん!!?」
ロキ、眷族にさえ反旗を翻される。哀れであった。
「さて……いつものロキVSヘスティアの口頭勝負が始まってはいますが……そろそろ開始なんですよね、ダンスが。ほらベルくん! 誘っておいでよ!!」
「はい……スピネさん、行ってきます……!!」
そしてベルが緑のドレスに身を包むアイズにたどり着く前に、ベルの進路を塞ぐようにして薄紫のドレスの女神が立つ。
「ベル・クラネルよね? 一目見たときから、心の輝きに目を潰されたような思いだったわ……どう? 私と一曲なんて」
「女神フレイヤ様に見初められたこと、心から光栄に思います。ですが僕には夢見る憧憬がいます、その人とまず最初に踊らなかったら僕はあなたの見た輝きを失ってしまう」
「そう……そこまで想われているのね。いいわ、オッタル。引きましょう?」
「フレイヤ様のお誘いを断るか、ベル・クラネル。見事な心、称賛に値しよう。さらば、次代の英雄」
そうして、ベルは辿り着く。己の憧憬に。深く、腰を屈めて。
「アイズ・ヴァレンシュタイン。僕と、どうか一曲を共に」
「……っよろこんで!」
花の笑みが咲き、あたりを魅了したのは言うまでもなかった。
送り出した青年……今は淑女だが。スピネもまたロキが連れてきたであろうもう一人を探し歩む。周囲の目線をその異様に整った容姿で釘付けにしながら。
「いた……!」
「……っ、誰だ?」
警戒心を露にするリヴェリア・リヨス・アールヴの前に跪く。周りがざわつく、女と女であるがゆえにその姿勢は起こり得ないと思っているから。
「スピネ・モデスト、と申します。妖精の女王、【九魔姫】リヴェリア・リヨス・アールヴ。ひととき私と踊ってくださいますでしょうか?」
そして、周囲の者たちの感想は共通。無理だ。あのリヴェリアだ、同性とて拒絶するだろう、と。
故に。
「あぁ、お前となら良い時間が過ごせそうだ。嬉しいよ、スピネ。その誘い、よろこんでお受けする」
その答えに周囲の反応は爆発した。
「~♪」
舞踏会に相応しい優美な音楽が流れ出し、周りの見よう見まねで踊りを組み立てるベルとアイズ。
「……楽しい」
「アイズさん……?」
「こういうの、はじめてだから。とっても、嬉しい」
もう早く付き合えよ、という空気がその会話を聞いていた隣の2人から放たれていたことに気付くものはいない。
「~♪」
舞踏会に相応しい優美な音楽が流れ出し、周囲の目線を釘付けにして舞うように動くスピネとリヴェリア。
「ふふ……楽しいな、スピネ」
「私もですよ、リヴェリアさん」
「もう、さん付けはいらんよ。久々だ、人と踊るのは。心まで跳ねて……それこそ踊るようだ」
「それはなによりです」
周りの人々は、百合の花を幻視する者に溢れたという。
楽しい時間もすぐに終わる。所詮は一曲、5分足らずのわずかな時間だ。そうして流れるように時は過ぎ、余興と称される時間がやってきた。
音楽系ファミリアがド派手なオーケストラ演奏を行い凄まじい喝采を得た。
アイズ・ヴァレンシュタインがその剣技を以て舞い、美しさのある剣舞で魅了した。
オッタルが負けてはおれぬともう一人のフレイヤの付き人としてやってきたアレンと殺陣を披露し、大いに会場を沸かせる。
そして、スピネの番がやってくる。
「~♪」
曲の始まりと同時、暗くなりざわめくフロアの中で、唯一照らされる影。静謐な雰囲気を纏った、普段と異なる様子のスピネの舞いが始まるとざわめきは途端に静まった。
それは、手に取れば崩れる幻のごとく儚く、それでいて羽ばたく蝶のように美しく存在感を主張する踊り。
回転に合わせ、ドレスに施された銀の意匠が映える。動きは大きく、それでいて繊細で見ている者を魅了する。
曲が盛り上がり、蒼い光がスピネを照らす。それは暗い中に差し込む月光のようで、神秘的な雰囲気を高める。
座り込み、天へ手を伸ばし、俯く。諦めたように目元を拭い、顔を隠すと同時、蒼い光が消えて、完全な暗闇に。
すぐにアポロンたちの手により光が灯されるが、すでに凄まじい喝采を送られるはずのスピネの姿はそこになかった。
誰も、言葉を発せなかった。言葉なく動きのみで、見ていた誰もが同じ物語を共有したのだ。その凄まじさに、ただ呆然とする者もいたほどに美しく、神秘的で、目を離せないほどだったのだ。
誰かが、高らかに手を打ち始めた。みなそれに追随し、拍手が沸き起こる。それを最後に余興は終わるのであった。
そうして終わった宴の最後に、アポロンが述べる。
「改めて今日はありがとう。後日の【アポロン・ファミリア】、【ヘスティア・ファミリア】の【戦争遊戯】だが以下のルールで決定した」
ひとつ、戦闘方式はくじで決めた、【攻城戦】。ヘスティア側が攻め、アポロン側が守ること。
ひとつ、戦闘の終了条件はどちらかのファミリアの団長が戦闘不能になることのみ。ベル・クラネルか、ヒュアキントスのどちらかが倒れることによってのみ終了する。
ひとつ、ファミリア外の助っ人はオラリオ外部の者でなくてはならない。ファミリア同士で同盟を組むならばこのルールは無効。
ひとつ、ヘスティア側が負けたときは団長の【アポロン・ファミリア】への移籍。アポロン側が負けたときはヘスティア側の要求を呑む。
そして。【アポロン・ファミリア】といくつかのファミリアが同盟を組むことも同時に発表された。
それら全てを聞いた上で、スピネの答えは小揺るぎもしない。
「雑兵が何人集まろうと同じこと、アーティファクトたちが求めるのは英雄なのです。雑魚はお呼びじゃない、開幕で全滅させてあげても悪くないかもですね……!」
スピネは嗤う。足掻けよ踠けよと嘲笑う。
策謀を巡らせながら、弟子を守らんとする師はすでに太陽神にとってのラスボスへと昇華した。
「決戦の地への移動は明後日からです……調子に乗るのもそこまで、あなたたちの輝く中天はもう過ぎてます。ここから先は落陽の時、落ちろ太陽、【アポロン・ファミリア】よ」
次回!【戦争遊戯】、太陽神死す!デュエルスタンバイ!!
ソーマ・ファミリアは酒造商業系優良ファミリアになったので参戦しません。その関係でリリルカ関係のいざこざはありません。渋る神ソーマと団長に対してスピネが「リリルカの脱退を認めれば新しい酒の作り方を教える」と言い放ったことはこのスムーズな改宗に無関係ではないでしょう。
いくつかのファミリアはみんなスピネがなんなのかわかっていません。なんならアポロンは同盟により王手の上にチェックメイトかけたくらいのつもりでいます。
評価感想誤字報告ばんばんお願い致します。
皆様のおかげで気がつけばお気に入り200超え、しおり100超え、UA18000超えということで本当にありがとうございます!皆様のおかげで頑張れておりますのでどうぞこれからもよろしくお願いします!
オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…
-
これからも出してええんやで(寛容)
-
オリキャラ2人はいかんやろがい!