AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような…   作:aF

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なんだかんだスピネが優しい回。
あーんどスピネ上方修正回。


第二十二話 落陽

「勝った……兎が勝ちやがった……」

「馬鹿な……俺の財産が……」

「くっはぁ!! ざまあねぇぜ!? 大博打に見えたかよ? 俺は堅実だ、いつだってな!!」

 

 悲喜交々の叫びが木霊するオラリオにて、ヘスティアがアポロンに処罰を告げていた。

 

「くっ……わかった、街を出る。準備はいつまで許される?」

「そうだね……3日はどうかな?」

「ヘスティア、それは温いんじゃなくて?」

「いいんだよ、彼にも子はいるんだ」

「すまない……感謝、する」

 

 アポロンは全財産を没収されオラリオの外へと追放されることとなっている。与えられた3日を眷族たちに使うため、アポロンは退出していった。

 

 

 

 スピネはそれらをアナライズで監視して、彼が裏路地に入った瞬間にゲートを発動させた。

 

「神アポロン」

「っ!? ……あぁ、スピネ・モデスト……私の敗因か」

「彼は妖精ではありません。ですから貴方の手に届く花になることはありません。まあきっちり顔に傷はつけられたようですけれど」

「ふふ、顔に傷をつけたのは君だろう?」

「いいえ、私がなくとも彼らは勝っていた」

「そうか、はじめから私は負けていたか」

「街を出られるとのことで、これは餞別です」

「感謝する、これで美味な魚を君たちに卸せるかな?」

「将来算段が早いですね? 期待してますよ」

 

 スピネがアポロンに渡したのは多額の金。それは、港町にひとつ家を建て、漁業でもして暮らせる程度の額だった。元より、アポロンのその後は語られない。であれば自分が如何に干渉しようと勝手だとはスピネの言葉である。

 

 そこらでのたれ死なれても困る、非常に大きい求心力を持った彼はいずれオラリオに訪れうる危機の際に役に立つやもしれんのだ。

 

 なにより、傲慢すぎただけであって鼻を折られた今ならわりと神格者なところがあるのでちょっと手助けしたくなったのである。

 

 つまるところ、スピネの気紛れがマックスの方向に上振れたのであった。

 

 

 

 そのまま一度戻り、ベルたちを連れオラリオに帰ってきていたスピネはヘスティアと合流する。ヴェルフもリリルカも、命も眠っていたからアーティファクトの上で眠りながら運ばれることになっているが。

 

「スピネくん、ベルくん! ボクたちの勝ちだーっ!! ありがとう!!」

「いえ、スピネさんが助けてくれて、神様が見ていてくれたおかげです!」

「いやいやいや、ベルくんの勇気には助けられましたよ? あそこで私を信じるとかほんとに判断力ぴかいちですもの、それにヘスティア様も我々へ声援よ届けとしてくれていたみたいですしね」

 

 それぞれがそれぞれを褒める図であった。

 

「それで……その……」

「アポロンは全財産没収の上追放した! これでボクたちも大金持ちさ!!」

「大金持ちで思い出した……ヘスティア様、これ見てくださいな」

「え? ……あ、それ僕の通帳じゃないか」

 

 ひそかに誰よりも儲けている男がひとり。スピネ・モデストその人であった。

 

 スピネは信頼できる人たちに対して、「【ヘスティア・ファミリア】に賭けてくれ。金はこちらで出す、分け前はこちら4そちら6。どうだ?」と持ちかけていた。

 

 無論、損はない上に信頼しているスピネが「俺たちが勝つ」と宣言しているようなものなので誘われた側は少しの迷いこそあれど最終的には頷き、莫大な金額の四割を得たことによりスピネの私腹は肥えまくっていた。

 

 二桁人を丸め込んで得たその額なんと1億9000万ヴァリス。ヘスティア・ナイフの借金の95%という馬鹿げた金額である。そしてさらにスピネは「なんか二億じゃないともったいないから」と普段深層で狩りをしているがゆえのポケットマネーから足して借金完済できる額を用意してしまったのである。

 

 やってからスピネは余計なことしたかな? と思ったものの、別にそんなことはないだろうと思うことにしたのだ。ノリで用意した故の現実逃避だ。

 

「数字が+になってる……? ナイフ……完済……? 嘘でしょ……?」

「ヘスティア様、バグってますよ? キャラクターキャラクター!」

「はっ! わたしは しょうきに もどった!」

「戻れてないですよね水平チョーップ!」

「ぐはぁっ!」

「神様ぁぁぁっ!?」

 

 スピネが蹂躙するのは敵だけではない。大切な味方……神様の借金もまた、その対象であった。

 

「……イイコトシタナー」

「嘘だ……これがいいことなのかわからないけどいいことと言うには明らかに神様の被害が大きすぎる……」

 

 まあ、とにかく、ヘスティア・ファミリアの大きな枷の1つたる借金はこんなことで消滅することになったのだ。

 

 無論、翌朝起きた三人が苦笑いのベルとヘスティアから説明され、同じような表情を浮かべながら喜んだのは言うまでもない。

 

 

 

 そして四日後、アポロンが去った後で。

 

「趣味、悪いなぁ……」

「悪いですねぇ……」

「悪いね……」

「全員一致かぁ……砕きましょう!!」

 

【ヘスティア・ファミリア】としての代表……ベルと主神のヘスティア、そして存在がわりと暴力なスピネの三人で奪い取ったホームを見にきたのだが、結論は売ってしまおうということであった。

 

「でもなぁ……今のホームはちょっと……」

「上の教会を教会の意匠はそのままに改築、とかどうでしょうか?」

「ボクはそれでもいいと思うよ! スピネくん相変わらず発想力あるねぇ……」

「昔どっかでそういう建築見たことあるんですよね」

 

 それから、スピネは駆けずり回り工業系ファミリアに依頼をして、ついでに不動産にアポロンたちのホームを売却、さらにルチル・クロフォードにお風呂をつけてもらえないか頼みに行くなど凄まじい活動をしたのであった。

 

「「「「うわぁ……」」」」

「お仕事好きすぎでしょうあの方……」

「なんか笑ってる……俺が鍛治やるときよりやべぇよ……」

 

 対価としてヘスティア・ファミリア内部からはドン引きされることを彼は知らない。

 

 

 

 その日の夜。彼は改築の決まったホームの上、これから生まれ変わる教会でいつかヘスティアと話した日のように天を見上げていた。

 

「ふふ……あの神もまだ見ているのでしょうかね? まあどうでもいいです、また深く潜りましょ……」

 

 その言葉と共に、意識を『工房』へ。

 

「あら、来たのね?」

「おう、来たかよ」

「その様子だと完成したんですね?」

 

 依頼していたというか作っておきたかった新装備があり、それの進捗を確かめにきたのだが、早くも完成しているらしい。

 

「えぇ、【ダンジョン内でも使用可能な広範囲殲滅】を旨としたもの、また【機構の神剣などのアーティファクトの破壊に依存しない強襲型機】、両方ね」

「それはそれは……見てもいいですか?」

「えぇもちろん」

「俺たちの努力の結晶だ、とくと見ろ」

「ベルフォメットくん俺で統一助かります」

「うるせぇ、いいから行け! 見ろ!!」

 

 そこには、白い巨大な鎧に吊られた巨大な砲の組み合わせと、なぜか香ばしく腕を組み某ゲルマン忍者のようにして立つ黒い鎧の姿があった。

 

「鎧、ですよね?」

「「鎧だ」」

「明らかに片方ポージング決めてますよね? 鎧ですか?」

「「鎧だって」」

「ではどちらがアレで組み上げたんですか?」

「「……」」

 

 深く気にしないほうがいいらしい。

 

「で、性能なんだが」

「ノータッチ!? アレを!? アレをノータッチ!?」

「白いほうは見ての通りのビーム砲、【マグナキャノン】を用いる兵装だ。銘は【近代進化機械外装:砲撃要塞】。どうしても反動軽減とかのために本体の大きさから三メートル要求されたが……十分だろ?」

「あ……はい。まあ期待どおりのグッドな代物です!」

 

 そして肝心の黒いほうである。

 

「黒いほうは機動力及び攻撃力に特化した代物ね、銘を【近代進化機械外装:強襲黒輪】。レーザーリングブレードという特殊な兵装で近接、中距離までの戦闘を可能としているわ。一応直剣の【マグナブレード】も装備可能ね!! 【音速機構】With神剣と比較すると先もって用意したアーティファクトが全て壊されたなら【音速機構】のほうが強くなるわ、つまり強襲を仕掛けるのなら間違いなくこちらよ」

 

 とても気になる単語、レーザーリングブレードについてをスピネはマキナへ問いただす。

 

「そうですか……レーザーリングブレードについて説明を受けてもいいですか?」

「えぇもちろん! レーザーリングブレードは投げる、斬る、ビームといった用法に対応する兵装よ。ブースト部分に接続して加速も可能、加速時は【音速機構】に近い速度が出るわ!」

「それはなんとも……難しそうなモノですが」

「今までの戦闘から応用力と判断力に優れていると判断したから作ってみたわ! 一応アーティファクトととかと同様意識すれば直接操作も可能としてあるわね!」

「なるほど……とんでもない兵装が来たなぁこれは……」

 

 使いこなすのにだいぶ大変そうな武装ではあったが、確かにこれはアリだなと思っている自分にスピネは驚きつつ、2人に感謝して元の世界へ浮上、そのまま眠ることとした。

 

 

 

 オッタルは控えめに言ってドン引いていた。よく己と剣を交わらせる友、スピネの武装がある日突然黒くなっていたのもある。

 

 が、赤黒い輪が光を放ったり、彼の手に握られこちらを斬りつけたり。本来の武装なのであろう二本の剣もまた強い。防御を捨て、捨てた防御を攻勢の維持によって補うその様は普段のスピネとは異なっている。

 

 いわば、【音速機構】との戦いが武器を振り、スピネが避けるものだとするならこの【強襲黒輪】というものとの戦いは狩られる側の気分だ。

 防御に終始せざるを得ない。いつか生まれる隙を、狩られるまでその攻勢を維持される。狩人の理想は、相手になにもさせないことだ。思考を誘導し、奇策を絡めることで行動を封殺されるのだ。

 

「あなたの首もとに黒い剣とリングブレード、詰みですかね?」

「ぬぅ……参った、これで5勝4敗一分か……」

「すぐ追い付きますからね……!」

「次回は通じぬさ、しかし見事な攻勢だった。あれは新しい力か」

「そうです、ダンジョン潜りでいくらかモノにできたのでオッタルに試して対人で使えるかどうかですね」

 

 オッタルは少し考えて、スピネに良かった点をあげていく。

 

「まず、スピードとパワーが高い。スピードは【剣姫】の突きのそれに劣らず、パワーはこの俺と比較できる。それでいて手数も多く、強力だ。また、あのリングがなにより厄介だ。巨大なリングを出現、お前がそのリングとリングの間をワープするあれは……」

「【マグナドライブ】と名付けました」

「そうか、【マグナドライブ】はこちらの脳裏に焼き付くインパクトがある。あれを警戒しなければ倒されると思わせられるだけで圧だな」

「そうですか。逆に対策するとしたら?」

「それは次の一戦で見せてやろう」

 

 鍛練試合の振り返りはそれきりにして、2人はいつもどおり深層へと潜り始める。

 

 

 

 ちなみに別日に行われた試合でオッタルは【マグナドライブ】のワープスラッシュに攻撃を合わせて正面から弾き飛ばす力と技術の極みを見せた。貫禄の【都市最強】であった。スピネがドン引きしたのも言うまでもなかろう。

 

 

 




・アポロンとの会話
「妖精」→神話におけるアカンサスという妖精のこと。

アカンサスはアポロンの懸想を跳ねのけ続けた妖精である。最終的に振り払う際、アポロンの顔に傷をつけ、それが原因でアポロンが激昂。アカンサスという花にされてしまった。

・【近代進化機械外装:砲撃要塞】
マグナジャイアントを人サイズに装備した代物。でも3メートル。マグナジャイアント自体は一時期【アーティファクトネメシス】にメカニカルガンナーというキーパーツをサーチできるカードとして入っていた。

・【近代進化機械外装:強襲黒輪】
【暗黒のウェルサ】にて登場したマグナゼロを人サイズに装備した代物。こっちは二メートルくらい。現在のローテーションの【アーティファクトネメシス】にてフィニッシャーとして顔と盤面に10ダメージを飛ばす仕事をしてくれている。

ついにアーティファクトが壊れなくても戦えるようになった。アーティファクトが壊れるまで火力不足なスピネはもういない…

オッタル含む全員にドン引きされてオッタルにドン引きする回というパワーワード感、ウマ走らせるので今回はここまで!

今回もありがとうございました!感想評価よろしくお願い申し上げます!

オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…

  • これからも出してええんやで(寛容)
  • オリキャラ2人はいかんやろがい!
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