AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような…   作:aF

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理不尽に潰される神シリーズ第二弾…


第二十三話 理不尽に理不尽を重ねて理不尽を潰す

 新生した教会、新たな竈と鐘のエンブレム。それらが披露されてそろそろ一週間。スピネは仲間となった命から相談を受けていた。

 

「歓楽街に知己がいるかも……ですか?」

「はい、情けないことに私ではアプローチも取れず……」

「名前は?」

「ぁ……春姫、です」

 

 スピネは無言でアーティファクトに歓楽街へと飛ぶように指示を出し、偵察を始めた。そして、ひとりの女性へと行き着くとスピネはその光景を口頭で伝える。

 

「金髪、狐の耳、赤い着物を身に付けている」

「それが、春姫ちゃんで違いありません……! ありがとうございます、スピネさん」

「いえいえ。奪いたいなら奪いますけど、どうします?」

「そこまでご迷惑をお掛けするわけには参りません。彼女に命の危機があるならともかく、ないなら特には」

「そうですか、わかりました」

 

 そしてスピネはアナライズを歓楽街の入り口のほうへと飛ばし、偶然いたベルに忠告を入れた。

 

「うわっ!? アナライズ!?」

『ベル、歓楽街は現在割と危ないです。可及的かつ速やかに離れたほうがいいですよ』

「は、はい!!」

 

 ギリギリの助言を得たベルは振り向いて静かに歩き去るのであった。

 

 その頃、歓楽街の女神は嫌がらせを模索していた。因縁の強敵、【フレイヤ・ファミリア】への嫌がらせを。そして聞いたのだ、フレイヤのお気に入りが【ヘスティア・ファミリア】の【世界最速兎】だということを。

 

「あぁ……おい、お前。そうだ、お前だ。嫌がらせだ、罠を張る。兎の捕獲の時間だ」

 

 あまりにも利己的、理不尽な理由でターゲットにされた兎はいつだって理不尽をねじ伏せる理不尽に守られていることをイシュタルはわかっていた。

 

 だから、策を講じた。

 

 

 

 商会からの依頼を持ちかけられた、とベルはスピネに告げた。

 

「おや、奇遇ですねぇ……私は深層の素材の依頼が届いてます。ちょっと依頼の紙を拝借しますね……」

「はいこれです! 皆さん的にはどう思いますか?」

「「怪しい」」

「はいリリルカ、私と同じ判断に至った理由をどうぞ」

「普通これだけの依頼で百万出しますか?」

「同感ですね……罠と見ていいでしょうが……これはチャンス!」

 

 ここからが理不尽の象徴たるスピネポイントである。

 

「相手の全貌は? 目的は? その罠を仕掛ける意味はなに? わざわざ私を引き離すようなタイミング的にこっちも罠だと考えてしまってもいいのでしょうか?」

「ス……スピネ、様?」

「ふむぅ……決めました、ベルくん」

「は、はい!?」

「そのクエストを受けてください。また、なんらかの危機的状況に陥った際にこれ……転送門のジェムです、これを使ってください」

 

 そこでヴェルフ、己の考えていること……すなわち会議しているスピネ以外の全員が持った考えをスピネに告げる。

 

「つまり罠だとわかり、明確になんらかの行動があったらすぐ逃げるってこったか」

「いえ? 潰します」

「「「え?」」」

「あ……よくよくみたらこれ、受信用じゃないですか!!」

 

 転送門のジェム。受信側と送信側に別れており、送信側から受信側のある場所にワープが可能であるというアイテムだ。また、受信側を人が持っている状態でジェムを割ると送信側に通知が行き、受信側のジェムが割れた場所へワープ可能になる。『使う』とは、割ることであった。

 

「つまり、つまりだ。なにが起こったとしても俺たちは安全になったのか?」

「ベル様がジェムを割った瞬間、わざわざ罠まで使って引き離したスピネ様が出てくる……地獄ではないですか……?」

「いいですか? 敵が見えていないからこうしていますが見えてればもっと簡単に終わるんですよ?」

「それは……」

「頭取って揺さぶればどんな大勢力だって動けなくなります。しかもオラリオにおいて頭とは大体主神……すなわちもっとも脆弱な者です、覚えておきなさい」

「わあ、ボクの前でそれ言うかい? 事実だけどさ……!」

 

 策を講じた? それがどうした。上からねじ伏せるのが理不尽だ。策を講じてどうにかなるのならとうのとっくにスピネという存在は死んでいるはずとは本人論である。

 

 まあとにかく、これにて理不尽な襲撃に、世界一理不尽な迎撃が来ることが決まったのである。

 

 

 

 依頼の日。ベルたちを見送って、最速で深層の素材を回収。一応ガチの依頼であったら後がしんどいので三十分以内に指定された素材をふたつずつ回収していく。

 

「次は……皮!!」

「GuGYAAaaa!!!?」

 

「お前からは鱗ォ!!」

「!?!?!?」

 

「ハロー、ス◯イダーマッ」

「…………!?」

 

 道中の採集素材とモンスタードロップも数を揃えて行く。

 

 その時はそれから数十分後、スピネがダンジョンの【食糧庫】を荒らして本当の食糧庫にした後のこと。

 

 リン、リンと鈴の音が鳴り出したのだ。それは送信側のジェムの放つ光。

 

「……きた! やっぱただの依頼じゃありませんでしたね!! 名付けて……【転移救助】(ヘルプフレンズ)!!」

 

 スピネの体が青く染まり、消滅した。

 

 

 

 その頃、ダンジョン上層の【食糧庫】では、アマゾネスたちが己の獲物を以て【ヘスティア・ファミリア】を急襲していた。

 

 勝ち戦というやつだと確信していた、当たり前だ。あちらの平均レベルは2、こちらは3以上の塊だ。負ける要素などない、そう思っていた。

 

「ベル!! 使え!! これで間違いないだろう!!」

「ヴェルフ、わかってるよ! リリ!!」

「はい、ベル様!」

 

 そのやりとりと同時、地面に投げつけられたガラスのように脆い石。そして、叩きつけられた地点から退く兎。逃さん、そう思い、距離を詰めたその瞬間。

 

「「ぐっ!!?」」

「こんにちは、いいお天気ですね、死んでくれ!」

「「「なにぃっ!!?」」」

「えっどなたですか!?」

「いやほんとにだれっ!?」

 

 黒い鎧を身に纏い、絶望が君臨した。

 

 

 

 ワープを終える。向きが悪かったのか正面にベルの姿、敵は後方だと思った途端、両脇を走っていくアマゾネス2人。

 

 先んじて展開していたエッジとブリッツを一機ずつ、突っ込ませる。

 

「「ぐっ!!?」」

 

 高らかに名乗ろうとして、挨拶だけしなきゃと思い直す。

 

「こんにちは、いいお天気ですね、死んでくれ!」

 

 ダンジョンに天気はない。なんなら今日は曇りらしい。そしてスピネが曇りなことに気付くのはもう少し後であった。

 

「「「なにぃっ!!?」」」

 

 後ろから知らぬ声……

 

「えっどなた様ですか!?」

「いやほんとにだれっ!?」

 

 前からは動揺の声ってなんで……あぁ……【強襲黒輪】のせいで顔が見えないのかぁ……

 

「お待たせしました、スピネです!」

「その鎧謎すぎんだろ……前の白金のでも大概だが謎が深まってねぇか?」

「『工房』様マジ神様……そこら辺の神様よりも神様……最低でも今真後ろにいる奇襲決めようとしてるバカゾネスどものリーダーたる歓楽街の女神よりは神様」

 

 きっちりと相手の神まで見切っているスピネであったが、これには理由がある。エッジで服を切り裂き、ブリッツで貫通させて動きを止め、アナライズで背中の【恩恵】の文字の解析をしたのだ。

 

「そんなに戦いたいなら止めません、かかってきなさい」

「っ……! 私は逃げるぞ!」

「逃がさんよ」

「なっ!」

 

 おっと! 魔王からは 逃げられない! 

 

 そういうことだ。【遮断の触手】がもとあった入り口の前より生えて、道を遮断する。

 

「包囲殲滅するんだと作戦を練ったとは思うんですけどこれがカウンター包囲殲滅ということでひとつ」

「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!? アタイの完璧な作戦を邪魔しやがって! 今ここで! 死になぁぁぁ!!」

「いやぁ……金ぴか成金オーラ出しても無駄ですよヒキガエル、プロテクト!」

「お前のそれのほうがよほど金だろうが……!!」

「あなたまでそんなこと言うんです? アイシャ・ベルカ」

「なっ! 私の名前をっ!?」

 

 アイシャのプロテクトへの心からのぼやきに対してのカウンターはアナライズくん渾身の名前看破であった。

 

 金色のオーラ、言わずもがな【ウチデノコヅチ】のそれゆえに、中途半端に原作を思い出したスピネは戦いつつ彼女を探しているのだが……見つけた。あれで間違いはなかろう……と確信したと同時。

 

「こっちを見なよぉぉぉおっ!!」

「初御披露目! レーザーリングブレードっ!」

「がぁっ!!?」

「うおっ!!」

「おいおい!? スピネさんあんたどこまで鍛冶の常識を置き去りにっ……!」

 

 それを隙と思い斬りかかるフリュネ、何事か唱えるアイシャに向かい飛翔する赤く黒い円盤。スピネの手から飛ぶそれは次から次へ数を増やす。

 

「終わりにしましょ、これも公だと初御披露目!! 【マグナドライブ】! フルスロットル!!」

「はは……なんじゃ、そりゃ。魔法とかそういう次元じゃないぜ……?」

「ヴェルフ……諦めるのが正解だよ、ちょっと行ってくる」

「ベル様が何事か悟ってしまっている……! ってどこに!?」

 

 飛び回るリング。それらの間を駆け抜ける一条の赤い線が結んだ。

 

 それはすでに放たれた斬撃、取り返しのつかない一閃、都市最強をして理不尽と言わしめたその技を対応することは不可能。

 

 ただ一度交わらせることもなくその命とともに吹き飛ぶアマゾネスの剣。アイシャは咄嗟のガードからの直感回避により剣が斬られるのみで済んだが無理な動きの影響で体が硬直、首元にリングブレードが添えられる。

 

 フリュネはその身を二度三度と叩き斬られてなおその身を保ったままに吹き飛び、壁に激突し……【蹂躙の触手】が二本がかりで絞り上げるような拘束を取った。なにのせいとは言わないが二本じゃないとダメだったのだろう。

 

「あなたが、最後です。降伏を推奨します」

「っ……! 降伏を受け入れる」

「春姫さんはどこに? あの子が私の目的なので」

「……! あの兎が守っていたみたいだね、あれが春姫さ……あたしから頼む、道具としては使わないで……人としての幸せを……負けたのに願いすぎたか」

「そんなことはないですよ、望まれたが故に救い出す、それだけでしたので」

「……そうかい」

 

 そこにはベルの背中の裏に体を預けていた春姫へ駆け寄る命の姿があり、それを認めたアイシャは静かに目を閉じた。

 

 理不尽な襲撃がそれ以上の理不尽の前に屈するまで、スピネが呼び出されてわずか三分であった。

 

 

 

 どよめく街中を走ってきた1人のアマゾネスが女神に報告を求められていた。

 

「おいっ!? どうなっている!! 現状を報告しろ!!」

「それが……襲撃が失敗した様子です!!」

「なんだと……!!?」

 

 震えるイシュタル。口は悪いがレベル3が1人、残りは格下だけの雑魚相手に敗北を喫したと言うのか。

 

 怒りに震えるイシュタルの震えが、恐怖に、絶望に変わる瞬間はもうすぐとも知らず、彼女は激昂していた。

 

「」

 

 怒りに任せ口を開こうとした瞬間。異様な音が聞こえた。

 

 それは、どこかで聞いた音。具体的に言えば、つい先日神の鏡で覗いた【戦争遊戯】で死ぬほどに聞いた音。

 

 ぞっと、背筋が震え上がり、直感に従いホームへ駆け戻ろうとして……

 

「どこへ、行かれるので? 神イシュタル……」

 

 だが判断が、数秒遅かったようだった。

 

 

 

 歓楽街が燃えている、その話はギルドにまで届いた。

 

「現状を報告して!! 情報を整理!!」

「はい! チュールさん! 抗争と思われます! 対立しているのは【イシュタル・ファミリア】とどこか!」

「そんなことは彼処が燃えている時点でわかっているわ!!」

「非確定ですが……スピネ・モデストの姿を見たという者が!!」

「つまり……抗争相手は、【ヘスティア・ファミリア】!? あぁ……ベルくん、無事でいて……!」

 

 理不尽ガードが張られていてもなお、不安にはなるエイナであった。

 

 

 

「やりすぎよ、イシュタル」

「行きますか? フレイヤ様」

「えぇ、と言いたいところだけれど……私とオッタルだけで十分そうね」

「で、ですがそれでは……「見なさいオッタル」はっ……」

「あれは彼よね?」

「……間違いございません、スピネの操るアーティファクトでございます。あれがいるならば安心でしょう」

 

 そして、当然フレイヤも出る。ベルを狙われたらキレる、だってあの子は【女神の伴侶】になるんだから! 

 

 

 

 かくして、逃げるイシュタルとわざわざ歩いて鬼ごっこするスピネの元に、フレイヤとオッタル、静止するギルド職員のそれぞれがやってきていた。

 

「……なにを、しているのかしら? スピネ」

「歩いて追いかけてます」

「どうして……?」

「敵を追い込んでるのでとてもテンション上がりますよね」

「ちなみに火を放ったのは?」

「故意ではありませんでした……あまりにも逃げ回るので中庭を通れないように潰したんですがやり過ぎました」

「「えぇ……?」」

 

 時に女神よりも不条理に謎の行動をするのが理不尽クオリティ。

 

 ちなみに気絶したアマゾネスたちは現在アーティファクトにくくりつけられて十字架の状態で拘束されていたりする。窓から外を見るとそれらが見え、より一層イシュタルを追い詰めるのだ。

 

「あとは任せてしまってもいいですか?」

「えぇ、もちろん」

「じゃ、オッタル。フレイヤ様の護衛いつもご苦労様です」

「あぁ……ありがと……いや、我が使命は此のみ。だが労いを受け取ろう」

「それっぽい立ち回りするのも限界ですかね……?」

「そうかもしれないな……」

 

 オッタルのキャラ崩壊を見届けて、スピネは帰宅。主神に隠さず全てを報告して……

 

「少しは隠してよ、というかオブラートに包んでよ」

 

 と言われながらも、皆のいる場所に……わざわざ新設された食堂に、新たに救い出され仲間となった春姫が盛大に管されているだろうそこに……足を踏み入れた。

 

「ベル様……此度は本当にありがとうございます」

「お礼はスピネさんに言ってください、僕は本当になにもできなくって……」

「でも春姫を守ってくださいましたから……」

 

 そういって不思議な惚れを披露している春姫と。

 

「スピネ……あんた、男だったんだねぇ……」

 

 そう言い放ち飯を食っているアイシャの姿を認め、若干半笑いになりかけながら。

 

「えっと……?」

「あぁ、言い忘れていた……春姫を見守りたい。そのためにここに世話になることにしたんだ」

「ヘスティア様は、なんと……?」

「快く承諾してくださった、器量のある神だと思うよ」

 

 スピネは納得した。してしまった。【ベルを狙っていない】時点でヘスティアに断る理由がないことに気付いたから。

 

「心強い……仲間ではありますか……」

「役に立つさ、よろしく頼むよ」

「ちなみに改宗は……?」

「つい今さっきイシュタル様が送還されたから出来るようになっていた」

 

 フレイヤの原作通りとも言える躊躇いのないイシュタルキルが明らかになった瞬間であった。【ヘスティア・ファミリア】、合計7人となった瞬間でもあるわけだが。

 

「ま、まあ……とりあえず、作戦大成功おめでとうございます、かんぱーい!!」

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

「乾杯! ふふ……春姫、ここでなら幸せになれそうじゃないか」

 

 柔らかに笑い、肌を滑らかに進むアイシャの涙のこもる視線の先、みんなにもみくちゃにされている春姫。

 

 理不尽を押し潰した先の理想の結末はこれだろうな、となんとなくスピネは思ったのであった。

 

 

 

 

 




【ヘスティア・ファミリア】自体にアッパー調整です()

アイシャはスピネが男だと知って強い男であると認識し、狙いをスピネに定めたのでヘスティアのベルくんピンチセンサーに引っ掛かることなく入団しました。

原作でもあれだけ協力してくれるんですし入団させてあげたかったんですよね…!

今回もありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…

  • これからも出してええんやで(寛容)
  • オリキャラ2人はいかんやろがい!
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