AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような… 作:aF
「つまり……なんだ? お前はあの管理者に眠らされ自在に操られていたというのか」
「そう考えるのが最も適切だと思う、私にもわからないからなんとも言えないというのが本心だが」
「アイズと交戦し、【白髪鬼】を喰らったと聞いているが……?」
「【怪人】だったころの特性だろうな」
レヴィスへのリヴェリア、オッタルによる尋問が進むなか、スピネは暇をもて余していた。
そこでスピネはリヴェリアに願い出て、【黄昏の館】にてフィンとアイズを説得するという難易度二百那由多飛んで三万あるそれへ挑戦することにしていた。
結果から述べれば、ふたりとも渋るどころか明確に反対を突きつけており、アイズに至っては殺意マシマシであったが、アイズの求める謎への解を与えることと模擬戦闘数回に応じることでどうにか見逃してもらう、ということになったのでOKだろう。
どうにか片をつけて満足し、裏路地に入ったとたん、視線をスピネは感じ取った。肌身が粟立つような美の神の視線ではなく、刺すような視線でもない。ただ、どこからか見られているような気がして、独り言ついでに考える。
「しかし……不躾な視線だぁ……嫌な視線ではなくて……観察? じゃあ……そこかな?」
「おっと……驚かせないでくれないか、スピネ・モデスト」
「一応お久しぶりにあたるのでしょうかね、フェルズ」
「あのときは大層驚いたよ、魔術の店に通う黒ローブなどという怪しげな存在に絡みにくるとは思わなかった」
果たして現れたのは、黒いローブに身を包む骸骨。名をフェルズという。町巡り中のスピネのアナライズのスキャンに引っ掛かってしまった哀れな被害者でもある。なお他の被害者はシル・フローヴァと己を偽っての商取引を行っていたころのリリルカなのだがそれらを肝心の彼女らは知らない。
「で、魔道具発明の第一人者兼支援魔法使いのあんたがなんのご用で?」
「私はある神の側近……参謀? そんな役割を貰っていてね……そのお方との連絡口として私が派遣されたのさ」
「その神はなんと?」
「私と共に来てほしいそうだが……時間に余裕は」
「向かいますよ、フェルズ。仮に時間がなかったとしてあの神と話すより大事なものがあるとは思いません」
突如増えた予定に後でなんと言い訳しようかと考えつつ暗い通路を進み、神ウラノスが座す祈祷の間へと赴いた。
「ウラノス、連れてきた」
「お初にお目にかかる、神ウラノス。私は【ヘスティア・ファミリア】レベル7、スピネ・モデスト。以後お見知りおきを」
「名はここまで伝え来る。スピネと呼ばせてもらう、良く来てくれた。私はここに居らねばならんゆえ、わざわざの来訪を感謝しよう」
白髪の老人が座してこちらに声を張る。それに対し、オラリオに住まうものならば普通のことだと返せば、ウラノスは本題に入ることを告げる。
「【異端児】について知っているか?」
「意思持ちて怪物に非ず、されどその姿人にあらざるがゆえにどちらにも属せぬ哀れな者たち……会ったこともありますよ」
「ほう……では問おう。人と【異端児】、手を取り合える未来は作り得るか」
「難しいものでしょう。しかし……不可能ではないし成し遂げてみたい」
ウラノスにとって百点満点の答えが返され、それによりウラノスはスピネに協力を求めた。
「スピネ。願いがあるのだ」
「願い……ですか?」
「【異端児】の保護を頼みたい」
「ダンジョン内でよければ構いませんし今もやっている方策でよければ続けるつもりです」
「無論、それで構わない。今までの行動には心から感謝する」
そして、それで話が終わるのかと思えば、スピネの口から相談があるのだとふたりに声が掛けられた。
「人でありながら魔石を持ち魔石を喰らって強くなる……【怪人】……か」
「ダンジョンの奥にいた別世界の【管理者】という存在が穢れた精霊の分体を複数掌握、統合していたものを撃破、その結果【怪人】は与えられた魔石を失ったものの現在も生存しています。魔石を喰らうことはもうできない、また喰らった魔石で向上したステータスは残っています」
「レベルはいくつほどと考えられる?」
「【怪人】としての特異な身体能力が残っていない、今はただの人ですが……それでもレベル6相当が妥当かなー、と」
「そうか。そちらは我々で保護しても構わないし【ヘスティア・ファミリア】で保護してくれても構わない。今は只人なのだろう?」
「えぇ」
「ならば良い。また、ダンジョンの奥の【管理者】撃破に関しては後に……そうだな、フェルズを通して報酬を渡そう。それと……」
ウラノスはその後、内密な話をさらにひとつふたつと重ねたのちに改めて【異端児】との共存、いずれ現れるかもしれない【怪人】の受け入れをすると宣言し、その場はお開きとなった。
「遅いではないか! どこへ行っていたんだ……!」
「内緒ですよ内緒」
「あぁそうだ、フィンたちは……」
「今度模擬戦をすると言い張って黙らせました」
「なるほどな……アイズには強力な札だがフィンにも効くのか……」
そしてスピネはレヴィスのことについて問う。
「レヴィスか? あいつはアイズと交戦した記憶もあった、がその節は迷惑をかけたととてもわたわたしていてな……思わず許しかけてしまった。あと戦闘に関してはスペシャリストと呼んで差し支えない能力だったよ。彼女をこちらで……」
「いえ、【ヘスティア・ファミリア】で保護させてもらいます」
「……なぜ?」
「アナライズで監視が簡単にでき、もし敵方だった際の処理も私が駆けつけられるので簡単ですから」
本音はもちろん、もう少し仲良くなりたいなぁ……である。まあとにかくこれにて、【ヘスティア・ファミリア】所属レベル6、【緋剣士】レヴィスとなった彼女は冒険者として活動を行うこととなる。
その日のオラリオは話題に満たされることとなる。
「聞いたかよ、ヘスティアんところにバケモンみてぇな剣士が現れたってよ」
「神ヘスティアも運がいいな、【覇導】のようにまた市外からの実力者を獲得したことになるのか……」
団長ベル・クラネルのパーティとスピネ・モデストのワンマンパーティ以外に【ヘスティア・ファミリア】にレベル6冒険者が現れたという新たな英雄の予感。
『聞け、すべての子よ。このダンジョンには理性持ちモンスターと戦う我らが友となりうる者がいる』
『名を【異端児】、汝らの同胞なり』
放たれた衝撃の言葉に本来の時空のうねりはどこへやら、世界線は変革する。白兎を英雄にせんとする流れのままに、どこか歪んだ世界の流れはもはや誰にも止められない。
「見た目は結局のところ憎いあのモンスターなんだろ!? 共存しろ? 無理を言うなよ! ふざけやがって!!」
そんな声は膨れ上がる。毎日のようにギルドに押し寄せる人波はある日突然消滅し……
「【異端児】……モンスターとの共存は、あり得ない。モンスターは……殺さなきゃ……」
「アイズ……間違ってなんかないさ、僕も協力しよう。これだけ集めれば十分だろう?」
「フィン……」
【勇者】に煽動され武器を取った。
「【覇導】? 町中じゃ取るに足らない雑魚だろ、町中で数こなせんのはこっちの旗頭くらいなもんだ」
「全くだぜ、あの女神像もどきさえいなきゃ雑魚も雑魚だろ? 反【異端児】連合……最初の標的は小規模ファミリアにして【異端児】との交流深い……」
「「「【ヘスティア・ファミリア】!!」」」
「思ったより規模が大きくなりすぎたか……でも敵は強敵、これだけ頭数があるなら頭を……神ヘスティアを捕らえることでスピネ・モデスト及びベル・クラネル以下眷族を無力化し、その後【異端児】を殲滅することができる」
そして、【反異端連合】と呼ばれる、【ロキ・ファミリア】のモンスターに恨みを持つ冒険者とそれに群がった他の中小ファミリアの冒険者の集まりの決起となるのである。
それを受けたウラノス側は秘密裏に予定どおりの会議を行った。
「神ウラノス、彼らは起ったようですが」
「スピネよ、お主のおかげで時は来た。汝らが最初の標的となろう。この戦にお前が出て街を破壊する『フリ』をし、【異端児】に守らせることで【異端児】の強さ、優しさを示す……そんな策が上手く行くとも思わないが」
「【異端児】がいつまで持つかわからない以上早く地上に場を作る必要がありますからね、九割が反対だったとしても、残り一割の協力を得ることが大事です」
【異端児】を地上に進出させる手配を露骨に行い、【異端児】をウラノスの口から周知させ、忍ばせたネズミ……ぶっちゃけるとフィン・ディムナその人……を用いて反対勢力を組織させたのはすべてスピネの悪行じみた技である。
ここで戦闘を起こし、【異端児】の善良さをアピールする機会としようとはスピネの言葉であり、裏で繋がっているフィンも共有した思いである。なおそれはそれとしてフィンは全力で組織編成、組織的攻撃を行うとスピネに告げ、それを了承したスピネとの間でどちらが【集団指揮】に優れるかの勝負までしているあたり緊張感がない。
旗頭に【九魔姫】と【凶狼】がいないのは若干想定外ではあるものの、おおまか悪巧みが上手いこと行って満足げなスピネであった。
「全く……とんだ厄介ごとにしてくれたじゃないかスピネくん……ウラノスに巻き込みやがってって言うはずなのに今回限りはウラノスに同情するぜ?」
「ヘスティア様。彼らには教えてあげなきゃいけません、モンスターを憎むことの無価値さ、世界の仕組みに踊らされる愚かさを」
「ファミリアの総意で【異端児】を守るって決まってるし……スピネくんがいいならもうそれでいいよ……。はあ、しっかし彼らも可哀想だ、ひっどいまでにコントロールされるわけだからね…」
ふわりと舞う骸骨……フェルズがヘスティアの想いを聞かずして未だ話の続く部屋の外で暗い天井を見てごちる。
「【愚者】たる私があの者の命に、か。800年、800年も成功しない魔法に命を賭ける等正気ではないが…次こそは失敗しないことを信じよう」
【黄昏の館】では、その知らせが駆け巡る前に多くの冒険者が姿を消していた。
「アイズが……!? それに、フィンもだと!?」
「それどころじゃねぇぞババァ! ガレスにバカゾネスまでどっか行った、ここに残ってる勢力はてめぇの信者のエルフどもと俺、それにラウルしかいねぇ……!」
「みんな、行ってしまいおったな……モンスターが憎い、モンスターが許せない……だから、モンスターとの共存はできない。随分急いた結論や……それこそ間違いが起こるで」
「……残存勢力とアイテムをかき集めて【竈火の館】にいこう、これから始まるのはオラリオを割る戦争だ、止められるのは彼しかいない」
戦いを起こしたのがそもそもスピネであることに気付ける者は、いない。
そして【竈火の館】では。
「ふふふ……攻めこんでくるんだね! 最高にハイって奴です、相手の策はひとつ……こちらのベル、私、レヴィスを回避してヘスティア様をキャッチする奇襲だと思って間違いない、というか私でもそうする……!」
ガキンッ! と床から槍、勢いよく両側から閉じ挟む廊下、落ちる天井、ドアに転送門。そして振り向いてドヤ顔で一言。
「なら最初から【竈火の館】を放棄、トラップハウスにしてしまうのが最適なんですよねぇ」
「「「うわぁ……」」」
神ヘスティアの身柄を【戦いの野】にいるオッタルへ任せ、まさかの偽本陣。まともに戦うつもりはない、とはスピネの言葉だ。かっこいい姿を見たいと思うアイシャ、師の全力を改めて知りたいベル、せっせと槍を作らされた理由を悟ったヴェルフの声が重なって響く。
「まさか正面から戦力比10倍以上の相手に飛び込んで勝てるとでも? 無理ですよ、戦いは数なんですから。なので数を減らします。殺さない程度に、無視できない程度に」
戦いの本番は情報戦だが、戦いの本質はリソースの喰い合いだ。情報のリソースを奪い、戦闘により必要なリソースを吐かせ、人というリソースを奪う。人を殺さず、半殺し程度に留めれば治療のリソースも重くのしかかる。大軍であればあるほど、必要なリソースも大きくなり、息切れも早くなる。
「こちらの人数は少ない、一時的に【九魔姫】と【凶狼】が参戦してくれるそうですがそれでも10人ですからね。だがしかし! もうこれは遊戯じゃない、本物! フィンが頑張って組織したらしいですが! 楽しんで戦えると思ったら大間違い、宴の始まりだ!」
これが後にオラリオの歴史に残る事件……『異端児抗争』の始まり。またの名を『英雄祭典』、『昇華祭』などと呼ぶことになる、スピネ・モデストがもたらした、オラリオをふたつに割るように見せかけて裏でふたつの勢力が繋がっていることを現場の兵のみが知らないというよくわからない戦争である。
強いて他作者様より言葉を借りるなら『大戦争遊戯』(手加減なし)。
ちなみにフレイヤはこの状況に静観を選択、オッタルにスピネの元へと行かせようとしましたがスピネにヘスティアの身柄を押し付けられました。最強のボディーガード…!
ロキ?なにも知らないのに突然ファミリアの3/4が【反異端児連合】にいる現状がきつすぎて頭回すにも冷静でいられなくなってます()
スピネは今回己が狙われる可能性も考慮して3つの布石を打っていますので死ぬ恐れがほぼないあたりバケモン。
フィンもフィンでスピネには『発生するであろう暴徒が好き勝手町中で暴れるのも癪なので組織して攻めこんできてくれ』としか言われていないのでどちゃくそハッスルしています。
ついでに「スピネ・モデスト撃破」をロキ・ファミリア幹部連中にだけひっそりと目標として話している。
「殺してしまわないか、だって?彼が殺したくらいで死ぬと思うか?僕は思わないよ」by【勇者】
というわけで原作キャラ強化祭の準備じゃー!!
というところでお話を切って忙しい時期に入るのでしばらく(最悪2週間以上は持っていかれるかも…?)更新が途絶えてしまうというね、申し訳ない!
次回を待っていてくれると嬉しく思います。必ず戻りますので。
感想評価のほどよろしくお願い致します!!
オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…
-
これからも出してええんやで(寛容)
-
オリキャラ2人はいかんやろがい!