AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような… 作:aF
館につけられた火が燃え広がり、【竈火の館】はすでに炎に包まれていた。現場にいた【反異端児連合】の小規模ファミリアたちはこれを好機と見なし、脱出してくるだろう【ヘスティア・ファミリア】の面々を撃破する……そのつもりだった。
意気揚々、己が武勲を立てオラリオに平和をもたらす英雄になると宣う彼らには3つの不幸があった。
1つ目の不幸はそこを駆け抜けてきたのは白髪の青年……すなわち【兎脚】ベル・クラネルであったこと。彼のスピードを追えるほど根があるなら今ごろここにいる者たちはさっさとレベル3になれていることだろう。
2つ目の不幸はベルの逃げ道、彼らの追う道を遮るように、空を舞う1つの影……すなわち【片翼の竜王】アーテルバスが地に降り立ち、彼らを睥睨して高らかに砲声したこと。
レベル7相当。そう言われ、【異端児】の中でも最高戦力と呼ばれる彼女の存在を彼らは無論知らない。
そして、3つ目の不幸は、そもそも【竈火の館】にいる【ヘスティア・ファミリア】のメンバーは地下道を利用してダイダロス通りへと抜けていることを彼らが知らないことであった。
【片翼の竜王】の手にはすでに神剣がある。竜の巨大な翼、その半分もまた、彼女の背にある。破れかぶれに挑みかかった、【反異端児連合】のレベル1.2を主体とする【竈火の館】攻略組全員の気絶まで、そう時間はかからなかった。
青空のもとにスピネは高らかに笑う。
「第一部はこれにて終了。悲劇的にも燃える館、其を背後に飛び出す白兎、道塞ぐ異端児に人は滅され、されど死はない。彼らは己の信念に疑いを持つだろう。……続いては第二部【仕組まれた美談
】、揺らいだ信念をここで疑念に変えようね……! あぁ……楽しいなぁ……!」
【仕組まれた美談】。酷い話もあったものだが、これは先もってスピネがいくらかの無関係なファミリアに依頼して争いとは関係のない一般人を用意する。そんな一般人もどきをアーティファクトと【反異端児連合】との戦闘に巻き込んでしまい、忍ばせ、あるいは空に飛ばせた【異端児】の手により救出することでモンスターの身をもって、人に忌まれてもなお人を救う善良さを主張するもの。
「目の前でモンスターが人を助ける姿を見る、それに躊躇いなく剣を振り上げることができるのなら……もはや血に濡れた狂人なのでしょうよ、間違いなく」
「スピネさん……なにを言ってたんですか……?」
「いいえ、何事も。強いて言うなれば我が策に綻びなしという独り言です……さ、プラン2開始です。ここからは皆さんも戦争のお時間です!!」
「「「おーっ!!」」」
「【魂割朋友】……お願いします、彼ら彼女らについていてくださいな」
「任された」
「はっ……いいだろう」
「えぇ、承知しました」
「……ふっ! よし……離脱ですね」
「がっ!!? 矢……っ!」
「どこからだ!!? あの路地か! 追え!! 殺せ!!」
リリルカはその身をいつぞやの【戦争遊戯】で用いた小人族の男……ルアンの姿へと変貌させ、クロスボウによる狙撃からの裏路地を利用した離脱を繰り返していた。
敵を1人でも多く、戦術的な意味で殺す。動けぬ兵は死体に等しく、また生きているが故に飯を食う口があって死体よりも厄介だとはスピネの言葉だ。
故にリリルカは生きる死体を増やすべく走っているのである。順調に数は増えていき、比例するように間違った情報が広まっていく。
「見つけたぞ狙撃男……! 追え、逃がすな! ここで仕留めろっ!!」
「…………っ! ちょっと、まずそうですか……!」
しかしもちろん、比例していたのは生きる死体の数だけではなく、ヘイトと警戒度合いもであった。
レベル3が複数人、リリルカを追う。隙あらば挟みこもうとする彼らに逃げる他リリルカは抗う手を持たない。
袋小路、とうとう追い込まれた終着点にて、リリルカは観念したように瞳を閉じた。
「少しばかり、やりすぎましたね……ごめんなさい、ベル様」
「ははっ、追い込んだぞ……!」
「よくもちょこまかと逃げやがったな……! 一発じゃ殺さねぇ、覚悟しやがごぼっ!!?」
「えっ」
「えっ」
思わず瞳を開く。そこに立っていたのは白と青のワンピースの少女、名をメイシア。
「やっと見つけましたよ……まだあなたには役割があるんですから死を受け入れない! いいですね!」
「はっ、はいっ!?」
「敵前で会話なんざ、ちょ、調子に乗りやがって……! 死ね!!」
「そんなだからいつまでもレベル3で燻るんですよ?」
「ぐはっ……!?」
まさかの回し蹴り、なおぶつかって折れたものは剣である。ついでに心もへし折っているのは言うまでもないだろう。
形としてはあまりにも相手が可哀想ではあったが、もっと可哀想なことになるよりはマシであろう。リリルカはそう己を無理に納得させ、メイシアという強力な護衛を得てクロスボウを放つ仕事に戻ることにした。
「甘いんだよ!!」
「うぉぁぁっ!!?」
「鍛冶師風情が!!」
「そう考えてる内は俺には勝てねぇぞ!」
ヴェルフ・クロッゾは大立ち回りの最中であった。
「はっ!!」
「俺の剣が……!」
「いなし、というのです! やぁっ!」
「なんでこんな……つえぇんだよ……」
ヤマト・命と一緒に。
ヴェルフは居もしない誰かに言い訳するように思考を重ねる。
だって仕方がないだろう。リリと違って隠れるのに向く訳でもなし、ベルと違って足が早いわけでもなし。一度見つかれば刀で切り伏せ切り抜けた。
その結果として同じように切り抜けてきた命と合流してしまい……いつぞや受けた【怪物進呈】のモンスターのように(命を捕まえろ、上物だという言葉から察する通り下世話なことを考えているぶんよほどこちらのほうが邪悪かもしれない)、列を成して命を追う追手とも合流してしまったというわけだ。
切り伏せども切り伏せども、数は増える一方である。そろそろいい加減にして欲しいとヴェルフが考えだしたと同時、【地面が機械に置き換わる】。
「なんだっ!?」
「っ!!?」
機械の大地から悠然と伸びる機械の触手……【蹂躙の触手】に【遮断の触手】。そうして、そこの触手たちが生えてきた大地の中心点に、蒼の光が満ちて。
「よう、ご苦労さん。よく耐えたもんだぜ、あとは任せろ」
「っ……! あなたは……一体……!」
「おう、落ち着けお嬢ちゃん。スピネからの援護、ベルフォメットだ……兄さんの方も俺に任せてくれ」
「……わかった、任せる!」
「未知なるものさえ貪欲に用いて人の力へ、いつか科学のそれへと至らせんとする鍛冶師、未知の技を既知に落とし込み己へと浮かべる剣士……どいつもこいつもイイ、守ってやるよ」
そのまま前へと出た男は体の半分を機械に置換したぼさぼさの茶髪、無精髭だらけの中年男性。【天地の侵略者】の姿で現れたベルフォメットである。
「どいつもこいつも……ろくなタマ持った奴さえ居やしない、いつだったか俺に勝ったアイツは……ユアンはてめぇらほど薄っぺらい決意で挑んでねぇな……じゃ、俺が負ける道理もねぇか」
「舐めた口を利く……魔法放て!!」
「はっ!! 俺の言葉はそういうのにはいつだってただ一言しか用意されてねぇよ! 無駄だってわかんねぇかなァッ!!」
複数の【遮断の触手】が魔法を弾き、無力に落としこんでいく。
「はっ、魔力? そんなもんは科学に勝てはしねぇ。いつだって時代を制したのは誰でも使えるお手軽な力だ、そうだろ?」
「呑気に語りおって……! クソッ、第二射用意だ……!」
「おい鍛冶師。せっかくだ、魔法を寄越せ! 魔法と科学の混合ってのも粋なもんだろう、俺もそれについては知りたいことだらけなんだ」
「っ! 【燃え尽きろ、外法の業】……【ウィル・オ・ウィスプ】!」
【蹂躙の触手】が魔法に対して極限の威力を発揮する反魔法を取り込む。
「おお、分かった分かった……! 世界の未知は今俺の手でひとつ既知へと成り下がったぞ……? どれ、撃ってみるか!? 【蹂躙しろ】!!」
普段放たれる蒼の光ではなく、炎のように赤い光が【蹂躙の触手】から放たれ……一瞬で魔法使いたちに吸い込まれ。
「うわぁぁぁぁぁっ!!」
「きゃぁぁぁっ!!」
「がふうっ!?」
一斉に起爆。【魔力暴発】を強制的に引き起こす【ウィル・オ・ウィスプ】を解析して魔力パターンなどを同じくし、己のレーザーの魔力パターンを【ウィル・オ・ウィスプ】のものと合わせてレーザーの性質を変化させる。ベルフォメットはその工程をわずかな一瞬で完了させて全触手に適応させていたのである。
これすなわち、魔法とは【再現できる】ものに他ならないという結論が出る。より技術の革新が進めばいつかは誰もが同じ魔法を振るえる日が来るのやもしれんとベルフォメットはひそかに心の中で考えている。
「ま、なんだっていいさ……来いよ、死にたがりども。さっさと吹き飛び、塵となれ!」
ヴェルフと命は唖然としてその光景を見守っていた。己のスピネから与えられた仕事……すなわち注意を引くという点においては十二分に果たせたかと思いつつも、やはりベルフォメットにどん引きするやら敵に憐れんでしまうやらで忙しいことにかわりない2人であった。
「【ファイアボルト】ッ!」
「なっ!? ぐっ!」
「失礼しますっ!!」
「逃がすか……!」
もうこのやりとりもすでに二桁くらいはしているんじゃないか? とベルはそんなことを考えていた。地上の隠れ家に今も潜む竜人の【異端児】ウィーネをはじめとした者たちのために戦場を引っ掻きまわし、リリルカとは異なる方法を持ってゲリラ戦のなんたるかを刻み付けている白兎、それが今のベルだ。
こちらもリリルカの方と同様に、ヘイトと警戒度合いが上がってはいたものの、その俊足の前に追い付くこと能わず、迎撃は悟られるがゆえに未だ実らずというわけで、存分にゲリラしていたのである。
が、警戒が極まれば大物がやってくるのは世の常だ。
「みぃつけた! アルゴノゥトくん……!」
「……! ベル……!!」
「やっと会えたねベル・クラネル……いや、【ヘスティア・ファミリア】団長殿」
「【ロキ・ファミリア】……!!」
ベルはその大物に対して勝てないと判断。咄嗟に逃げの一手を打とうとして……
「【リスト・イオルム】」
「うぁっ……!!」
「さすがだ、ティオネ」
ティオネ・ヒリュテの奥の手、強制停止を付与する投げ縄にからめとられた。確率は階層主相手に10%、なら格下の人間になら相当な確率で縛ることができるのだろう。
意識が飛ぶ、視界が白にちらつく、どうなる、どうする?
どうしようも、ない。この時ばかりは【幸運】もない。
そう、思っていた。
「おっと……【ロキ・ファミリア】だったか? 彼を離してもらいたいのだがね」
「……誰だい?」
「私はアイシィ……アイシィレンドリング。スピネからの頼みを受け、救援に来たんだよ」
「つまり敵ね……! シッ!!」
投擲された投げナイフ、それは真っ直ぐにアイシィレンドリングの胸へ向かい……突き刺さった。
「ふふ……」
嗤い、倒れ伏すアイシィレンドリングと名乗るスーツの男。
「なぁんだ、大したことな……っ!!! がッ、あっうっ?!」
「ティオネッ!? どうしたっ!! 大丈夫かっ!?」
「団長……離れてっ!」
「お姉ちゃんっ!!?」
その瞬間、ティオネが頭を抑え、苦しみ出した。そうして次の瞬間。
「あぁ……うん、良い肉体じゃないか。もちろん性的な意味ではないよ」
「なっ……!? 肉体を乗っ取った、のか!!?」
「無論さ、命の対価は命にて、いつものことだろう? 安心しろ、全て事が終われば満足な状態で返す……おっと? なんのつもりかな? ティオナ・ヒリュテ」
その両手の大双刃を閃かせ、ティオナが斬りかかっていた。それをバックステップで避け、たゆんと揺れる胸の苦しさを初めて知り若干後悔しながらもアイシィレンドリングは意を問う。
「今! すぐに! その肉体を!! 返せ!!!」
単純な激昂。姉妹の絆を一時なれど失うなど、ティオナには許せなかったのだ。
「やめろティオナ!!」
「どうして!? だって!!」
「ついうっかりで傷付ける訳にも、ましては殺す訳にも行かないんだ……! 中身はアイシィだとしても、肉体は僕らの家族、ティオネ・ヒリュテだ……!」
「うぁ……あ……」
アイシィレンドリングを殺す、それすなわち新たなアイシィにアイシィを殺したものが成り代わるということ。
アイシィレンドリングを殺す、それすなわち依代にされた人物は死ぬのにアイシィ本人は死なないということ。
これこそがアイシィレンドリングを経済を司る巨人たらしめる最強の呪い、【デッドペナルティ】の真の力。己の命の対価に相手の全てを求める、外法。
「さて、フィン・ディムナ。繰り返すようだが……ベル・クラネルを解放してもらいたい。対価…? 分かりきったものを聞かないでくれたまえ。そちらの色好い返事を願っているよ……」
昔から私が得意としているものは交渉だ。そう宣った彼は口角をつり上げた。
「あちらでひとつ、こちらでふたつ……」
「順調か? スピネ」
「オッタル……えぇ、全てが上手く行っています。多少の想定外もありましたが……こちらのアーティファクトによる二次被害を【異端児】が抑える策も成功裏に終わり、助けられた民衆たちの中に忍び込ませたサクラを起点に【異端児】を支援する団体を作らせることができました。急拵えですが十二分に機能するでしょう……」
「ふむ……大規模な戦闘も収まったようだな、これならば動きやすいか」
「これもエルフを牽制する【九魔姫】や魔法系に対して致命的なまでにぶっ刺さる【凶狼】がいるという情報がアドを生みすぎた結果ですよ」
【戦いの野】の屋根の上から街を眺めやるスピネに話しかけるオッタル。ファミリア総出で騒ぎを作っていたうちにダイダロス通りを脱出して、最後の支度を整えていたのだ。
アーティファクトによる印象操作、潜伏した手の者による団体の制作、あとは大衆心理の操作をしてやれば多数に靡く人々の心を捕らえるのは至極簡単だ。
「スピネ」
「なんですか?」
「以前だ。英雄には敵が要ると、そう言っていたな」
「えぇ。ベルにとっては、ミノタウロスがそうなんでしょうね」
「お前は、まさか」
スピネは目を閉じる。青空に似つかわしくない暗い声で言葉を放つ。
「いいですかオッタル。この街はいずれ来る滅びへの忠告、あなたのほうがよく知る7年前の2人の英雄の命を以て放たれた警鐘、それらを早くも忘れてしまった。だから、貴方たちとロキのところを結び付けた……それでも、足りない。それこそ人でなしでいい。ハッピーエンドに必要な役者を舞台から降ろそうなんてとんでもない」
「役者? ……【異端児】か!」
スピネはその言葉に頷いた。そうして、語る。
「【異端児】の彼らは、英雄足り得る。舞台に上がり、降ろされてはならない二枚目だ。それを理解できない人々には、世界の仕組みを示さねばならないんだ」
「まさか、まさか私がかつてレベル7の2人がした決意をしなければならないなんて夢にも思いませんでしたとも」
「えぇ、そうです。私は……オラリオの、ベルの敵になる。さぁこれこそが第三部、本来上演されない隠されたシナリオ……【大団円】!」
──―私は、わたしは、この時をずっと、ずぅっと待っていたのかもしれない。それとも、待っていなかったのかも。
──―だからこれは死んでいる【俺】から贈る讃美歌、そしてこれから死ぬ【私】自身に贈る鎮魂歌。
──―始めようか、ベル。【大団円】なんて嘘っぱちだ、強いて言うなれば【未完に捧ぐ詩】。
──―君の行く未来にどうか幸せがあるように、なんて祈りはしない。君が幸せを掴めるかどうか……【俺】が【私】に変わって見届けてやろう。
死して新たな生を受け、新たな生を捨てて英傑に至る器を育てる。英雄になる決意を固め、英傑たちを見据えて静かに笑う。
【スピネ・モデスト】だったソレが消え、【ナニカ】がここに現れた。
家族の「おかえり」、ただその言葉だけを聞きたかった男が、その生を親と妹と同じように、あるいはそれより無様に散らした男が、狂った死体が、オラリオの土を踏んだ。
止めて見せよ。飛び越えて見せよ、ベル・クラネル。いつだって死人を眠らせるのは神聖な大鐘楼の鳴り響く音だけなのだから。
オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…
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これからも出してええんやで(寛容)
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オリキャラ2人はいかんやろがい!