AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような…   作:aF

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本話、【九魔姫】に上方修正が入っています。
【妖精王印】の効果について
原作 魔法円にいる同族の魔素を吸収
拙作 魔法円にいる人物の魔素を吸収
よろしくお願いします。


第三十話 【未完に捧ぐ詩】・2

『人ならざるモノより』と聞こえ、扉が開き、スピネの用いるいつものアーティファクトたちが飛び出る、一連の流れ。思わず絶句し、立ち止まった【ロキ・ファミリア】の冒険者の中で最も素早く己を取り戻したのは【勇者】フィン・ディムナだった。

 

「総員、散開!!」

 

 その指示と共に、アーティファクトを己の獲物たる槍で払う。

 

「呆けるな、武器を取れ! 今はただ迎撃のみを考えろ!」

「フィン! 私とレフィーヤは詠唱に入る、任せられるな!?」

「勿論だ! ガレス、ベート、アイズ!」

 

 後衛を守れ、その指示の声と共に前線へと飛び出す前衛の三人。

 

「ぬぅぅぅん!!」

 

【重傑】の重厚な盾がアーティファクトを通さず、

 

「アイズ! 寄越せ!!」

「【吹き荒れろ】!!」

 

 荒れ狂う風を受けた【凶狼】がまとめて吹き飛ばす。

 

 いつもの連携、いつも通りの信頼。例え先程まで敵であったとしても、その絆は引き裂かれない。

 

「【誇り高き戦士よ、森の射手隊よ。押し寄せる略奪者を前に弓を取れ。同胞の声に応え、矢を番えよ。帯びよ炎、森の灯火。撃ち放て、妖精の火矢。 雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え】……【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」

 

 レフィーヤのほうが一足先に詠唱を終え、放たれたのは広域殲滅魔法。解き放たれたそれらはアーティファクトたちを焼き落とす。

 

 そして、リヴェリア・リヨス・アールヴの象徴が、【妖精王印】の力……魔法円の内部で消費された魔素を吸収する効果を受け強化されて放たれる。

 

「【間もなく、焔は放たれる。忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲な猛火。汝は業火の化身なり。ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣──我が名はアールヴ】!」

 

 それは女王の顕現たる焔、矢により落ちたアーティファクトへの追い打ちとしては過激すぎるそれ。

 

「三人とも! 下がれ!!」

 

 フィンが合図を送り、三人の前衛も言われずとも後退している。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

 そうして、万物を焼く獄炎が放たれて。

 

 獄炎が終わり、灰の残る跡にアーティファクトの姿はもうなかった。

 

 いや、そこに人影ひとつ。赤髪を揺らし、【ロキ・ファミリア】に背を向け剣を構える女。【怪人】レヴィスの姿があった。

 

「レヴィス……?」

「あのときの……!!」

 

 降り立ったレヴィスは、浮かぶ魔法陣でしかなくなったスピネのようなソレへ口を開いた。

 

「その姿、怪物というわけか? 本当に人を辞めてどうするんだ? 全くもってどうしようもない……あの日私を地上へ連れ出したお前は、それに成り果てるほど弱い者には思えなかったが」

『始まらぬ詩、英傑たちの詩を刻まんと欲す、鐘の音は何処にあるやら』

「……なるほどな」

 

 そして【ロキ・ファミリア】の方へ向き直ると、【剣姫】の方へ目線を向けて一言。

 

「【剣姫】。頼みがある……ベル・クラネルを、連れてきてくれ。ここにだ」

「ベルはまだ弱いよ? それを巻き込む訳には……」

「アレはどこまで行ってもベルを育てる存在だ、ステージに上がった私たちは言わば二枚目三枚目、主役は彼だろうよ」

「そう、なの? わかった、探して……」

「その必要はない」

 

 突然、胡散臭い男神の声がした。

 

「アレがスピネくんか?」

「神ヘルメス……!? 何をしに来たんだ、こんなところに」

「俺だけじゃあないぜ?」

 

 その声と同時、落ちただけで倒されきっていなかったひとつのブリッツアーティファクトがもう一度空を駆け、真っ直ぐにヘルメスに向かう。だが、次の瞬間。

 

「絶対に止めて見せる! 【ファイアボルト】ッ!!」

『……来た!』

「ヒューっ! なんて威力、さすがに今さっきの闘争兼逃走でランクアップした怪物は格が違うね?」

「……ランクアップした、だって?」

「あぁ、レベル4になったそうだよ? 余所の情報なんか話すべきじゃないんだが……ここでは知らせとかないと戦力としての考えを変えられないだろ?」

 

 炎雷一撃、止めを刺されて爆発四散。そして降り立つもうひとつの影……すなわち、【兎脚】……いや、【未完の少年】ベル・クラネル。

 

 

 

 その姿を認めて、魔法陣は動きを止めた。吐き出されたアーティファクトたちが消滅する。

 

『英傑たちは謳う、未完よ答えを示したまえ。汝鐘の音、大軍を動かしうる号令の鐘、さあ、さあ!! 第二楽章、開演の時!』

 

 次の瞬間、【スピネの身体】が【四つ】現れた。

 

 一人目のスピネは白金の装備。腰につけられ、後方に重心を置いたそれはブースター。【音速機構】のそれだった。

 

 二人目のスピネは巨大な体を白と青に。トリコロールカラーと背負う巨砲、すなわち【砲撃要塞】のそれに他ならない。

 

 三人目のスピネは黒く黒く黒い。赤黒い円盤を浮かせ、二刀流の剣を構えるのは【強襲黒輪】特有の構えに他ならない。

 

 四人目のスピネはカジュアルな服装、フード付きのモフモフとしたパーカー。背後に浮かぶのは【スピネのアーティファクト】と呼ばれる小型のソレであり、アナライズ、エンシェント、レディアント、ミスティックが一機ずつ浮遊している。

 

 それはスピネの戦う姿の写し、スピネが増えたとは絶望と同義語である。故に、応援に駆け付けた他の冒険者や、【ロキ・ファミリア】の冒険者たちが絶句する中、ベルは砲声する。

 

 己の胸にぶれない思い、それは【剣姫】への恋慕ともうひとつ、スピネへの憧れ。故に、ベルは己の思いのままに叫ぶ。言葉にするのももう面倒だ。伝わらないかも、知れない。だから、思いをこの一発にこめて。

 

「【ファイアボルト】っ! 行きます!!」

「っ、ベル! 【吹き荒れろ】……!」

 

 ファイアボルトによる初撃、【音速機構】に飛んでいくそれ。そして飛び出す白兎、後を追うようにして剣姫も飛び出し、それらからわずかに遅れて他の【ロキ・ファミリア】のメンバーも展開する。

 

 新たに展開されたアーティファクトがこちらに飛ぶ、恐らく四人目のスピネが生み出しているだろうソレを撃破するため、勇士たちは武器を取った。

 

 

 

 そんな中にて、先頭を駆け四人目のスピネに一直線のベルを狙い、【音速機構】が砲撃を放とうとした……瞬間、砲撃を別ベクトルへ、乱入してきたソレへと放つことになった。

 

『【ロードオメテクトル】』

「あめぇぞ、学んでんじゃなかったのか?」

「悪いが……お前の相手は私だ」

「は? 赤髪、てめぇがでばるこたぁねぇだろ?」

「喧嘩をするな……さて、かつて君に負けた者としてリベンジに来たよ」

「次こそは勝ちます、この【千の妖精】の名にかけて」

 

【怪人】、【凶狼】、【千の妖精】、【勇者】。実に奇妙な四人が、【音速機構】を倒すために立ちはだかる。

 

 ベートの蹴りと【音速機構】の蹴りがぶつかって、戦いが始まる。

 

 

 

 キンキン、ガギンと鳴り響く音は打ち合いの証明。

 

「おおおおおっ!!」

「ベート! スイッチ!!」

「はっ!!」

『……!』

 

 連携に次ぐ連携、槍と蹴り。追い詰める先には魔法の光。

 

「【アルクス・レイ】!!」

 

 吹き飛ばされ、壁に当たる前にブースターをふかして飛び上がる【音速機構】に、魔石を喰らった【怪人】は追随して飛ぶ。そして、剣の側面を当てるようにして上から下へ。

 

「これでも喰らっておけ!!」

『ッ!? nnnn))))!!!!!!』

 

 痛烈な打撃を以て地上へと叩きつける、それを可能とする剛力に全員が驚く中、躊躇いなく動いたのは2人。【勇者】フィンと【千の妖精】レフィーヤ……あの日、最後の一幕を演じた2人。

 

「【ヘル・フィネガス】ッ! ォォォォォオオオオッ!!」

『……!!』

「あの日、みたいですね。でも、あなたはスピネさんじゃない……防ぎようも、ない」

 

 いつかのように、槍が剣により弾かれる。あの日は斬られたが【機構の神剣】がなければ槍が斬られることはなかったらしい。弾かれ逸れた槍、腰から武装が出るより先に、炎の弾が白金の身を焼いた。

 

『ッ…………』

 

 あの日の焼き直し? 自立起動する奇跡を起こしたアナライズなんてものは【音速機構】にはない。従って、あの日あり得た可能性がこの場で表される。

 

 すなわち、炎に消えた【音速機構】の消滅という結果が。

 

【音速機構】──退場。

 

 

 

 白と青の巨人、【砲撃要塞】は己の前に立つ者を見た。

 

【文明の先駆者】ルチル・クロフォード、【単眼の巨師】椿・コルブランド、そしてヴェルフ・クロッゾ。

 

 駆け付けようとしたヴェルフが過去の縁を辿ってどうにか集めた増援の2人という組み合わせであった。

 

 白衣の女……ルチルから、笑ってこうぼやく。

 

「ワタシがアレとこんなことになるなんて想像もしていなかったんだ。どうしようかな、団長?」

「ひとまずやれるだけやってみてくれ……あの最新技術の塊、是非バラしてみたいものだ」

「やべぇ……なんで勝てるつもりなんだ……?」

「「逆になぜ負けると考える必要があるんだ」」

 

 そんなやりとりを見て、しびれを切らした巨人は砲撃を放つ。

 

「あんまり暴れないでくれよ、【万能者】との共同開発品だ。試作だから上手く行くかどうか……実地試験だ! 【マギ・リフレクター】展開!」

 

 ルチルの手の中に煌めくそれが青い障壁を作り出し、魔力の光を反射した。しかし、完全な反射とはならず、明後日の方向へと四散する光にルチルは改良の余地を見た。

 

 そして、砲撃が無意味になったということは今の巨人は隙だらけというわけだ。

 

 隙を見逃すほど、【単眼の巨師】や己と仲良くしてくれているあの鍛冶師(最近ヘファイストスに告白したらしい、嫉妬もできないのが悲しく、また虚しい)が甘い訳がない。

 

「あっはははっ! 隙だらけだ!!」

 

 ズドンッ!! と轟音が鳴り響く、なんと鉄の塊の巨人が宙へと浮かぶ。椿の手にあったのは彼女の新作のハンマー。ここでも試し切りならぬ試し叩きである。

 

「ヴェルフ! 行け!!」

「団長、任せてください……! 【氷鷹】……からの! 【紅牙】ァッ!!」

「やはり魔剣でクロッゾには勝てない、か」

 

 かの【九魔姫】の【ウィン・フィンブルヴェトル】にもひけをとらないと言われる【氷鷹】を叩き込み、鉄を一瞬で冷却する。

 

 続いて叩き込まれるのは下層のモンスターが群れるくらいでは相手にもならない、と言われる炎の魔剣【紅牙】。

 

 急激な冷却からの加熱、それすなわちその身を包む装甲の全てを【熱衝撃破壊】という現象により破壊せんとしたもの。巨人の身を包むものが如何に未来の技術であろうとも、材料は合金。それはかわりない現実だ。

 

 故に、ピシリと。罅が入って、割れて、なぜか魔法円が描かれた地面に落ち……る前に消えた。

 

「「あーっ!!?」」

「……!?」

 

 ルチルと椿が凄い顔をする様を見ながら、ヴェルフは空を仰いだ。

 

【砲撃要塞】──退場。

 

 

 

 黒のソレが戦場を駆ける。リングブレード同士の空間をワープしながら自在に移動して斬るソレは理不尽の具現であった。ガレスとラウルは状況の悪さに歯噛みしながらも、耐え凌ぎ続ける選択を取らざるを得なかった。

 

「大丈夫ですか!?」

「問題ないわ、お主が一番自分の身を案じるべきじゃろ」

「全然大丈夫です……!」

「気を付けろ……次で7回目のアレじゃ、また生き残るために「待たせたな」……誰じゃ」

「なっ……【都市最強】の大剣……!? まさか!」

 

 走り出そうとする【強襲黒輪】の目と鼻の先に落下し突き刺さる大剣、やってきた男の名は無論。

 

「【猛者】オッタル……! そして、【フレイヤ・ファミリア】……!」

「救援に来た……アレが敵か。なんとも懐かしいことだ……お前たち、手出しは無用。アーティファクトの殲滅、及び【竈】の設営にあたれ」

「「「了解」」」

 

【女神の戦車】、【黒妖の魔剣】、【白妖の魔杖】、【炎金の四戦士】。名だたる女神の選士たちが各々に駆ける。その場に残ったのは【猛者】ただひとり。

 

 それで十分だった。

 

「我が友スピネ。いつかやって見せたように、ここでもまたやって見せよう。お前のその黒輪……【マグナドライブ】、既に俺に破れた技を用いるとはお前らしくもないな」

 

 その言葉と同時、【強襲黒輪】がリングを拡張し、そのリングへと飛び込む。加速していく、姿さえもう捉えられない。

 

『……モード:フルスロットル』

 

 だがそれは、もう見た。倒しもしたのだ。今更、失敗する道理もなかろう。

 

「同じ技を用いるとあらば、同じ技で打ち破るのみ……【銀月の慈悲、黄金の原野、この身は戦の猛猪を拝命せし。駆け抜けよ、女神の真意を乗せて】……さらば、【ヒルヴィスヴィーニ】」

 

 轟音、一閃、光が満ちる。光を越えたと思われるばかりの速度に対して真正面から放たれた完璧な一撃の結果は、地面にいつのまにやら展開されていた魔法円の上を転がる粉々に粉砕された黒輪、吹き飛んでいく黒い鎧。

 

 それは遠くで構えられていたガレスの大盾に当たる前に消滅し、【猛者】の勝利を知らせた。

 

「あぁ……友よ、俺はお前を止める。俺はまだお前にさらばと言いたくはないのだ……これは、俺自身が決め、俺自身が刻みこんだ、そしてフレイヤ様がお認めくださった、信念そのものだ。だが、スピネは鐘を望んでいる……最後のアレは、かの少年に譲ろう」

 

【猛者】は高らかに凱歌を謳うわけでもなく、その奥、魔法陣に対し静かに相対するのみであった。

 

【強襲黒輪】──退場。

 

 

 

 先頭を行くベルとアイズは、ついに魔法陣の前に立つスピネへと辿り着いていた。

 

『来ましたね、ベル、それにアイズと……おや?』

「私も戦う、そう決めた。お前を止めるため……お前を失わないために」

『ふふ……リヴェリアさん、私は覚悟を決めたんです。英傑未だならず、私こそが英傑の礎たる英雄になる……と。私が無事に戻る、そんなことはありえないんですよ?』

「戻して見せるさ。私にとって、【都合のいい結末】を迎えるために」

『【機械仕掛けの神】にそれ言いますか? そういうところ、嫌いじゃないですよ……』

 

 笑いかけるその顔は、まさしくスピネ・モデスト本人の、見惚れるような笑み。だが、浮かぶアーティファクトの砲はすべてこちらに向いている。

 

「スピネさん……僕は、あなたを尊敬しています。あなたに憧れています。だから……あなたをここで打ち倒して、リヴェリアさんの言葉通り。都合のいい終わりを、探します」

「私は……スピネさんがどうあったとしても、外からじゃなにも言えないけれど……あなたの今は、昔の私。妄念、黒い思い……ベル、行こう……! それを断ち切る……!」

『いいでしょう……戦いの始まりです。全弾、放て!!』

 

 砲撃。砲撃。砲撃。空を埋め尽くすほどに光光光光光光──―そのすべてを避ける。時に剣で逸らす。魔力の光は、光ほど早く動かない。弾の軌道を予測する。剣を置き、逸らす。逸らしてできたスペースに体をねじこむ。アイズ直伝の超高難易度の回避術は、ベルもまたそれを実戦的に用いれるほどに鍛練しているものでもある。

 

『アレを抜けますか! それに……魔力が高まってますねリヴェリアさん!?』

「【舞い踊れ大気の精よ、光の主よ。森の守り手と契を結び、大地の歌をもって我等を包め。我等を囲え大いなる森光の障壁となって我等を守れ──我が名はアールヴ】! 【ヴィア・シルヘイム】!!」

『防御障壁……! 厄介な!』

「【吹き荒れろ】!!」

『まずっ……!』

 

 障壁に目を向けてしまったスピネは、風に体を揺さぶられる。そこを逃さず、ベルは吼える。

 

「【ファイアボルト】!!」

『ガッ……っ! いったぁっ!! お返しです、【機構の解放】……!!』

「【間もなく、焔は放たれる。忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲な猛火。汝は業火の化身なり。ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣──我が名はアールヴ】……【レア・ラーヴァテイン】!!」

『あーっ!! 困りますリヴェリアさん!! あーっ!!』

 

 獄炎が黒く染まったアーティファクトを滅却する。そして、それにより、スピネのセーフティが解かれる。

 

『……仕方ない。【調和を以て為すは絶対の正義、顕現するは正義の番人。悪徳、美徳、傲慢、謙虚。天の七つの美徳を以て地の七つの悪徳を討ち、人は満ち足りるを知る】……【プシュコマキア】!!』

 

 現れるのは【アブソリュート・モデスト】。いつかの女神像、絶望の具現。されど、【剣姫】と【九魔姫】、親子とも言われる2人は笑う。そして、リヴェリアは言葉を放つ。

 

「時間を稼いでくれるか? アイズ、それにベル・クラネル」

「もちろん……任せて、リヴェリア」

「はい、わかりました!」

 

 と同時、展開されたのは今までで最も大きい魔法円。その大きさは広場全域をカバーするほどの大きさで、足りない魔力をこの魔法円上で行使される魔素の吸収で補うという心胆であろう。

 

『モデスト! やたらめったらでいいです! 放ちなさい!!』

「そんな大きいと……レフィーヤだって、気付くよね」

『なっ!? これは……【ヴィア・シルヘイム】!? なぜ……まさか! まさか!!』

 

 突然復活した障壁に驚き、そして1つの可能性に気がついてその女を探す。

 

【千の妖精】が、魔法を発動させた【凶狼】の裏で。

 

【ヴィア・シルヘイム】の発動に成功していた。

 

『ははっ……彼女は、すさまじいな……あの日も、そうだった気がします』

「はぁぁぁぁぁっ!!」

『甘いんですよベルッ!!』

「やっ!!」

『いい連携ですが……まだだぁ!』

 

 ベルとアイズ、無視できない連携。次々となり立つリヴェリアの詠唱文。そこでスピネは決断した。

 

『モデスト! 抑えていてください!』

「っ!!」「ベルっ!」「大丈夫です……!」

『【開帳せよ、機構の神剣よ。我は神を継ぐ者、汝を知る者、新世を織る者】! 抜剣、【機構の神剣】』

 

 煌々と煌めく蒼い蒼い光。それは、かつて【ロキ・ファミリア】の眷族たちを吹き飛ばした光よりもずっとずっと強い光だ。受ければ命はない。障壁とて、持つか怪しい。だが、それでも。

 

「【我が名は……! アールヴ!!】」

 

 女王は不退転である。その目には確かな自信。アレさえも吹き飛ばして、己こそが最強の遠距離技を放てるのだと証明するとでも言うつもりなのだろうか。

 

『【星となって散りたる友に捧ぐは我が至高の剣、未だ至らぬこの身、散ってなお振るう絶対の一閃。積み重なる死した友の声を以てその刃を為し、いずれ生まれ来る命の声を以てその柄を為す。万物を意思の元に断滅せよ】!』

 

 なお煌めきは光を増す、もはやそれは神話の神々の如く。されど、リヴェリアの吸った魔素もまた膨大な量に達している。【クロッゾの魔剣】二本。【ヒルディスヴィーニ】。その他戦士たちの雄叫びの分だけ、【九魔姫】は強くなる。

 

 民の声援が王を支えるように、戦士の叫びは王を強くする。そして、高らかに【九魔姫】は膨大な魔力の全てを掌握して。

 

「【ヴァース・ヴィンドヘイム】!!」

『……ぁ……っ!! 【ステラカリバーン】ッ!』

 

 スピネは一瞬、呆けた。それはリヴェリアのその魔法に魅せられたのか? 魔力量に魅せられたのか? いいや、違う。見てしまったからだ。その攻撃魔法と己の必殺が放たれている、轟音と揺れで誰も立っていられないほどの状態の中で。

 

 ベル・クラネルが、体軸を一切揺るがさせずに足に光を溜めていたのを。

 

 激突した二つの必殺。力の重なりがモノを言う二つの力が衝突し……アーティファクトの重なりより、意思持つ人の力が優先されて、【ステラカリバーン】が消し飛んだ。

 

 そのままの勢いで【アブソリュート・モデスト】の胸元に直撃した【ヴァース・ヴィンドヘイム】は、女神像を四散させた。だが、奥のスピネには届かない。

 

 そして、リヴェリアが地に膝を付くと同時……白い疾風が飛び出した。

 

『うぁ……っ! 行けっ! 行け!!』

「ベルの道は……邪魔させない!!」

『ッ……! やめろぉっ……!』

 

 白兎が迫る。優しい風に道を守られて。アーティファクトが迫ろうとする。激しい嵐にその道を塞がれた。ベルは力と想いをその短刀……【ヘスティア・ナイフ】に乗せて。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!!」

『……これで! 落ちろ!!』

 

 切り札の中の切り札、【ヴァーテクスコロニー】。咄嗟に引き出した最後の1手は。

 

「ふっ……さすがは、レフィーヤ、だ……」

「リヴェリア様!?」

 

 リヴェリアは己の弟子を心から称賛した。

 

『なっ……今……確かに当たってっ!!』

 

 なぜならば。光はベルに……いや、ベルの周りを衣のように包む光に当たって……何事もなかったかのように効力を失ったから。

 

「光を遮るのは……いつだって【ヴェール】ですよ。スピネさん!」

 

 そう、遠くから笑うような声がした。コロニーの放つ光は実態を持たない。人どころか、小石も押せない。消し飛ばすか、穴を空けることしかできないのだ。

 

 故に、【ヴェール・ブレス】という一枚の膜が、3秒という一瞬にしては長すぎる時間、コロニーの光を受けられるのであれば、突破は容易なのだった。

 

「これで! 終わりです!!」

『ぅぁぁぁぁあっ!!?』

 

 咄嗟に振るった【機構の神剣】。横薙ぎのそれを、低く、低くしゃがみこんで避けたベルの反撃のナイフは正確にスピネの首元を裂いていた。

 

「やっ……た?」

『ぁ……ふふ……ごーかく、です……!よくやりました……!!』

「ありがとうございました……!」

 

 その体が地に伏せ……ついに消えた。

 

 スピネ・モデスト──敗北。

 

 

 

『我が詩は重奏を終え、図らぬ内に双奏さえ結末を迎えた……なれば我が詩、我が死が残るのみ……最終楽章はすぐそこだ』

 

そう、魔法陣は笑って言い放つ。そう、戦いはまだ終わっていない。

 

 

 

 

 




生存報告回のつもりが長くなってしまった。

五等分のスピネ(今回の要約)(4人だけど魔法陣入れて5人なんでセーフ)



なぜしれっとフレイヤたちは竈を設営しているのかなー?十七巻ミームのせいだね!!だってすぐそこにいるじゃん!不吉な感じで呪ってくる体乗っ取りまでしてくる感じのアイなんとかリングさんがさぁ!!

というわけで今回もありがとうございました。次回更新は急いでやっても2週間後になりそうです。

オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…

  • これからも出してええんやで(寛容)
  • オリキャラ2人はいかんやろがい!
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