AF使ってダンジョンに潜るのは間違っているような…   作:aF

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とりあえず短めに。なぜならば忙しいから。許してください!!



第三十一話 【未完に捧ぐ詩】・3

 全てのスピネが散って、最早残るのは男が変じた魔法陣ただひとつ。その現状に男は頷いた。

 

『人は越えていく、か』

『だからお任せしたのですよお兄様』

『そうか……俺よりも、あいつらの方が信じられたか?』

『いいえ、お兄様と同じくらいですよ。さすがにお兄様よりも、とは』

『そうか……ごめんな、情けない兄で。これが終わればお前はきっと……』

 

 そんな独り言にしてはあまりにも声のトーン、話し方からして異なるような言葉が魔法陣の中から聞こえる。

 

『いいのですお兄様。元よりそのつもりだったのです……お兄様がやってくださらなければ私自らやっていました』

『…………本当に、情けない兄だ』

 

 魔法陣の前に立つベルとアイズの前には鮮明に見えていた。寄り添って立つ一組の男女の姿が。

 

 ……ナイフを構えた軽装の男と、レイピアを片手に白い風を巻き起こす女が。

 

『ベル……お前が越えるべきは、俺でも、あいつでもない。いつだって人の持つべきもの、そして越えるべきものは意思だ』

『意思さえあれば……私たちはなにかを成せる。成したことが人のためになれば英傑と、人を害すのなら絶対悪と、そう呼ばれるのはわかりました』

『人の意思を踏み、先へ進むことを成長というのだと俺たちは確信した』

『それが正しいかどうかなんて、まだわかってもいないのですけれどね』

 

 魔法陣の中から、ただ言葉をベルへと放つ2人。スピネという存在を成り立たせてきた、いわばオリジナルの2人は。

 

『俺たちは答えを探している」

 

 最後の問いを発するために魔法陣から足を踏み出していく。

 

「貴方の望む英傑……貴方は答えを得ているはず。どうか、教えてくださいな」

 

 降り立った2人は、対する2人と同じ。【魂割朋友】の本質は魔力にモノを言わせた『工房』による肉体生成に魂を付随させることだ。今までの戦いは全て、この戦いのためのもの。

 

 ベルの癖、アイズの癖。動き、特徴、ステータス。その全てを等しくする。

 

 自分に打ち勝つ。そのために必要なのは、なによりも強い【意思】なのだろう。

 

 

 

 魔法陣が強く強く光り輝き、ベルとアイズ、男と女が向かい合うその広場は魔法障壁により隔離された。さらにステージは等分に分けられ、ベルと男、アイズと女に分けられる。

 

 少し遅れて、大量の青の魔法陣が街中に出現する。そこから現れたのは、迷宮都市の冒険者と同じ姿をした存在。

 

「邪魔立ては要らない。彼らにも越えるべき姿がそこにある以上は試練を与えよう」

 

 激突する空の己とオリジナル。都市中に同じ光景が広がって、少しして剣戟の音が激しくなった。向かい合う白髪のベルと黒髪の男は、戦う前に話していた。

 

「なんと呼べば、いいんですかね」

「意思は違えど髪以外は姿も能力も同じだからな……好きにしろ」

「じゃあお兄様で」

「勘弁してくれ、ベルでいいだろうよ……」

「わかりました……いや、わかったよ『ベル』」

 

 ベルと『ベル』は緊張感もないような感じで話した後……

 

「「【ファイアボルト】!!」」

 

 砲声。

 

 ぶつかりあった炎雷は消え……互いの目の前に互い。

 

 ナイフとナイフがぶつかり合う、敏捷を用いて自由自在に駆け回る2人の戦いは長くなりそうだ。

 

 

 

 そんな様を2人して眺めやるのはアイズとやはりこちらも黒髪の女。

 

「あちらに習って……『アイズ』?」

「ふふ、それで構いません。アイズ」

「貴女は何者なの?」

「私はお兄様の妹ですよ?」

 

 なにを当たり前のようにと笑って返す『アイズ』。己はこのように笑っていただろうかとアイズは己を振り返ることになっていた。

 

「……スピネ、とはなに?」

「スピネ・モデストは私とお兄様の愛の結晶です」

「……? 兄妹で?」

 

 なにかとんでもない勘違いが起こっている気がする受け答えだが、『アイズ』はその後こう続けた。

 

「えぇ! ……と言えたらなんと誇らしかったのでしょうかね? アレはお兄様の摩耗した魂を私の魂で補強して生まれた人格です……お兄様の元あった男性的な面が私の女性的な面と共に打ち消され、中性的になったのでしょう」

 

 明かされる【スピネ・モデスト】の情報。転生神は魂の補強のためにネメシスのラスボスたちを心に住まわせた。

 

 そもそもなぜ補強が要ったのかという問いの答えのうちの1つはそこにあるのだ。東城誠の魂を転生させるに至った理由、それは。

 

【死亡と同時に妹の東城凛の魂が東城誠の魂と融合して異常な魂になってしまったため】であるのだ。

 

 あまねく神の中でも高位にある原初の空……それを統べる神の名を【アイテール】。神アイテールはそれを見抜いて、通常の輪廻に入りきらないそれを除外するために転生神を騙って彼に接近。

 

 引き裂かれた紙のような魂にどうにかへばりつくもうひとつの魂、という状態のそれの補強をするために土台として機能する『工房』を与え、留めるガムテープ、あるいは釘のような役目としてメイシアやベルフォメットで補強した。

 

 アイシィレンドリングは想定の範囲外であったのは確かな事実なのでそれきりはどうしようもなかったらしいが、それ以外はそんな理由のもとで今のイカれた魂を持つスピネになっていったらしい。

 

「とまあ、私が知るのはこの程度でしょうか」

「十分……だよ」

「そもなんで貴女がそれを気にしたんですか?」

「私が知りたかった……それじゃだめ?」

「十分ですよ」

 

『アイズ』はアイズの前に立ち……そして突きの姿勢で構える。

 

「お兄様たちはあんなに激しく楽しんでおられる……美しい。私もあれをもっと見ていたい……ので」

「……?」

「一合、一合で決めましょう?」

「……なる、ほど。いいよ、一発で決める、勝つのは私」

「いいえ、私です」

 

 風が渦を巻き始める。

 

「「【目覚めよ】」」

 

 意思を持ち操られ始める大気。2人の刃に風が集い始める。

 

「「【吹き荒れろ】」」

 

 途端、暴風。2人は互いの目を見合って、笑う。

 

「「【リル・ラファーガ】!!」」

 

 暴威を解き放つ、至高の突進突きが二発。剣先同士をぶつける、そんな奇跡さえ起こして拮抗する。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「お兄様……私に力を……!」

 

 押し始めるのは『アイズ』、次の瞬間。

 

 ゴォォォォォン……ゴォォォォォン……と。

 

 響く二重のグランドベル。微かに視線を逸らすことも出来ないが、それはベルの希望の音色。『アイズ』がお兄様と呼ぶ存在もまた鐘を鳴らしているが、そんなものはどうでもいい。

 

「私は……ベルを……そっか、そうなんだ」

「お兄様……素晴らしいです! やぁぁぁぁぁあっ!!」

「ん……もう、拮抗なんかさせない」

 

 風の勢いが途端強まる。いや、強まっただけではない。明らかに、『アイズ』の風が弱まっている。

 

「意思持って貴女を討つ……そうだね、こんなことでもいいのかもしれない……モンスターを嫌わなくても……いいのかもしれない」

「風が……! お兄様のご期待に添えない? なにが起こっている!?」

 

 風は『アイズ』の手を離れアイズに渡る。アイズのまわりを巻く風、その威圧は渦巻く風の中、帝位にあるがごとく。

 

「風の制御。全部私が貰う……!」

「なっ……! まずい……!」

「もう、遅い!!」

 

 風が、白い風が背を押す。真っ直ぐに突きだされた剣、渦巻く白風がついに『アイズ』を風に巻く。『アイズ』は飛ばされ、風を用いて受け身を取ることさえ許されず、障壁に激突して落ちた。

 

「うぁぁぁぁぁあっ!!? あ……ぐっ……」

「私の……勝ち」

「……負けですか。お兄様……凛はご期待に沿えましたでしょうか?」

「貴女も自分のためのなにか……探したら?」

「お兄様に尽くすことが私にできる全てですから。貴女は【フレイヤ・ファミリア】の者たちにそれをいいますか? そういうことですよ」

「……そっか。じゃ、一緒にベルの戦いを見よう」

「えぇ……ベルくん。どうか、どうか……お兄様の予想を越えて」

 

 一瞬にて勝負をつけた、並び立つ2人のアイズは、見守ることにした。己の中の、己だけの英雄。どちらが勝るのかを。

 

 

 




【最終楽章 貴方と歌う独唱】

自分を、越えろ。意思を以て。



感想など貰えると嬉しいです!!それではまた次回にお会いしましょう!

オリキャラ二人目、【文明の先駆者】ルチル・クロフォード。白衣茶髪赤目眼鏡系研究になると饒舌な無口おねーさんを…

  • これからも出してええんやで(寛容)
  • オリキャラ2人はいかんやろがい!
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