数百年生きる妖怪がVtuberになった件   作:鬼怒藍落

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 執筆中の画面見たら結構前に書いて投稿しなかった妖怪×Vtuber物という闇鍋作品があったので供養として出させて貰います。


前日譚

 ――――『妖怪』

 人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的・非科学的な存在のこと。

 (あやかし)、または物ノ怪(もののけ)魔物(まもの)とも呼ばれる常識で図ることの出来ない化物達。

 

 ――鬼などと呼ばれる超人的な力を持つ者もいれば、天狗と呼ばれる自然的な力を操る者もいるし物にとりつきそれを動かす者もいる。

 ぬらりひょん、だいだらぼっちに付喪神、河童に九尾にエトセトラ。

 

 少し調べれば出てくる者に、とてもマイナーな妖怪達……それは何度も日本人の心をざわつかせ、恐怖を与え数多の娯楽を提供してきた。

 こんな妖怪がいればいい、こんな妖怪がいたら怖い、こんな妖怪がいれば面白い。そんな感情から作られ生まれてくるそれらの中に、伝説的な妖怪が居るのだが、今宵はそのモノを紹介させて頂こう。

 

 その妖怪の名を浮世鴉(うきよからす)

 そう呼ばれる妖怪は、数多くの歴史の中で暗躍し人々を恐怖に落とし、ある地域では絶対的な神として信仰されていた。

 ありとあらゆる物を演じて、物語を綴るとされる大妖怪。

 

 曰く……その妖怪は人畜無害な青年である。

 曰く……その妖は絶世の美女である。

 曰く……その物ノ怪は、とても歳をとった老人である。

 曰く……その魔物は、つねに何処かで物語を語っている。

 曰く……その化物は安倍清明にも勝利したと。

 曰く……その神は――曰く……曰く……曰く……老若男女その全てに化け、その姿をついぞ明かさなかったその妖怪は、時代の流れと共に名を消していき、ついには自然とその名は語られることがなくなった。

 

 語られなくなって以降、江戸時代まではまだ残っていた名も自然と興味を示されなくなり、気付けばその力は弱まって、その妖怪・浮世鴉は消えたとされた。

 

 だけどもし、その妖怪が現代で生きていたら? 

 それはきっととても面白い話だろう……だからそうここで紹介させて貰おうか―――。

 

 そう今から紹介するのが、紛れもない浮世鴉の素顔。

 何世紀もの間その顔を一切明かすことがなかった妖怪の真の姿である!

 

                  

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ! まっ――ちょ!? ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」 

 

 電気の消えた和室に届く叫び声とその後に続くコントローラーを投げる音。

 声の主は灰色の髪をした143㎝ぐらいの少年。

 そいつというか俺はその声のせいで、対戦相手である少女に恨めしそうに睨まれていまい、何かを言おうとしたのだが、その前に先手を打たれてしまう。

 

「鴉様五月蠅いです、静かにしてください」

「だって雫!? こんなの無効だろ!? 即死技ってなんだよまじで!」

 

 ゲーム画面に表示された『死』という文字。

 これがもし足掻いた上で表示されてたのならいいのだが、これが出てきたのは対戦が始まってほんの数秒。

 

「本当に五月蠅いですよ。あと文句とか言わないでください、勝ちは勝ちです」

 

 無表情ながらも親指を突き上げて煽ってくる同居人。

 いつも口喧嘩には勝てないので、戦略的撤退を選ぶのだが、やっぱりこうなんか言いたくはなる。

 

「……いやぁ、文句はないんだけどさぁ――でもなんか違うじゃん」

「知りません、これで今日は焼肉ですね」

「寿司が……回転寿司が」

 

 このゲームの発端、それは今日の晩ご飯はどうするかというくだらないモノだけど、今日は凄い回転寿司に行きたい気分だったし、なんとしても負けたくなかったのに、何故こいつは即死技なんて。

 

「じゃあ約束ですよ、では私は学校に行ってきますね」

「あー……もう朝なのか、夜はいいとして昼食はどうするんだ? 今日俺作ってないぞ」

「ふっこんな事もあろうかと私は昨日から準備していたんで……あと昼食もつくってあるので勝手に食べといてくださいね」

「あー了解、いってらー」

 

 テレビとゲーム機の電源を落としてカーテンを開けてみれば数日は当たっていなかった太陽光が俺の視界に攻撃してくる。それを鬱陶しく感じながらも、最低限の光を浴びるために伸びをして再びこの場を暗室へ。

 パソコンをつければ無駄に高かったPCモニターが目を刺激するように光っていて、この暗室を照らし始める。

 

 

  

  

#太郎丸45世                                     
一般鴉A     今日 7:54   
おはようなのじゃー  
太郎丸45世  今日 7:56   
おはようでござる鴉氏、いい天気ですなぁ
一般鴉A     今日 7:57   
引きこもりに向かって朝日の話はNGじゃろ、心が死ぬぞ儂
太郎丸45世  今日 7:57   
はは、確かに我も死にたくなってきましたぞ? それはそうと鴉氏Vtuberってご存じでござるか?

 

 ぶいちゅーばー? 何だそれは? 新しい楽器の一種か? 

 ネッ友である太郎丸さんに伝えられたその見知らぬ単語。それに妙に惹かれた俺は、ちょっと詳しく彼に聞いてみることにした。

 

 

#太郎丸45世                                     
一般鴉A     今日 7:58   
楽器の一種っぽいがなんじゃそれは? 儂けっこう演奏できるがそんなの初めて聞いたぞ
太郎丸45世  今日 8:02
……我、Vtuberを楽器と間違える人類初めて見ましたぞ、しかもチューバはtubaですし……もしや鴉氏英語苦手でござるな

一般鴉A     今日 8:03   
五月蠅いのう、どうでもいいじゃろうそれは。ともかくはよう教えてくれ
太郎丸45世  今日 8:05
……まってくだされすぐ布教用のリンクを持ってくるでござる
奴良瓢鮎CH
【本人切り抜き】面白瓢鮎図【妖ぷろ/奴良瓢鮎】
一般鴉A     今日 8:09   
これをみれば良いのか?
太郎丸45世  今日 8:11
yesでござるもっと見たければ言ってくだされ、我のおすすめをいくらでも送るでござるから。絶対鴉氏もはまると思いますぞ!
一般鴉A     今日 8:13   

そうかそこまで言うのなら見てやろうではないか! つまらないと思わせたら呪ってやるのじゃ! ではちょっと見てくるのでまた夜ぐらいにな

 

 そこまで会話したところで俺は動画のタイトルをクリックしてからタブを閉じ、彼がおすすめしたという動画を見てみる事にした。だけど気になるとはいえそこまで期待は出来ない、だって期待してつまらなかったら最悪だからだ。精々俺を楽しませてくれればいい、そんな思いのまま俺はその動画を視聴し始めたのだが……。

 

「我が名はニュースリー、ゆくぞ――ダークボール!」

「ギャはハハハハ!」

 

 その切り抜き動画という物の中にあった昔同居人とやったゲームのキャラの物真似で吹き出してゲラゲラ笑い。またある時は、そのVtuberの過去のライブのリアルタイムのコメントを流しながら一緒に盛り上がったり、気付けば別の切り抜き動画を探してから視聴するという事をやっていた。

 

 そして同居人が帰ってくる頃には…………。

 

「しゃー! 妖ぷろのくじ一等当たったぞぉぉしかも推しのだ勝った儂の勝ちー!」

 

 馬鹿みたいに嵌まってしまって、帰ってきた雫からはやばい奴をみるような目で見られてしまっていた。だけどそれは気にしない、それどころか今日行く予定の焼肉屋がVtuberとコラボしていることを知り、余計にテンションが上がってあんなに食べたかった回転寿司の事も忘れてしまっていた。

 それに数万使ってしまったが、推しのフィギュアを当てれたので今の気分は最高潮。昔とても強い陰陽師と戦ったとき以上の興奮だ。

 

 

 そしてそんな事があってから一年後、見事に沼に堕ちて使った金額はもう思い出したくないほどに……そして今日の推しの配信が終わった時。

 

「……Vtuberになろう」

 

 同居人が完全に寝静まった深夜二時、人知れず俺はそんな事を決意した。

 そうと決まったらそして丁度良く、俺が推しているVtuber事務所の妖ぷろが、なんと男女一名ずつを3期生として募集していたのだ。

 今しかない。そう思った俺は昔買ったカメラを押し入れから取り出して、オーディションに必要である何か妖怪を演じた動画を送ることにした。

 演じながらやれば何をやっても構わない、だけどただ一つ何か輝けるものを見せて欲しい。そんな専用サイトに上がったそれを見て、久しぶりに勝負を挑まれたと感じた俺は、全盛期の頃の自分を全力で使ってみることにした。

 

 

 俺は……いや、儂は演じる妖怪だ。

 全てを演じて何かを語る言霊使い。ある時は他の妖怪の姿を借りて、ヒトリの生を演じきった生粋の役者。歌も踊りも必要に応じて身に付けた、ありとあらゆる生き様を魅せる妖魔。

 それが儂だ。

 

 そう決め過去を思い出した俺がオーディション用に撮ったのは、自分の過去に使っていた名乗りと、一時期本気を注いでいた三味線を使った妖ぷろメドレー及びその歌動画。和と洋を組み合わせて作られた妖ぷろの曲達をアレンジし混ぜながら、与えられた三分間に全力をかけた。

 

 

 そしてそれに昔描かれた絵を貼り付け気合いを入れて編集し、HPへとその動画を送る。

 そして今からは連絡が来るまでの待ちの時間。

 その期間は過去類をみないくらいに時間が長く感じてしまった。数世紀を生きている自分にとって、1日というのは凄い速さで過ぎ去るはずなのにこの時ばかりは、本当に時間が遅く流れ、暇潰しになるはずのゲームにも一切手が付かない。

 

 そしてそんな生活が一ヶ月ほど続いたとき。

 俺の元にある一件のメールが……。

 

 




数話は書くけどその続きは気が向いたら書く……たぶん。
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