数百年生きる妖怪がVtuberになった件   作:鬼怒藍落

38 / 43
ばれへんばれへん


カオスなギャグゲーも程々に

 亀とロケットが月に着いた直後、訪れるのは静寂。

 横のモニターにはコメントが流れており、状況的に似たようなコメントが多い。勝者はどっちだとか、どっちが勝ったとか……あとは少しのネタコメ。

 これで負けた方には罰ゲームがあり、その場合儂は絶対にやりたくないVRホラーをするはめになる。だけど、真剣勝負の上ならという思いもあり、こんなに熱い対決の末なら受け入れられ――るかもしれない。

 

[どっち勝った!?]

[ほぼ同時だったぞ!]

[……未だかつてこのゲームでこんなに熱くなった事はあっただろうか?]

[ないだろ]

[どっち勝っても面白い]

 

 流れるコメント、緊張し息を呑む儂。

 儂が操作するカツラ姫は画面の中でやりきったような表情をしている。

 ――そしてセレネ様のカツラ姫はというと……。

 

「ぬ、同じ表情?」

「あら、これは……」

 

 その表情を確認し、画面を操作して進めれば今回のリザルト画面に移った。

 このバカゲーはやはり色々凝っているのか、リザルト画面もネタ満載な上にステージに到達した時間まで記録されている。

 それを見る限り、最初はセレネ様が優勢であったが、亀の所で並び初め宇宙空間で完全に合流――つまり、どういう事かというと。

 

「引き分けか……これは」

「ええ引き分けのようね。クリアタイムも同じだし」

 

 画面に映し出されるどろー……という文字。

 つまり今回の勝負は引き分けということであり、どっちも勝ちという事になる。

 

[このゲームで引き分けが起こるなんて……]

[ありえるのか?]

[ありえるもなにも結果がそうだし]

[つまりこれはどうなるんだ?]

 

 コメント欄にも疑惑の声。

 唐突に決まったとはいえ、了承した以上どっちも勝ちで罰ゲームなしというのはかなりつまらない。

 

「セレネ様よ、この場合どうするのじゃ?」

 

 ホラゲーはしたくないが、楽しませるためにも何かはしなくてはいけない。だからまたコラボできる前提の話になってしまうが……次回に持ち越しというのが理想。

 だけど、それをセレネ様が受けてくれるかどうかは未知なのだ。

 儂としてはまた遊びたい。だから、そうなって欲しいとは願うが……。

 

「そうね、この場合は……次回に持ち越し、じゃ駄目かしら?」

「……のじゃ?」

「その声的に鴉さんも同じ考えのようね」

「よくわかったのう。じゃが、よいのか?」

 

 セレネ様はかなりの人気VTuber。

 必然的に案件などでの仕事も多く忙しいだろう。それに今回は彼女がから誘ってくれたとはいえ……本来は叶わぬコラボ、相手方の社長が乗り気だったからいいものの、今回の反応が良くなければもう叶わない。

 

「なに、もしかして嫌なのかしら?」

「いや、儂はもっと主と遊びたいぞ」

「ならいいじゃない。そんなに不安ならアンケートでもとるわよ。というかこのコラボまた見たいかしら魔物達? ――鴉さん、見たいそうよ」

「そうか――なら儂も聞くぞ。マヨイビト達よ、また儂らの宴に来てくれるか?」

 

[あたりまえだよなぁ!]

[また見たいです]

[ロリショタロリが見れるなら]

[だからなんだよそれw]

 

 見えるコメントは好意的なモノで溢れてる。

 なら不安になることはないだろう――初めての箱外コラボ、視聴回数などは後での確認なるが、最終的な同接は3万を超えた。

 そしてコメントを見る限り、皆が楽しんでくれただろう。

 

「なら決まりじゃ! またコラボするぞセレネ様!」

 

 そして儂は満面の笑みで配信を閉める為にそう言った。

 流れは完璧、それにこれならまた彼女の遊べるから……と、そんな事を考えていたのだが彼女の最後を待ってみると、

 

「えぇ、その時はVRホラーの夜巡りさんね」

 

 予想もしてなかった一撃を食らわされた。

 

「ふぁ!?」

「では、魔物共そしてマヨイビトの皆様……また次の配信でね」

「まっちょ、セレネ様!? それは聞いとらんぞ!?」

 

[セレネ様配信閉じたぞ]

[草]

[逃げられない]

[YOUDEDT]

[こんにちロリ]

 

 この流れ的に配信は終わり。

 無理! とかは絶対駄目なので、俺はVRホラーに挑まなければならぬのか……やじゃぁ。

 

「と……とにかくマヨイビトの皆様よ、今日の配信はこれで終わりじゃー。また次の配信でなー」

 

[死ぬほど声震えてて草]

[ぐっばい鴉様]

[またロリ化ぁ]

[鴉様がロリ化してぇ! FAがまた増えるぅ!]

[雪椿:任せて]

 

「母上ぇ!?」

 

 そこで配信は終了。

 とりあえず枠を閉じて、数秒間。

 落ち着くために深呼吸をした後の事……。

 

「VRホラーって……やばそうじゃなぁ」

 

 すっごい遠い目で儂はそう呟いて、明後日の方向を見つめながら通話アプリをまた立ち上げた。セレネ様と話す約束があったし、少し聞きたい事があるからだ。

 数回メッセージを取り合った後、通話を了承されたのでかけてみると。

 

『聞こえるかしら鴉さん?』

「聞こえてるぞ、セレネ嬢」

『……そっちが今の素?』

 

 ……そっちが?

 ちょっとどういう事か分からなかったが、普段の素はこんな感じなのでこのまま話せばいいだろう。

 

「まあ、そうだな。不都合あるか?」

『ないわね、というか予想してなかったイケボでビックリしただけよ』

「草、まあ俺の声はいいからな」

 

 そういう妖怪だし、どんな声でも出せる俺は基本的に聞きやすい声を出している。素の声はショタに近いが、人間を演じている以上は今の声がやりやすい。

 

『相変わらずの自信ね安心するわ』

「俺と会ったことあるのか?」

『えぇ、かなり前にね』

 

 へぇ知り合いだったのか、それならコラボを誘ってくれたときに言えば良かったのにな。そんな事を思いながらも、俺は少しの違和感に気付いた。

 俺は人間での仮の身分自体は作っているが、VTuberを始まるまでは殆どニート。

 外にも買い物をしに行くぐらいで、知り合いなんか出来る筈がない。

 

「……主、何者じゃ?」

『やっぱり私としてはこっちの方が安心するわ』

「まさか妖怪か?」

『どうかしらね、大妖怪浮世鴉様』

 

 推しの一人が妖怪だった件。

 ……じゃなくて、それなら何故接触してきた?

 わからぬが、相手には目的がある筈なのでそれを慎重に聞かなければならない。

 

「要件はなんじゃ?」

『そうね、それは会ってから話しましょう。招待、受けてくれるかしら?』

 

 与えられる選択肢。

 それに対して儂は――。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。