数百年生きる妖怪がVtuberになった件   作:鬼怒藍落

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襲来筋肉エクソシスト

 

 私の目の前にいる因縁……とまではいかないけど、面倒くさい相手。

 かなりの巨漢で筋肉を備えたそいつは、天敵であるエクソシストだ……まぁ、色々あって彼はソルの部下になってるけど。

 

「見る限り、チャームを使ったな。予想通りだが、遂に尻尾を出したか」

「貴方が来たから仕方なくよ、彼に正体がバレるわけにはいかないもの」

「……貴様、その人間に何をするつもりだ? ソル様曰く、攫おうとしているとは聞いているが」

 

 あの馬鹿、マジで絞めるだけじゃすまないわ。

 一回は潰す。絞めたのは悪いと思うけど、彼との密会を邪魔してくるのは許せない。それになんだ? 私が彼に危害を加えると思ってるのか? ちょっと久しぶりにあったせいで血を吸いたいなぐらいは思ったけどそれ以上はなにもしないわ。

 

「本当にただ会ってただけよ……それともなに? 私が彼に何かするとでも?」

「それはないだろう。だが、貴様の姿で身バレしてみろソル様に迷惑かかるだろう」

「……相変わらずのソル信者、あの子も厄介なの部下にしたわね」

「あの方を愚弄するな滅するぞ」

「貴方に言われても怖くないわ……それ以上に怖いのがあるもの」

 

 ……さっき経験したばかりだけど、鴉さんの本気はヤバかった。

 このエクソシストは最強格、だけど通話越しで本当に死ぬと思ったのはさっきが初めて。本音を言えば、彼にあんな殺意を向けられるのは心の底から嫌だったけど、忘れていただろうし誘い出すにはああいう態度を取るしかなかったから仕方ない。

 

「そんなに疑うなら私は帰るわ、お優しい貴方の事ならこの人に何かしないと思うし任せるわね」

「やけにあっさりひくな」

「こんな場所で戦うのは迷惑になるでしょ? それに、物足りないけど話せたもの……それだけで今は満足なの」

 

 死んだと思っていたヒトに会えた。

 それだけでどれほど幸せか、しかもその相手は今は同じ仕事をしていて、機会さえあれば何度も話す事が出来る。だから今はこれでいいのだ……名残惜しいが、連絡先はあるし問題なし。

 

「貴様がそこまで想う人間か、難儀だな」

「そうね。で、後は頼めるかしら? この人は私が吸血鬼だとは知らないから上手くやって頂戴」

 

 ま、全部嘘だけどね。

 なんならこの人の変化が完璧なおかげで彼に妖怪だとバレてないみたいだし、ここは嘘をつこう。エクソシストに任せるのは心配だが、彼なら乗り切れるはずだ。

 なんか昔以上に擬態が上手くなってるし、信頼していい。

 

「義理はない。だが、急に来た詫びだ今回はその言葉に乗ってやろう」

「じゃあ、会計も任せるわ。邪魔した罰よ」

「…………承知した」

 

 さぁて、あとはソルね。

 あの馬鹿絶対に一回は灰に戻すわ。

 そんなこんなで居酒屋から離れた私は、ソルと一緒に住んでいるマンションに戻り今頃私に帰りを待っている弟の為に魔力で槍を練った。

 

「姉様おかえりー! 早かったねなんかあった?」

「白々しいわね、一回灰になりなさい?」

「……姉様が先に接触したのが悪いよね、知ってる嫉妬って最強の感情なんだよ?」

「そっちこそ、弟は姉に勝てないことを自覚しなさい」

 

 その瞬間、メイド達によって結界が貼られる。

 それが開始の合図となり、私は槍をソルは黒い剣を構えて突貫してきた。

 今宵始まる吸血鬼同士のラグナロク、鴉成分を摂取した私は最強なので負けることはないだろう。

 

――

――――

――――――

 

「大丈夫か?」

 

 目が覚める。 

 テーブルから顔を起こして、周りを見ればそこは居酒屋だった。

 儂、何してたっけ? とか思いながらも記憶を辿れば睡眠系の技を食らったことを思い出した。

 なんで急にと思いながら微睡む意識の中で横の巨漢の存在に気付く。

 

「……誰だ?」

「俺はダンテ、あの吸血――セレネ殿に頼まれて貴方の介抱をしていた。どうやら酔い潰れたようで時間がないからと任せられたんだ」

「……そうか? 記憶ないが」

 

 感じるのは西洋の神の加護。

 記憶を頼りにそういう存在を思い出す。

 確かこういう奴らは西洋版の陰陽師、エクソシストという奴だろう。

 なんでエクソシストがここに? と思ったが、それよりセレネの安否が気になった。

 

「……セレネ殿はさっきもいったが用事があるんで帰った。酔い潰れた貴方が心配だったようで俺を呼んだんだ」

「そうか、悪いな。久しぶりの酒で飲み過ぎたみたいだ」

 

 癖、少しの言葉の揺れから察するにそれは嘘だろう。

 そもそも吸血鬼である彼女とエクソシストが親しいなどないだろうし、セレネを追って来た……と思うのが自然。

 だがまあ、知り合いなのは確かだろうから信じてもいい。

 ……あと、この様子だと俺はちゃんと人間だと思われてるみたいだな。

 だって、バレてたら俺も討伐対象だし。いや本当に七尾と理沙にあってから変化強めて良かった。あれなければバレないと思って気を抜いてたから。

 

「それにしても悪いな、介抱して貰って」

「いや気にするな……記憶も改竄されたかあの吸血鬼め」

 

 最後は小声だったが俺の鴉耳は聞き逃さない。

 勝手な予想で話を合わせているが、これは徹底した方が良さそうだ。

 ……あと、今思ったんだがこの声どっかで聞いた事あるな。

 

「失礼かもしれないが、あんた配信してないか?」

「しているが、もしや視聴者の方なのか? それにしてもよく分かったな」 

 

 ビンゴ、それにこの声だと多分この人はきっとあの箱の人だ。

 予想通りだったら男の推しの人だろうし、知り合えるの嬉しいかもしれない。

 

「いや、視聴者でもあるが多分同業者……妖プロ所属の浮世鴉だ」

 

 本来なら外でこんな事はいえないが、ここは個室で結構防音がしっかりしているっぽいので大丈夫だろう。

 

「……!? 光栄だ貴方に会えるなんて」

「っと、どうした急に?」

「失礼、推しだから驚いただけだ。俺の上司に勧められて見たのだが、嵌まってしまいよく見ている」

 

 まさかのエクソシストがマヨイビトなのは草。

 というか、俺の配信の視聴者層どうなってるんだよ。

 今の所かなりカオスだぞ?

 

「俺は世界書庫所属のカイザ・ルカノールだ。一応裸の王様というキャラでやらせて貰っている」

 

 やっぱりあっていたが、まさか本当にマッチョだったとは。

 確かにあの筋トレ知識はかなり役立つし、本人も詳しい人だとは思ってたが……まさかエクソシストだとは思えない。

 というか、俺が知り合うVTuberことごとく普通じゃないの何で?

 まともな人間なの今の所鶫と仙魈しかおらんぞ? ……まぁ先輩に関しては、坂田の末裔らしいので普通の人間っていっていいかは分からないが。

 

「だと思ったよ、声が格好いいし記憶に残ってる」

「それは貴方もだ。あのホラゲー配信の時のイケボが地声なのだな」

「……まあな、そうだ何かの縁だし連絡先交換するか?」

「ああ、頼む。こちらとしてもいつかコラボしてみたいと思ってたから助かる」

 

 とりあえず通話アプリの連絡先を交換して、俺はカイザ・ルカノール改めダンテと知り合いとなった。

 人間だと思っている以上、下手に正体はばらせないが……少しは良い関係を築こうか。

 

「それより、大丈夫か家には帰れるか?」

「まあ大丈夫だ。あ、でも終電が近いな……どうするか?」

 

 人間に徹するとなった以上、京都まで飛んで帰るのはバレるから不可能。 

 だから電車で帰ろうと思ったんだが……時間的に帰れない。

 

「俺の家に泊まるか? 近いし一夜ぐらいは貸すぞ」

「……あーどうしよ」

 

 流石にエクソシストの家にいくのは不味い気がするが、かといって歩いて帰るのは無理。だから俺は、めっちゃ頑張って変化することを決めて彼の家に泊まることにした。

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