魔法少女リリカルなのは 〜悪魔になった転生者〜   作:リーグルー

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第九話

「ふぁ………眠っ……」

 

 

 

高町に連行されてテスト勉強に付き合わされるようになってから二週間後の放課後。俺はいつも通りに、ふらふらと歩きながら帰っていた。………テストの結果?テスト勉強とやらに居た奴等は大体八割は取ってる筈だぞ。高町もそんな事言ってたような気がするし。

 

 

 

「………何でお前らがこっちに居んの?」

 

 

 

半分寝ながら歩いていた俺は、視界に入ってきた見知った二人の人影にそんな事を聞く。

 

 

 

「どうして?」

 

 

 

人影のうちの一人――――月村は振り向くとそんな事を聞いてくる。………いや、どうしてって、

 

 

 

「何時も見ないから」

 

 

 

「あんたが周りをちゃんと見てないだけじゃない?私達、いっつもこっちから帰ってるわよ」

 

 

 

俺の言葉にもう一人の人影――――バニングスはそう返してくる。………まぁ、それもそうか。

 

 

 

「何時もは寝てるし、見てないな。確かに」

 

 

 

『歩きながら!?』

 

 

 

納得したように言った俺の言葉に月村とバニングスは同時に驚愕の声を上げた。………そんなに驚く事でもないだろ、別に。

 

 

 

「………まぁ、良いか。んで?あれ、お前らのうちどっちかの迎えの車だったりする?明らかにこっち向かって来てんだけど」

 

 

 

そう言って俺が指差した先には、こちらに走って来ている一台の車。………何かめんどくさい事になりそうな気がするな。

 

 

 

「え?いや、今日は迎えなんて………」

 

 

 

月村が答えを言い終わる前に車の中から数人の黒服の男達が現れ、俺達を車の中に押し込んでいく。………何で俺も?

 

 

 

「ちょっと!離しなさいよ!!」

 

 

 

「離して!」

 

 

 

「うぇ、また面倒事かよ。勘弁してくれ………」

 

 

 

押し込まれた三人はそれぞれそんな事を言いながら、何処かに連れ去られて行った。

 

 

 

 

 

 

「…………ぐぅ……むにゃ………」

 

 

 

「こいつ、よくこの状況で寝てられるわね………」

 

 

 

「ってか起きろ!!てめぇのせいでさっきから雰囲気台無しなんだよ!!」

 

 

 

どこか遠くから聞こえてきた怒鳴り声のような声に俺の意識が浮上する。めんどくさそうに瞼を持ち上げると、あまり広くない、廃工場のような建物と、数人の男達、縄に縛られている月村、バニングス、ついでに俺が視界に入る。

 

 

 

「………月村。状況説明よろしく」

 

 

 

「簡単に言えば誘拐されたんだよ、私達」

 

 

 

月村の答えにふーん、と適当に相槌を打ちながら、此処から抜け出すための仕掛けを始める。………結構素人だな、こいつら。簡単に縄抜け出来んじゃん。

 

 

 

「私達をどうするつもりよ!」

 

 

 

バニングスは男達に向かって吠えるようにそう言う。その言葉に男達の中の一人が、気色の悪い笑みを浮かべる。

 

 

 

「お前とそこの奴には用なんかねぇんだよ。用があるのは月村………そこの化物だけ。てめぇらはただ巻き込まれただけだ!」

 

 

 

そう言い放った男の言葉に、月村は何かを恐れているような、怯えるような表情をする。………化物、ねぇ?

 

 

 

「すずかが化物ってどういう事よ!!」

 

 

 

「ん?あぁ、知らないのか?なら、教えてやるよ!」

 

 

「止めて!!」

 

 

 

バニングスの言葉に男は悲痛な声で叫ぶ月村を無視し、にやにやと笑って説明を始める。月村が『夜の一族』と呼ばれる吸血鬼だということ。人の血を吸ったり、目が紅くなったり、相手に催眠をかける、といったような事が出来ること。人とは思えない力があること。………それだけ?

 

 

 

「どうした?黙り込んで。まさか怖くなったのか?」

 

 

 

男は喋らない俺達を見て、そんな事を言ってくる。………何か言うのが面倒だっただけなんだけど。

 

 

 

「馬鹿な事言わないで!!すずかは私の親友よ!今までも、これからも!だから、怖がるわけ無いじゃない!」

 

 

 

男の言葉にバニングスは吠えかかる。………美しい友情ってやつか。友達がどんなに一般人と違っていたとしても今までと同じ、ね。

 

 

 

「………月村、一つ質問」

 

 

 

「………何、雨音くん?」

 

 

 

俺の言葉に、月村は怯えたような表情で聞き返す。その表情を、俺はよく知っている。化物は嫌だ、人間でいたい。………それでも、自分は化物だから。そんな、矛盾した表情。

 

 

 

「………あのおっさんが言ってる事以外に何か出来んの?人じゃ出来なさそうなやつ。今の月村の印象、どうやっても蚊とか蛭とかの延長線にある何か、位にしか思えないんだが?」

 

 

 

めんどくさそうにそう言った俺の言葉に月村はぽかんとする。あまりに自分の予測とかけ離れた言葉だったのだろう。しばらくしてから呆然としたまま、何もない、と言うように首を横に振る。それを確認してから、俺は少しだけ体を揺すって俺を縛っていた縄を解き、ふらりと立ち上がった。

 

 

 

「お前、どうやって!」

 

 

 

「どうやっても何も………あんたら縛るの下手くそだったから。簡単に縄抜け出来たぞ?」

 

 

 

「ちっ………くそっ!」

 

 

 

まるで興味の無い、というような口調で答えた俺に男は舌打ちをすると、懐から銃を取り出してこちらに向けようとする。それに、俺はにっこりと笑った顔を作り上げ、

 

 

 

「………はい、そうくるのはもう、予想済みです」

 

 

そう言って仕掛けを、男達が月村と話している間に部屋中に撒き散らした忘却欠片、『ラッツェルの糸』の一部を起動させる。収縮した糸は男の銃を持った腕に絡み付き、そのまま銃口が上を向くように縛り付けた。

 

 

 

「なっ!」

 

 

 

「あなた達も、動くことは許してませんよ?」

 

 

 

残りの男達が動こうとするのを視界の端で捉えた俺は、残りの糸も起動させ、その場にいた男達全員を縛り上げて拘束する。

 

 

 

「ば、化物め………」

 

 

 

「おかしいですね?私はあなた達に出来ないような動きは何もしていませんよ?ただ気付かれないように糸を張り巡らせただけ。ただそれを動かしただけ。使っているものだってただの糸と針。………どうしてこれだけの事で化物、と呼ばれるんですかねぇ?」

 

 

 

俺はにこにこと笑いながらそんな事を言って、くるりと手の中にある『ラッツェルの糸』の針を回す。それだけで糸は緩み、男達は解放される。

 

 

 

「………どういう事だ?何故拘束を解いた!」

 

 

 

「あなた達の勘違いを正してあげようと思いまして。………あなた達は、化物を嫌悪や憎悪という感情でみるもの、もしくは駆除する対象だと思っていませんか?」

 

 

 

疑問を投げ掛ける男に、俺はそう返す。男はそれに迷うことなく頷き、

 

 

 

「当たり前だ。化物は駆除されなければならない。人に害為す存在だからな」

 

 

 

そう答えた。それに俺は、声を出して笑う。

 

 

 

「何が可笑しい!」

 

 

 

「何もかも、ですよ。………成る程、あなた達はどうやら、本当の化物に会ったことが無いらしい。当然ですね。だからそこの特異体質の人間を化物と呼ぶ。ですが、あなた達は間違っていますよ?本当の化物に、あなた達は嫌悪や憎悪は抱けません。抱けるのはたった一つ、」

 

 

 

そう言って、俺はかちり、という音と共に自身に掛けていたリミッターを外す。一瞬でその場から音は消え去り、俺は「虚」の世界を移動して男の後ろに回り、その耳元で、

 

 

「恐怖、だけだ」

 

 

 

そう呟く。男は声のした方を振り向くが、その時には既に彼以外の男達は全員が意識を失っている。そして、そこから少し離れた位置に俺は姿を現す。

 

 

 

「あ、あ、う………ぁあああああ!!」

 

 

 

男は完全に怯えきったような表情でこちらに銃を向ける。そこに浮かんでいるのは、先程男が肯定した、嫌悪や憎悪ではなく、恐怖。

 

 

 

「はは、そのゴミで、何をしようというんだい?」

 

 

 

俺の言葉に男はようやく気付いたように、信じられないようにその手にある、男の持っている部分以外が細切れになってしまっている、銃だったものを見つめる。そして、再びその視線を上げたときには、俺が男の目の前に立っていた。

 

 

 

「あ、うあああああぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「理解してるかい?君は化物に抱く感情は、嫌悪や憎悪、と言った。でも、今君が抱いている感情は恐怖だ。本当の化物は恐怖しか与えてはくれない。恐怖とは極論として理解できない事で、化物は理解されない存在だからね。そこにいる少女とは何もかもが違う。………それがどういう事かよく考えながら、眠ると良い」

 

 

 

俺はそう言って、手で男の視界を遮る。それだけであっさり男は意識を失い、崩れ落ちた。

 

 

 

「………ほい、終了っと」

 

 

俺はそんな事を言いながら月村とバニングスの方を振り向く。二人は完全に怯えた目をしていた。俺は、それにへらへらと笑って見せる。そのまま、

 

 

 

「んじゃ、めんどくさいのは嫌いだから、俺は帰るぞ。お前らも連絡でもして迎えに来てもらったら?」

 

 

 

そうとだけ言い残して、廃工場を去っていった。




第九話投稿。



里緒の口調が違うのは、相手により不気味に見せるためです。………後は、自分を誤魔化すため、というのもありますが。



ちなみに、忘却欠片説明。


『ラッツェルの糸』



絶対に折れない針から、無限にこれまた絶対に切れない糸を出し入れ出来ます。実は元々の用途は便利な裁縫道具。使う人が使えば凄いことになります。
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