魔法少女リリカルなのは 〜悪魔になった転生者〜 作:リーグルー
『はい、とうちゃ〜く!』
「お、ほんとに地球だな、ここ。………別の星レベルまでデータに入れてるとは思わなかった。やるな、万能音声地図」
『四年前も言ったけど、私は地図じゃない!!っていうか、あんたはずっと私を別用途で使ってたでしょ!』
あ、皆さん、お久しぶりです。雨音里緒、現在九歳です。ちなみにさっきから話してるのはデバイスのエリス。色々あって暫く別の世界に居て、今ようやく地球に戻って来ました。………誰に話してんだ?俺。
「………ま、いいか。んで、此処は森、か?」
『え?うん。そうだよ、リオ。リオの家から一番近い所にある森だよ』
俺の質問にエリスはそう答える。確かに、見覚えのある風景だな。………微かになら。
『ま、四年前の話だからね〜。普通なら忘れてるし、デバイスじゃないんだから、見覚えのある方が凄い………って、転移魔法の反応!?近いよ!』
エリスの警告に、咄嗟に近くの茂みに身を隠す。そのまますぐに魔力を抑え込み、気配を完全に消した。
「………これ、どういう事だ?」
『………うん、別にリオを追ってきた訳じゃないみたいだね。そもそもリオの使う転移魔法は、痕跡が残らないから追ってこれるようなものじゃないし』
そう言ったエリスに俺は頷く。確かに地球に来るときに使った転移魔法は、痕跡が残らないように俺が魔方陣を書き換えて作り上げたものだ。俺しか知らないものだから、追って来れる筈がない。
「あれは………人?いや、魔導プログラムが六に、人が四か。珍しい組み合わせだな」
「眼」を使って転移してきた十人の構成を見た俺は、そう呟く。魔導プログラムの中の一人、魔導書の管制人格である銀髪の女性の構成には面倒なプログラムの追加が施されていた。話を聞くに、彼女が消えなければ、暴走し、世界を破壊するプログラムが復活してしまうらしい。
「………関係無い、か。んじゃ、さっさと………って、また転移魔法か」
はぁ、と溜め息を吐いて転移魔法の反応があった方向を見る。そこにいたのは茶髪の少女。管制人格の言葉を聞くに、彼女が魔導書の持ち主らしい。
「………はぁ」
茶髪の少女の言う言葉に、俺はそう溜め息を吐く。それは、酷くワガママなお願いだった。消えなければ世界を危機に陥れる彼女に、それを望まない管制人格に、消えないでほしい、と。しかし、管制人格はそれを微笑みながら否定する。まるで、諦めたように。………少しだけ、興味が湧いた。
「エリス。セットアップだ。バリアジャケットは道化師のやつで」
俺は指を宙空に舞わせて一つの魔法を作り上げ、発動させてからそう言った。
『………はいはい、了解』
エリスがそう言うのと同時に、自分の服装が変化する。半分が泣き、半分が笑った仮面を着けた、道化師の姿へと。それと同時に、管制人格以外の全員が倒れているのを確認し、茂みを出る。
「やぁ、初めまして。魔導書の管制人格さん」
そう言って歩いていくと、管制人格は突然自分を除いた全員が倒れた事への困惑から一転、警戒の色を乗せた視線で俺を睨む。
「あはは。そんなに身構えなくてもいいよ。彼らは皆眠ってるだけだし、僕はただ君に聞きたいことがあるだけだから。此処に居る誰にも、危害は加えないよ」
そう言っても管制人格の警戒は緩まない。………まぁ、当たり前だろう。
「じゃあ、質問だ。君は………っと、危ないな。まさか起きてるとは思わなかったよ」
俺は後ろから振り下ろされた剣を避けると、そちらを振り向いてそう言った。斬りかかってきたのは、黒髪に赤い目をした少年だ。
「お前は………誰だ?」
「悪魔だよ」
少年の問いかけに簡単に答えると、少年は強くこちらを睨み付けてくる。
「ふざけるな!!お前が何を企んでるかは知らないが、俺の仲間に手出しはさせない!」
少年はそう言って剣を振るう。中々の速さだ。経験を積んだ魔導師でも、見切るのは難しいかもしれない。
「まぁ、あくまで「その程度」なんだけど。………動くな」
俺はそう言って踵で地面を踏み鳴らす。すると、少年の足元から黒い文字が這い上がり、少年は金縛りにあったように固まった。
「な!………くっ……」
「面倒だから動かないで、出来れば何も喋らないでくれると助かるよ。僕は彼女に聞きたいことがあるだけだから」
俺は何とか動こうともがく少年にそう言うと、再び管制人格の方を向く。
「さて、質問だ。………君は生きていたいかい?」
「…………どういう事だ?」
「言葉通りだよ。君は生きたいと願っているかな?もちろん、君の中のバグが居ないと仮定して、の話だ。もし、君が生きていたい、と願うなら………僕がそれを叶えよう」
その言葉に管制人格は驚いたような顔をする。そんなことを言い出すとは思わなかったのだろう。
「リイン…………!」
少年の言葉は、這い上がってきた黒い文字が口に到達したことにより遮られた。口を塞いで喋れないようにしたのだ。
「君には聞いてないんだ。僕が聞きたいのは、彼女だけの意見だからね」
「………何が目的だ?」
管制人格がそう聞いてくる。………目的、目的ねぇ。
「一つの選択肢しか与えられなかった君に、二つ目の選択肢を与えたら、どっちをとるのか、それに興味が湧いたんだよね」
「それだけ………か?」
「うん、それだけ。悪魔は何時だって気紛れなものだよ」
俺がそう答えると、管制人格は考えるように目を閉じた後、開く。その目には、何かを決意したような光を灯していた。
「迷う事はない。私は、生きていたい。生きて、主と最後まで共に居たい。」
「あはは。そうだね。そう答えるだろうと思ってた。………じゃあ、始めるよ」
俺はそう言ってから、管制人格の「式」を見る。そしてそのままそれに介入し、「式」を書き換えていく。………「魔導書の管制人格」という式から、「人間」という式へと。………年齢は彼女の主やそこで動けなくなっている少年と同じくらいになってしまったが、まぁ丁度良いだろう。
「はい、これで終わり。君は人間になった。ついでに、君経由でバグも消しておいたから安心するといいよ。じゃあ、僕はこれで消えるとするかな。………もう魔法は全部解いたから、後少しで皆起きるよ。」
俺はそう言って、呆然としている少年や銀髪の少女をそのままに、一瞬でその場から姿を消した。
第一話投稿。
………また時間が飛びます。今度も四年くらい。