魔法少女リリカルなのは 〜悪魔になった転生者〜 作:リーグルー
「………ん…………此処は?」
私が目を覚ました時に、最初に目に映ったのは見慣れない天井と、自分の周りに張られている半透明の結界でした。………どうやら、何処かの家の中の様ですね。
「どうして私は………?」
とりあえず半身だけを起こした私は曖昧な記憶を整理していきます。少しして記憶の整理を終えた私は、一つの結論に辿り着きました。
「………魔力切れ、ですか。ですが、それなら何故、今意識が有るのでしょうか?それに、この結界は一体…………」
『教えてあげよっか?』
突然何処からか聞こえた声に、私は咄嗟に身構え、辺りを見回しました。
『えっと、そんなに警戒しないで欲しいんだけど。私はエリス。リオ………まぁ、私のマスターに状況説明を頼まれただけだから。あなたも知りたいでしょ?今のあなたの状況』
その言葉に、声のした方を向いた私は警戒を解きます。そこにあったのは黒いブレスレット………ほとんど確実にデバイスでしょう。
「是非お願いします。このままでは、これからどうすれば良いのか、それも分かりませんから」
『はいは〜い。任せて』
私の言葉にエリス、と名乗ったデバイスは説明を始めました。今朝、私がこの家の前に倒れていたこと。いろいろと面倒な事になりそうだから、と私をここまで運んできてくれたこと。そして、現在私の周りに張られている結界のこと。………途中のが無ければ、素直にお礼が言えるのですが。
「そうですか………なら私は、そのリオに救われた、という訳ですね?」
『んー、言葉だけならそうなるかな?でも、お礼とか言おうとしてるんだったら、要らないと思うよ。リオの事だから、どうせ「めんどくさい」とか言うだろうし、きっと今頃忘れてるんだろうし』
「それでも、です。私の気が済みませんから」
『あはは。真面目なんだね。………あ、噂をすれば、リオが帰って来たよ』
その言葉に私は意識を外に向けました。………確かに、足音が一つ、こちらに向かって来ている様ですね。そんな事を思っている間にも足音はどんどんと近付いていき、この部屋の扉が開かれました。入ってきたのは、黒髪の、瞳を面倒くさそうに緩ませた、今にも眠ってしまいそうな少年。その少年は部屋に入り、こちらを見るなり、何かを思い出した様な顔をしています。………本当に忘れていた様ですね。
「初めまして。そのデバイスから話は聞いています。朝はありがとうございました。私はシュテルと言います」
「あ〜はいはい、お礼とか要らねぇよ。めんどくさいし。んで?あんたは何であんなところに倒れてたんだ?」
少年――――リオは面倒そうにそう言うと、私に状況の説明を求めてきました。………本当に言いましたね。
「はい。それでは最初から説明させて貰います」
そう言って、私は説明を始めました。四年前、突然私の大元である「紫天の書」から切り離されてしまったこと。そこから四年間は魔力が外に出るのを抑え、人目の付かない所で何とか過ごしてきたこと。しかし、それでも限界が来て、魔力が枯渇し、意識が朦朧としながらも目的も無くさまよっていたこと。
「恐らく、この家の前で限界が来て倒れていたのだと思います」
最後にそう言って、私は説明を終えました。リオはそれを聞いて、何かを考える様な仕草をしました。
「………四年間魔力を抑えて過ごしてきたって言ってたが、魔力を抑えただけじゃ四年間は無理だろ?どうやったんだ?」
「そうですね。私一人では無理でした。ですから、「紫天の書」から切り離された時に私の周りに大量に散らばっていた、これを使ったんです」
私はそう言って、薬莢の形をした「それ」を取り出します。
「カートリッジ?………あぁ、成る程。魔力の塊だからな、それ。それから魔力を供給したって事か」
「はい。本当に少しずつしか供給しなかったので、私自身、ほとんど動けなかったのですが」
私の答えに、リオは頷いて再び何かを考える様な仕草をしました。そして、そのまま顔を上げると、
「んじゃ、最後の質問だ。………あんたは生きていたいか?」
そう問いかけてきました。私はそれに、顔を俯かせました。これからどうするか、そんなことは、分からなかったから。今までそんなことを、考えようともしてこなかったから。
「………分かりません。考えた事もありませんでした」
私は正直にそう答えます。考えてみれば、私はいつも「与えられた意味」に縛られていただけだったのでしょう。「理のマテリアル」等という大層な肩書きを持ちながら、こんな質問にさえ、答えられないのですから。
「んじゃ、質問を変えるぞ?何であんたは四年間も過ごしたんだ?消えれば楽だったのに、そんな、カートリッジの魔力を少しずつ供給するような、面倒な真似までして」
どうして、どうして?確かに、リオの言う通り、私はどうしてそんな事をしたのでしょうか?やり残した事があった?―――いえ、そんなものは無いでしょう。与えられた意味に従った?―――いえ、私が切り離された時点で、そんなものは意味を成さなくなっています。なら、どうして?私にそんな事をする理由は………
「………あ……」
浮かんだのは、私のものではない記憶。私のオリジナルの、「高町なのは」の、笑っている顔。その顔は、どこまでも楽しそうで………理解しました。答えは、とても簡単な事。
「そうですか………私は、ナノハに、人に憧れていたんですね……」
だから、消えたくなかったのでしょう。少しでも、人である事を体験してみたかったから。与えられた意味の為に生きるのではなく、意味を見つける為に生きる事をしてみたかったから。
「んで?さっきの質問。あんたは生きたいか?」
リオがもう一度同じ質問を投げ掛けてきます。………私の答えは、もう決まっていました。
「………生きたいです。私はまだ、消えたくありません」
「………分かった。その望み、叶えてやるよ」
リオはそう言うと、ぱちんっ、と指を鳴らして、今まで私を覆っていた結界を解除しました。そして、一度目を閉じると、また開きます。そこにあったのは、二つの異なる紋様。七色に光る涙型と、鋭く欠けた月。そのままリオは、私の中の「何か」を書き換えていきます。そして、それが終わった時には、
「………は……?」
私の体は、人間のそれへと変化していました。………一体、何をしたのでしょうか?
「よし、こんなもんかなっと。………あぁ、あんた、家なんか無いだろうからこの家、自由に使っていいぞ」
リオは呆然としている私に、そんな言葉を掛けてきました。………今聞いても、答えそうに無いですね。それなら、とりあえず、
「………シュテル」
「は?」
「シュテル、と呼んでください。リオの「あんた」は他人行儀過ぎてあまり好きではありませんから」
私のその言葉に、リオは一瞬だけぽかんとした表情を見せた後、
「あぁ、はいはい。分かったよ、シュテル。」
最初の様な面倒そうな表情でそう答えた。
第三話投稿。
シュテル視点。口調が途中から分からなくなってしまった………。後、多少性格が違うと思っても気にしないでくれると嬉しいです。