魔法少女リリカルなのは 〜悪魔になった転生者〜 作:リーグルー
「…………zzz……んぁ?」
シュテルが居候になってから数日後の、昼。学校の机で突っ伏して寝ていた俺は、頭の上から聞こえたひゅっ、という空気を切る音に、首を横にずらす。すると、さっきまで頭があった場所でズドンッ!と重いものが落ちたような音がした。
「………これ、どういうことだ?高町」
音のした方を向いた俺は、半眼でそう問いかける。そこに立っていたのは、ここ数日俺が寝ている度に起こそうとしてくる少女、高町だ。居候(シュテル)の話によると、彼女のオリジナルでもあるらしい。
「どういう事って………雨音くんを起こそうとしただけだよ?」
高町は首を傾げてそう答えた。………どうしてそこまで俺を寝させない事に執着するんだ?
「んじゃ、質問を変えるぞ?………今ここに落ちてきたこの辞書、お前のなんだろ?これを落としたのは偶然か?わざとか?」
「うん。わざとだよ」
満面の笑みで頷く高町。………こいつには自覚がないのか?
「わざとだよ、じゃねぇだろ。俺じゃなきゃ当たってるし、普通に怪我すんぞ、それ。ったく、こんなんだから最近の若者は常識がない、とか言われんだよ」
「雨音くんも歳同じだよね!?それに、いっつもほとんどの授業を寝続けてる雨音くんに常識云々を言われたく無いの!」
俺の言葉に、高町はそう反論する。………なに言ってんだ?こいつ。
「はぁ………いいか、高町。俺が言ってんのは精神年齢の話。お前とは人生経験の差が違うんだよ。それにな、「睡眠」は正義。何に代えても許される。そんなことも知らないのか?」
「絶対!違うの!」
俺の言葉を高町は全力で否定する。
「………ま、いいか。どうせお前に分かるとは最初から思ってないからな」
「………どうして?どうして私が常識知らずみたいな目をされてるの?私、何もおかしい事は言ってないよね?」
高町は頭を抱えながら、一人でぶつぶつと独り言を呟く。………随分ストレスが溜まってんだな、こいつ。
「ま、そろそろ本題に行くか。話が進まないしな。んで?何の用事?授業中じゃなく、今起こしたって事は何か用事があんだろ?」
「それは雨音くんのせいなの………ってそうそう。雨音くん、一緒に屋上まで来てくれないかな?皆に雨音くんの事、紹介したいんだ」
「めんどいからパス」
高町の提案に俺はすぐ否定の返事を返す。高町はそれに笑顔のまま頷くと、
「うん、分かったの。………それじゃあ、行こう。雨音くん」
そんな事を言ってきた。………言葉も分からないのか?
「………俺、断ったよな?何で行くことになってんの?」
「そう言うのは最初から予想済みなの。というより、雨音くんに拒否権は無いんだよ?」
高町はそう答えると、俺の制服の襟を掴み、ずるずると引き摺っていく。俺はそれに抵抗しない。抵抗すればもっと面倒なことになりそうだから。………というか、拒否権が無いなら最初からこうやって連れていけば良いのに。
◆
「あ、なのは。ようやく来た………って、誰?その引き摺られながら寝てるやつ?」
「へっ?あ、雨音くん!せっかく連れて来たのに寝ないで!」
そんな会話に寝ていた俺は目を覚ます。怠そうに目を開くと、そこには高町を合わせて六人の少女と一人の少年の計七人が居た。………何時かの少年と元管制人格も居るな。
「………高町、引き摺り方が下手だ。身体中痛い」
「そんなのは当たり前なの。階段も引き摺って来たんだから。そんなことより、雨音くん、自己紹介して」
高町の言葉に、俺はのそのそとした緩慢な動きで立ち上がる。
「雨音里緒、よろしく」
俺の自己紹介に答えるようにして、その場に居る全員が自己紹介をしていく。
「ハラオウン、バニングス、月村、八神A、八神B、んで、神田ね。ま、とりあえずは覚えた」
「なんや、八神A八神Bって。どっちか名前で呼べば良いやろ」
俺の確認に八神が口を挟む。………それもそうだな。
「んじゃ、Aとリインフォース、で良いか?」
「あぁ」
「良い訳無いやろ!なんや、Aって!せめて八神はつけんかい!」
直しても尚文句を言ってくる八神Aに、俺はめんどくさそうにはいはい、と返事をする。
「んで?これで良いんだろ?高町。んじゃ、俺は戻ってるぞ」
俺はそう言って、教室に戻るためにくるりと後ろを振り向く。しかし、高町はそのまま歩き出そうとした俺の制服の襟をもう一度掴んで引き止めた。
「………もう少し、お話しよう?」
「嫌だよ、めんどくさい。俺はさっさと戻って昼寝の続きがしたいの。………それに、あんたらと居ると、もっと面倒事に巻き込まれそうな気がするしな」
俺がそう言い終わらないうちに、屋上へ続く階段がある扉が開く。そこには、銀髪で左右の目の色が違う少年がいた。少年はこちら、正確には高町達を視界に捉えると、不快な笑みを浮かべて此方へと向かってくる。
「………ほら来たよ。面倒事が」
「やぁ、皆、今日も一段と綺麗だね。」
俺が呟くのと同時に、銀髪は聞いているこっちが吐きたくなってくる様な台詞を吐いてくる。………こいつには羞恥心が存在しないのか?
「あ?てめぇ何だ?何でなのは達といんだよ!?消えろモブが!」
………今のだけで分かった。こいつ、一番面倒なタイプの人間だ。何もかもが自分の思う通りに動くと思い込んだ馬鹿。人の話を聞かずに、自分の意見を押し付ける人間。こう言う奴には何を言っても意味が無い。………元から言う気も無いけど。
「………って銀髪くんも言ってるし、俺は戻るから。反論は無いだろ?」
俺はへらへらと笑いながらそう言うと、高町達が何かを言う前にさっさと屋上を後にし、教室へと戻って行った。
第四話投稿。
今回、全く喋らなかったオリ主くん(笑)の名前は、神田 蓮(かんだれん)です。ちなみに銀髪くんの名前は、神崎 神(かんざきじん)。漢字で回文を作れる珍しい人です。