ウルトラマンタイガ 〜NEW BUDDY, NEW RAINBOW!〜   作:門矢零

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第2話ラストとなります。


可愛さとおぞましさ#6

後味が悪い結果に終わった戦闘の後、宏高がかすみと合流したその頃。

 

歩夢は学園内の誰も居ない場所で自己紹介の練習を始めようとしていた。

周りをしきりに確認し、深呼吸して練習開始。

両手をウサギ耳に見立てて、あざと可愛くやり始めた。

 

歩夢「新人スクールアイドルの、歩夢だピョン!臆病だから、寂しいと泣いちゃう〜!ピョーン!暖か…」

 

「…………」

 

しかし、不意に横から視線を感じて中断した。

顔中を嫌な汗が流れて覆う。

ただの勘違いであってほしい。悪い夢なら覚めてほしい。

そう思いたかった歩夢だが、現実は非情だった。

 

「フフッ♪」

 

歩夢「あわわわわわっ‼︎⁉︎」

 

歩夢は両腕をワタワタ振った後、心臓を掴まれたかの様に硬直した。

真っ赤になった顔をそちらに向ければ、そこにいたのはお姉さん感漂う女子生徒、朝香果林だった。

 

歩夢「こ、これはぁ、その……練習をしてて……ス、スス……」

 

穴があったら入りたい。

そんな羞恥に悶えながらも、必死に黒歴史を塗り替えんと弁明する歩夢だが、混乱で呂律が回らない。

そんな歩夢に果林は嘲笑するでもなく助け船を出した。

 

果林「スクールアイドル?」

 

顔を赤くしたまま首を激しく何度も縦に振って肯定する歩夢。

果林は再びクスリと笑い、

 

果林「フフッ。そう言う事?ごめんなさいね?とっておきの可愛い所見ちゃって。でも、それはあなたの言葉?」

歩夢「え……?」

果林「もっと伝える相手の事を意識した方が良いわよ?」

歩夢「……頭では分かってるんですけど、今の私にファンなんて居ませんし……あ!」

 

そこまで言いかけて、歩夢は思い出す。

ファンという漠然とした者より、もっと明確に頭の中に思い浮かべられる存在を。

自分がスクールアイドルをする原動力である、夢を見守ってくれる少年を。

 

歩夢「応援してくれる人なら……居ます!」

果林「ウフフッ♪お節介終わり。頑張ってね」

 

歩夢の中で何かが決まった。

それが分かった果林はクールに去って行った。

 

 

────────────────────

 

 

夕方。

 

レインボーブリッジが傍目に見える場所に、かすみと宏高はいた。

海水と淡水が混ざる水面を見つめながら、かすみは己の苦悩を独白する。

 

かすみ「かすみんには、一番大切にしたいものがあって……だから、スクールアイドルがやりたくて……それはきっと、皆もそうなんですけど……やりたい事はやりたいんです。けど、人にやりたい事を押し付けるのは嫌なんですよぉ。なのに、かすみん、歩夢先輩にそれをしちゃって……」

 

それを聞いた宏高は素直に感じた事をかすみに言った。

 

宏高「ん〜……つまり、それぞれやりたい事が違ってたって事でしょ?それで喧嘩しちゃうのは仕方ないと思うけどなぁ」

かすみ「仕方ないじゃ困るんです‼︎このままじゃ、また同好会が上手く行かなくなっちゃいますぅ‼︎」

 

本気で焦り、頭を抱えるかすみ。そんなかすみを見て宏高は、

 

宏高「ふふっ、悩んでるかすみんも可愛いよ?」

タイガ『確かに。ん?でも何で今それを言った?』

 

悩む後輩を可愛いと言ったのだ。

それにタイガが同調しつつどこかズレた返答だなと思ってツッコミを入れ、かすみは両手を頬に押し付け目をパチクリさせていたが、

 

かすみ「えっ?むぅーっ‼︎」

 

からかわれたと感じてムキーッと唸り、宏高をポカポカ叩きながら言う。

 

かすみ「先輩!こんな時にからかわないでくださいよぉ‼︎」

宏高「からかってないよ〜」

 

そこに歩夢が走って合流してきた。

 

歩夢「遅れてごめんなさーい‼︎」

宏高「おっ、歩夢!」

 

走った分の息を整えた歩夢はかすみに言う。

 

歩夢「あの、自己紹介なんだけど!」

かすみ「あ……」

 

さっきの独白で自分の過ちに気づいたかすみは歩夢にもういいと言おうとしたが、その前に歩夢が晴れやかな笑顔で言った。

 

歩夢「今、撮って貰って良い?」

かすみ「え……?」

 

呆然としたかすみは思わず宏高に助けを求めようと視線を向けるが、それに宏高は「フフッ」と笑う。

 

かすみ「あ、はい!」

 

かすみはスマホを取り出し、動画撮影の為に構えたと同時に歩夢は深呼吸1つしてから切り出す。

 

歩夢「じゃあ行くね!」

かすみ「……どうぞ……」

 

一体どういう心境の変化なのだろうか。

そうかすみが疑問に思う中、歩夢の自己紹介は始まった。

 

歩夢「虹ヶ咲学園普通科二年、上原歩夢です!自分の好きな事、やりたい事を表現したくて、スクールアイドル同好会に入りました!」

かすみ「ぁ……?」

 

自然とかすみの口から声が漏れた。

 

歩夢「まだまだ出来ない事もあるけど、一歩一歩、頑張る私を見守ってくれたら嬉しいです!宜しくね!えへっ♪」

 

最後に『あゆピョン』を取り入れて終了した撮影。

それはかすみらしい表現とはかけ離れたもの。

それでも、確かにかすみは歩夢の表現に惹かれるものを感じていた。

 

かすみ「わぁ……」

 

その証拠に惚けた呟きが出ている。

歩夢はそれに気づかず、やりきった様に両膝に両手を乗せ、不安そうな表情で訊ねた。

 

歩夢「どうかな?」

 

それに最初に反応したのは宏高で、歩夢の肩に手を置き、感想を述べた。

 

宏高「すっごく可愛い!歩夢らしい魅力が出てて、とても良かったよ」

 

宏高の素直な褒め言葉に、頬を赤らめる歩夢。

そこにかすみが空気を変える為のあからさまな咳払いを「コホンッ!」と1つして、2人の注意を向けさせる。

 

宏高&歩夢「ん?」

かすみ「かすみんの考えてたのとはちょっと違いますけどぉ、可愛いから合格です!」

歩夢「本当⁉︎うっふふふ♪良かった〜」

かすみ「うあっ⁉︎うぅ……」

 

歩夢の笑顔にかすみはバツが悪そうに顔を背けるが、そんな彼女の頭をポンポンしながら宏高は言う。

 

かすみ「ぁ……」

宏高「多分、やりたい事が違っても大丈夫だよ」

かすみ「え?」

宏高「上手く言えないけどさ、自分なりの一番をそれぞれ叶えるやり方って、きっとあると思うんだ」

かすみ「……そうでしょうか?」

宏高「なりたいものは違うけど、目指すものは同じかも…ってね。だからさ、探してみようよ!」

かすみ「??」

宏高「それに、その方が楽しいと思わない?」

 

宏高の言葉に、かすみは数秒思考する。

自分たちは、やり直せるのだろうか?

またやって、失敗したらどうしようという不安な気持ちはある。

でもそれは、ちゃんと互いが目指す方向を言わずに、押し付けあったから。

 

今なら大丈夫なんじゃないだろうか?

未だ悩むかすみに、歩夢が背中を押す様にクスリと笑いかけると、彼女もようやく覚悟を決められた。

 

かすみ「楽しいし、可愛いと思います!」

宏高「にひっ♪でしょ?」

かすみ「あははははっ♪先輩!見ててください‼︎」

 

迷いが晴れたかすみは何を思ったのか、背後の煉瓦造りのオブジェに走っていき、それに足をかけると塀の上によじ登る。

そして立ち上がると、祈る様に手を組み、

 

(色んな可愛いも格好良いも……一緒に居られる。そんな場所が本当に作れるなら……)

 

次の瞬間にはビシッ!と歩夢に人差し指を突きつけた。

 

かすみ「でも!歩夢先輩!どんなに素敵な同好会でも、世界で一番可愛いのは……かすみんですからね!」

 

宣戦布告した彼女は、いつだって頂点を目指すように、頂点に立つべく、人差し指を天に向けた。

 

(♪:Poppin' Up!)

 

 

 

 

 

彼女が構築し、彼女が目指す世界。

そこには一体、何が待っているのだろうか。

 

(色んな可愛いも格好良いも、一緒に居られる。そんな場所が本当に作れるなら……そこは絶対、世界で一番のワンダーランドです!)

 

 

────────────────────

 

 

同時刻。

 

果林はしずく、エマ、彼方の3人を伴って生徒会室を訪れ、菜々と対面していた。

 

果林「返すわ。生徒名簿。勝手に借りちゃってごめんなさいね。優木せつ菜と言う名前は、何処にも見つけられなかったわ」

 

他のメンバーが気まずそうに見守る中、果林は生徒名簿を菜々に返しながら言う。

かすみが生徒会室を襲撃したあの時、果林はその混乱に乗じて生徒名簿を密かに持ち出していたのだ。

 

『優木せつ菜』が何者なのかを探るために。

 

果林は犯人を追い詰める探偵のように、淡々と菜々に訊ねる。

 

果林「居ない筈のせつ菜と、どうやって廃部のやり取りが出来たのかしらね?」

 

笑顔なのに全く笑っていない目、探るような言葉尻が、無表情の菜々の心に刺さっていく。

そんな菜々に追い討ちをかけるように、果林の口から確信に満ちた言葉が飛び出した。

 

果林「教えてくれる?()()()()()さん?」

 

 

────────────────────

 

 

スクールアイドル同好会の新たなビジョンを見つけたかすみは、宏高、歩夢の2人と別れて、自宅への帰路についた。

いつも通る帰り道を往く中、彼女はずっと考えていた。

自分の悩みに正面から向き合ってくれた、心優しき先輩のことを。

そしてふと思った。

 

(かすみん……王子様に出会っちゃったかも)

 

その時だった。

前から歩いてきた男に気づかず、身体がぶつかってしまった。

 

かすみ「うわっ⁉︎」

 

ぶつかった拍子にコッペパンが1個、地面に落ちる。

 

かすみ「ご、ごめんなさいっ!かすみん、考え事してて……」

 

慌てふためきながら謝罪するかすみを、男は手で制した。

被っているフードと共にどこか不気味な雰囲気を纏う、不思議な少年だった。

 

???「こちらの方こそ、申し訳ない」

かすみ「い、いえ……そんな……あ!かすみんのお手製コッペパンが……」

 

かすみは落としたコッペパンを拾う。落ちた衝撃で、少し形が崩れてしまっていた。

 

???「それ、僕が貰ってもいいかな?君の力作を台無しにしてしまったお詫びに」

かすみ「え?でもこれ、落ちちゃったやつ……」

???「ちゃんと紙で包まれてるから大丈夫さ。君は何も気にしなくていいよ。何もね…」

 

前向きな物の見方で、少年は言った。

 

かすみ「は、はぁ……では、どうぞ……」

 

急におかしなことを言う少年に、かすみは呆気に取られながらもパンを差し出す。

 

???「ありがとう。君はかすみんって言うんだね?」

かすみ「あ、はい!かすみんは、常に可愛いを追い求めるスクールアイドルなのです!えっと……」

 

言葉を詰まらせるかすみの様子を察した少年は、突然彼女に詰め寄り、名乗った。

 

???「僕は霧崎。霧崎 幽とでもしておくよ」

かすみ「霧…崎さん……?」

霧崎「別に覚えてもらう必要はない。いずれ頭から離れなくなるからね」

かすみ「……?」

 

目をパチクリさせながら呆然とするかすみを余所に、霧崎は怪しげな言葉を言い残し去って行く。

そしてかすみとある程度距離が離れたところで、彼女から受け取ったコッペパンの包装紙を破り、かぶりつくと、

 

霧崎「……美味い」

 

と呟き、舌鼓を打つのだった。

 

 

続く。




キャラ紹介

霧崎 幽(きりさき ゆう)

ダークキラーヒディアスの地球での人間態の姿。見た目は『ガンダムEXA』の「イクス・トリム」。外見年齢は高校三年生。
白い薄手のパーカーの上に黒のジャケットを着ており、本来の姿に戻る時以外は常にフードを被っている。
闇のアイテムと怪獣のスパークドールズ、カード、カプセル、クリスタル、指輪を多数所持しており、「怪獣コレクター」の異名を持つ。
自ら戦う時はペンダント型のアイテム、「ヒディア・プラズマー」を用いて巨大化する。
キラープラズマを怪獣に注ぎ込んで強化することも可能。


今回もありがとうございました!
遂にヒディアスの人間態が明らかになりました!侑ちゃんが登場しない代わりに、ここで「ゆう」と言う名前を持ってきました。
次回はいよいよ、作者の推し回です!


次回 第3話「優木せつ菜」

宏高「俺はもう一度、君の歌を聴きたい!」


お楽しみに。


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