ウルトラマンタイガ 〜NEW BUDDY, NEW RAINBOW!〜   作:門矢零

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上げるのがかなり遅くなってしまった……






逸楽の疾風(はやて)#5

翌朝の7時。

 

愛は練習着に着替えて靴を履き、スライド式の木製扉を開けて外に出る。

捻挫等をしないように入念に準備運動をしてから、レインボー公園に向かって走り出した。

記憶を頼りに公園までの道を走り、息を規則的に吐き出しながら、無理のないペースでウォーミングアップしていく。

 

しばらく無言で走っている内にレインボー公園に到着したが、時間はまだ朝の8時4分。

 

愛「1時間前か……」

 

周辺を見回していると、“ある物”が愛の目に留まった。

階段の端、手すりの側まで近づくと、そこには青い輝石のペンダントが落ちていた。

愛は屈んで輝石を拾い、興味津々に見つめる。

 

愛「何これ……きれい……」

 

愛は輝石をポケットに入れると、そこから追加でレインボーブリッジの歩道を走るが、そこで思わぬ人物を見つけた。

 

愛「ん?」

 

「ふぅ……」

 

休憩中なのか、流れる汗をタオルで拭きながら佇むエマがいた。

 

愛「エマっちー!」

エマ「あ!愛ちゃん!」

愛「どうしたの?」

エマ「ちょっと早起きしちゃって。愛ちゃんは?」

愛「一緒!」

 

それから2人は歩道から見える青い景色を眺め始めた。

すると突然、エマが愛に訊ねた。

 

エマ「昨日はソロアイドルって聞いて、驚いた?」

愛「え……?確かに驚いたけど、一番驚いたのは自分に対してなんだよね」

エマ「ん?」

 

どういう事?と言いたそうな表情のエマに愛は言う。

 

愛「同好会の皆が悩んでるのって、自分を出せるかって事でしょ?今まで色んな部活で助っ人やってたけど……考えてみたら、皆と一緒にやる競技ばかりでさ。いやぁ〜、めっちゃハードル高いよね〜。……ソロアイドルかぁ……」

 

明るく苦笑したのも束の間、すぐに愛の表情は曇る。

降り積もる静寂の中、エマは切り出す。

 

エマ「……そろそろ走ろっか」

愛「ん?」

エマ「9時だし、もう行く時間だよ?」

 

しかし愛はエマの顔を見つめたまま、ジッと動かず、何も反応しない。

それにエマは首を傾げ、訊ねる。

 

エマ「どうしたの?」

 

その次の瞬間、

 

愛「……プッ!アハハハハハハ‼︎ウケるーー‼︎」

 

突然愛が笑い出した。しかも腹を抱えて、抱腹絶倒しそうな勢いで。

訳が分からずエマが狼狽する中、愛は依然大笑いしながら、その理由を言った。

 

愛「()()()()()()9()()だし行()()間って!アハハハハハ‼︎ダジャレだよねーー‼︎」

エマ「ダジャレ?あ、あぁ〜!」

愛「しかも上手いし!アッハハハハハハハ‼︎」

エマ「全然気付かなかったよ〜」

 

「「アハハハハハハ‼︎」」

 

2人はしきりに笑い合った。

この時、愛は気付いていなかったが、練習着のポケットに入れていた青い輝石が、愛の笑いに共鳴するかのように光っていた。

 

 

 

やがて2人は笑い終え、エマは手すりに両手を置いて言う。

 

エマ「ふぅ……愛ちゃんが同好会に来てくれて良かったぁ」

愛「え?何で?」

エマ「すっごく前向きでいてくれるから」

愛「そう?今はめっちゃ悩んでるけど」

エマ「でも、皆と居る時、いつも楽しそうにしてたよね?」

 

それは愛自身が気付いていない、他人から見る事で分かる側面だった。

 

エマ「私達、色々あって……ようやくスタートラインに立ったばかりなんだ。きっと、皆が不安で、でも本当は、それと同じ位、これからに期待していると思うんだ。そうじゃなきゃ、悩まないもの。まだ、一歩を踏み出す勇気が出ないだけ。愛ちゃんが来てから、同好会の皆の笑顔、すっごく増えてるんだよ?」

愛「そうなの?自覚ないけど?」

エマ「ないから凄いんだよ〜」

愛「そうかな?」

エマ「そうだよ」

愛「えへへ〜♪」

 

頭を掻いて照れ笑いを浮かべる愛。

 

愛「そっかぁ……」

 

どこか腑に落ちたように呟く愛。

それと同時に、愛は愛なりの、自分だけの答えの片鱗を掴み始めていた。

彼女は照らす太陽に向けて手を伸ばし、太陽を握った。

 

愛「ありがとう、エマっち!走って来る‼︎」

エマ「あ、愛ちゃん⁉︎」

 

エマが手を伸ばすも、愛は自分の心に沸き上がった気持ちに従って、元来た道を全速力で駆け出した。

 

(そんな事でいいんだ……!誰かに楽しんでもらう事が好き!自分で楽しむ事が好き!そんな『楽しい』を、皆と分かち合えるスクールアイドル‼︎……それが出来たら、アタシは未知なる道に、駆け出して行ける!()()だけに‼︎)

 

レインボー公園の真ん中で、愛のゲリラソロライブが始まった。

 

(♪:サイコーハート)

 

 

 

 

 

愛自身の楽しそうな笑顔、歌声、パフォーマンスに誘われて、公園にいた親子連れや同好会のメンバーが徐々に観客として集まってくる。

イメージではあるが、オレンジ色の景色がハッキリと目に浮かんでくる。

 

やがてライブは終わり、愛は両膝に両手を置いて、荒くなった息を整える。

そこに……拍手が広がった。歌い切った彼女に対する惜しみない讃美の拍手。

それを見渡して、愛はもう一つの結論に至った。

 

(皆と一緒……ステージは……一人じゃない‼︎)

 

その意味を理解した時、愛は自然と体で喜びを表した。

 

愛「サイッコォォォォォォォ‼︎」

 

そして、その光景を見ていた宏高が不意に言った。

 

宏高「凄いな……あれが愛さんのステージか」

一同「んん?」

 

全員の視線を浴びる中で、宏高は愛から感じた事を語る。

 

宏高「俺、皆のステージも見てみたい!一人だけど、一人一人だからこそ、色んな事が出来るかもしれない!そんな皆がライブをやったら、何かスゴい事になりそうな気がする!」

 

最初こそ、全員言葉を失う。

だが愛のステージを見た事で、既に彼女達の迷いは払拭されていた。

そこに宏高の後押しが来た事で、決心に変わる。

 

そんな中、彼方が言う。

 

彼方「何か、ヒロくんも凄いね〜」

宏高「え?」

 

続けてしずくが、璃奈が、触発されたように意気込み、

 

しずく「負けてられませんね!」

璃奈「燃えてきた」

 

エマが「うん!」と頷き、せつ菜とかすみは互いを見て笑い合う。

そして歩夢が締め括るように言った。

 

歩夢「そうだね!」

 

彼女達の未知なる挑戦が、幕を開けようとしている。

 

 

 

愛のライブを見に来た人々の中には、アモルの姿もあった。

それに気付いた愛が、彼女の元に駆け寄る。

 

愛「あ、アモルン!見に来てくれたの?」

アモル「聞こえてきました……あなたの歌が」

愛「ありがとう!スクールアイドルって、スッゴク最高だよ!」

アモル「スクール、アイドル……えぇ、実に素晴らしいですね」

 

そう言ってアモルは、周囲を見渡して思った。

 

(これほど多くの人達が、歌で一つにまとまって行くなんて……)

 

その時、レインボー公園の上空に、1機の円盤が現れた。

そして円盤からスクリーンが投映され、そこに映る1体の宇宙人による声明が街中に響き渡った。

 

《我々は、新天地を求めて彷徨う宇宙の放浪者、バルタンである》

 

その光景に、アモルは驚きと戸惑いを隠せなかった。

 

アモル「そんな……⁉︎どうして彼らが……‼︎」

愛「ぇ……アモルン、あいつの事知ってるの?」

 

バルタン星人の声明は続く。

 

《我々は、この星を新たな母星にする事に決めた。我々はこの地球を貰い受ける》

 

そう言った後、バルタン星人の円盤は浮上し、街を攻撃し始めた。

その光景に恐れ慄き、逃げ惑う人々。

同好会メンバーも動いたが、宏高は愛がアモルと一緒に自分達とは違う方向に逃げて行くのを目撃し、

 

(愛さん……?)

 

気づかれないように歩夢達から離れて、右腕のタイガスパークのレバーをスライドさせる。

 

《カモン!》

 

腰のタイガホルダーに装着されている2個のキーホルダーから、タイガキーホルダーを選択し、左手で取り外す。

 

宏高「光の勇者!タイガ!」

 

タイガスパークを装着した右手でキーホルダーを握り直すと、中心部のクリスタルが赤く発光した。

 

タイガ『はあああああっ!ふっ!』

 

宏高は天高く右腕を突き上げながら叫んだ。

 

宏高「バディー……ゴー!」

 

《ウルトラマンタイガ!》

 

タイガ『────シュア!』

 

バルタン星人の侵略を止めるべく、ウルトラマンタイガが飛び立つ。

 

 

続く。




愛がスクールアイドル同好会の新たな「道」を切り開いたのも束の間、始まったバルタン星人(過激派)の侵略!
いよいよ銀河の風と共に、トライスクワッド最後の1人が現れる!


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