ウルトラマンタイガ 〜NEW BUDDY, NEW RAINBOW!〜 作:門矢零
そして、栞子と3人のユニット名も『R3BIRTH』に決まりましたね。
翠いカナリア、早くフルで聴きたーい!
放課後のスクールアイドル同好会部室。
そこではソファーに座ったエマが、彼方に膝枕していた。
エマ「よ〜しよしよし〜」
彼方「ごろにゃ〜ん……」
エマの太腿の柔らかさと頭を撫でる手に、彼方は極上の気持ち良さを覚え、ゆったりした眠りに誘われる。
エマ「ウフフッ♪こうして撫でてると、ネーヴェちゃんを思い出すよ〜」
それにしずくが訊ねた。
しずく「スイスのお友達ですか?」
エマ「ううん。家で飼ってる子山羊だよ?」
『子山羊⁉︎』
寝ている彼方以外全員の声が重なった。
驚くのも当然である。
山羊と言えば牧場か動物園で飼われるもの。個人で飼うなど普通はありえない。
例えそれが子山羊でも。
だがそれは日本の常識であり、スイスという大自然に囲まれたエマの故郷ともなれば、そんな常識も色んな意味で変わるのだろう。
愛が食い気味に訊ねた。
愛「エマっちの家、山羊飼ってるの⁉︎」
エマ「うん!小さい頃はよく、山羊達に歌を聴いて貰って……懐かしいなぁ〜」
次に歩夢が訊ねた。
歩夢「エマさん、お家を離れてホームシックとかないんですか?」
たった一人で慣れない土地の学校に来ているのだ。
誰であろうと故郷への寂しさ、故郷に帰りたい気持ちを覚えるものだが、エマはそれを感じさせないくらいに明るく肯定した。
エマ「うん!同好会の皆と居ると、スイスの妹や弟達と居るみたいなんだもん。いつもワイワイ賑やかで」
それを聞いて璃奈が俯きながら無表情で「何か、嬉しい」と呟く。
エマ「でも家族は、私が日本でちゃんとやってるか心配みたい」
その言葉にタイガが反応し、意味深に呟いた。
タイガ『家族、か……』
宏高「タイガ?」
周囲に聞かれないよう、小声でタイガに訊ねる宏高。
タイガ『エマの話聞いてたら、また父さんに心配かけちゃったなって思ってさ……』
宏高「………」
かつて宇宙でダークキラーヒディアスと交戦した際、彼による地球破壊を身を挺して阻止したタイガ達トライスクワッド。
タロウの制止を振り切り飛び出した結果、彼らは体を維持できない程のダメージを受け、地球に落下。
再び離れ離れになるも、宏高を通じて再集結を果たし、今に至っている。
タイガ『でも後悔はしてないぜ。あの時俺達が動いてなかったら、お前や歩夢達がこうして笑い合う事も、エマのスクールアイドルになるって夢が叶う事もなかっただろうからな』
今もこの地球、もしかしたら自分達の身近に潜んでいるであろうヒディアス。
彼はかつてのトレギアのように、あらゆる手を使って歩夢達の周囲を掻き乱してくる。
彼女達の笑顔と希望を守る為にも、俺達は戦う。
この
タイガが決意を新たにする中、不意に部室の扉が開かれた。
入ってきたのはせつ菜とかすみの2人。
せつ菜「皆さんお揃いですね?」
宏高が声をかける。
宏高「遅かったね、2人共」
すると急にかすみが両手を腰にやって「フッフッフー♪」と不敵に笑い、それに歩夢が訊ねた。
歩夢「どうしたの、かすみちゃん?」
かすみ「ちょっとこれを観て下さい!」
そう言って彼女はパソコンの前に座ると、マウスを操作してネットを開き、動画サイトに掲載されたある動画を観せる。
宏高「歩夢の動画だ!」
宏高の言う通り、それは歩夢の自己紹介の動画だった。
歩夢「ど、どうしてこれを皆で……?」
僅かに羞恥と焦燥が混ざった声を震わせて、歩夢は訊ねる。
自分なりの答えを見つけ、恥ずかしくない気持ちで撮ったとは言え、それを後から見返すとなると顔から火が出そうになる。
しかもそれを全員で見るのだから、正直この場から逃げたくなる気持ちに歩夢は襲われる。
そんな事など露知らずにかすみは言う。
かすみ「実はこれ、最近再生数めちゃめちゃ増えてるんですよぉ!」
現在の再生回数は2095回。
自己紹介の動画としては驚きの数字で、全員が「おぉ〜」と驚嘆する。
璃奈が僅かにテンション高めな声で言う。
璃奈「コメントも沢山……」
歩夢「あ!ホントだ!」
コメント欄には、
この子は伸びる!
可愛い
天 使 降 臨
といった、歩夢を推して期待してくれるコメントばかりで溢れていた。
この結果を踏まえて、せつ菜は1つの提案を口にした。
せつ菜「そこで提案なんですが……」
『ん?』
せつ菜「私達もソロアイドルとして、プロモーションビデオを作りませんか?」
しずくがオウム返しに訊ねる。
しずく「プロモーションビデオですか?」
せつ菜「はい!自己紹介でも特技でも、自分をアピール出来るものを動画にしたいと思います!」
愛と宏高が興味を示す。
愛「へぇ〜、PVねぇ!面白そうじゃん!」
宏高「エマさん、家族に見せるのにも良いと思いますよ?どんなPVにしましょうか?」
エマ「えっ⁉︎う〜ん…どんな……か…」
急に言われても、パッとは思いつかない。
悩ましげに顔をしかめるエマ。
一方その頃、学園内では何人かの生徒がスマホでせつ菜のPVを視聴していた。
朝香果林もその一人である。カフェスペースのいつも座る席で、スマホの画面を見つめている。
スクールアイドル同好会の部室でも、メンバー全員がパソコンの周囲に集まり、PVを見返していた。
画面から流れるせつ菜のライブは改めて見てもやはり熱気があり、自然と心が躍る。
エマと宏高が感心気味に言う。
エマ「やっぱり格好良いね、せつ菜ちゃん」
宏高「もう結構再生されてるんだな!」
それにせつ菜本人が返す。
せつ菜「はい。おかげ様で」
愛が言う。
愛「これ、編集りなりーでしょ?」
璃奈「うん。宏高さんにアイディア沢山貰った」
宏高「ハハッ、それほど大した事は言ってないけどね」
それを聞いて、エマがかすみに訊ねる。
現在の同好会メンバーで、PVを撮った最後の一人がかすみだからだ。
エマ「かすみちゃんのは?」
かすみ「カモーン!かすみーん!」
待ってました!と言わんばかりに、かすみは意気揚々とマウスをクリック、次の動画のページを開く。
そして流れるは、かすみの自己紹介動画。
タイガ『おっ、あの時のやつだな!』
これに宏高が頷きながら言う。
宏高「ああ!かすみちゃんはやっぱり可愛い、だよな!」
タイガ『そうそう!』
かすみ「流石先輩!分かってくれてますねぇ!」
せつ菜が拳を握って言う。
せつ菜「これで知名度を上げれば、私達のライブも夢じゃありません!」
かすみ「皆さんもこのかすみんみたいに、アピール度満点のPVをお願いしますね!」
かすみがそう言うと、歩夢が記憶の棚から自分のアピールポイントを探す為に思考に耽る表情を浮かべ、宏高にも話を振る。
歩夢「アピールかぁ……私、どんな所をアピールしたら良いんだろう?」
宏高「ん〜……歩夢と言えば〜……」
歩夢「ウフッ♪何?」
自分のアイドルとしてのアピールポイントを列挙してくれるであろう宏高に期待の笑顔を向ける歩夢。
だが宏高が出したアピールポイントはアイドルとは少しズレたものだった。
宏高「ニコニコ笑ったかと思ったら、急に泣いたり、頬っぺ膨らませて怒ったり……ずーっと見てても飽きない感じ?」
歩夢「宏くん!それ全然アイドルっぽくないよ!むぅー!」
宏高「ほーらそれだよそれ!」
歩夢「もうっ!宏くん!」
宏高が人差し指を立てて指摘すると、歩夢はからかわれて悔しいのか宏高をポカポカ叩くも、彼の両掌に容易く受け止められる。
フーマ『なんか、苦いコーヒーが飲みてぇ気分だな……』
タイガ『ああ見えても付き合ってないんだぜ、あいつら』
そんな空気を変えるようにエマとしずくが宏高に言う。
エマ「ウフフッ♪宏高くんってよく見てるよね?歩夢ちゃんの事も、皆の事も」
しずく「それにスクールアイドルの事も色々調べてくれてて、助かります」
宏高「いや、そんな……俺、スクールアイドルはホントスゴいなって思ってて。だから皆を応援したくて!」
歩夢「ぇ……?」
その言葉に、彼方とせつ菜は気力を湧かせる。
彼方「こんなに近くで応援してくれる人が居るんなら、彼方ちゃん張り切っちゃう〜」
せつ菜「ですね。私も頑張らなきゃって思います」
かすみ「せつ菜先輩はそれ以上頑張らなくてもいいですよぉ!」
かすみが嫌味を言うも、せつ菜は更に意気込む。
せつ菜「いえ!まだまだ頑張らないと!」
かすみ「えー!それ以上頑張られるとぉ、かすみんの人気に影響が出ちゃうんですー!」
暖かい笑いに包まれる中、議題は次に移る。
続く。
同好会の皆で歩夢の自己紹介動画を見る場面に、ちょっとした遊び心を加えました。
皆さんお気づきになりましたか?
それでは次回もお楽しみに!
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