ウルトラマンタイガ 〜NEW BUDDY, NEW RAINBOW!〜 作:門矢零
ついにアニガサキの方でも、同好会が13人になりましたね。
これからの展開が楽しみです。
前回が短めだった反動からか、今回は結構長めの文章になりましたがよろしくお願いします。
それではどうぞ。
翌日、練習場の1つである屋上に璃奈を除く同好会メンバーが全員集まっていた。
だがそこには、いつものような賑やかな空気は流れていなかった。
何故なら、いよいよ明日に控えたライブの主役である璃奈が学校に来ていないからだ。
長い沈黙を破り、果林が宏高に訊ねる。
果林「練習、始める?」
宏高「えっ…?でも璃奈ちゃんが──」
果林「来ないでしょ。連絡しても繋がらないんだから」
一同『あ…』
宏高の言葉を途中で打ち切るように事実を突きつける果林。
璃奈が突然練習をやめて去った後、何度も電話をかけたり、メッセージを送ったりした。
しかし璃奈からの返答はどれも無反応だった。
場に重苦しい空気が漂う中、かすみが非難めいた口調で果林に反論する。
かすみ「何でですか⁉︎りな子のライブは明日なんですよ⁉︎あんなに頑張って準備してたのに!」
果林「決めるのは璃奈ちゃんよ」
それは璃奈がライブをしたいと言い出した時、エマが言っていた言葉だ。
かすみ「うぅ…」
果林のドライな正論対応に、悔しそうに唸るかすみ。
確かに果林の言う通り、これは璃奈の気持ちの問題だ。
それでも、同学年の仲間として彼女の頑張りを身近で見てきたかすみには、素直に納得できる事ではなかった。
いつまでもここで燻ってる訳にはいかないと判断した果林が提案する。
果林「今日はもう解散にしない?」
宏高「え⁉︎」
タイガ『は?』
フーマ『おい姉ちゃん、さっきから何……⁉︎』
宏高とタイガが驚愕し、反論しようとするフーマをタイタスが手で制する中、ジッと果林の事を観察していたエマは親友としての直感で、彼女の本心を言い当てる。
エマ「果林ちゃん……拗ねてる?」
果林「あっ……何で私が⁉︎」
図星なようだが、それを悟られまいと必死に果林は言い繕うも、エマと彼方にそれを台無しにされた。
エマ「明日は、モデルのお仕事入れないようにしてたもんね」
彼方「本当は璃奈ちゃんのライブ、楽しみにしてたんじゃな〜い?」
果林「あ…私はライブの内容に興味があっただけよ!」
回りくどい形で自白する果林だが、それを聞いてすかさずかすみが、仮にも先輩である彼女を面白がってからかう。
かすみ「そうなんですかぁ〜?果林先輩も可愛いところあるんですねぇ〜」
果林「お黙り!」
イラッときた果林はかすみの頬を引っ張る。
かすみ「ふぇ〜許してくらはい〜…」
そんな茶番を尻目に愛は決意の眼差しで、
愛「ちょっと行ってくる!」
かすみ「えっ、愛先輩⁉︎」
慌てるかすみの制止を無視して、真っ直ぐ璃奈の元へと走り出した。
図らずもこれが着火剤となり、誰もが頭の中でやる事は一つという結論に至ると、次に宏高が駆け出した。
宏高「俺も行くよ!」
歩夢「宏くん!」
かすみ「どこ行くんですか⁉︎」
かすみがそう叫ぶと、しずくが彼女の手を引っ張りながら答え、彼方もそれに続く。
しずく「璃奈さんのところだよ!」
かすみ「へ⁉︎」
彼方「まぁ、ほっとけないよねぇ〜」
果林「結局、皆で行くのね……」
何処か分かり切ってたような態度の果林に、思わずせつ菜は訊ねる。
せつ菜「行かないんですか?」
それに果林は当然と言うように笑顔で答えた。
果林「行くわよ!」
────────────────────
天王寺璃奈は、今も自室の中に居た。
彼女は暗闇の中でただ一点、スマホの画面を見つめている。
そこに映っているのは動画サイトの検索結果で、リストにはかすみと歩夢の自己紹介動画がある。
すると璃奈の部屋にチャイムが鳴り響き、その音で我に返る璃奈。
おそらく自分を心配して、同好会の誰かが押し掛けて来たのだろう。
だが途中で逃げ出した後ろめたさから、二回目のチャイムが鳴っても応じる事なく、切なそうな表情でスマホの画面から目を逸らした。
璃奈「ん…」
一方、天王寺家に到着した宏高達同好会メンバーは、ロビーにあるインターホンを使って璃奈の部屋にチャイムを鳴らし、接触を試みていた。
だが一回では応答しなかったので、二回目で愛がインターホンに近づき、彼女を中心にメンバー全員、更にはタイガ達トライスクワッドがカメラのレンズを覗き込む中、呼び掛ける。
愛「りなりー!居る?」
その瞬間、愛の声に反応して再びスマホの画面に目をやった璃奈が、思わず「うわっ!」と驚きの声を上げた。
その声は愛達にも届いたようだが、応じたのが璃奈本人とは限らないので、せつ菜が愛に注意する。
せつ菜「愛さん!いきなり『りなりー』はどうかと思いますよ?」
愛「あ…ごめんごめん。普段この時間はりなりー1人だって聞いてたから」
エマとかすみが言う。
エマ「今、璃奈ちゃんの声聞こえた気がするよ?」
かすみ「ほんとですかぁ?」
立ち位置的に背伸びしてるからか、少々キツそうなかすみを尻目に、愛はレンズを見つめてその向こう側の璃奈と真っ直ぐ視線を合わせる。
愛「りなりー」
璃奈「あ…」
愛「少しだけ…いいかな?」
優しくかつ真剣な愛の呼び掛けに何かを感じ取ったのか、璃奈はしばらく無言で考えた後、心の扉を少しだけ解放するようにマンションの正面玄関のロックを解錠した。
一同『あ…』
それからオートロック式のロビーを越えて玄関の扉をくぐり、璃奈の部屋までやってきた同好会一行。
先頭に立つ宏高が、恐る恐る扉を開けた。
宏高「お…お邪魔しま〜す………璃奈ちゃ〜ん?」
部屋の中は真っ暗で、鬱々しい雰囲気が漂っている。
流石に全員は入れないので、宏高、かすみ、愛、歩夢の4人が部屋に入り、他は廊下で待機する中、宏高は璃奈を呼ぶ。
タイガ『あれ、何処だ?』
フーマ『居留守……じゃねぇよな?』
璃奈「……ここだよ」
「「「「ハッ⁉︎」」」」
思わず宏高達4人はギョッとした。
返ってきた璃奈の声はまるで壁を挟んでいるかのようにくぐもっており、部屋の電気を点けてみれば、真ん中に大きなダンボールが1つ、ポツンと置かれていた。
どういう訳か璃奈はダンボールの中に入っており、彼女の声もそこから聞こえてきた。
これに驚いたかすみが大声を上げる。
かすみ「えええっ⁉︎何でダンボールぅぅ⁉︎」
宏高「シッ!」
そんなかすみをすかさず宏高が背後から両肩を掴んで引き寄せ、静かにの合図をした。
今の璃奈はとてもナイーブなので、迂闊に刺激してはいけないと思ったのだ。
そんな中、愛はダンボールに近づく。
愛「りなりー」
璃奈「ごめんね…勝手に休んで……」
彼女から返ってきたのは、素直に謝罪の言葉だった。
愛「ほんとだよ。心配したんだぞ?」
優しく叱りつつも、ダンボールの前にしゃがみ込んで璃奈に話しかける愛。
愛「どうしたの?」
責めるでもなく、本当に心配しているからこそ来る言葉に、璃奈は心が申し訳なさでいっぱいになるのを実感しながら独白する。
璃奈「自分が…恥ずかしくて……私は、何も変わってなかった」
甦ってくる過去の苦い記憶。
璃奈「昔から、楽しいのに怒ってるって思われちゃったり……仲良くしたいのに、誰とも仲良くなれなかった……今もクラスに友達はいないよ。全部私のせいなんだ」
思い通りに表情が出ずに、それで苦悩していた日々。
心では喜怒哀楽を感じているのに、それが上手く表せない自分の不器用さに嫌気が差す。
璃奈「もちろん、それじゃダメだと思って、高校で変わろうとしたけど…最初はやっぱりダメで……でも!そんな時に、愛さんと会えた。スクールアイドルの凄さを知る事が出来た。もう一度、変わる努力をしてみようって思えた。歌でたくさんの人と繋がれるスクールアイドルなら、私は変われるかもって…」
それでも、自分を理解してくれる人達が現れた。
こんな自分でも人と繋がれる道を見出した。
決して不可能ではないのだと、彼女はもう一度奮起した。
けれど。
璃奈「でも…皆はこんな事でって思うかもしれないけど……どうしても気になっちゃうんだ…自分の表情が……ずっとそれで失敗し続けてきたから……」
過去の失敗は、ずっと璃奈の心を蝕み続けてきた。
心に溜まっていた不安を打ち明ける度に悔しさが込み上げ、声が悲しみで震える。
ダンボールの中で、自然と璃奈は泣き顔を隠すように顔を両手で押さえていた。
璃奈「ああ…ダメだ…誤解されるかもって思ったら…胸が痛くて……ぎゅううって…!こんなんじゃ…このままじゃ!うっ……っ……私は、皆と繋がる事なんて出来ないよ……ごめんなさい…!」
宏高・歩夢・かすみ「あ…」
少女は自分に絶望していた。
どんなに努力をしても、もがいても自分は変われないのだと。
仲間に応援され、手伝って貰ったのに、結果が出せない事に申し訳なさと不甲斐なさでやるせなくなる。
そんな璃奈の大きな悩みに、誰もが慰めの言葉を思い付けずに口をつぐむ中、宏高が最初に口を開いた。
宏高「ありがとうね」
璃奈「えっ…?」
ダンボールの中でキョトンとする璃奈に、宏高は愛の隣に片膝を付いてしゃがみ込み、落ち着いた声音で言う。
宏高「璃奈ちゃんの気持ち、話してくれて」
愛「うん。愛さんもそう思うよ」
一拍置いて、宏高はさらに続ける。
宏高「俺……璃奈ちゃんのライブ、見たいな」
璃奈「あ…」
宏高「今はまだ出来ない事があっても…無理してすぐに出来るようにしなくても、いいんじゃない?」
璃奈「……え?」
それは一体どういう事かと思い、ダンボールの中で顔を上げた璃奈に、しずくが彼女の長所を挙げる。
しずく「そうですよね。璃奈さんには出来るところ、たくさんあるのに!」
璃奈「そんなの!「頑張り屋さんなところとか」あ……」
否定しようとした璃奈の声を遮るように歩夢も長所を挙げ、それに続くように果林が、宏高が、せつ菜が彼女の長所を挙げていく。
果林「諦めないところもね」
宏高「機械に詳しいし」
せつ菜「動物にも優しいですよね」
それに愛が良い意味で不満を露にする。
愛「みんな〜!どんどん言っちゃってズルいよ〜!」
璃奈との付き合いが女子勢の中では一番長い愛としては嬉しい反面、璃奈の長所を立て続けに言われて先を越されたと思ったのか、モヤモヤする部分もあった。
愛「よぉ〜し、愛さんも!」
愛は立ち上がると、某世界を股に掛ける大泥棒よろしくダンボール越しに思いっきり璃奈に抱きついた。
璃奈「うわっ!」
愛「フフッ」
璃奈「ちょっと…」
愛「ん?」
璃奈「恥ずかしい……」
表情こそ見えないものの、明らかに照れている璃奈の声。
そこにかすみが言う。
かすみ「りな子。ダメなところも武器に変えるのが、一人前のアイドルだよ?」
璃奈「あ…!」
さらに愛と歩夢がフォローする。
愛「そうそう。出来ない事は、出来る事でカバーすればいいってね。一緒に考えてみようよ!」
歩夢「まだ時間あるし」
言われて璃奈はようやく気付いた。
当たり前の事だったのに、トラウマに囚われて見失っていた事実。
自分はもう一人ではない。
愛だけじゃなく、こんなにもたくさんの仲間が側にいる。
それに気付いた瞬間、その事実を改めて痛感した瞬間、璃奈は自然とその言葉を発していた。
璃奈「……ありがとう」
その言葉と声の抑揚が、璃奈はもう大丈夫だという事を物語っていた。
せつ菜「フフッ、璃奈さんとこういうお話できたの、初めてですね」
璃奈「あっ…」
彼方「そういえばそうだねぇ〜」
璃奈「ああ……もしかして……」
せつ菜の何気ない一言を聞いて何を思ったのか璃奈は突然立ち上がり、宏高と愛と歩夢はビックリして尻餅をついた。
歩夢・愛・かすみ「わあっ!」
宏高「うおっ⁉︎」
そしてダンボールを被ったまま窓ガラスの方に歩いていき、勢いよくカーテンを開ける。
暖かな日の光が室内に差し込む中、璃奈は嬉しそうな声を上げた。
璃奈「これだ!」
どうやら何か妙案が浮かんだらしい。
ダンボールを押し退けて、メンバーと向かい合ったその時……
璃奈の練習着のポケットから紫色の光が漏れ出し、かすみが目を見張る。
かすみ「何の光⁉︎」
タイタス『この禍々しい波動は…⁉︎』
何かと思い璃奈はポケットに手を入れ、そこに入っていた物を取り出す。
それは昨日、家に帰る直前に拾った奇怪な指輪。
愛「……りなりー?」
宏高「それって……」
「フエッフェェェェェッ‼︎」
不気味な笑い声を発し、さらに強い光を放ちながら、指輪は璃奈の掌を離れて宙に浮き上がる。
タイガ『怪獣の指輪だと⁉︎』
宏高「⁉︎」
宏高は璃奈の手を引っ張り、自分達の方に引き寄せて指輪から遠ざけると、今度はひとりでに動く指輪を捕まえようと手を伸ばす。
しかし彼の手は空を切り、指輪は猛スピードで璃奈の部屋を飛び出してお台場の街中へ。
指輪はマンションから然程離れていない場所に停滞すると、紫色の輝きと共に魔獣へと変貌した。
「ワキャキャキャキャキィイイイイィィエエッ‼︎」
位置が逆転した口と目、胴体に浮かぶ赤い目の顔のような模様、体の各所に生えた何本もの触手、巨大な黒い翼が特徴の悪魔のような巨獣。
霧崎「おはよう、キラーナイトファング。さあ……朝食の時間だ」
『悪夢魔獣・キラーナイトファング』の出現に、お台場の街は一気にパニック状態になった。
続く。
璃奈が自信を取り戻したのも束の間、姿を現す悪意の化身!
果たして宏高は、タイガは悪魔を止められるのか⁉︎
璃奈の家のインターホンのカメラを全員で覗き込む場面ですが、半透明なイメージ体のタイガとフーマはかすみの、タイタスは果林の隣に居ます(笑)
そして今回登場するキラーナイトファングの色ですが、頭部・脚部・翼・尻尾に赤いラインが走った見た目を想像してもらえたらありがたいです。
(通常個体は元々紫のカラーリングなので)
次回もお楽しみに!
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