ウルトラマンタイガ 〜NEW BUDDY, NEW RAINBOW!〜   作:門矢零

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Happy Birthday彼方!!

大変長らくお待たせいたしました!
彼方回もいよいよ大詰めです。


夢の彼方に#4

翌日。

 

校内の中庭でスクールアイドル同好会の面々は弁当や購買の食品をそれぞれ持ち寄って昼食を摂っていたが、その輪に広がる空気はとても重かった。

 

昨日あんな出来事があったので、当然と言えよう。

特に彼方はその中心にいた人物なので、一際重い空気を放っていた。

 

いたたまれなくなった宏高が彼方に「あの…」と話しかけるが、それを遮るように彼方は哀愁を帯びた声で喋り出した。

 

彼方「昨日の夜ね……」

宏高「………」

彼方「遥ちゃんと、話そうとしたの」

 

 

昨夜の近江家。

 

この日も母親が夜勤で不在の中、姉妹2人で夕食を摂っていた。

黙々と食べ進める遥に対し、未だ妹の引退宣言を聞いたショックを引きずっているのか、スプーンが進まない彼方。

 

遥「ごちそうさま」

彼方「あ……」

 

遥が椅子から立ち上がり、食器を重ねている所で彼方が切り出す。

 

彼方「ねえ、スクールアイドルを…」

遥「その話題は、もうおしまいにしよう?」

 

食器を流しに入れながら遥は続ける。

 

遥「お姉ちゃんと喧嘩したくて、辞める訳じゃないから。今度のライブ、絶対来てね!」

 

 

遥にとっては最後のライブになる場所には必ず来て欲しいと、一切の悔いが無いような笑顔で言われたのだ。

 

彼方「…って言われたら、何も言えなくなっちゃって……」

 

彼方は寂しそうに、哀しそうに言う。

 

彼方「遥ちゃん、せっかくスクールアイドルになったのに、心配かけちゃって……遥ちゃんが辞めるくらいなら……いっそ、彼方ちゃんが…」

宏高「それはダメだ‼︎」

彼方「あっ……⁉︎」

 

罪悪感で押し潰されそうになった彼方が自棄になったようにそんな事を言うと、宏高が強い口調で否定した。

 

宏高「あなたと遥ちゃんのどちらかが夢を捨てるなんて事、絶対にあっちゃいけない!」

彼方「ヒロくん……」

 

するとエマが立ち上がり、目線だけを宏高に向けてキョトンとする彼方の隣に座って、訊ねる。

 

エマ「彼方ちゃん。それは本当に、彼方ちゃんが望んでいる事なの?」

 

それに対し彼方は数秒考えて、顔を下に向けながら否定した。

 

彼方「……違う。彼方ちゃんの望みは……ずっと探してた夢は……ここにある」

 

思い出すのは、同好会が再び始まってからのこれまでの日々。

 

彼方「同好会が再開してから、ずっと楽しかったんだ〜。やりたい事がどんどん増えていって、それを一緒に目指す仲間が居るのがすごく幸せで…」

 

楽しかった事、嬉しかった事、悩んだ事……それら全てが彼方にとってかけがえのない思い出。

 

彼方「皆との同好会は、彼方ちゃんにとってもう、大事な、失いたくない場所なんだよ」

 

それを再び失うなど、彼方には考えられない。

なぜならそれが、近江彼方という少女の一部になっているから。

 

彼方「でも、遥ちゃんの幸せも守りたいの……そんなの、我儘だよね?」

 

それを即座に否定したのは、果林だった。

 

果林「そうかしら?それって我儘じゃなくて、自分に正直って言うんじゃない?」

 

続いてエマ、歩夢、タイタス、璃奈が言う。

 

エマ「うん!自分に嘘ついてるより、ずっと良いと思うよ」

歩夢「きっと遥ちゃんも、彼方さんの幸せを守りたいんだと思います!」

タイタス『姉は妹の為に、妹は姉の為に。素晴らしい姉妹ではないか!』

璃奈「似た者姉妹だと思う」

彼方「似た者姉妹?」

 

彼方が不思議そうに訊ねると、愛と菜々、フーマが言う。

 

愛「だって、二人とも言ってる事一緒だよ?」

菜々「そうですね。お二人とも全部自分一人で解決しようとしています」

フーマ『それで互いに譲れないでぶつかり合ってちゃ、世話ないぜ』

彼方「でも遥ちゃんは、彼方ちゃんが守らないと!」

 

未だ姉の責任として言い募る彼方だが、そこで宏高とタイガが静かながらも強く響く口調で言った。

 

宏高「彼方さん、遥ちゃんはもう、守ってもらうだけの人じゃないと思います」

彼方「え?」

宏高「だってそうじゃなきゃ、お姉さんの事を助けたいって、あんなに真剣になりませんよ」

タイガ『あの子にも、自分で頑張ってみようって気持ちがあるんだ。もっと信じてあげようぜ?』

彼方「ぁ……」

 

それが決定的になり、今まで彼方の中に根付いていた固定概念が崩れ、より遥の笑顔や言葉が鮮明化され、彼方自身の誤った認識を正していく。

 

彼方「……何となく、分かったような気がする……」

 

まだほんの僅かで、全てを理解できた訳じゃない。

それでも彼方は、遥の成長を、自分を想い労る妹の気持ちを汲み取る事が出来た。

彼方はその場から立ち上がると、仲間達の前で言う。

 

彼方「遥ちゃんにちゃんと伝えなきゃ!」

 

 

────────────────────

 

 

日曜日のヴィーナスフォート。

 

そこには東雲学院スクールアイドル部のライブを一目見ようと、たくさんの観客が設けられたステージに詰めかけていた。

そんな様子をステージの裏側から、遥が不安そうに眺めている。

センターとして歌う不安も勿論あるのだが、大好きな姉が来ていない事に大きな不安を抱いていた。

そこに同じメンバーの金髪異国系少女のクリスティーナがやってくる。

 

クリスティーナ「遥さん!お客様ですよ」

 

それに続いてやって来たのは、宏高とせつ菜。

他のメンバーは、2階の客席で待機している。

 

遥「わあ!来て下さってありがとうございます!あの、お姉ちゃんは一緒じゃないんですか?今日はどうしても見て欲しいんです。だって……」

 

遥が緊張した様子でそう言うと、宏高は彼女の両手を取って何処かへと引いていく。

 

宏高「遥ちゃん、行こう」

遥「え?」

宏高「彼方さんが待ってる!」

遥「ええっ⁉︎」

 

その様子を後ろから見ながら、残されたせつ菜とクリスティーナは互いを見ながらフフッと笑い合った。

 

 

1階の観客席の最前列に連れてこられた遥は何が何だか分からず、宏高に訊ねる。

 

遥「あの、何なんですか?」

宏高「まぁ、見てなって」

 

すると照明が消え、ステージに菫色のライトが照らされた。

遥がそちらに注意を向けると、そのタイミングでステージに紫の踊り子衣装を纏った彼方がコツコツと進んできた。

彼方は中央に立つと、最前列に佇む遥に目敏く気づいてウインクを送った。

 

彼方「フフッ♪」

遥「あ…!」

 

全く展開が読めず戸惑うばかりの遥を置いて、彼方のライブは始まった。

 

(♪:Butterfly)

 

 

 

 

 

それは人生を共に歩んできた遥へと向けた、蝶の羽ばたきがイメージの将来の「夢」を応援する歌。

 

歓声が沸き上がる中、パフォーマンスを終えた彼方がステージ裏に戻ると、そこに遥がやってきて勢いよく抱きついてきた。

 

遥「お姉ちゃ〜ん!」

彼方「うおっ!おおっと〜」

遥「素敵なライブだった〜!」

彼方「遥ちゃん」

 

宏高とせつ菜が見守る中、最初に切り出したのは彼方。

 

彼方「ごめんね。遥ちゃんの事、分かってなくて……遥ちゃん、彼方ちゃんの事、とっても大事に想ってくれていたんだね。……ありがとう」

遥「あ…」

 

遥を抱きしめながら謝ると同時に感謝を伝えると、自分たちのこれからについての考えを述べていく。

 

彼方「あのね、二人とも同じ想いなら、お互いを支え合っていけると思うの」

遥「支え合って…?」

彼方「これからは家の事いっぱい手伝ってね。お互い助け合って、スクールアイドル続けていこ?二人で夢を叶えようよ」

遥「お姉ちゃんはそれでいいの?アルバイトをしながらスクールアイドルって、やっぱり大変だよ?」

彼方「平気平気!だって、遥ちゃんがスクールアイドルをするのも、彼方ちゃんの夢なんだもん!」

遥「お姉ちゃん……」

 

迷いの表情を浮かべながら俯く遥に対し、彼方は勝ち誇ったように挑発する。

 

彼方「あれ〜?遥ちゃんは〜、彼方ちゃんがこんな素敵なライブをしたのに、今日で辞めるなんて悔しいって思わないの?」

遥「それは……思う……」

彼方「フフッ」

 

そして彼方は手を差し出して言う。

 

彼方「スクールアイドルではライバルだよ?お互い頑張ろ!」

 

その言葉に目を潤ませながら、遥は強く「うん!」と頷き、彼方の手を取る。

こうして二人は、元の仲良し姉妹に戻った。

その光景を、宏高とせつ菜は喜ばしげに見つめていた。

 

タイガ『どうやら、お前の望んだ結末になったみたいだな』

宏高「…ああ」

 

クリスティーナ「続ける決心をしたようですね」

 

そこへクリスティーナと、同じ東雲学院スクールアイドル部のメンバーである『支倉かさね』がやってきた。

 

宏高「すみません…急なお願いをして、時間を作ってもらっちゃって……」

せつ菜「彼方さんの為にステージを貸して下さり、ありがとうございます」

かさね「おかげでメンバーの危機が救われたよ〜!それに、とっても素敵なライブで、やる気もらっちゃった!」

宏高&せつ菜「あ…!フフッ」

 

その時。

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ………

 

 

 

 

宏高「…⁉︎」

せつ菜「何ですか…?」

 

遥「お姉ちゃん……」

彼方「……」

 

ヴィーナスフォートが微かに揺れた。

 

悪意の獣が、そこに近付いている。

 

 

続く。




近江姉妹が和解したのも束の間、それを壊すかのように悪意は降り立つ……

次回が彼方回のラストになります。
なんとか頑張って書いていきますので、どうか応援よろしくお願いします。


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