ウルトラマンタイガ 〜NEW BUDDY, NEW RAINBOW!〜   作:門矢零

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ここでようやく同好会メンバーが出揃います。




トキメキの光#4

宏高と歩夢の2人は教えられた場所、つまりスクールアイドル同好会の部室の前に辿り着いていた。

 

宏高「見つけた……虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会!」

歩夢「あの、宏「何をしているんですか?」……」

 

歩夢の疑問は後ろから飛んできた、どことなく冷たい声に遮られた。

 

宏高&歩夢「ん?」

 

後ろを振り向く2人。

そこには、眼鏡をかけて長い黒髪を左右で三つ編みにした少女がいた。

眼鏡少女は挨拶代わりに言う。

 

眼鏡少女「普通科二年、虹野宏高さん。上原歩夢さん」

宏高&歩夢「えっ…⁉︎」

 

名前を名乗ってないのに当てられた事に、驚きを隠せない宏高と歩夢。

 

歩夢「会った事……」

宏高「ありましたか?」

 

その問いに眼鏡少女は眼鏡の位置を直しつつ、キリッと答えた。

 

眼鏡少女「生徒会長たる者、当然、全生徒の名前を覚えているものです」

宏高&歩夢「えっ⁉︎生徒会長っ⁉︎」

 

宏高と歩夢は驚きの声を上げる。目の前の少女がサラッと有能発言した事よりも、生徒会長である事の方がよっぽど衝撃的だった。

そして生徒会長の少女は、初めて柔らかな笑みを浮かべながら名乗った。

 

生徒会長「中川菜々と申します」

 

宏高が歩夢の方を向いて思い出すように言う。

 

宏高「そういえば、生徒集会や朝礼の時に見た覚えがあるな……」

 

すると菜々は2人の間を通ってスクールアイドル同好会の扉の前に立つ。

 

菜々「この同好会に御用ですか?」

宏高「はい!優木せつ菜さんに会いに来たんです!」

 

菜々が訊ねると、宏高はワクワクしながらも、少し落ち着いた様子で答える。

 

その瞬間。

菜々の顔に陰りが差し、彼女が身に纏う雰囲気がガラリと変わった。

そして先程よりも冷たい声でこう告げる。

 

菜々「彼女はもう……ここには来ませんよ」

宏高&歩夢「えっ?」

 

菜々は2人の方に振り向くと、他人事の様に言った。

 

菜々「スクールアイドルはやめたそうです」

宏高「……えっ?」

 

宏高の思考が停止する。

その言葉の意味を理解し、戸惑いの表情を浮かべる。

しかし菜々は構わず続ける。

 

菜々「彼女だけではありません。このスクールアイドル同好会は……」

 

言いながら部名が書かれたプラカードに触れ、それを何の躊躇もなく取り外した。

 

菜々「只今を以て、廃部となりました」

宏高「なっ……⁉︎」

歩夢「ええっ⁉︎」

 

取り付く島もない残酷な現実を突きつけられ、宏高と歩夢は大きなショックを受ける。

予期せぬ事態だった。

スクールアイドルは今なお衰えを知らない、学生達に大人気の文化。

なのに。

待っていたのは、真逆の事実だった。

菜々は「失礼します」とだけ言うと、後は知らないとばかりに去っていく。

 

宏高「…何だって……」

歩夢「っ………」

 

後に残されたのは、絶望に暮れる宏高と、それを心配そうに見つめる歩夢だけだった。

 

 

────────────────────

 

 

一方その頃……

 

虹ヶ咲学園の屋上では、演劇部が練習をしていた。

その中に、腰まで届くダークブラウンのロングヘアをお嬢様結びにし、リボンで纏めた少女の姿があった。

 

彼女の名は『桜坂しずく』。

 

彼女は今、同じ演劇部の先輩や同級生達が注目する中、太宰治の『女生徒』の一節を読み上げていた。

 

しずく「明日もまた…同じ日が来るのだろう!幸福は一生来ないのだ!けれども…」

演劇部部長「はい、そこまで!」

 

部長がストップを入れ、部員達に指示を出す。

 

演劇部部長「じゃあ最後にグラウンド10周!」

部員一同「えぇーー⁉︎」

演劇部部長「文句言わずにさっさと行く!」

 

そしてしずくの元に近づく。

 

演劇部部長「しずく、聞いたよ。同好会の件。」

しずく「ぁ………」

演劇部部長「掛け持ちじゃなくなったわけだし、これからは演劇部に専念できるんでしょ?」

しずく「………」

 

しずくは演劇部とスクールアイドル同好会を兼部していた。しかし同好会が廃部となった事で、彼女の居場所は一つ失われたことになる。

心残りがある為か、部長に声をかけられてもしずくの表情は曇ったままだった。

 

 

 

虹ヶ咲学園の中庭の片隅。

比較的涼しい場所にあるベンチで一人の少女が寝ていた。

 

彼女の名は『近江彼方』。

 

彼方は家から持参でもしたのか、愛用品と思わしき枕に頭を乗せ、それはそれは気持ち良さそうに寝ていたが…

 

彼方「……ハッ⁉︎」

 

突然驚いて飛び上がる様に目を覚ました。

 

彼方「まずい!もうすぐ夕方じゃん。急がなきゃ、またせつ菜ちゃんに……あっ」

 

そこまで言って、彼方は思い出す。スクールアイドル同好会がどうなったかを。

 

彼方「もう、怒られないんだっけ……」

 

寂しそうに、再び枕に顔を埋める彼方。

 

 

────────────────────

 

 

同時刻。

虹ヶ咲学園の食堂の一角、窓際の席にその少女はいた。

赤毛の三つ編みおさげと頬に3つずつあるそばかす、幼い子供のような無垢な印象を覚える顔つきが特徴的な少女。

 

『エマ・ヴェルデ』。

 

それがスイスからの留学生である彼女の名前。

 

エマは端から見ても分かる程にナイーブに外の景色を眺め、次いで湯呑みに入ったお茶を見て溜め息を吐く。

そんな彼女に近づく少女が一人。

 

ウルフカットの青みがかかった黒髪を持つ大人っぽい美少女、『朝香果林』。

 

果林はコーヒー片手にエマの対面に座ると、気さくに話しかけた。

 

果林「元気ないわね、エマ」

エマ「果林ちゃん……モデルのお仕事は?」

果林「今日は休み」

エマ「そう……」

 

エマは微笑むが、すぐに心ここに有らずな顔で景色を眺める。

果林も同じ様に景色を眺めながら、何気なくエマに訊ねた。

 

果林「どうするの?スクールアイドル」

 

その問いにエマは、悩みを打ち明けるようにゆっくりと話し始める。

 

エマ「部長のせつ菜ちゃんに話そうとしたんだけど、連絡着かないんだ。少し活動を休止するだけって話だったのに……廃部だなんて……」

 

困惑、寂しさ、そして喪失感。

それらが混ざった表情で俯くエマを見て、果林は頬杖をつきながら、深く思考するような顔つきに変わる。

 

何かがおかしい。

活動休止の筈が、なぜ突然廃部という事になったのか。

妙な引っかかりが果林の頭に食い込んでくる。

しかし、いくらここで考えても答えは出ない。真相は、せつ菜の心の中にしかないのだから。

果林は頬杖を解くと、コーヒーを持ってから明るく言う。

 

果林「そんな顔しないで」

エマ「んぅ……?」

 

エマが顔を上げると、果林はコーヒーを一口飲んで、頼れるお姉さん感が溢れる言葉をかけた。

 

果林「力になれることあるかしら?」

エマ「ッ‼︎」

 

果林は元々面倒見が良く、尚且つ今回の相談相手は同じ寮生で友人のエマだ。

放っておけるわけがない。

果林の言葉に、エマの表情が僅かだが晴れた。

 

 

 

そして、虹ヶ咲学園の校舎を出て一人帰ろうとしていたセミショートヘアの少女、『中須かすみ』。

彼女は校舎から少し歩いたところで振り向き、吐き捨てるように言った。

 

かすみ「ぬぬぬぬぬ……かすみんはやっぱり、諦めませんよ‼︎」

 

 

────────────────────

 

 

スクールアイドル同好会が廃部、そして優木せつ菜がスクールアイドルを辞めたという二重のショックからなんとか抜け出した宏高は、歩夢と一緒に学園を出て、近くのベンチで休憩していた。

 

宏高「歩夢ー、それ何味?」

歩夢「限定のラクレットチーズ蜂蜜。食べる?」

宏高「いいの?なら食べる!」

歩夢「じゃあ半分こね?」

 

宏高が答えると、歩夢はやたらコッテリしてそうなパンを半分に千切る。

その際、チーズがデローンと伸びて切断面にしなだれかかる。

 

歩夢「はい」

宏高「いただきます」

 

歩夢は片方を宏高に渡し、2人は同じタイミングで頬張る。

 

宏高「美味いね、これ!」

歩夢「うん♪」

 

パンの美味しさに微笑む2人。しかしそれも束の間。

歩夢は沈んだ面持ちになり、暗い口調で切り出した。

 

歩夢「残念だったね…」

宏高「えっ?」

歩夢「せつ菜さん……でも!学校にはいる筈だし、会おうと思えば!」

宏高「それはいいよ」

 

歩夢の慰めたい気持ちが分かったのか、気にすることはないと言った調子でそう言った宏高は、空を見上げる。

 

宏高「やめたって聞いた時はかなり驚いたけど、何か思うところがあったのかもしれないし」

 

宏高はそう言ってしばらく黙った。

歩夢は新たなフォローをしようとしたが、結局上手い言葉が見つからず、同じく黙ってしまう。

やがて宏高は誰に言った訳でもない独り言を、なんとなしに呟いた。

 

宏高「やっぱり、難しいのかな?……夢、追いかけるのって」

 

呟いたその言葉には、何処か悔しさと弱気が混じっていた。

 

歩夢「……えっ?」

 

首を傾げた歩夢に、宏高は向き直って言う。

 

宏高「そういうことでしょ?アイドルやるにしても、何にしてもさ。自分の夢は、まだ無いけれど……夢を追いかけてる人を応援できたら、俺も、何かが始まる!……そんな気がしたんだけどな……」

歩夢「………」

 

歩夢は、何も言えなかった。

そんな事を彼が思っていた事を。

間接的に何かを成し遂げ、彼なりに新たな一歩を踏み出そうとしていた事を。

何も知らなかったから。

 

そして宏高はベンチから立ち上がり、再び歩夢の方に振り向き、明るい笑顔を浮かべて言った。

 

宏高「なんてね。とりあえずお台場寄って帰ろっか?」

歩夢「……うん!」

 

それに歩夢が笑顔で頷き、鞄を持って立ったその時……

 

ドオオオオオオオオオンッ‼︎

 

何か大きなものが落ちたような轟音が2人の耳に響き渡った。

 

宏高「───ッ⁉︎」

歩夢「な、なに…ッ⁉︎」

 

宏高と歩夢がビックリした様子で音の方角を見る。

2人の視線の先では、紫色の矢のような光弾が街中に降り注いでいた。

それだけでも驚きものだが、その直後にもっと驚くべきことが起こった。

光弾の落下地点に、上空から怪獣が降り立った。

黒い皮膚に赤い外殻。体中に生えた刃状の突起が特徴的な怪獣。

宏高と歩夢が呆然気味に現れた怪獣を見て言う。

 

歩夢「何……あれ……?」

宏高「“ヘルベロス”だ……!でも…どこか少し違うような……」

 

宏高はその怪獣を知っていた。

だがその姿は、真っ赤な目に両肘の巨大な刃、赤い外殻に禍々しい紫のラインが走った見た目をしており、彼の知るそれとは若干異なっていた。

 

宏高と歩夢が突然の事態に唖然とする中、咆哮を上げる最凶獣・ヘルベロスを遠目で見つめるフードを被った少年が一人。

その少年がこう呟いた。

 

???「思いっきり遊んでおいで……“キラーヘルベロス”」

 

 

続く。




宏高はなぜヘルベロスの事を知っていたのか?
その理由はこの第1話の終盤で明らかになります。


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