ウルトラマンタイガ 〜NEW BUDDY, NEW RAINBOW!〜 作:門矢零
璃奈ちゃんボード楽しみだなぁ〜
それではどうぞ!
半ば逃げ去る形でかすみ達から離れたしずくだったが、帰る途中で壮絶な葛藤を繰り広げていた。
演じていない、素の自分を見せたい。
かすみ達にはきっと受け入れてもらえる筈。
そう信じたいけど、やっぱり怖い。
(だって……)
幼い頃のトラウマが、再びしずくの心に浮かび上がる。
みんなと少しだけ違う。
ただそれだけの事だったけど、自分はいつも不安だった。
(私は……)
変な子って思われたくない。嫌われたくない。
でも歌いたい。皆の心に響く歌を。
その為には自分を曝け出し、受け入れなければならない。
(でも……!)
やがて誰も居ない場所で彼女は壁に背を預け、
しずく「出来ないよ……曝け出すなんて……」
そのまま脱力するように座り込み、膝を抱えた。
しずく「嫌い……こんな私……」
同好会の仲間達の事は信じている。
話せばきっと受け入れてもらえる。
けれど、過去のトラウマがどうしてもそんな淡い期待の邪魔をする。
話してもし変な子って思われたら?
嫌われたらどうしよう?
そんな思考が次々と出てくる。
そしてそんな不安を抱く自分に嫌気が差す。
『居場所が欲しくないか?』
しずく「……っ‼︎」
まただ。
あの時と同じ、正体の分からぬ男性の声。
『何にも囚われる事なく、ありのままの自分でいられる……』
しずくが頭を上げると、白い薄手のパーカーに黒いジャケットを羽織り、フードを被った少年がいつの間にか自身に背を向けて立っていた。
しずく「あの……あなたは…?」
怪訝そうに訊ねるしずくに、少年は振り向きながら答える。
霧崎「僕は霧崎 幽。随分お悩みのようだね、桜坂しずく」
しずく「えっ……」
霧崎「分かるさ……君の苦悩も、憂鬱も……僕には手に取るように……」
全てを見透かしたような霧崎の言葉に戸惑いを隠せないしずく。
そんな事は気にも留めず、霧崎はしずくに近づくと、彼女の顔の前に右手を差し出し、指を鳴らす。
その瞬間、しずくの頭の中に不吉なビジョンと共に霧崎の声が流れ込んでくる。
霧崎「君は本当の自分を見せたいと思っている。しかしそれによって親しい者達が離れていく事を恐れている。違うかい?」
しずく「わ、私は……!」
霧崎「私は?自分を見つめ直して、もう迷いなく歌えると?でも一向に覚悟が決まらずこのザマだ」
しずく「あ、ああ……っ」
混乱と驚愕と不安の渦に放り込まれ、精神がプレッシャーの荒波に襲われガタガタになってくる。
そんなしずくに霧崎は追い討ちをかける。
霧崎「教えてあげよう……仮面で自身を偽らずとも、君が君でいられる世界…それは……
“孤独”と“静寂”だ」
そして、しずくの眼前から真っ黒な影を纏った腕が飛び出し、彼女の眉間を人差し指で小突く。
その直後、しずくは一気に脱力し、ゆっくり横に倒れて気絶した。
霧崎がニヤリとした笑みを浮かべると、そこにバルキー星人ラースが現れる。
ラース「こいつか…ウルトラマンと接点を持つ小娘と言うのは……」
霧崎「ああ。正確にはその中の一人だけどね。彼女を使えば、確実に獲物を釣れる」
ラース「ほう………では、この娘は貰っていくぞ」
霧崎「ご自由に」
霧崎はしずくの頭のリボンを引っ張って解き持ち去ると、ラースはしずくを肩に担ぎ一瞬でその場から姿を消し去るのだった。
────────────────────
一方その頃……
宏高「そうか……しずくちゃんが……」
しずくが帰った後、宏高はかすみと璃奈から事情を聞いていた。
かすみ「はい……だからりな子と一緒に元気づけてあげよー!と思って……」
璃奈「うん」
かすみ「宏高先輩をいきなり呼び出したのは悪かったと思ってます……でもこの前のしず子、宏高先輩と話してる時すごく楽しそうだったから……」
宏高「……なるほど。かすみちゃんは本当に友達思いで、しずくちゃんの事もよく見てるんだね」
かすみ「ぇ……そ、それはもう、しず子とは同好会設立からの仲ですから!」
宏高に褒められて、一瞬戸惑いながらも見栄を張るかすみ。
宏高「あのさ、しずくちゃんの事は俺に任せてくれないかな?」
かすみ「えっ?」
宏高「あんな事聞いちゃったら、やっぱりほっとけないからね。明日俺の方でも話を聞いてみるよ」
かすみ「あっ…はい……」
宏高「とりあえず今日はもう帰ろっか。じゃ、2人も気をつけてね。楽しかったよ」
璃奈「宏高さん、また明日」
宏高はそう言ってかすみと璃奈と別れたが、数歩歩いてから突然かすみの方に振り向いて言った。
宏高「あ、そうだ。何か大食いの時は今度からちゃんと言ってね?」
かすみ「やっぱ怒ってる⁉︎」
ヴィーナスフォートを出ようと歩いている途中で、宏高は突然誰かに声をかけられた。
???「あの〜……すいません」
宏高「はい?」
その人物はフードを被っており、いかにも暑苦しそうな服装をしている少年──霧崎 幽だった。
霧崎「虹ヶ咲学園の方ですよね?実はさっき、こんな物を拾ったんですけど……」
そう言って霧崎は徐に赤いリボンを取り出し、宏高に見せた。
宏高「⁉︎」
そのリボンを見て宏高はすぐに気づいた。
それはしずくがいつも頭に付けているものだった。
リボンを受け取りながら宏高は訊ねる。
宏高「これを一体何処で…?」
霧崎「向こうの方でですね。虹ヶ咲の制服を着ていたからもしかして、と思ったんですが……」
嫌な予感がした宏高は、霧崎に構わず彼が指した方向に向かって駆け出した。
取り残された霧崎は、不敵な笑みを浮かべながらその後ろ姿を見送った。
宏高は人気のない場所でしずくの物と思われる鞄とドリンクを発見した。
そして一度辺りを見回した後、腰のタイガホルダーからフーマキーホルダーを取り外して頭の方に持っていき、意識を集中させる。
(……見つけた!)
そして宏高は、急いでしずくが居ると思しき場所へと向かうのだった。
────────────────────
宏高がヴィーナスフォートを出たその頃。
今はもう使われていない倉庫のような建物の中に、バルキー星人ラースの姿はあった。
その横でしずくは縄を使って椅子に縛り付けて拘束されていた。
しずく「……ん、んんっ……えっ?」
気がついたしずくは自分が今置かれている状況に困惑し、更に目の前に立っているラースを見て、思わず息を呑んだ。
しずく「う、宇宙人……!」
ラース「お目覚めか?」
しずく「私をどうするつもりなんですか⁉︎この縄を解いてください‼︎」
しずくはラースに非難を浴びせるも、彼は全く動じる事なく淡々と告げる。
ラース「お前はウルトラマンを倒す為の人質であり、餌だ。もっと騒いで奴等を呼び寄せろ」
しずく「ぇ……?……一体、何がしたいんですか?そもそも私とウルトラマンにどういう関係が……?」
ラースの返答に一瞬意味が分からず唖然とするも、反論するしずくだが……。
ラース「なんだ……お前達何も知らないのか」
そうラースは小さく呟く。
ラース「ウルトラマン共はな、お前達スクールアイドル同好会とやらのすぐ近くに居るそうだ」
そう答えるラースの言葉にしずくは強く衝撃を受ける。
しずく「それって、どういう事ですか……?」
ラース「
ラースがしずくを恫喝したその時、扉が開く音が聞こえた。
それに気づいたラースが後ろを振り返ると、出入り口の方に宏高の姿があった。
しずく「宏高さん……⁉︎」
ラース「何だ坊主…?こんな所に何の用だ?」
完全に相手を見下したようなラースの問いに、宏高は毅然として答える。
宏高「大事な後輩を返してもらいに来た」
しずく「宏高さんいけません!危ないですよ!」
ラース「フン……身の程知らずにも程があるな。大口も休み休み叩け」
ラースは宏高の要求を突っ撥ね無視しようとしたが、それで引き下がる宏高ではなく……
宏高「だったら何が何でも返してもらおうか!」
宏高はその場から走り出して一気にラースに詰め寄り、強烈なパンチを叩き込む。
ラース「ガッ……⁉︎」
宏高のパンチを胴に喰らったラースは、信じられない程の勢いで吹っ飛ばされた。
その光景に驚きを隠せないしずく。
この時宏高は予め右手にタイタスキーホルダーを握り締めており、腕力を強化していたのだ。
その隙に宏高はしずくに駆け寄ると、足元に落ちていたガラス片でしずくを拘束している縄を取り外し、彼女を解放する。
宏高「大丈夫か?しずくちゃん」
しずく「宏高さん……っ」
絶望的とも言えるこの状況の中、望むタイミングで助けに来てくれた先輩に、しずくは目が潤むと同時に鼓動が早鐘を打つ。
宏高「今のうちにここを出よう!」
しずく「は、はいっ!」
宏高はしずくの手を引っ張り、倉庫から脱していく。
それからしばらくして、ラースが起き上がった。
ラース「ヌゥ……!このままで済むと思うな……‼︎」
続く。
しずくを助け出した宏高だったが、無防備にも彼女の前で力を使ってしまい……
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