ウルトラマンタイガ 〜NEW BUDDY, NEW RAINBOW!〜 作:門矢零
タイガへの変身を解いた宏高は、赤い粒子状の光に包まれながら元いた場所へと降り立った。
タイガ『どうだ、俺の力は?』
宏高「俺がお前になったのか…?」
タイガ『やっぱこの地球には俺がいないとダメだな!』
宏高「本当に……夢じゃないんだよな?」
タイガ『夢じゃなかったら今こうして生きてないだろ』
宏高「ハハッ、だよね……おおっ」
宏高が後ろを振り返ると、そこには「イメージ体」と呼ばれるホログラム状のタイガの幻影が腕を組んで立っていた。
タイガ『随分反応薄いな……そこは「わぁ⁉︎」って言うところだろ?』
宏高「いや、なんとなくイメージ体でそこに居るような気がして」
タイガ『俺の方からこんなこと言うのも変だけどさ……お前一体何なんだよ?』
宏高「え?」
タイガ『俺や俺の持ってるプラズマゼロレットの事を知ってたり、とても初心者って雰囲気じゃなかったぞ?』
宏高「ああ、それは……タイガの活躍をテレビでバッチリ見てたから……かな」
タイガ『は?』
すると宏高はポケットからスマホを取り出し、ある画像を表示してタイガに見せた。
宏高「だって……ほら」
そこにはテレビ番組『ウルトラマンタイガ』のキービジュアルが映し出されていた。
タイガ『なっ……俺⁉︎それにタイタス、フーマに……ヒロユキ!これってどういう……「宏くーーーん!」ん?』
タイガの驚きの声は何処かから聞こえてきた宏高を呼ぶ声によって遮られた。
宏高「歩夢だ……俺を心配して探しに来たのか……ごめんタイガ、この話はまた後でな!」
タイガ『あ、おい!』
そういうと宏高は歩夢の声がする方を目指して駆け出して行った。
タイガ『ホント調子狂うぜ、まったく』
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歩夢「どこにいるの……宏くん……」
怪獣によって破壊された建物の破片が転がり落ちている周辺を見渡しながら、宏高の姿を探す歩夢。
すると……
宏高「歩夢!」
背後から自分を呼ぶ声に振り向くと、そこには宏高がいた。
歩夢「宏くん!」
宏高の姿を見つけるや否や、彼の元に駆け寄る歩夢。
宏高「よかった……無事で」
歩夢「よかったじゃないよ!一緒に逃げてたのに、いきなり一人で逆方向に行って……怖かったんだから!……宏くんに何かあったらどうしようって……このまま二度と会えなくなるなんて嫌だって……そればかり考えちゃって……」
歩夢は涙目になりながら溜め込んでいた不安を吐露する。
宏高「ごめん……でも俺はちゃんとここにいるから……確かにちょっとヤバかったけど、あの巨人に助けてもらったんだ。ウルトラマンタイガにね」
不安にさせてしまったことを謝り、歩夢の頭を撫でながら彼女を宥める宏高。
それで幾分か落ち着きを取り戻した歩夢は、宏高の右手を自分の両手で包み込むと、涙声でこう言った。
歩夢「お願いだから……もう危ないことはしないでね……心配しちゃうから……」
宏高「ホントにごめん……」
歩夢「約束だよ?」
宏高「……努力はする」
歩夢「もーう……」
宏高の返答に歩夢は不満そうに頬を膨らますも、彼がここにいる事への安心感からいつものように柔らかな笑みを浮かべた。
そんな中、2人を陰から見つめる謎の人物がいた。その手には先程タイガに倒されたヘルベロスの顔をあしらった指輪が握られており、それを弄りながらこう呟いた。
???「いまいちキラープラズマが不十分だったか……」
その人物───白い薄手のパーカーに黒のジャケットを羽織り、フードを被った謎の少年は宏高と歩夢の方を一瞥して不敵な笑みを浮かべた後、その場から立ち去っていった。
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怪獣による騒動が収まり、夕陽が完全に落ちて夜空が支配する時間帯。
今日はもう真っ直ぐ帰ろうという事になり、宏高と歩夢は並んで自宅への帰路を歩いていた。
やがてマンションが見え始めると、宏高が思い出したように話題を振る。
宏高「あっ!そういえば、明日の数学さー」
だが、いつまで経っても歩夢が着いてこない事に疑問を感じ、宏高は立ち止まって歩夢の方に振り返る。
宏高「歩夢?」
また何か不安になったのか。
だがどうにもそういう感じの表情ではない。
まるで、自分の中の迷いに答えを見つけ、決意しようとしているかのような。
そんな言い様のない表情をしていた。
やがて歩夢は口を開き……
歩夢「2人で……」
始まりとなる言葉を紡ぐ。
歩夢「2人で始めようよ!宏くん!」
宏高「……えっ?」
それが何を示しているのか、最初こそ宏高は分からず呆けてしまう。
歩夢は言葉を選ぶように慎重に続きを語る。
歩夢「私も見てたの。動画……スクールアイドルの。せつ菜さんのだけじゃなくて、たくさん……本当に凄いと思ったよ!自分の気持ちをあんなに真っ直ぐ伝えられるなんて!スクールアイドルって、本当に凄い!私もあんな風に出来たら、なんて素敵だろうって!」
それが歩夢が見出だした本心だった。
宏高「歩夢……」
歩夢「ごめんね?最初に言えなくて。本当は私もせつ菜さんに会ってみたかった。けど、会っちゃったら、自分の気持ちが止まらなくなりそうで怖かったの」
自然と歩夢は拳を握る。
歩夢「それでも……動き始めたなら、止めちゃいけない。我慢しちゃいけない」
歩夢は両手を胸の前で重ねると、2歩ほど進んで、目をギュッと閉じ、自分の気持ちに蓋をしている何かを抉じ開けるような表情を浮かべる。
宏高は黙ってそれを見守り、彼女の続きを無言で待つ。
やがて歩夢は意を決して打ち明ける。
歩夢「私、好きなの‼︎」
それを聞いた宏高はキョトンとした顔をするが、歩夢は照れ臭さから少し俯きながらも続ける。
歩夢「ピンクとか、可愛い服だって……今でも大好きだし、着てみたいって思う!」
そして歩夢は宏高に近づき、彼の左手を取るとこう言った。
歩夢「自分に素直になりたい。だから、見ててほしい」
そう言って、歩夢は持っていた鞄を置き捨て、近くにある幅広い階段を駆け上がり、踊り場の所で止まって宏高の方に振り返る。
歩夢「私は‼︎スクールアイドル、やってみたい‼︎」
宏高「………!」
そして歩夢は大きく深呼吸すると、共に歩む夢を詠った。
(♪:Dream with You)
宏高は歩夢の姿に何を思っただろうか。
ピンクの花弁が舞う中で、彼は何を幻想しただろうか。
それでも一つ言えるのは、宏高が歩夢に可能性を感じていたということ。
やがて歩夢の詩は終わり、彼女はゆっくりと階段を下りて、宏高の前に立つ。そして自分の鞄を拾い、その中からある物を2つ取り出しながら宏高に言う。
歩夢「今はまだ……勇気も自信も、全然だから。これが、精一杯」
それは花びらの模様が散りばめられた、ライトピンクと薄い黄緑色のパスケースで、歩夢は黄緑色の方を宏高に差し出して、彼を見つめながら言った。
歩夢「私の夢を、一緒に見てくれる?」
自然と歩夢の瞳が潤む。
是と答えてくれると期待している反面、非と言われる不安もあるのでそれは仕方がない。
それに対して宏高は微笑みながらパスケースを持つ歩夢の左手を両手で包み込んでからパスケースを受け取ると迷わず答えた。
宏高「勿論!いつだって俺は、歩夢の隣にいるから」
歩夢「っ〜〜〜〜‼︎」
嬉しさを超えた何かが、歩夢の心を埋め尽くし、込み上げてくる。
ちょっぴり涙が出てしまう。
それでもそれを抑え、歩夢は咲き誇る笑顔を向けた。
歩夢「うんっ!」
俺がタイガの……いや、ウルトラマンの光を得たのは偶然だったのかもしれない。
でも闘う事を決めたのは他でもない、俺自身だ。
俺が得た力で、歩夢や皆の夢を、笑顔を守れるなら……
続く。
これにて第1話終了です。
毎話これくらいの長さになると思いますが、気長に楽しんでいただけたらなと思っています。
次回 第2話「可愛さとおぞましさ」
ヒディアス「この世界は悪意で溢れている……」
お楽しみに。
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