アマゾネスとして生まれた私は〇〇になる。   作:だんご

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なんだかんだでおまたせしました。
ソード・オラトリアの漫画を今読んでいたのですが……みんな背負ってるものすごいなって改めて思いました。
あとアイズの背中がエロかった。


元日本人として、お祭りは見逃せない

 怪物祭、モンスターフィリアの日がやってきた。

 

 ガネーシャ・ファミリアが中心の大規模なお祭りであり、捕獲されたモンスター達が大衆の前で調教公開されるという、なんともファンタジー感あふれるお祭りだ。

 

 そう、調教されるモンスターである。

 

 話に聞けば公開されるのは、ドラゴンや巨獣型のモンスターの公演らしく、そこにエロさは全くはないらしい。しかし、調教という言葉の持つエロさは依然輝いていると思う。

 

 この時期には大多数の探索型ファミリアはお休みを取ってでも祭りを楽しむようで、新たなエロとの出会いに期待して胸が膨らむばかりである。

 

 そう、日本人としての魂が、心が、お祭りを求めて魂が叫んでいる。

 このリビドーは発散されるべきだろう。一人でパージするのも悪くないが、みんなでパージする醍醐味もあるのだから。

 

 「私、気になります」

 

 「ダメです」

 

 「なんでや工藤!」

 

 「私の名前はアイリです、ソフィーネ様」

 

 台パンマシーンと化した私を、冷たくあしらっているのは最近私の対応をよくさせられているアマゾネス。

 最初はレベル6ということで私に恐れを抱いていたようだが、最近はずいぶんと応対が雑になってきているように感じる。何故だ。

 

 「祭りだぞ、それも年に一度の祭りだぞ。こんな珍しい機会、ネタを逃してたまるか」

 

 「テルスキュラには同じようなものはなかったのですか?」

 

 「一年中殺し合いでお祭り騒ぎのテルスキュラ、わざわざそんなもの必要ないよなって」

 

 「そ、そうですか」

 

 テルスキュラは毎日どったんばったん大騒ぎのお祭り状態だ。

 仮にお祭りがあったとしても、名前を変えただけで、いつもの殺し合いと内容は変わりないだろう。

 

 そう、わたしにとっては久方ぶりのお祭り。血なまぐさい怨嗟の声が飛び出す不健全な祭りではなく、みんなが笑い楽しむ健全なお祭りなのだ。

 

 「なーんで、私が行ってはいけないんだ?」

 

 「そもそも、ソフィーネ様は名目上では、他のファミリアに知られてはいけない戦士なのですよ?ファミリアの連中が大勢で街を出歩いている時期に、我々としては外に出てもらいたくありません。ソフィーネ様はギルドに届け出もだされていない隠匿状態の冒険者。来たるべき時への切り札として、誰にも知られてはいけないジョーカーです」

 

 「秘密兵器ってやつだな。野球部でお前は秘密兵器だからって説得されて、結局ずっと秘密兵器だったというのは鉄板ネタだが……。そんなオチじゃないのか?」

 

 「仰る意味はよくわかりませんが……。あのイシュタル様が直々にそう命じられて、ファミリアのアマゾネス達はあなたのために動いているのですよ。決して出番がないわけではないかと」

 

 面倒くさいことになる気がする。

 あれだ、噂によるとフレイヤ・ファミリアとの戦いになるとか言われているが、イシュタル様は正気なのだろうか。

 

 フレイヤ・ファミリアとイシュタル・ファミリア。比べればフレイヤ・ファミリアは戦力の次元が、私たちとは一つも二つも違う。

 

 私が入団する前から計画されていたというが、それが本当なら私抜きでも戦闘を計画していたはずだ。その頃のイシュタル・ファミリアの最大戦力はレベル5のフリュネぐらいのもの。

 あいつは弱くはない。むしろオラリオでは有数の実力者だが、それでもレベル6の厚い層を持ち、そして最強のレベル7を有するフレイヤ・ファミリアとどう戦うつもりだったのだろうか。

 

 ……考えるのも億劫になってきた。

 

 答えに辿り着けないほどに少ない情報で思い悩み、エロマンガを作る気力を無駄に消費するのも阿呆らしい話だ。

 人間一日の時間、使える体力と精神力は限られているのだから。

 

 無理に藪をつついて蛇を出す必要もないだろう。

 知るべきときに知ればいい。わざわざ私の創作活動の時間を割いてまで、今ここで動く必要性を私は感じていない。

 

 「そうか。しかしこれまでも外に出ることを結局許してくれていたじゃないか」

 

 「そうですね、誰もレベル6を止められませんからね」

 

 「む?そういえばこの前に、何故か自信満々でフリュネが私の外出を止めに来たが……。あいつ、少し骨があったな。もしかしてレベル6も近いんじゃないか?戻り次第、確かめるために戦ってみたら、なんか弱くなってたが」

 

 「……少し、ですか。本当に、規格外ですね」

 

 顔を引き攣らせて笑うアマゾネスに、何かあったのだろうかと首をかしげる。

 

 「ともかく、私は祭りに参加したい」

 

 「……はぁ、わかりました。あまり目立つことがないように、他の冒険者とも接触は最小限に抑えてください。もちろんこれまでのお願い通り、戦闘なんてもってのほかです」

 

 「いいのか!」

 

 「止めたという事実が大事なんですよ。意識づけ以上に期待しているものはありません。イシュタル様も、我々が本当にソフィーネ様を止められるとは思っていませんので。それに、この前のフリュネとの戦いをご覧になられて、今あの方は大変機嫌もよろしいですからね」

 

 「確かに、あの時のフリュネは中々に善戦したと思うが……。そこまでのことか?結局、一時的に能力が上がっていただけ。しかも、二度目の戦いではその傾向すら見受けられなかったぞ。フリュネのレベルが上がったなんて話も聞かないし、スキルの発現でもあったのか?」

 

 「そうですけど、そうではないんですよ……」

 

 どうにも頭に引っかかるが、そんなに私は頭の回転がよくないんだ。わからない。

 まぁ、外出許可は得られた。久々のお祭りを思う存分楽しもうじゃないか!

 

 街は多くの民衆、冒険者で人がごったがえしていた。

 これまで見たことがない屋台も立ち並び、その数は平時とは比べ物にならない。

 

 そして見るべきは大勢のアベックッ!恋人同士ッ!これまでダンジョンに潜ることを中心としていたために出会えなかった、エロの可能性を持つ冒険者たちッ!

 

 もう、私の胸に宿る思いは大炎上。心のチンコは未知の可能性に歓喜して天にも昇る思いだ。

 

 あの慣れた感じのカップルもいい。恐らくこのお祭りのために、初めて誘ったと見える関係のカップルもいい。

 いろんな髪型、いろんな服装、いろんな種族、いろんなやり取り。なんと妄想をかきたてられることか。それら全てが、このオラリオの祭りを中心に混沌としている。

 

 ああ、テルスキュラでは決してみられない光景。私はオラリオに来て良かったと改めて実感した。

 

 「……ん?」

 

 違和感を感じ取った。

 

 こんな日常の中にはありえない予感。幼い幼女が母親と並んで楽しそうに歩いている光景を横目に、テルスキュラで磨かれた戦士としての本能が叫び、私に危険性を伝えてくれている。

 

 「……『偽・覇気』『見聞色の覇気』」

 

 探知開始。

 人が多すぎて困難かとも感じたが、露骨に異常な存在がすぐに網にかかった。

 

 「……なんで、街中にモンスターがいるんだ」

 

 その刹那、誰かの悲鳴が聞こえた。

 

 ダンジョンのモンスターは通常、地上に出られないはず。誰かが外に出したのか、この怪物祭のために捕まえていたモンスターが逃げ出したのか。これはまずいと近くの屋台に駆け寄った。

 

 「店主」

 

 「ん、うおっ!どうしたんだお嬢ちゃん、いや、なんか悲鳴があったみたいだが」

 

 「その紙袋をもらうぞ、金は払う」

 

 腰のポケットから財布を取り出し、明らかに多い量の硬貨を店主の前に差し出す。

 そして返事を待たずに、店主の手前にあった紙袋を一枚ひったくると、頭に被って走り出した。

 

 「ちょ、お嬢ちゃんっ!?」

 

 「釣りはいらない、あと逃げたほうがいいぞ店主。モンスターが脱走したようだッ!」

 

 目の穴を開けるのを忘れていたので、ズボッと紙袋に指で穴をあけた。あ、なんか快感。

 障子に穴を開けるのもそうだが、やはり人間は膜を破って貫通させることに快感を感じる生き物なんだなって。

 

 たどり着いたその先、私の視界が開けたその先には、オークが女性を、そして幼女に棍棒を振り上げて襲い掛かってる姿があった。あれは親子だ。

 

 母親がせめて子供だけは守ろうと、とっさに子供に覆いかぶさっていた。自分の命よりも、子供を優先したのだ。

 母親は絶望の未来を想像して目をつむり、必死に子供を抱きしめる。幼女が「お母さんッ!」と泣き叫ぶ。

 

 ぶちぎれましたわ。

 

 「絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

 

 『偽・瞬歩』

 

 死神が行う特殊歩方法によって、一気に加速。

 オークが棍棒を振り下ろす先、母子の前に躍り出た。

 

 突然出現した私の存在にオークは驚きを表すも、既に振り下ろされた暴威は止まらない。

 お前ごと叩き潰すと嗜虐的な笑みを浮かべるオークに対して、私はさらに、さらに大きな怒りを覚えた。

 

 「おまえなぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 オークの棍棒を気を込めた左拳で粉砕。一瞬にして木片になった自身の武器を見て目を白黒させるオークに、遅れて拳を振るった凄まじい風圧が襲い掛かった。

 

 もんどりをうって倒れそうになるオークに再接近。

 オークの目には私の姿が消えて、一瞬にして懐に潜り込まれたように見えたのだろう。顔が恐怖一色に染まるが、もう謝っても許さない。

 

 「オークが、オークがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 全身をばねに右足をオークの股間に叩きこむ。

 

 ぶちゅっと音を立ててつぶれる二つのゴールデンボール。ボキっと折れ曲がるネオアームストロング砲。

 それを感じ取りながらも私は右足を止めることなく、いや、むしろより一層の怒りを感じてさらに高く、高く勢いそのままに蹴り上げる。

 

 「オークが股間以外の棍棒を女にふるってんじゃあねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 

 オークの体中に蹴りの衝撃が駆け巡った。

 

 骨盤、背骨、頭蓋骨。その間にある全ての臓器は膨大に込められた私の気によって粉砕し、さらには骨格や筋組織すらズタズタに引き裂いた。

 

 オークはまるで風船のように破裂。

 オークの肉片は、オラリオの街を彩る真っ赤な華となったのである。

 

 そしてその直後、巻き起こった風の嵐が、私を中心に周囲に吹き荒れた。

 

 出店されていた立ち並ぶ街中の屋台から食料や品物、或いは屋根を吹き飛ばし、呆然と戦いを見ていた民衆たちはあまりにも強い風に耐え切れず、後ろに倒れ込むか吹き飛ばされてしまった。

 

 信じられない光景、あまりにも強大な蹴りの一撃を見て驚き立ちすくむ民衆と冒険者をしり目に、私はオークの残骸に対して鼻を鳴らす。

 

 「ふん、汚い花火だ」

 

 こんなかわいい一般女性、それも幼女まで物理的に手をかけるとか、お前はオークとしての誇りがないのか。

 

 まだ性的に襲おうとするのであれば、私は耐えることができた。しかし暴力そのままに棍棒を振るうなど、オークにあるまじき醜態である。

 

 母子だぞ!?人妻だぞ!?幼女だぞ!?どうしてそんな、そんなことができるんだ。

 

 しかもやつは筋金入りだった。私が蹴り上げた時に、やつの股間の棍棒は勃ってすらいなかったのである。こんな非道な存在を生かしておくわけにはいかない。

 せめてあそこで興奮していたら、リョナ厨として捕縛だけで留めてやったというのに。

 

 「大丈夫ですか」

 

 後ろの母子に声をかける。母親は私におびえ切っていたが、幼女は私の姿を見て、まるでひまわりのような満面の笑みで口を開く。

 

 「ありがとう、お姉ちゃん!」

 

 「……おっふ」

 

 リアル幼女のお姉ちゃん発言。これはキマシタワー。

 

 「他にもモンスターが逃げ出しているようです。あなた達親子も避難を」

 

 「は、はい。その、ありがとうございますッ!」

 

 「お姉ちゃんは……?」

 

 「こ、こらっ!」

 

 「ふふ、私は他にもあなたたちと同じような人がいないかどうか、確認して回らなければなりません。このような非道が行われていると想像するだけで私は居ても立っても居られないのです」

 

 恐怖から尊敬の目に変わる母親。目をより一層輝かせる幼女。

 

 そう、こんなふざけたことが行われてしまうなんて私は耐え切れない。

 あのテルスキュラならともかく、ここは文明都市オラリオ。エロの発芽が始まったばかりの迷宮都市。あんなエロなき蛮行、ダンジョンの中でならば、冒険者相手ならばともかく、地上で民衆が巻き込まれるなどあってはならない。

 

 「ほかの皆さんも避難をッ!冒険者の皆さんは、モンスターの討伐、および住人の避難の手助けをよろしくお願いいたしますッ!」

 

 そう言い残して、私は次の目的地に駆け抜けた。

 

 一撃でぶっ殺して次の魔物へ。一撃で昏倒させて次の魔物へ。

 他の冒険者も戦っているようだ。オラリオを駆け回り、遭遇次第、対応する必要性がある市内の魔物を悉く無力化させていく。

 危機に陥っているわけでもないのに、他人の獲物に手を出す愚を犯す必要はないからな。

 

 「あらかた街中の整理は終わったか?」

 

 目につく魔物を倒し終え、このまま終わりかと思ったその時。地震の揺れを感知、さらには一際大きな魔物の気配が現れた。

 

 ……いや、待て。明らかにこれまでの連中とは格が違うぞ。

 どうやってガネーシャ・ファミリアの連中は、こいつをテイムしたのだろうか。

 

 「ガネーシャ・ファミリアは大変だな。損害賠償でファミリアが破綻するのではないのだろうか」

 

 近くにある一際高い建物を発見すると、壁を走って駆け上がり、その頂点より対象を確認する。

 紙袋姿でこれでは完全な不審者だが、そんなことは言ってはいられない。

 

 既に戦闘が始まっているらしく、数人の影がモンスターと戦っていた。

 敵は蛇のようなモンスター。相手をしているのは近接型戦士3人、魔導師1人。

 

 「……ふむ、『偽・六式』『見聞色混合』『遊戯・手合』

 

 気の流れに技の威力。行動のパターン。戦闘判断。能力。速度に攻撃力、対応力などなど。

 「お前、いくつか名前が違うだけで同じ意味じゃないか」と突っ込まれそうな判断項目を基に、目の前の戦いからおおよそのレベルを分析していく。

 

 「……レベル5の冒険者が三人?」

 

 驚いて、思わず声が漏れた。これは中々見られる戦いではない。

 

 「しかも、レベル5の中で上位層の気配だ。残り一人の冒険者もレベル4……。いや、3か。ここまでの冒険者であれば上位のファミリア、それも探索系かもしれないな。これは私は必要ないんじゃなかろうか」

 

 悩ましい。

 

 不必要に介入してしまってはトロールプレイもいいところだ。

 人の獲物を奪いとることは戦士への侮辱。戦士の成長の機会を奪い、後の戦いにおいてその戦士を死に追いやるような、余計なお節介なのだから。

 

 もう対応が必要なモンスターは、あの一体ぐらいしか視界では確認できない。

 残りは全て対処済みか、私以外でも対処が可能な状況のモンスターばかり。焦って参戦して迷惑をかけるよりも、このまま帰った方がいいのだろうか。やや遠方に気になる気配もあるし。

 

 「……いや、参加するか。前衛の動きがおかしい」

 

 観察すると前衛の動きが奇妙だ。

 特にアマゾネス二人は戦いなれたスタイルではなく、無理に拳で相手をしているようにも見える。

 

 これは休暇中にばったり遭遇。得物は自分のファミリアに置いてきているのかもしれないな。

 

 モンスターに決定打を与えられる魔導師を、こんな有様で守りきれるのだろうか。

 もし何かあったならば、ただでさえ苦しい前衛を一人割いてカバーに入らなければならない。戦況が一気に変わってしまうだろう。

 

 あ、魔導師がぶっ飛ばされた。目に見えるならともかく、見えない地中からの攻撃では避けられなかったようだ。

 しかも、蛇みたいなモンスターはその頭の先が割れて変貌をとげ、花みたいな植物系、それも触手モンスターに変身したのだった。

 

 あの状況で魔導師を狙うということは、魔力に反応するタイプなのかもしれない。なかなかにエグイ性能。

 

 そして地下からの攻撃に、彼らほどの冒険者が対応できなかったということ。それはこの特徴を彼らは知らなかったから、かもしれない。つまり初遭遇の魔物なのだろうか。

 

 あの冒険者達の連携はもうめちゃくちゃ。前衛も戸惑いを隠せていない。

 近くに高位冒険者の気配もないし、援軍の見込みもなさそうだ。

 

 なら、遠慮はいらない。

 

 触手はオークの股間の棍棒と同じ。より良きエロの希望の架け橋となる可能性の塊。

 それを性癖からくる腹パンではなく、無為無臭の腹殴りに用いるなど……。悲しみと怒りで言葉が見つからない。

 

 解釈違いです。

 そういうのもあるのかもしれませんが、それはそれとしてぶっとばす。

 

 「──『偽・六式』『月歩』」

 

 空を踏みしめ、さら駆け抜ける。

 エルフの魔道師に触手の追い打ちが襲い掛かるその刹那、より強く大気を蹴り加速。突撃してモンスターとエルフの間に着地した。

 

 「俗にいうスーパーヒーロー着地だッ!膝にすごい悪いッ!」

 

 突然の紙袋不審者に、目をぱちくりするエルフとその仲間たち。

 いや、これ最後の加速で紙袋脱げてるわ。やべ。

 

 「これを何度もやると30歳あたりで膝の軟骨が死ぬなっ!それはともかくお前は、お前達だけは絶対に潰すッ!!」

 

 エルフと私に襲い掛かる複数の触手。腰を落とし、気炎を吐き出し、拳を固く握りしめる。

 

 「ッ!だめッ!そいつは硬くて拳では対応できないッ!」

 

 アマゾネスの片割れの少女が叫んだ。

 

 少女は拳で戦い、このモンスター、人食花が打撃に強い耐性を持っていると知った。

 レベル5の拳はそれだけでミノタウロスを圧倒できる凶器。しかし、それを以てしてもこの食人花には通用しない。なんという強靭な体皮なのだろうか。

 

 この食人花相手に、刀剣による切断や魔法以外では戦いにならない。

 突如参戦したアマゾネスも自分と同じ、得物を持っておらず格闘戦の構えをとっている。このままでは彼女も仲間のエルフと同じようにやられてしまう。

 

 だが、ソフィーネは止まらない。

 

 「いけないッ!」

 

 アマゾネスの姉妹が叫び、戦士の少女も数瞬後の未来を予見して歯をかみしめた。

 

 ソフィーネの拳は食人花の触手を確かに捉えた。

 その感触に、ソフィーネは少女の言葉が真実であると悟る。……硬いッ!

 

 だが、それが逆にソフィーネの逆鱗にふれた!

 

 「触手はなぁ……ッ!硬いだけじゃなくて、温かかったり、粘液ぬちょぬちょしてたり、テクニックがなければダメに決まってんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 発剄、発動。

 

 一瞬にして、拳の先より触手へと大量の気が流し込まれる。暴れ狂うままに流し込まれた膨大な気は、触手の中で制御を失い暴走。

 硬い触手という逃げ場のない空間の中で、まるで瓶の中の爆竹のように、気の暴走は膨れ上がっていき、ついには限界を超えて爆発。一気に外部へと気が放出された。

 

 「──!?」

 

 風船のように破裂した触手。声なき絶叫を上げる食人花。理解を超えた光景に、目を見開く四人の冒険者達。

 

 「なんだかんだで、私は、私は期待していたんだぞぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

 何故か泣き出しながら、ソフィーネは残った触手にも追撃。次々と破壊、爆発させていく。

 

 本来理性を持たないはずの食人花達は、同胞の悲惨な光景に動揺、戸惑いを示した。なんだこいつは、なんなのだこいつは。

 

 しかし、このままにさせてはいけないと、他の食人花もソフィーネとの戦いに参戦。四人の冒険者よりも脅威と断定、ソフィーネを優先して攻撃を開始。

 これまでとは比較にならない量の触手が、速さと力が込められた触手がソフィーネに襲い掛かる。

 

 「だから、解釈違いだって言っているだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 だが深い悲しみを背負ったソフィーネは、無意識の中で『偽・無想転生』を発動。向かい来る全ての触手を躱し、いなし、破壊していく。

 

 「そこのエルフと冒険者達!こいつらは私が仕留めていいのか!それともあなた達は、まだやれるのかっ!」

 

 呆然とその光景を眺めていた冒険者達、いや、ロキ・ファミリアの面々は、ソフィーネの言葉に我を取り戻した。

 

 「……ッ!ここで全部持っていかれたらロキ・ファミリアの名折れよッ!」

 

 「どこかで、どこかであの子と会ったことがあるような……。ううん、今は目の前の敵に集中だよねっ!」

 

 「……すごい。でも、私もっ!」

 

 残り一人、エルフの少女もソフィーネの言葉、そして仲間たちの言葉を聞き、目に光が戻った。口から血反吐を吐き出し、苦痛に震える膝を必死に支えながらも立ち上がる。

 

 「私が、私がやりますっ!どうか時間を……っ!」

 

 「了解したっ!ならボーナスタイムだっ!」

 

 歯をむき出しにして笑い、笑い、笑い、目の前の触手達を蹂躙していく。

 

 今のソフィーネの後ろには、あのボロボロになったエルフの少女がいる。

 そう、エルフの少女だ、しかもアナルが弱そうな少女である。あとちょっと女の子同士という可能性も感じるエルフの少女だ。なんだこれは、彼女もまた可能性の塊ではないか。

 

 彼女をエロを知らぬ、無知暴虐の触手から守れずして、どうしてエロの信徒を名乗れるだろうか。

 

 ソフィーネの気力は満ち満ちていた。

 触手を手刀によって切断、発剄による内部破壊、引きちぎり、握りつぶし、抉り取り、エルフの少女の目の前まで下がり切った前線を押し上げていく。

 

 悪寒。

 

 前線を三人の戦士に任せ、後ろに後退。何を、とこちらに注意を割いたロキ・ファミリアを無視して、エルフの少女の目の前、地上を突き破って現れた触手を掴みとり、握りつぶした。

 

 魔法の発動寸前、膨大な魔力を感知した食人花は、再度エルフの少女へと攻撃の対象を変えた。それを感知したソフィーネは、攻撃を予見して防いだのだ。

 

 ソフィーネは、頭で何かが千切れる音を確かに聞いた。

 

 こいつとは、とことん相いれない。

 そんな怒りに震えるままに、ソフィーネは拳を振り上げて大地に叩きこんだ。

 

 「二番煎じ、天丼のシチューはなぁっ!守る時じゃなくて攻める時に使うものだろうがぁぁぁぁぁっ!」

 

 ──『偽・範馬流(MUGEN)』『邪ッチェリアアアァッ』

 

 本来であれば地上全範囲という、頭のおかしい衝撃が大地へと流れ込んだ。

 この衝撃でこのエリア周辺で局地的地震が発生。地下から襲い掛かるはずであった触手の全ては、地下の中で全て破壊し尽くされる。

 

 食人花は悲鳴を上げる。痛みで暴れ狂うその隙に、ソフィーネは飛躍。食人花達に掌底を叩きこみ、蹴り上げ、全員を一か所に押し込めた。

 

 「なんて、無茶苦茶なッ!?」

 

 「え、えっ!?じ、地震っ!?」

 

 「……この力、速さ。ひょっとして私よりも」

 

 その瞬間。エルフの詠唱が完了する。

 

 実はエルフの詠唱に、若干の恥ずかしさを覚えていたソフィーネ。

 

 これ幸いと他の冒険者と共に後ろに飛んだ。

 ソフィーネの大昔の何か、既にほとんど覚えていない前世から流れる黒い歴史が、詠唱中に彼女のメンタルを削り続けていたのである。

 

 そう、この戦いでソフィーネに最もダメージを与えたのは食人花ではない。詠唱していたエルフであった。いや、カッコいい。詠唱はカッコいいけど、それはそれとして恥ずかしいのだ。

 

 エルフの魔道師の魔法が発動。

 空中に多数の魔法陣が出現。それは膨大な魔力が込められた奇跡。それはオラリオ最強の魔導士のみが許された絶対零度の氷結魔法。

 

 「『ウィン・フィンブルヴェトル』!!!」

 

 その純白の光彩、雪波はすべての食人花を飲み込み、凍らせた。

 ……なんていうか、オーバーキルもいいところだと思う。

 

 「ひ、ひぇ……。まるで、エターナルフォースブリザードだな……」

 

 私もちょっとは頑丈だったつもりだけど、これをくらったらマズくないだろうか?

 

 全身氷漬けの食人花達。

 なんとも言えない幻想的な姿だが、そこに込められた魔力に寒気が走ったのは、決して気温の急激な変化だけの問題ではないのだろう。

 

 ともかく、これで主要なモンスターは全員討伐完了。

 残り一匹いるらしい気になっていたモンスターも、アイズと名前を呼ばれた戦士がすぐに向かっていった。

 さっきの残念触手と比べて、あのモンスターは一つも二つも格が落ちた気配。問題は起こらないだろう。

 

 ……いや、というか到着する前にちゃんと倒されている。すごいな。

 

 しかも詳しく気配を探ってみたら、倒した冒険者はレベル1なんじゃないだろうか。

 どこの誰がやったんだ。普通にやりあっていたから気にしていなかったが、もしかして、今回の騒動で1番すごいやつなのではないだろうか。

 

 関心していると、エルフの介護を終えたアマゾネス2人がこちらにやってくる。

 やばい、顔を隠す紙袋が飛んでいったことをすっかり忘れてしまっていた。このままでは流石にイシュタル様に怒られると、すぐにこの場を離れようとしたその時。

 

 「あ、やっぱりっ!ソフィーネ、ソフィーネだっ!【泣き虫】のソフィーネっ!」

 

 ……はい?

 

 ずいぶんと懐かしい二つ名を聞いた。

 

 その二つ名はもう誰にも呼ばれていないもの。このオラリオで名づけられるような、戦士としての証ではない。むしろのその逆。仇名であり、悪評から名づけられたかつての私の二つ名。

 

 この仇名を知るものは、テルスキュラでも今はもうほとんどいない。だって、彼女達の多くは殺されるか、私が殺したのだから。

 

 満面の笑みのアマゾネス。驚いた顔のアマゾネス。この姉妹の顔、どこかで。

 

 「……ティオナ、ティオネ?」

 

 「生きてたんだ、ソフィーネも生きてたんだ!」

 

 「うそ、そんな……。どうしてあなたが、ここに」

 

 過去に、テルスキュラを出ていったアマゾネスの姉妹。

 一番カーリーに期待され、愛されていたテルスキュラの新星達だった。

 

 顔見知りとの遭遇。これ、盛大にやらかしたんじゃないだろうか。

 過去から成長した幼馴染、姉妹というジャンルの可能性以上に、私は危機感に襲われた。逃げよ。

 





 たくさんの感想ありがとうございます。
 申し訳ございませんが、今回の感想返しは諦めました!

 感想の返信は小躍りするぐらい楽しいのですが、ここまですんごい数を毎話4時間5時間かけて返信する体力と気力と時間が、頑張ろうとしたのですが残念ながら今の私にはないみたいです。たぶん、高校生のときならいけました。

 感想欄の読者さんと交流ができないのはとても寂しいのですが、しばらくは創作を中心に、皆さんの感想に笑いながら目を通ししつつ、皆さんの感想や妄想からインスピレーションを得ることを優先しようかなって思ってます。
 また余裕ができた時には、返信してその内容について考え、場合によっては手直ししていこうと思います。まずは勢いとエロだ。
 実はゼノスとオラリオ住人の反応は、皆さんの感想やグッドボタンから妄想が始まって書いてました。それまでなんも意識してなかったです。めっちゃ楽しかった。

 最後に、1話の後書き通り一発ネタで始まったために、2話以降はストーリーと終わりを少しずつ意識してました。今後1話と雰囲気が異なる場面が増えるかもしれません。

 これで怪物祭が終わり、次ぐらいで全体の折り返しに。
 のんびり妄想して心のチンコに従いながら続きを書いていこうと思います。

 どうにも寒暖差が激しい時期ではありますか、どうか皆さんもご自愛くださいませ。
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