アマゾネスとして生まれた私は〇〇になる。 作:だんご
タイトルどうしようかと五分ぐらい悩みましたが、前回の流れ続きならこれだわってなりました。深い意味はないし本文に合ってない(脳死)
「馬鹿と煙は高いところが好き」という言葉がある。
以前、オラリオの巨塔に居を構えて街全てを見下ろすフレイヤに苦言、いや、罵詈雑言を吐き出していたイシュタル様。
あまりに空気が悪くて周囲のアマゾネス達も困惑していたため、私が「でも、こんな言葉もありますよ」と件の言葉をお伝えした。
するとイシュタル様はそれは的を射ていると大笑いして、非常に機嫌を良くなされていた。
「盤上の外から蟻どもを見下ろすというのも、悪くないな」
そんなイシュタル様は、港町の最高級宿の最上階にて、豪著な椅子に腰かけながら、窓の外の湖と町の夜景を一望している。
……えーと、私は何も考えていない。
ブーメランとは私の中では投げて返ってくるものではなく、海辺でマッチョが履いて歯を見せて笑う例のあれである。だから何も私は見ていないし、気にしてもいないのである。
座禅を組んで集中し、傷ついた気の経路を回復させながら、視線を努めて下に向けて黙り込んだ。
気を使ってくれたのだろう、顔馴染みのアマゾネスが酒と魚の炙った干物を持ってきてくれた。申し訳ないが、つまみの方だけ頂いて酒は返す。
「なんだい、酒は嫌いな方だったか?」
壁に寄りかかって腕を組んでいたアイシャが、怪訝な様子で私を見つめる。
私はよくわからない魚の干物を骨ごと噛み砕き、咀嚼する。うん、これは美味しい干物だな。香ばしい匂いが鼻を通って、頭の中がとても幸せになった。
「いや、嗜む程度には好んでいるよ。ただ、今は体の調整中だから酒を飲むのはちょっとなぁ」
内臓に神経、気の経路やら心の乱れなどを注意して観察する。
損傷や乱れがあれば、そこに集中して治癒の気を送り続け、回復を促していく。
「ソフィーネの更新後のアビリティは、大幅な数値の上昇を見せていた。まだまだ時間はかかるが、決して遠くはない未来にはレベル7にも至るであろうな」
真っ赤で血のように赤い果実酒を受け取ったイシュタル様が、頬を緩ませて満足げに微笑んだ。
同室にいたアマゾネス達は、その言葉を聞いて驚きに騒めいてる。ただ、アイシャとフリュネだけは、何処か複雑な面持ちであった。
フリュネは私のことを嫌いだからわかるのだが、だんだんとアイシャの私への態度も変わってきている。嫌われてはいないようなのだが、何故か焦りと少しの敵意が感じられた。
「そう思えば、結果としてはカーリーの誘いも悪くはなかったか。ソフィーネの経験も積めた。あとはあいつらがロキ・ファミリアの幹部を一人でも減らせれば上々よ。恨みは全て田舎者どもの方に向かい、失敗してもまた別の連中を呼べばいい」
「あれ?あんまり期待はしておられないので?」
そう尋ねながら腕をぐるぐると回していると、部屋に敷物と香が運ばれてきた。
マッサージ、按摩のようなものをしてくれるらしい。案内されるがままに横になった私の背にのったアマゾネスが、丁寧に体をほぐしていく。
おぉ、普通のマッサージだ。アジアンチックでオリエンタルチックな感じ。顔がへにょってしまう。
……普通のエロくないマッサージだ。別に期待はしていなかったのだが、それはそれとして残念である。
「そうか、お前は見ていないのだったな。あの後に治療された姉妹の顔の有様よ」
ソフィーネが去った後に残された戦士二人、アルガナとバーチェは茫然自失といった様子であった。
常に不遜な態度で不敵な笑みを浮かべていたアルガナの顔は、能面のように感情を失っており、時折拳を強く握りしめていた。
バーチェの変化の乏しい表情はさらに暗くなり、より冷たく重いものを覗かせるようになった。
「カーリーもロキのアマゾネスの姉妹に期待を寄せているようであったしな。ロキ・ファミリアのレフィーヤとかいう魔道師をさらって人質にしたようだが、あの様子ではどこまでやれることか」
「ああ、そこ効きますねぇ……。それで、私はどの程度やりましょうか?あんまりガチってしまうと、恨みがあっちじゃなくてこっちに飛んできますよ」
特に体が凝っていたわけではないが、この適度なマッサージの刺激は心を癒してくれる。心の癒しは気力の回復となり、より全身に良い気の流れが行きわたっていった。
「うまいですねぇ」と背中に乗っかっているアマゾネスを褒めると、嬉しそうに頷いてくれる。その仕草や表情が可愛らしい。
「こちらは注意をひいて足止めをするだけでいい。先日のように、そこまでお前が気合を入れて戦う必要はないからな。既に種も撒いてある」
「種?」
「なぁ、アイシャよ」
長脚のアマゾネスが、その美貌を硬い表情に変える。
二人の奇妙なやりとりに、私の中で少しの疑念が生じた。種と聞いたらだいたいはエロいものだが、嫌な予感しかない。
「確かに命令通りに運んだけど、何だい、ありゃぁ」
「へ?そんな珍妙な兵器だったのですか」
「……もっとたちの悪いものだよ」
そんなに変なものが、イシュタル・ファミリアにあっただろうか。
変なもの……英国の最終兵器、パンジャンドラムとかか。オラリオでパンジャンドラムが暴れまわるのか。世も末だな。
いや、変な電波を受信してしまった。流石にこんなオラリオまでジョンブル魂は届いちゃいないだろう。むしろ来ないでほしい、飯がマズくなる。
「メシマズとか実は冗談なんでしょ」って海外旅行してきた友人に言ったら、「イギリスには豊かな食文化がある。中華とインド料理とマックみたいな国際的な料理チェーン店があるからだ」と彼は笑っていた。察した。
「では何をアイシャは運んだのだろうか?」と、ぼけっと考える。イシュタル様は含み笑いをしながら、不思議そうな私に答えてくれた。
「お前も戦っただろう、あの珍妙な植物型の魔物だ」
「え?」
植物型の魔物……。ひょっとして、残念触手?
聞けばイシュタル様も詳しくは知らないが、あれを使ってオラリオの水面下で動いている連中と、少しの繋がりがあるらしい。
レナやフリュネ達は「そんなものか」と気にしていなかったが、実物を運んだアイシャと、実際に戦った私の反応は違った。
え、あれはマズくない?
目を伏せて持ち場に戻っていったアイシャを見送りながら、私の頭の中ではどったんばったん大騒ぎの最中である。
ダンジョンの奥深くまで潜り込み、今のオラリオで一番ダンジョン開拓をしているロキ・ファミリア。
そんなロキ・ファミリアの冒険者達ですら、戦ったことがない魔物があの残念触手達であった。
つまり、ロキ・ファミリアですら中々知りえない魔物の情報をイシュタル様は知っており、そんな魔物の出所も知っていて、さらにはその出所と個人的なつながりもあるのだという。
判決、有罪(ギルティ)。
私の頭の中のなるほどくんが、「異議ないです」と自分のアイデンティティを投げ捨てやがった。「ゆさぶり」や「ムジュン」をつきつけたら、
ああ、所属している会社の経営陣が偽装をやらかしていて、偶然発見してしまった平社員のような気持ちだ。吐き気がやばい。こんなのどう考えても黒じゃないか。
そういえば、アイズやレフィーヤが怪しげな集団、闇派閥の残党どもと殺し合ったと聞いた。その戦いの最中、残念触手も闇派閥に味方してロキ・ファミリアに襲い掛かっていたらしい。
つまり、そういうことである。辛い。
「えー、あのー、それは絶対にやばい繋がりですよね?ギルドどころか、オラリオの連中にばれたら全員から潰されるような関係ですよねっ!?」
「利用できるものはなんでも利用するといっているだろう。それに元々、このメレンはあれを用いて安全を確保して漁を行っていたのだ」
なんだ、それは残念触手が漁で男たちとガチムチしていたということなのか。どこぞのお姉さまは喜ぶだろうが、私はぽろりもある水着大会の方が嬉しいんだぞ。
詳しく話し始めたイシュタル様に、だんだんと頬が引き攣っていた。それは想像以上に深刻な問題であったのだ。
近年、海に存在する魔物が年々増加し、凶暴化していくことによって、メレンの漁師たちの被害が拡大していたようだ。
近海の魚は魔物に食い荒らされ、漁がまともにできなくなってしまった。
そこでニョルズ・ファミリアの漁師達は、海原にでて漁をするしか道が無くなってしまった。しかし、危険な海原での漁は簡単なことではなく、命の危険が常につきまとってしまう。
海原で漁をするたびに、魔物との戦いで愛しい眷属達は死んでいく。
金で方々から食材を仕入れられるオラリオとは違って、メレンに生きる人々は漁をしなければ生活が立ち行かない。だからいくら危険であっても、漁を止めることはできなかったのだ。
大切な眷族の祖父が死に、その父が死に、その子も死んでいく。
その子供も、さらにその子供たちも死んでいく未来が、メレンにはすぐ間近にまで迫っていた。
地上とは違い、海の魔物は駆除しにくい。
海洋の大ファミリアであるポセイドン・ファミリアがどれだけ魔物の駆除を頑張っても、焼け石に水であった。
このままでは、ここメレンだけではなく、世界の海がこの危機に陥っていくことになるだろう。
この事実に漁を司る神のニョルズは苦慮し、悩みと葛藤を抱えていた。
自分の愛しい子供達の未来、愛する海の未来は、あまりにも救いがないものであったのだから。
しかし、メレンの漁師達を取りまとめるファミリアの主神、ニョルズはこれを解決する方法を見つけてしまう。
海の上で漁をする漁師ではなく、海の中で魚を食い荒らす魔物の魔石を優先して狙う食人花の特性を知り、それを扱う怪しい連中と知り合ってしまったのだ。
これより、メレンのギルドや名家とも共謀し、怪しい男たちとニョルズは手を組むことにした。
魔石を磨り潰した粉のお守りを漁師たちには持たせ、海に食人花を運び、放して魔物たちを殲滅。
漁師達が安全な漁ができる環境を作り上げたのだった。
「その海に放つ食人花の輸送を手伝ったのが、我らイシュタル・ファミリアというわけだ」
「ウソダドンドコドーン!」
「ソフィーネ、せめて人の言葉で話せ」
へぇー、きみは陰謀ができるフレンズなんだね!
せめてほんの少しのつながりだったらと切に願っていたら、秒で希望を絶たれたでござる。イシュタル様、怪しい奴らとガッツリ関わっているやんけ。
頭の中の江ノ島盾子は大爆笑。その悪感情は美味であると、頭の中の大悪魔のバニルさんもご満悦だ。くそったれ。
「お前はやりすぎるきらいがあるからな。今回はフリュネを中心に動いてもらう。何か問題が起これば、それを埋め合わせるように好きに動けばいい」
「ゲゲゲゲゲッ!任せておくれよぉイシュタル様。今日こそはあの【剣姫】をぶっ潰してくれる。お前は下がってるんだよソフィーネ、邪魔するんじゃないからね」
「……はぁ。なら、のんびり先行きを観察しながら、ご飯でも食べて休養してますね」
まるでときメモで全ヒロインがバクダン抱えたような状況だ。
八方ふさがりのフラグが乱立しまくりで、どこから手をつけていいのかもわからない。いや、そもそも手を出せないフラグが多すぎるんだよぉ……。
背中からアマゾネスに降りてもらって背を伸ばす。運ばれてくる魚料理の皿と果実、入れ違いに部屋から出ていくフリュネと春姫達。
体力を回復するためにも、食わなければ始まらない。いや、それ以上にもう食わないとやってられない。現実なんて辛いことしかないんだから、私は食欲に逃げてやるんだ。
続々と居なくなっていく戦闘娼婦のアマゾネスを果実をかじって見送っていく。途中、親しいアマゾネスを呼び止めた。
「レナはどこ行くん?」
「私もフリュネと一緒に足止めかな!骨のある連中だから、期待できそうだよねぇ」
「ロキ・ファミリアの男連中は全員オラリオに待機しているらしいが、すぐに援軍に向かえる距離にいることは間違いない。ご武運を」
「ありがとう!それじゃあ、またね!」
ほんと、レナはイシュタル・ファミリアの清涼剤ですわ。あれも中々黒いところはあるけど、こんな時は彼女のはつらつとした元気さが好ましい。
運ばれてきた料理、その皿の上に乗った揚げられた魚の目玉と、私の目が通じ合った気がした。
「お前の方が死んでる目をしてるぜ」って言われてるような気がする。「うん、知ってるよ」と、私は心の中で言い返したのだった。
大丈夫だ、まだ慌てるような時間じゃない。そう、焦るんじゃない、私は飯が食べたいだけなんだ。
フラグなんていうものは、きっと都市伝説だ。
私が妄想の上に妄想を重ねて、気持ち悪い自己暗示をしているだけに過ぎないんだ。
人は楽しいことではなく、辛いことにも囚われてしまう生き物。
苦しいことは嫌いなはずなのに、苦しい自分にアイデンティティを覚えてしまい、愛してしまうことだってある。
そう、私の言っているフラグは全て杞憂に違いないはずなんだ。
うちのイシュタル様は実は綺麗なジャイアンみたいに綺麗なイシュタル様で、フリュネだって実は宇宙からやってきたヤサイ人とかそんなやつであり、覚醒したらロキ・ファミリアなんて屁でもない無敵なんだ。カーリー・ファミリアだって、やられ役とかそんなんじゃなくて、ジョンス・リーとか黒木玄斎みたいに読者の期待を裏切ってくれるに違いない。
だから、だから私はこのまま何も気にせずにお魚を堪能できるんだ。
──そんなふうに考えていた時期が、私にもありました。
「うわーい、港町では見覚えのあるクソ触手どもが暴れているし、フリュネはなんか援軍にやってきたベート・ローガにやられそうだし、カリフ姉妹はティオネとティオナに押されているような気配がする」
死んだ魚の目になっている私は、体育座りをしながら夜景を眺めております。鬱です。
「だ、大丈夫だ。まだ状況はこちらが有利だ。それになんていったって、アルガナは海の沖合で船ステージを用意して戦っている。あそこに行く方法なんてそうそうないんだ」
アルガナは船を港から沖合に出して、わざわざ特設ステージを用意してティオネと戦っている。
あたりに他の動かせる船はなく、あそこで戦っている者達を邪魔しにいくことは、流石のロキ・ファミリアだって不可能だろう。
と、強大な魔力反応を感知。
視線をアルガナとティオネが戦っている沖の方に向けると、なんと綺麗な氷の橋が港から船までできておりました。
きっと誰かが魔法で作ったんだね。どっかから突然現れたディズニーヒロインの仕業だろうか。なんとも幻想的な光景じゃないか、アベック共が喜んでカップルとイチャイチャしそうだな。
これで港から船まで走っていけるね、やったねたえちゃん!
「……フラグの回収がはやいよっ!確かにどう考えても乱立しているようにしか見えなかったけど、こんな勢いで回収されると思ってなかったよっ!?もう私、涙が止まらないんですけどっ!?」
以前、涙は捨てたとかカッコつけていたような気するけれど、あれはウソです。私、泣いています。泣くしかないじゃないか、こんな状況。
やっぱりロキ・ファミリアはバグファミリアだった。
勇者を相手にしている魔王はこんな気持ちだったのだろうか。
こっちもそんなに戦力は悪くないはずなのに、悉くいい方に流れていかない。麻雀でリーチした結果、追っかけされて一発されるような理不尽さを感じる。泣くしかないだろこんなもの。
見まわしてみれば、イシュタル様が撤退を始めたようであった。
そりゃあ、こんなに街中に散らばったレベル6以下の格上冒険者たちを相手にしていられないだろう。
もうすぐバーチェが戦っている洞窟にも、ロキ・ファミリアの連中が転がり込んでくるに違いない。既に負け戦状態なので、流石の決断の早さだ、流石イシュタル様。これには「判断が早い」と鱗滝さんも思わずにっこりだろう。
問題は、誰がしんがりを努めるかという話である。
「や、やってやるぞコラーッ!スッゾコラーッ!」
目頭から熱い涙をこぼしながら、私は半ばやけ気味に飛翔。
石造りの建物の屋根伝いに爆速で移動を開始。
踏み抜くたびに壊れる煉瓦と屋根木を無視して、全速力で目標に向けて走る。
「とりあえず、フリュネは回収ッ!アルガナとバーチェとカーリーは知らんッ!あいつら全員エロ同人みたいな目にあってしまえばいいんだッ!全員感度三千倍になってしまえッ!」
フリュネは仲間だが、カーリー達は助ける義理もないし、助けるように命令もされていないし、私も助けたいとは思ってないし義理もない。あいつら全員対魔忍みたいになってしまえばいいんだ。
途中、武器をロキ・ファミリアに配っていた幸が薄そうな男を発見。ざけんな。
あまりにもムカついたので、発散がてらにそいつの正面に着地。
突然の不審者の登場に驚いて固まる男。そんな男に満面の笑みで笑いかける私。
「こんばんわ、デトロイト市警だッ!」
そして勢いそのままに彼の股間を蹴り飛ばした。
ゲームでもそうだが、こういう前線で戦っている魔物にサポートするような奴が一番イラつくのだ。敵が回復魔法とかサポート魔法を使うんじゃない。ボスがベホマ使うとか絶対に許さん。
「ちょ、ラウルぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!?」
安心しろ、みねうちだ。潰してはいない。まだ使えるぞ。
口から泡を吹き、白目で倒れる男。叫ぶ仲間の女性亜人。
突然の強襲で目を丸くしたロキ・ファミリアだが、すぐに我に返った近くの冒険者達は、私を囲むように襲い掛かってきた。
奇襲、そして仲間を一人倒されたにも拘わらず、すぐに連携して対応するんなんて。流石はロキ・ファミリア。深層を探索する冒険者達は、実によく訓練されている。
だが、今の私は紳士的に振る舞っている時間はないのである。
「武器とか、アイテムなぞ使ってんじゃねぇッ!!」
『偽・柔拳』『八卦掌・回天』
全身に気を張り巡らせ、数人全ての攻撃を迎撃。
まるで一つの球体のように、気と衝撃が私を中心に展開。ロキ・ファミリアの冒険者たちの攻撃全てを受け止め、いなし、弾き返し、吹き飛ばした。
「こいつッ!?」
「嘘だろッ!?」
「そんなッ!?」
宙に吹き飛ばされ、あるいは体幹を崩した冒険者達。
視線を目まぐるしく動かし、その全位置を確認。把握。拳、手刀、蹴りを繰り出して追撃を開始。一、二、三、四と撃破していく。
残り一人の冒険者は、剣を盾に私の攻撃を防ごうと試みる。
あの一瞬で戦士としての体に身についた感覚が、攻撃を防ぐための最善手を導き出したのだろう。流石はロキ・ファミリアの冒険者だ、レベルが高い。
じゃあ、死のうか(暗黒微笑)。
さらに力と気を足に込め、剣ごと踏み抜いて相手を圧し潰した。
剣が砕け散り、破片が空を舞い、確かに胸骨を砕いた感触を足で確認する。白目を剥いて地面を転がる冒険者は、もちろん殺してはいない。これで五、襲い掛かってきた全員を撃破した。
しかし、数メートル先にいたロキ・ファミリアの魔導士は、恐怖に顔を歪ませながらも此方へ杖の先端を向けていた。詠唱も既に完了しており、あとは発動するだけ。
だが、魔法を使う相手は、発動前に喉を潰してやるのがテルスキュラ流。
私は地上に倒れ伏して気絶しているロキ・ファミリアの一人の腕をつかみ上げると、魔導士に向かってぶん投げた。
「えッ!?」
魔法の射線に仲間がいては、せっかくの詠唱が完成していても魔法を放つことができない。
そう、多人数戦でのコツは、ぶっ飛ばした相手の仲間自体を武器にして戦うことである。
ロキ・ファミリアは深層を探索する実力派ファミリア。
しかし、当たり前だが対人戦には慣れていないようであった。
このままでは魔導士も投げられた冒険者も、どちらも私に殺されかねない場面であった。
だからこそ、非情であったとしても、本当であれば仲間ごと魔法ぶっぱして私を倒さなければいけない。だが、魔導士はそれを選択できなかったのである。優しい、良い奴らだ。流石は文明都市のファミリアである。
テルスキュラの連中は、こういう時に当たり前のように仲間をぶった切っていた。
投げられる方が悪いとばかりに、視界を遮るなといわんばかりに投げられた仲間をたたっ切っていた。ドン引きですわ。
ちなみに、こうして相手の仲間自体を武器にして戦うのは、テルスキュラ流ではなく私流である。
これはボッチな私が、テルスキュラで数人がかりで襲い掛かられまくった経験から学んだ戦う智慧なのだ。しかし、襲ってきたテルスキュラの連中からも、この行為はドンびきされていたことは納得しがたい。
耐久力が低いであろう魔導士は、まともに仲間を受け止めることもできなかったようだ。
仲間が体にぶつかり、転倒。その間にすぐに襲いかかった私は、魔導士の首を掴み上げ、大地に叩きつける。
本来ならばちゃんと首を破壊するのがテルスキュラ流なのだが、殺したら余計な恨みを買ってしまうので、ちゃんと折れない程度に済ませました。なんて文化的。
これでここのロキ・ファミリアの連中は全滅。
戦うフリュネの様子をうかがいながら、向かう途中にさらに街中で戦うロキ・ファミリアの冒険者たちを戦闘不能にさせていく。
そして無事に到着!私、頑張ったッ!
「静動轟一」
気配を探れば、バーチェとアルガナの戦いも佳境に入っている。私の戦いが長引いてしまえば、他で戦っているロキ・ファミリアの連中もここに集まってきてしまうだろう。
ロキ・ファミリアの上位陣、連携と戦闘に優れた数人のレベル6を相手するのは、流石の私もマズい。
彼らは近接・中距離・遠距離を全て網羅している、鬼か悪魔かと言わんばかりの布陣だ。
住人が大勢いる市街地で戦えば勝利の目もあるかもしれないが、ここで戦っても私の勝ち目は薄い。もっと私に優しくしてほしいものだ。
負傷したフリュネ、レナをはじめとして、撤退していく同胞のアマゾネス達を後ろに、ベートへと突貫する。
「いくぞおらぁぁぁぁぁッ!」
「くそが、なめるんじゃねぇ!」
拳と拳がかち合い、蹴りと蹴りが交差する。
攻撃が重い。体に響く。強い、本当に強い。これでレベル6になったばっかりなんて、冗談だろうと疑いたくなる。
「気をつけな、そいつは狼人だっ!月夜には『獣化』によって大幅にアビリティが上がる!」
去り行くアイシャの声に納得を得た。
こいつも私のように、アビリティにブーストをかけているようだ。
しかも『獣化』とか月夜とか、中二病な私の心がなんともくすぐられる。昼も夜も狼、月のでる日は余計に燃える夜を過ごせるとか、なんか羨ましい。エロい。
だが、いくらエロくたって、レベル6として積み上げてきた時間の差は大きい。この差は才能や努力、魔法によってそんなに簡単に埋められるものではない。
振りぬかれた拳を薄皮一枚で躱し、その伸びた腕を掴み上げた。そーれ、ボキっとな。
「これ、もらいますね」
「ッ!?」
勢いそのままに右腕の骨を外し、さらには足を蹴りぬいてバランスを崩す。
そして逆手にベートの左手をつかまえると、まるで剣を振るように彼の全身を持ち上げた。
私が何をしようとしているかベートには理解できるが、こうなってしまうと身じろぎ一つできない。
この時点で、私は既にベートの体の力と気の流れを掌握してしまっている。このまま地に沈めと、全身にさらに気を張った刹那。ベートと私の視線が交差した。
彼の目は死んでいなかった。
私を睨み殺しそうなほどに、爛々と輝いていた。
なんという闘志、見事。ならばこのまま眠れ。
ベートの体を大地に叩きつけ、技を決めようとした。──その時であった。
後頭部に衝撃。揺れる視界。
ダメージは無いに等しいが、予想外の攻撃というものは、それがどんなに小さくても心と体を混乱させてしまう。
完全に拘束し、あとは完成を待つだけであった私の体技にほころびが生じた。それはベートの拘束に緩みと、技の完成に僅かな時間が生じてしまったということ。
他の有象無象であれば、このぐらいは障害にもならない猶予であった。しかし、ベート・ローガとの戦いにおいては、大きな隙となってしまった。
馬鹿な。
ベートの両足はバランスを崩れて宙に浮き、右腕は脱臼。左腕は技が決まっており、これを動かすことなど人体の構造上は不可能であったはずだ。
仮に強引に体を動かそうとしても、この有様では頭部・胴体・左手・両足ともに、私の力と加えられた気の流動によってなすすべも──あれ?
「お前、まさか骨を外された右腕で攻撃を──ッ!?」
「くらいやがれっ!」
「あべしっ!?」
こいつ、外された右腕で攻撃してきやがった。
通常は負傷したところを庇いたくなるのが人の心だ。
当然だ、怪我したところを無茶して傷を深めてしまっては、満足に生活することも、戦うこともできずに死んでしまう。
負傷を庇い隠すことは、生物が進化する過程で、生き残っていくために遺伝子に刻まれた生存機能といってもいい。
それをこのベート・ローガは、なんと脱臼した右手の不快感と激痛を厭わずに私への攻撃に使用したのだ。なんという修羅味を感じる行動力か。
拘束が緩み、技が不完全になってしまったことで、ベートの体に力が戻ってしまう。
私の体を蹴って宙に躍り出たベート。そこから放たれた蹴りは、もろに私の背中に命中してしまった。
内臓が浮き上がり、呼吸に異常が生じて全身が緩む。そこに畳みかけるように、ベートの二発目の追撃。鬼か。
「ぬわー」っと吹き飛ばされた私は、勢いそのままに建物に衝突。煉瓦の壁を粉砕、貫通。その奥の家具に激突して、盛大に木片を周囲に巻き散らかしながら倒れ伏した。
確かに、右腕の注意を怠ったのは私の至らぬところであった。
折れたり脱臼したりした腕で攻撃するなんて、予想もしていなかった。だが、攻撃を受けたとか、予想していなかったことが一番の問題ではない。
あの狼人の戦う姿勢を見誤ってしまったことが、一番大きな問題なのだ。
ベートは先ほど戦ったロキ・ファミリアの冒険者達とは違い、真の命のやりとりを知っているようであった。
あの鋭い眼差しを確かに見たというのに、私はそれを理解できていなかった。それがたまらなく恥ずかしく、悔しい。
「あー、もう、油断したぁッ!」
顔にかかった埃と砂、それに木片を払いのけて立ち上がる。
肩を回しつつ体の調子を確かめ、まだ舞い上がっている粉塵を割いて、壁の大穴から外に飛び出した。
油断せずに構えていたベートへ、視認するよりも早く気配の探知によって突撃。
これが想像以上の速さであったのだろう。目を見開きながらも、とっさに放たれた彼の蹴りは鋭かった。見事だが、腰と足に力がのり切っていない。
迫りくるベートの健脚を見て躱し、お返しとばかりに彼の懐に潜り込んだ。
「二重の極み」
立てられた拳がベートの胸に突き刺さり、衝撃と抵抗を中和。さらに瞬時に拳を折りこんだ。
これによって気は余すことなくベートの全身へと送り込まれ、蹂躙。二段に分けられた拳の極意が、彼の肉体を暴れまわり、崩壊させる。
一瞬、ベートの目が白を剥き、そして内臓と肺、気管の損壊によって口腔から大量の血が吐き出される。
さらに私はそのまま勢いを逃すことなく拳を振りぬき、ベートの体を建物へと吹き飛ばした。
一棟を突き抜け二棟に。二棟すら突き抜けて三棟目の壁に激突。さらにそれを突き抜けて、ようやくベートの体に込められた衝撃は消え去ったのであった。
肌が張り詰めるほどの静寂、沈黙。
徐々に小さくなっていくベートの戦意と気を感じ取り、一息をついて胸をなでおろす。
「……ようやく、終わったかぁ」
今の段階での最高位の一撃。
レベル6の頑強性を確信していてもなお、ベートが生きているのか不安になってしまった。
ここまでしないと止まらないなんて。ロキ・ファミリアの実力のすごさが窺えるというものだ。
あたり一帯に気配を巡らせてみれば、アルガナとバーチェの気が急激に弱まっていっている。きっと勝負が終わったに違いない。ベートと同じように、あの様子ではもう戦うことはできないだろう。
あとは私がここで撤退すれば、全てが終わってエロマンガを描く日々へ……。
「って、マジかよ」
急に背後で高まった気に驚き、視線を向けてさらにびっくり。
吹き抜けになった建物の穴から、全身血だらけになったベート・ローガが、体を引きずるようにして私の目の前に現れたのであった。
「何を、終わったつもりでいやがる……っ!」
レベル6を気絶させることは難しい。
よくマンガで首をトンッとすれば気絶する場面があるが、レベル6を相手にあんなことは不可能に近い。
仮にレベル5には通じたとしても、レベル6のような半ば人間を止めている連中には、耐久と根性が高すぎてあまり通じないのだ。万が一通じたとしても、ほんの一瞬しか気絶してくれないだろう。
だから、私はベートに対してギリギリになるまで無力化を図ったのだ。
刃牙の加藤ほどではないが、「滅茶苦茶にヤラれたんだよメチャクチャに」と言われるぐらいにはやったつもりだ。
彼の体中の筋組織はズタズタ。裂傷、数えられないぐらい。骨折、全身に多数。内臓損傷。たった今吐き出されたベートの血反吐には、砕かれた歯が混じっている。
目や、鼻からも血を流す姿は重症そのもの。
意識が混濁し、息は乱れに乱れ、立ち上がることさえ難しいはずなのに、ベートはこうして立ち上がって今も私を睨みつけているのだ。
「……下手に動けば、折れた骨が臓器を傷つけますよ」
「がふ、ちっ!くだらねぇことを言ってるんじゃねぇよ」
なんというオラオラ系か。
ガッツを見せて、血まみれになりながらも闘志を見せる姿に、私の心の奥から熱いものが込み上げてきた。
血濡れの戦士っていう要素が、ぐっと心にくるものである。これでケモミミ女の子だったら、きっと私は鼻血を吹いていたに違いない。
彼は万が一、億に一つの勝利の可能性に、文字通り全てを賭けている。
自分の状態をよく理解しながらも、己の誇りと力に賭けて私に立ち向かおうとしている。
仮に死ぬ寸前まで追い詰めても、彼は私を倒すまで止まりはしないだろう。さながらエロマンガを買う決意を固めた青少年のように、彼は決めた覚悟を貫く目をしているのだから。
「……これに応えねば、無作法というもの」
これだけの想いを見せつけられて、憐れみ、手加減するなど愚の骨頂ではないか。
まるで「しないの?」と両頬を染めてベッドで誘う幼馴染を無視する、突然に難聴になるような愚行である。
「かの奥義にて、貴方をここに屠りましょう」
瀕死のベートに私は飛び掛かっていった。
振るわれる拳を払いのけ、迫りくる蹴りを跳ね除ける。恐ろしいことに、彼は万全の頃よりも振るう力、そして技の鋭さと威力が桁違いに上がっていた。なんと素晴らしい。
私は闘志による気の幻影を作り出し、錯覚させ、ベート・ローガの無防備な背後に回り込んだ。
達人同士の戦いでは気の読み合いが重要になってくる。一手先の攻撃の読み合いが生死を分けるからだ。
この凄まじい動きの読み合いの中で、気を操り、攻防をもって虚実を作り上げ、ベートの脳に一手先の私の幻影を生み出して錯覚に陥らせたのだ。
ベートは私の動きを予測したようで、視線と注意を虚空に向けてしまう。それは私があえて作り出したフェイントの積み重ねがベートにそうさせたのだ。彼の目には、私が一瞬で姿を消してしまったように見えたに違いない。
その虚像へ意識を向けて注意を割いてしまったために、彼は私の存在を見失ってしまった。
流石というべきか、ベートはすぐにそれに気がついて、私の存在を背後に知覚することができた。
だが、もうこのタイミングでは防御も、回避も間に合わない。その事実に気がついたベートの悔しそうな顔が、なんというか私の心をくすぐった。
「お前の命は奪わない。ただ、お前の後ろの初めては頂く」
「何を言ってッ!?」
私の言葉に初めて顔に動揺を浮かべるベート。
ほんの少しだけ振り向くことができたベートは、私の構えを見て何かを察し、戦慄する。
顔には「嘘だろう」と困惑、そして初めて見せた恐怖の表情を張り付けている。
「お前、まさか──っ!?」
私は手を組み、両方の人差し指を突き立て、さらには『偽・武装色の覇気』でこれを硬化していた。
腰を屈め、折り曲げられた足にはバネのように大きな力が集約。私特製の貫通力を上げた気が、指の頂点に集まり、その時を今か今かと待ち望んでいる。
シリアスっていうのは、「尻」と「ASS」。どちらもおしり。
つまり真剣=おしりということ。シリアスはおしりで始まり、おしりで終わると考えることもできるはず。
だからこれはおふざけでも何でもなく、真剣な攻撃である。
頭や心臓を狙い撃つように、この技は相手の急所を射抜く。
しかも、殺すことはない。ショック死はあるかもしれないが、『二重の極み』を耐えきった彼ならば大丈夫だろう。それにこの世界にはポーションがあるので、人工肛門になることもない。そんな有情にして、非情なる一撃。
「『偽・木ノ葉隠れ秘伝体術奥義』」
もはやカンチョウというには、その技はあまりにも完成され過ぎていた。故に、その括約筋──もらい受ける。
大地が割れるほどに足を踏み込む。
頬を引き攣らせ、顔を青く染めたベート。そんなベートに躊躇うことなく、私は奥義を解放した。
「『千年殺し』」
突き出した指は、確かにベートのお尻に突き刺さる。満月の夜空に、狼の悲鳴が木霊した。
アルガナ、バーチェは敗北の危機に直面していた。
狂化したフィン・ディムナの一撃はアルガナの体を打ち抜き、想いを新たにしたティオナの一撃はバーチェの心を砕いていた。
本来の歴史であれば、アルガナはこの一撃をもって打ち倒され、アマゾネスとしてフィンに雄として惚れ込んでいた。
バーチェは敗北を認め、変貌した姉に怯えて混乱する。そんな未来が彼女達には訪れるはずであった。
だが、ソフィーネとの出会い、そして戦いによって、彼女たちに一つの変化が生まれてしまった。それは敗北への異常な恐怖、渇望ともいえる大きな勝利への欲求であった。
カリフ姉妹は本来の正史を超えて善戦を繰り広げた。ティオネとティオナを追い詰め、戦いつくし、進化を重ねてその命を奪わんとした。
だが、そこまでしても彼女たちはロキ・ファミリアに敗北しようとしている。
どうして、何故。そんな想いが彼女達の心を蝕み、そして怒りが心の奥底から込みあがってくる。
そしてカリフ姉妹の心には共通の想いが浮かび上がった。
「あいつのような、ソフィーネのような力があれば」、と。
あのバケモノのような力があれば、私たちはまだ戦える。
あの魔人のような恐ろしい、悍ましい力があれば、この目の前の戦士を殺すことができるのではないか。
カリフ姉妹の冷たい、黒々しい殺意は、心の奥底に眠っていた『何か』を呼び覚ますことになる。
それはソフィーネとの戦いによって、彼女たちの心に注ぎ込まれた漆黒の意思。その目覚めによって劇的な変化が彼女たちの体に起こり、正常なる意識が虚空の彼方に消えていった。
バーチェはまるで幽鬼のように立ち上がった。
彼女を囲むテルスキュラの戦士たちが、ロキ・ファミリアの冒険者たちがその様子に驚き竦む。
ティオナはバーチェの姿に顔を呆けさせる。そこに先ほどまでのバーチェとは違う悍ましい何かを感じ取ったからだ。
カーリーは顔を歪め、嗤い、その生誕を祝福する声を上げる。これから行われる戦いこそ、自分を楽しませてくれると確信した。
沖合でも異常な闘気を纏って立ち上がったアルガナに、フィン・ディムナをはじめとする冒険者たちに緊張が走る。
ティオネはアルガナの様子を見て歯を噛みしめた。これはアルガナではない、もっと違う恐ろしい何かであると確信する。
フィンは異常を告げる親指を握りしめた。瀕死であるというのに、闘気だけでここまで自分が危険を感じていることに驚きを隠せない。
『静動轟一』、そして『一刀修羅』は、武と覚悟の極地。
だが、『殺意の波動』の源流は、この二つとは根底から異なっていた。
武を歩む者であれば、至高を目指すものであれば、どんな流派であっても辿り着つくことができる精神世界の何かとの繋がり。
それは武の暗黒面であり、人の理性を奪い、修羅に貶める狂気の根源。
即ち、『殺意の波動』とは何かに目覚め、覚知したが故に陥る魔境。
精神世界に生きる負と魔の存在に触れることで、その強者を呑み込み、力を与えて顕現する集合意識と言ってもいい。
その『殺意の波動』はソフィーネの技をもって、オラリオの神々のように次元の隔てを超えて繋がり、この世界へ現界することとなった。
そしてソフィーネを除いて『殺意の波動』を一番理解しているのは、あの一撃を受けたアルガナとバーチェに他ならない。
かの一撃を通して『殺意の波動』は彼女たちの心に伝播し、そしてその魔は彼女たちの知らぬうちに心の奥底に潜んでいたのである。
そして力を求めた戦士達に応え、『殺意の波動』は二人を通してこの世に顕現する。全ては、目の前の敵を滅さんがためなり。
「「『殺意の波動』」」
膨大な量の殺気が、気炎と暴風となって周囲に吹き荒れる。
「「『我、拳を極めんとする者。強き者よ、死ぬがいいッ!!』」」
ソフィーネのように制御されたものではない、殺意に支配されたアルガナとバーチェ。
漆黒の気炎を纏い、雄叫びと共に、各々の戦地でフィンとティオナに襲い掛かったのであった。
「あれはなんや?」
「あれとはなんじゃ?諸々の事柄も、あの食人花について知ることも、全部既に話したじゃろうに。これ以上何を聞きたいというのかのぉ」
翌日。ファミリアとして敗北し、賠償や何やらを突き付けられて不貞腐れているカーリー。
そのカーリーに向かって、ロキ・ファミリアの主神であるロキは剣呑な様子で追及を続けていた。
「フィンやティオネ、ティオナから話は聞いとる。アルガナとバーチェが、何かに意識を乗っ取られて戦い続けたってな。もし、あと十分でもお前のところの二人が戦い続けたら、二人は体も心も崩壊していたっちゅう話やないか」
死闘。
その言葉がこれ以上に相応しいものはなかった。
ティオナはガレス達とともにバーチェと戦い、フィンはティオネやリヴェリア達とともにアルガナと戦った。
わが身を捨てて戦う二人の戦士の武は、これまでの戦いとはまるで一線を画しており、単騎でロキ・ファミリアの冒険者達を追い詰めていった。
戦場となった洞窟の広い空洞、沖合の船は悉く崩壊、あるいは海の底に。
カリフ姉妹から繰り出される技はどれも禍々しい気と力を宿しており、一撃がそのまま即死へと繋がるものであった。
もし、仮に二人が万全のままにあの状態になっていれば、最後まで立っていたのは果たしてロキ・ファミリアの冒険者であったのだろうか。
天命はフィン達、ロキ・ファミリアを選んだ。だが、その誰もが息を荒くして消耗し、軽くはない傷を負っていた。これでは勝利したと言っても、苦々しいものがある。
「さぁ、吐くんや。あれはいったい何なんや?」
だからこそ、ロキはこうしてカーリーを追及していた。
もし、神が本来持つ力をいたずらに使っていたとすれば、それはこの世界で守るべき神のルールを破ったことになる。
そうであれば許さない、そう考えてロキはカーリーを鋭く睨みつけた。
だが、カーリーはその飄々とした姿勢を全く崩さない。
「知らん」
「……ここまで来て隠そうとするとは、良い度胸やないか」
顔を怒りで白く染め上げたロキに対して、カーリーは冷静そのものであった。
大きくため息をつくとともに、頬杖をついてロキの視線を真っ正面から受け止めている。
「妾は『あれ』をアルガナとバーチェに教えてはいない。二人が使えることすら知らなかった。既に、お前たちも直接尋問を済ませているのじゃろう?なら妾が嘘をついていないこともわかるじゃろうに」
苦い顔をするロキと、あくびをするカーリー。
カーリーの言うことは正しい。
アルガナもバーチェも、そして他のテルスキュラのアマゾネス達も、あの力はカーリーによって施されたものではないと告白している。
テルスキュラで彼女達はその力を使ったこともなく、知ることもなかったことも神の目の前で証言されていた。
使用していたアルガナとバーチェに至っては、その前後の記憶が非常に曖昧になっている。
これではカーリーを追及する材料として、あまりにも乏しいものである。だが、ロキにはまだ尋ねるべき隠し玉があった。
「なら別口や、【ソフィーネ】って誰やねん」
ぴくり、とカーリーの眉が微かに動いた。
「あいつにうちのベートがやられとる。複数のうちの子供らも、証言によってそのアマゾネスにやられたことがわかっとるんやで」
ここで初めてカーリーの顔に明確な変化が起こった。
並みの者では気が付けないほどに小さなものであったが、トリックスターとして天界で名をはせたロキはそれを見逃さない。
「お前んところのアマゾネスに聞けば、例の『あれ』も元々はそいつが使っていた技っちゅう話やないか。だがどれだけ探してもカーリー・ファミリアにその姿は見つけられない。残るは件の逃げ出したイシュタル・ファミリアってことになるが……。ティオネやティオナから、ソフィーネとやらが元はお前のところに居たっていう話は裏取りが終わっとるで。さぁ、きりきり吐くんや」
数秒の沈黙。
互いに睨み合う神々であったが、やがてカーリーは静かに目を瞑る。そして椅子に深く寄りかかると、観念したように口を開いた。
「あれはテルスキュラ最高の戦士じゃ」
かーっ、とカーリーが青空を仰いで悔しそうな声を発する。
言葉の内容に眉をしかめたロキが、さらに話を聞くべく身を乗り出した。
「アルガナとバーチェは違うんか」
「数年前に、レベル5の時にソフィーネはレベル6のあの二人を倒し、テルスキュラを出ていった。だが、妾はあやつを今でも、テルスキュラの最強の戦士であり、最高の我が子であると想い続けておる」
カーリーの驚くべき独白に、ロキは努めて静かに耳を傾ける。
「お前達と戦う前日、ソフィーネをアルガナとバーチェと戦わせた。二人は圧倒的な敗北を喫した。本当に、心躍る戦いと蹂躙であったわ」
「つまり、その戦いでソフィーネが使ったというのが……あれか」
「そう、アルガナとバーチェが敗北の瀬戸際に体得した『殺意の波動』とやらよ。尤も、今はあれを使って戦っていたことを二人は覚えておらず、意図して使うこともできんそうじゃがな」
「『殺意の波動』やって?なんやそれは?」
「妾も詳しいことは何も知らない。そもそも、あれをアルガナとバーチェが使えることすら、妾は何も知らなかった。どうして使えたかなんて、妾が知るよしもないわ。だが、あれは素晴らしいものであったなぁ」
頬を赤く染め、高揚した口ぶりから一転。
だがすぐにつまらなそうに肩を落とすと、カーリーは目の前にあったお茶を、やけになったとばかりにぐいっと一気に飲み干した。
「やはり、ソフィーネとカリフ姉妹には大きな差があるようじゃのぉ。二人が『殺意の波動』を使ったときには、素晴らしい変化が起きたと歓喜したものじゃ。しかし、ソフィーネのように制御されておらず、暴れるがままであった。さらにはせっかくの芽も、おぬし等に潰されてしもうたしのぉ」
カーリーがちらりと視線を動かす。
その先ではロキ・ファミリアの冒険者達が、顔を赤く染めたテルスキュラのアマゾネス達に囲まれ、追われていたところであった。
ロキ・ファミリアに惚れ込んでしまったテルスキュラの戦士達の姿に、カーリーの口からはため息しか出てこない。
あの恐ろしい戦士であったアルガナですらも、今や戦士らしからぬフリフリのコーデを身に纏い、松葉杖をつきながらフィンに近づこうとしている。
犬のように唸っているティオネにアプローチを邪魔されているアルガナの顔は、まさに恋する乙女そのものであった。
「再び殺し合う気概があれば、まだ、『殺意の波動』とやらに再び呑まれてくれる土壌もあったのであろうが……。あんなメス丸出しになってしまっては、もうあいつらは最強の戦士を目指せまい。恋愛に目を晦ませていないバーチェも、姉がああなってしまっては、これまで通りの気概で戦ってはくれんじゃろう。……嗚呼、本当に、どうしてソフィーネはあんな奴についていってしまったのかのぉ」
カーリーは苦虫を噛みしめるようにして、最愛の子供を想う。
『殺意の波動』はソフィーネだけの技や魔法、スキルではなかった。
アルガナやバーチェまでそれを使用できたと知った時には、カーリーの心は感動で震えに震えたものだった。
もし、テルスキュラのアマゾネス達があれを体得したならば、これ以上ないぐらいに面白い戦いと、戦士の進化を見ることができたであろうに。
しかし、カリフ姉妹に受け継がれたかのように見えた『殺意の波動』は、一過性のものでしかなかったようだ。
打ち倒された二人はその時の記憶をなくしており、もうあの時の感覚を呼び覚ますことすらできないらしい。
ならばとソフィーネに命令してテルスキュラの戦士達へ教え、伝えさせることも、今では不可能だ。
ソフィーネはイシュタルに何故か心酔してしまっているので、わざわざカーリーのところに戻って来てはくれないだろう。
ソフィーネを連れ戻す戦力を獲得するべく、あの決闘の儀式を行ったというのに。ティオネやティオナを連れ戻すどころか、当のテルスキュラの戦士たちはあの始末であった。
ミイラとりがミイラになったといえば済む話だが、あまりにもこれでは惨いというもの。カーリーはやるせなくなってしまった。
惜しい、本当に惜しい。
見どころのあった戦士たちは、今回の戦いでみんな恋愛に夢中になってしまった。メレンに来る前のような戦いを、テルスキュラに帰ったとしても再び見ることができるのだろうか。無理だろうなぁ。
「お前の願いなんざどうでもいいんや。うちのファミリアは、中枢の冒険者のベートがやられとる。こっちもそう簡単に引っ込むわけにはいかないんや」
「む、お前のところのレベル6だったか。バーチェの戦いも楽しかったが、こんな結末を迎えるのであれば、ソフィーネとベートとやらの戦いを見た方が良かったかもしれんのぉ」
さぞ素晴らしい戦いだったに違いない。
そう思って期待に胸を膨らませるカーリー。だがロキの顔には怒りもあり、そして悲しみと恐怖があった。
「……ベートは尻に大きな怪我を負っていて、少しの間はおむつ生活や。怒り狂っていて、戦闘で何があったかも絶対に話そうとはせえへん。だからお前から聞き出すしかないんや」
「……マジでソフィーネのやつ、何をやらかしおったんじゃ?」
戦慄するカーリーと、鬱屈とした雰囲気のロキ。
自分の大切な子供達が、あそこまでボコボコにされたことは絶対に許せない。
しかし、ソフィーネとの戦いにおいて、一番の実力者であり重傷者が負った最大の傷が、何故かおしりの穴であったというのは……。その、なんだ、流石になんとも言い難い。
この言葉に流石のカーリーも考えるところがあったのか、両腕を組んで一人昔に想いを馳せる。
「……ソフィーネはまことに、大概じゃったからなぁ。その趣向についても、妾にはようわからんのじゃ。あいつが好きなものを馬鹿にされたときには、そのアマゾネスに対して『金木君方式』といって全身の骨を折りに折りまくったこともあった」
「頭おかしいやつやな」
「否定できんわ。だが、あやつほど真摯に殺し合いをしていたアマゾネスもいまい」
テルスキュラにいた時に、一番予想外の進化を遂げたのはソフィーネであった。
そして、一番おかしなことをやらかしていたのもソフィーネだった。
ある時、地下より激しい戦闘音が聞こえるというので、数人のアマゾネスを伴って向かった。
だが、そこにいたのはソフィーネたった一人であった。神の問いにも、初めから一人であったと述べてそこに嘘はない。
だが、部屋中は血まみれだった。
ソフィーネ自身も傷だらけであり、左腕にいたっては逆方向に折れ曲がっていた。打撲痕も多く、どう考えても敵対者がここにいたとしか思えない。
その疑念に対して、ソフィーネは応えた。曰く、「一人で相手を妄想して戦っていた」という。
ふざけるんじゃないとカーリーは呆れ、従僕のアマゾネス達は嘲笑っていたが、どうにもそれはウソではなく真実であると、彼女は神であるが故にわかってしまう。
ならば見せて見よとソフィーネに告げ、次に見せられた光景にカーリーは言葉を失った。
見えた、確かにそこには恐ろしい強者の姿があった。
妄想と空想によって作られた強者はソフィーネを打ち据え、ソフィーネは獣のように殺意をもってその虚像に襲い掛かる。
さもすれば猿芝居のように見えるが、ソフィーネは目の前で吹き飛び、壁に衝突し、血と折れた歯を吐き出して再度攻撃に転じる。こんな激しい修練を、どうして演技やお芝居と笑うことができるのだろうか。
常日頃、殺し合いを意識し、こうして異常とも呼べる鍛錬をソフィーネは積み重ねていった。
これを最強の戦士になることを願い、殺し合いに真摯に向き合っていると考えずしてなんとする。そして、かつてないほどの大きな期待を、カーリーはソフィーネに向けるようになっていったのだ。
「それを、それをイシュタルの奴は横からかっさらいおってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」
カーリーはロキの目の前で涙し、ついには机に突っ伏してワンワンと大泣きし始めた。
「手塩にかけたソフィーネが出ていくことも、それが戦士としての成長に繋がるのであればと切に願っていた。ああ、再会したソフィーネは素晴らしい戦士になっていたとも。なのに、なのにどうしてあんな戦いのなんたるかも知らないような奴に、妾のソフィーネがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
あんまりな泣き様に、流石のロキもあきれ顔である。
美の女神は往々にして我がままであり、自分本位である。欲しいものは何をしたって手に入れたいという、厄介な神様だ。
ロキの知っている美の神フレイヤも、欲しい子供達を他の神からいろいろな方法で、時には強引に引き抜いていた。
そのソフィーネとやらも、もしかするとイシュタルに魅了を使われて、美の神の虜になっているのかもしれない。
「ええい、うっとおしい!それで、そのソフィーネがやばいやつっちゅうのは十分にわかった。元よりベートを倒すやつやからな。なら、そんな奴を抱えたイシュタル・ファミリアの目的はなんやねん。なんでお前はメレンに来おったんや」
「いわん」
「あ?」
「妾の事情にも関わることじゃ。なにより、残る最後の楽しみもある。いわん」
「はったおすぞクソチビ」
ソフィーネが見れば、メスガキと喜んだだろう完璧なムーブメント。
くかかかと笑い、椅子の上で足をぶらぶらさせるカーリー。それに殴りかかろうとするも、横で戦々恐々と話を聞いていたニョルズに必死に止められる。
ここまで来れば、流石のロキにもイシュタルの目的が、腐れ縁の美神であることは理解できた。
忠告する義理もないので放っておくことを勝手に決めたが、それにしてもカーリーの言い方はムカついた。
「だが、まぁ。あの性悪のことじゃ。妾たちを容易く切り捨てたことからも、ソフィーネのような『隠し玉』をいくつか抱えているかもしれんの」
ロキはカーリーの言葉を受けて深く考え込む。
アイズ、そしてベートの証言でもあったのが、フリュネが振るったレベル6にも等しい戦闘力。
もし仮にランクアップにも等しい超強化を可能とする魔法や呪詛であれば、それは大きな脅威となることだろう。
その力をあの『殺意の波動』に操られていた、アルガナやバーチェに使われでもしていたら。
ベートをあんな惨い目にあわせたソフィーネに使われでもしていたら、ロキ・ファミリアは果たして勝利することができたのだろうか。
ありえたかもしれない未来に、ロキはぶるりと身体を震わせる。そして同時にそんな予想外の展開もありえた、下界の未知の可能性に喜びを覚えてしまう。
これだからこそ、この下界は最高の舞台である。不謹慎だが、どうにもこのワクワクをロキは抑え込むことができなかった。
ロキ、カーリーにニョルズ。三人の神それぞれがオラリオを取り巻く闇に、喜び・戸惑い・期待といった様々な想いを馳せるのであった。
「まーたやりすぎおったな、ソフィーネよ」
「違うんですよー。ベート・ローガの耐久がすごすぎて、下手に手を抜いたらこっちがやられていたんです。あれでレベル6になりたてとか、あいつらやっぱり頭がおかしいですよ。それに『殺意の波動』に関しては、まさかあの二人に気の残留が内在しているなんて思いもしなかったし、それがあんな形で使用できるようになるなんて思いもしなかったんですって」
「全部お前の考えなしが原因であろうが」
「ぐぉっ!た、タンムズ。あなたからも弁護してください。こんなに頑張ったのに、こんなに責められるなんて私が可哀そうだと思わないんですか」
タンムズはゼロタイムで顔を背けた。
「……」
「なんか喋れやタンムズぅッ!男の無口キャラとか変なレア属性突っ込んでくるんじゃねぇッ!!」
「ソフィーネ、うるさい」
「ごめんなさい、イシュタル様」
イシュタルが煙管を咥えて紫の煙を吐き出し、それを吸い込んだソフィーネが、女の子がしてはいけない感じの激しい咳き込み方をする。それを見てタンムズは冷や汗をかき、何も言わじと黙り込んだ。
「やはり、カーリー達は期待通りにだめであったな。お前の言うフラグも存外馬鹿にできん」
「ギルドの連中、カーリー・ファミリアの連中が何か余計なこと言いませんかね?もう私は怖くてびくびくしているんですが」
「私の下にいるお前が、そんな小さなことに怯える必要はない。ギルドは昔のようなしっぺ返しを恐れて何もせんわ。今は何故か友好な様子も見せているし、奴らの介入を気にする必要はない。カーリーはお前の戦う姿を見るためならば、我々が不利になるようなことは言わんだろう」
「そうですか、ならいいんですけど……。私たちって、どこに向かってるんですか?こんなダンジョンのわけわからない道って、絶対に公のものじゃないですよね?」
「なぁに、『隠し玉』を見に来たのよ」
騒がしい様子で石の通路を歩む三人は、やがて開けた広間にたどり着いた。
石材で造られた大空間。無数のローブを着込んだ怪しげな者達が動き回っている光景を、壁から突き出たバルコニーのようなところより三人は見下ろした。
そしてタンムズが、ソフィーネが、その広い空間の中央にて、無数の鎖で拘束された巨大な怪物を見て息を呑む。
禍々しい牛のような魔物。その額の位置では、女の体が生えており、魔石を貪り食っている。どう考えても、人と呼べるものではない。
隣で声を潜め、慄くタンムズを他所に。ソフィーネは思いっきり息を吸い込み、そして吐き出して笑った。
「私たち、大丈夫なんですかね?」
「ん?大丈夫に決まっておろう。何を笑っておるのだ」
ソフィーネの噛みしめた唇の端から血が流れ落ち、ドン引きするイシュタルとタンムズ。
そんな二人を前にして、ソフィーネは笑顔を崩さない。いや、もう笑うしかなかったのだ。
これ、絶対に私たちってあかんやつやん。
完璧な悪役ムーブを決めるイシュタル様と、そのファミリアの未来を想って、ソフィーネは燃え尽きたのであった。
感想の数と評価がおかしい(困惑)
皆さんありがとうございます。なんか楽しんでもらえたら幸いです。
流石に私のキャパを超えているために返信が叶いませんが、全部見ていろいろ妄想して楽しませてもらいました。
オネショタについて感想で反応をしている方々が多くて、なんか愛に溢れているなぁと思いました。
溢れすぎているような気もしますが、心のチンコが元気であるならこれ以上に良いことはないと思います。どんな地位や財産も消えてしまうものですが、心のチンコはなくならないからです。
また、過去にチンコという言葉を隠さなくていいのかと心配する方々がおりましたが、同じ話にあるおっぱいという単語を伏字にすることには触れていなかった事実に感動しております。
みんながおっぱいという言葉に見慣れているからこそ、見慣れないチンコだけに反応したとすれば、ハーメルンはおっぱいに溢れているということになるからです。こんなに素晴らしいことはありませんよね。私は何を言ってるんだろう。
内容的には、流れを意識したことで、我ながら前後でスパッとまとめた形になったのかな。
なんか話の流れで前回に比べて主人公のパッションが足りない気がする。でもいいんだ、またいつか奴はきっとはじけてくれる。
次回はベルくんの戦争遊戯。ようやくベル君です。のんびり書いていこうと思います。
また気温の寒暖差が激しい時期ではございますが、どうか皆様もご自愛くださいませ。