自宅で寝てても経験値ゲット! ~転生商人が世界最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に触れてしまった件~ 作:月城 友麻
キィィィ――――ン!
甲高い音が響き、ゆっくりとエンジンに火が入る。
『S-4237F、直ちに停船しなさい。繰り返す。直ちに停船しなさい』
スピーカーも復活し、スカイパトロールからの警告が響く。
「しつこいのう……」
レヴィアは画面を操作して救難信号を発した。
『システムトラブル発生。救難を申請します。システムトラブル発生。救難を申請します』
スピーカーから無機質な声が流れる。
「まずは遭難を装うのが基本じゃな。そしてこうじゃ!」
レヴィアは舵を操作して、海王星に真っ逆さまに落ちて行くルートをとった。
通常、大気圏突入時には浅い角度で徐々に速度を落としながら降りていく。急角度で突入した場合、燃え尽きてしまうからだ。しかし、レヴィアの選んだルートは燃え尽きるルート、まさに自殺行為だった。
俺は焦って、
「レヴィア様、それ、危険じゃないですか?」
と、聞いた。
「スカイパトロールから逃げきるにはこのルートしかない。奴らは追ってこれまい」
「そりゃ、こんな自殺行為、追ってこられませんが……、この船持つんですか?」
「持つ訳なかろう。壊れる前に減速はせねばならん」
次から次へと起こる命がけの綱渡りに頭が痛くなる。
操縦パネルの隣には立体レーダーがあり、スカイパトロールの位置が表示されている。俺は横からそれをじっと見つめた……。彼らも燃え尽きルートを追いかけてきているようだ。
「追いかけてきますよ」
「しつこい奴らじゃ……」
ヴィーン! ヴィーン!
いきなり警報が鳴った。
『設計温度の上限を超えています。直ちに回避してください。設計温度の上限を超えています。直ちに回避してください』
「うるさいのう……。そんなの分かっとるんじゃ!」
フロントガラスは赤く発光し始め、シャトルの前方も全体が赤く光っている。
シャトルが燃え上がるのが先か、スカイパトロールが諦めるのが先か……。
俺はただ、祈ることしかできなかった。
船内にはゴォォォーという恐ろしい轟音が響き、焦げ臭いにおいが
「奴らもヤバいはずなんじゃが……」
レヴィアは
ボン!
シャトルの右翼の先端が爆発し、シャトルが大きく揺れた。操縦パネルに大きく赤く『WARNING』の表示が点滅する。
「レヴィア様、ここは減速しましょう!」
俺は真っ青になって言う。死んでしまったら元も子もないのだ。しかし、レヴィアは、
「黙っとれ! ここが勝負どころじゃ!」
と、叫び、パネルの温度表示をにらむ。
どんどん上がっていく温度……。
俺は冷や汗が噴き出してきて止まらない。俺は神様に全力で祈った。
その時だった。
「ヨシッ!」
レヴィアはエンジンに最大の逆噴射をかけた。
見ると、レーダー上でスカイパトロールが進路を変更していく。
激しいGがかかり、シートベルトが俺の身体に食い込む。
そして、ボシュッと音がして目の前が真っ白になった。どうやら高層雲に突っ込んだようだ。
しかし温度はなかなか下がらない。
ボン!
今度は左翼の先端が爆発し、シャトルはきりもみ状態に陥った。
「レヴィア様ぁ!」
「うるさい、黙っとれ!」
グルグルと回転する中、シャトルの制御を取り戻すべくレヴィアは必死に舵を操作する。
真っ白な雲の中、グルグル回りながら俺は孤児院での暮らしを思い出していた。走馬灯という奴かもしれない。薬草を集め、ドロシーと一緒に剣を研いでいたあの頃……。楽しかったなぁ……。まさか海王星でこんな目に遭うなんて想像もできなかった。
俺の人生は正解だったのか?
チートで好き放題したことも、ドロシーと結婚したことも、奪還しに行ったことも正しかったのだろうか……?
自分が選び取った未来ではあったが、多くの人に迷惑をかけてしまったかもしれない。
どうしよう……。
「ヨッシャー!」
レヴィアが叫ぶ。
回転は止まり、見れば、温度も速度も徐々に落ちている。
そして、ボシュッと音がして俺たちは雲を抜けた。
目の前に広がる広大な海王星のどこまでも
よく考えたらこの事態は俺のせいだけではない。世界に溜まっていた
悩む事など無い。ここまで来たらこの
俺はどこまでも澄んだ