自宅で寝てても経験値ゲット! ~転生商人が世界最強になってムカつく勇者をぶっ飛ばしたら世界の深淵に触れてしまった件~   作:月城 友麻

92 / 95
6-16. 親孝行

「これからどうするの?」

 ドロシーが聞いてくる。

「実は、両親に会ってこようかと思って……」

「え? それなら私も行くわ」

「ありがとう。でも、うーん、俺は死んだことになってるから、受け入れてくれるかどうか……」

 うつむく俺を、ドロシーはジッと見つめ……、そして俺の手を取って明るく言った。

「行ってみましょ!」

 

 俺は電話でアポを取る。懐かしい母親の声につい泣きそうになってしまった。

 

       ◇

 

 ピンポーン!

 懐かしい実家の玄関の呼び鈴を押す。

「ハーイ、どうぞ」

 インターホンから母親の声がして、ガチャッとドアが開いた。

 出てきたのは約二十年ぶりの懐かしい母親だった。すっかり老け込んで白髪も目立ち、痩せこけていた。俺は目頭が熱くなるのを押さえ、

「電話した者です。お忙しいところすみません」

 そう言って頭を下げた。

 

 俺たちは応接間へと通された。懐かしい家の匂いがする。

 テーブルの向こうに母と父が並び、怪訝そうな顔でこちらを見る。

「で、豊の知り合いということですけど、どういったご要件ですか?」

 父親が淡々と聞いてくる。

「パパ、ママ、俺だよ、豊だよ」

 俺は穏やかな笑顔で言った。

「え? 豊?」「はぁ?」

 唖然(あぜん)とする両親。

「信じられないと思うんだけど、一回死んで生まれ変わったんだ」

「え? 豊の生まれ変わり?」

 ママが目を丸くして俺を見る。

「そこのガラスの絵皿、俺が富士山で描いたポケモンだろ、それから、あの写真は箱根に行った時に撮った奴だ。この写真の後、俺が転んで迷惑かけちゃった……、ゴメンね」

 パパとママは顔を見合わせ、信じられないという顔をした。

 

「ほ、本当に豊なの?」

「最後に一緒に行った旅行はどこだ?」

 パパが険しい目で俺を見て聞く。

「最後……。スペインかな? マドリードから寝台でバルセロナへ行って……サグラダファミリア見たかな? そうそう、サグラダファミリアの近くのコインランドリーで洗濯したよね」

「豊――――!!」

 ママがいきなり飛びついてきた。

「おーぅおぅおぅ……」

 号泣するママ。

 俺もつられて涙がポロポロとこぼれてきた。

「親不孝でごめん。言うこと聞かなくてコロッと死んじゃって……。本当に反省しているんだ」

「ホント、バカだよ、この子は!」

 しばらく二人は抱き合っていた。

 

「で、今はどういう暮らしをしているんだ? こちらの女性は?」

 パパが聞いてくる。

「あ、今はとある会社にお世話になってるんだ。そして、彼女は妻なんだ」

 ドロシーはぎこちなくお辞儀をする。

「えっ? お前、結婚したのか? こんな可愛い子と?」

 照れるドロシー。

「そうなんだ。それから……。もう、孫も……、生まれる予定だよ」

「えっ!? 孫!?」

 唖然(あぜん)とする二人。

「女の子だって。生まれたら連れてくるね」

「うわぁぁ……。もう、全て諦めてたのよぉ……」

 ママはまた号泣した。

 若くして死んでしまったバカ息子が、いきなり嫁と孫を連れてひょっこりと現れたのだ。それは感無量だろう。俺も泣けてきてしまう。

 

 その後、パパは物置から写真アルバムを出してきて、俺の赤ちゃん時代の写真を広げた。

「え? これがあなた?」

 プクプクとしたかわいい赤ちゃんが、まだ若いママに抱かれているのを見て驚くドロシー。

「なんだか恥ずかしいなぁ……」

「もうこの子はヤンチャで困ったのよ~」

 ママは当時を思い出しながら感慨深く言う。

「今もヤンチャです!」

 ドロシーはママに言った。

「あらやだ! もうパパになるんでしょ、しっかりして!」

 ママはうれしそうに俺に言う。目には涙が光っていた。

 

 最後に俺はお土産のブランドバッグと腕時計を渡し、家を後にする。黒塗りの外車が玄関まで迎えに来ているのを見て、パパもママも目を白黒とさせていた。次の機会にはしっかりと親孝行しよう。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。