――――――――――――――――もうヤダ、もう記録したくない。
…失礼、逐一二人の行動を書き記していたのでつい。
そして今更気が付いたのだがそもそも物語小説調の文章で記録をつける理由もないのではないか?いや今更気が付いた所でバカバカしいのは承知ではあるが。しかしこう…箇条書きでは何故か許されない気がする。
さて愚痴は程々にして記録に戻る。
現在彼女らはオーストラリアサーバーの散策、ミッション攻略(一部)を終えて現在はニュージーランドサーバーの最西端にて散策を行っている。まあ絶賛迷子中ではあるのだが――――ああそうそう、相変わらずデンには言っていないが例のストーカーも居る。相変わらずのヘタレ具合だ…何度か話しかけようとしているらしいが、極度のあがり症(コミュ障って言った方がいいのか?)らしく声がでないまま我々は遠のいて、そして正気に戻っては見失い、そして発見しては追跡を開始するという行為を何度か続けている。リアル大丈夫か?このダイバー…。
とは言え、あの調子じゃ1万年と二千年経とうが話しかけられそうにない。しかしこのまま後をつけられるのも気持ち悪いので何かの拍子で奇跡が起こり、とち狂ってお友達にでも成りに来てくれれば万々歳だが…。
「あだっ!?
いっつつつつつつ…」
「「ッ!?」」
あ、奇跡起こった。
具体的には足元の微妙な段差に躓いて転んだ。
「…なんだ?転んだのか?」
「そうみたいだね。
――――大丈夫ですか?」
「あ、あ、え、え、え、えぇ…だ、だ、大丈夫で、す…」
優しいマイマスター・デンはこのストーカー男を気に掛けて傍に駆け付けていた。
――――――――――――――――やめとこ、マイマスターって呼び方。何でか知らんが変態と思われそうな気がする。
それはそうとストーカーは相も変わらずあがり症だかコミュ障をこじらせているようで、なんかとんでもないモノを見たような表情をし、口を釣られた魚の様にパクパクとしている。せっかくのファンタジー的美男子アバターが尾〇栄一郎の描く雷神様のように台無しである。
…いい加減生理的に限界なので、コイツを一時的にでも引き連れて目的を果たさせるよう仕向けなくては。
ああそうだ、2人は今迷子だったのだ。
「――――――――――――――――え?いいのかな?……うん、わかった。
あの、此処のサーバーの人ですか?」
「え?あ、あぁ…はい、此処でよく単独活動をしています」
「そうなんですか…よかった、僕たち実は道に迷っちゃって…。
もし良ければ案内を…お願いできますか?」
「案、内…?
…!!!、はい!いいですよ…!」
「なんか凄い焦り気味だなコイツ」「ちょっと、カル!失礼だよ」
「あは、あははは…実は、人と話すのは、得意じゃなく、って…」
知ってる。
…と、まあ流れをそこそこいい方向に持って行けたので自分の肩の荷も若干降りた様な気がしてきた…気分だけではあるが。
「…その、兎に角…よろしくお願いします!……あっ、えっと…」
「じ、自己紹介がまだでしたね。
自分は…サイナンタンって、言います…よろしく…」
「最南端?ここ最西端だぞ?」
「あ、いえ…自分のダイバーネームが…サイナンタンです。実家は宗谷岬に近いんですけどね」
「ソウヤミサキ?」「何だ…それ?」
「え?あ、あぁ…それは、えっと…」
どうやら最西端、最南端と来て最北端までかけたギャグのつもりだったようだが…彼女らが日本最北端の場所を知らないおかげで思いっきり滑ったようだ…つくづく運に見放されてそうな男である。
…さすがにネタが滑ったのは可哀想だったのでデンに耳打ちした。
「――――――――――――――――あ、そういう事か。
カル、宗谷岬ってアレだよ…日本の最北端の」
「そういう事か。
ここがニュージーランドサーバー最西端で此奴がサイナンタン…そんで住まいが最北端(の近く)か。ややこしいなオイ」
「アハハ……」
「そういえばこちらの自己紹介がまだだった。
――――カルだ、よろしく」
「私、デンって言います」
「カルさんに、デンさん、か……改めまして、よろしくお願いします。
――――所で二人とも。行き先は…どちら?」
「あっ。
実はここのミッションエリアに行きたかったんですけど…地形が地図で見た感じ以上に入り組んでて全然たどり着けなかったんです」
「あー…成程。確かにここは、地図、役に立たない、ですもんね。
ついてきて…あの、近道、知ってますから」
多少喋りがマシになってきたストーカー男…もといサイナンタンの後を追って二人もまた歩みを再開した。
その道は時に広大な草原を、時に上流を、そしてある時は険しい雪山を上る事になったが山中の洞窟に入り、そこに隠されてあった扉を入ると謎の廃坑へと通じていた。
「ええっと…ここがそのミッションのエリアです」
「遂にか…。
凄い道筋だったな…」
「ありがとうございます、サイナンタンさん」
「いえいえ、そんな…。
…でも大丈夫、ですか?このミッションは……二人で入るには、ちょっと…」
「そんなに難易度が高いんですか?このミッション」
「えっと…まぁ、ハイ。実質的には…」
サイナンタンの口振りからして、このミッションは相当難しいらしい。
とは言えデンの実力は言わずもがな、今のカルはEWAC機ではなく純粋な戦闘用機体を持ってきているので生半可な難易度では問題ないだろう…が、このミッションがそれほど柔いのかどうかの確証もないので先ずは経験者のサイナンタンを連れて行った方が何かと確実であると思われる。
…しかし決定権があるのは彼女ら二人だ。
「…良ければ、このミッションも案内しましょうか?慣れてますから」
「いいんですか!?是非お願いします!」
「…だな。経験者は居るに越したことはない」
「よかった…!
でも、基本的に…敵を倒しながら進む感じで大丈夫、ですけどね……」
という訳で3人はミッションを受領し、それぞれガンプラを呼び出しそして搭乗した。
デンは無論エボニーカイザーに。カルはステッペンEWAC…ではなく純戦闘用のステッペンネロに。そしてサイナンタンは…何か、こう、何処か変態企業さを感じる巨大な燃える目玉…のようなMAに乗り込んだ。
…ただでさえ彼女ら二人の所属するRIは変なガンプラ(最早ガンプラかどうかも怪しいが…)が跋扈しているとはいえ、巨大な燃える眼玉という衝撃的なビジュアルに少々ドン引きしていた。多分こんなんだからサイナンタンに友達とか居ないんだろう。
まあ何はともあれガンプラは自由()なのでさておいて、早速レーダーに敵影反応があったので3機は進撃を開始する。
「…それにしても、洞窟という割にはかなり広いな」
「だね。
サイナンタンさんの……うん、アレ?でも十分動き回れそうだよ」
「(アレ…)そうですよね。ここに住んでも、いいかなーって…そのくらい広々と…」
「いや住むのはちょっと…。
暗いし…」
もう敵影がすぐ近くだというのに和気藹々としたものである。
――――とまあ、こんな調子の彼女らも交戦距離に入った途端に一言もしゃべることなく次々と敵を粉砕、玉砕して行く。
ここで少々驚いたのはサイナンタンの手際だ。こんなどんくさそうな割には非常にテキパキと無駄なく容赦なく掃討をこなしているあたり経験者というのも嘘ではないらしい…が、どこかよそよそしい――――というより今現在際限なく湧き出ている小鬼のようなジオン系MSの群れではなく、また別の何かを警戒しているようで彼はひっきりなしに天井や谷底を確認している。
その確認している場所には決まってMS一機ならすっぽり身を隠せそうな隙間があったりする…何か伏兵的なギミックでもあるのだろうか?
そのうちエリアは敵の残骸で埋め尽くされ、動くものと言えば彼女ら三機以外に何も無かった。
「…本当に難しいのか?コレ」
「えっと…実を言うと、なんだろ…難易度は少し運任せな所がありまして…」
「カル、まだ序盤でしょ…気が早いよ」
「…。
それもそうか、行こうぜ」
マイペースさを遺憾なく発揮するカルにため息を付きながらデンがその後を追いかけ、そしてやはりサイナンタンは周囲を警戒し続けていた。
やがて一行は小さな井戸のある部屋にたどり着く。
入室と同時に、お決まりのようにサイナンタンは数か所を確認し何も無い事が分かると自機を少しだけ上昇させ、部屋を思う存分探索するデンとカルの邪魔にならないようにした。
「わぁ…この井戸深そう…」
「あ、そこ落ちると即死です」
デンは無言で井戸から離れた…まあ即死は誰だって御免だろう。
「おーい!ここになんかアイテムがあるぞー!」
「え!本当!?
――――何、これ…見たことないアイテム…」
「え?もう見つけちゃったんですか…?隠しアイテム。
それ、このミッション限定で手に入る割と凄いやつです」
「そうなんだ…!
お手柄だね、カル」
「ま、まー、私にかかりゃこんなモン楽勝だ…さ、アイテムも取ったしさっさと「あ!待ってよカル」ッ――――…。」
もう用はないと言わんばかりに外へ出ようとしたカルは、その扉の先に何か良からぬものを見たかのように直ぐ扉を閉めてしまった。
「…え?
カル?なんで扉すぐ閉めたの?」
「………誰か、私が正常か試してくれよ」
「?、何を言ってるの?
カルらしくないなぁ…開けるなら開けるで――――」
デンもまた扉を開けたかと思えば、直ぐに閉めてしまった。
…無理もない、先ほどは只々広いだけだったハズの空間に、これでもかと雑魚敵が敷き詰められていたのだから…。
「分かります。
私らも同じ反応しましたし…」
「…何で、言わなかった?サイナンタン」
「い、いや…楽しみまで削いでしまうというのは流石にと思いまして…。
それともうすぐ突破してきますよ、扉」
「えっ――――」
ばじゅぅううっ…そんな音を立てて、鉄の扉にヒートホークが突き立てられた。
どうやらワンテンポ遅かったようだ
「嘘…」「だろ…」
たちまちドアは破り捨てられ、大量の雑魚敵が狭い室内になだれ込んできた。
「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!?!?!?!?!?!?!」」
条件反射的にデンはカイザーをキャノンフォームに変形させ、狭い入り口に殺到する雑魚共を拡散メガ粒子砲で一掃した。そこにカルが両肩の三連装連射式グレネードランチャーを全弾撃ち切るつもりで引き金を引いた。
「二人とも、すごいの持ってますね…」
「持ってますね。じゃねえんだよ!
はよ!はよお前も攻撃しろ!!こんな数に入られたら押しつぶされるだろ!!!」
「あ…そうだった」
天然なのだろうかコイツは…思い出したかのように彼はその御目様機体からビームの暴風雨を放ち、瞬く間に雑魚敵を制圧して出口への道を作った。
この機会を逃すまいとデン、カル、サイナンタンの三人はスタコラサッサと道を颯爽と駆け、再び群がろうとする雑魚をカトンボでも落とすかのように蹴散らしながらやがて暗い渓谷に出た。
…この時、危うく崖に落ちそうになったデンが寸での所で静止…したところにカルが突撃して仲良く崖下へと落下しそうになった所をサイナンタンが文字通り身を挺して止めていた。
「あぶなッ…!
ごめんなさい、此処のこと言うの忘れてました…!」
「…もしかして落ちたのか?アンタ」
「はい…初見の時に――――!!!、もう来たのか…!」
ズシン、ズシン…何か巨大な実体の足音が洞窟中に鳴り響く。
デンがゆっくりと背後を振り向くと…あれだけいた雑魚敵の姿は何処にもなく、代わりに轟々と燃え盛る巨躯を持った…恐らく二足歩行で、悪魔の翼を生やしたゴリラ…のような敵が物凄い速度で迫って来る…!
「何、アレ…!」
「撃破不能系のエネミーです!逃げましょう!!」
サイナンタンに急かされた二人はまたバタバタと脚を動かして狭い渓谷の道を駆け抜けた。
途中、ザク・スナイパーからマゼラ・トップ砲による狙撃を受けるがそれはカルが一瞥したついでにカウンタースナイプで撃破し、そして崖から崖へと飛び越えた所で急激に背後から“炎”が迫っていた。
…なんとあのゴリラが、その手に炎の鞭を持って追撃を開始していたのだ!
「思ったより、しぶとくなってッ…!!」
サイナンタンが振り返り様に極太のビームキャノンを放ち、燃えるゴリラを数十mほど押し返すが撃破不能エネミーの肩書は伊達ではないようで無傷のままゴリラは3人の追走を再開する…が、全員出口が鼻と先であり、最早これまでと悟ったのかゴリラは追跡を諦めてまた暗い洞窟の中へと帰って行った。
――――そして3人はようやく洞窟の外へと飛び出した!
出てきたのは霊峰の中枢!周囲がゴツゴツとしていて雪の積もった岩山に囲まれた、まさに絶景のど真ん中だ。
だがサイナンタンの表情が晴れない…彼が想定していたものが無いからだ。彼が知る“そのポイント”は全て通過済みのようで、それが逆に不気味なのだ。
「まあ、無いなら無いで…それで」
結局の所彼は何処か納得したような様子で、そのまま彼女らと共にミッションを終えようとしていた。
だが、それは余りにも唐突だった。
――――――――突如、サイナンタンの巨大眼玉が爆発したのだ!!
「ッ!!
サイナンタンさん!?」
「何だ!?まだ敵が居たのか!?」
「(しまったっ…ログインしない間に、狩場が…!)逃げ…」
彼が言葉を言い終わらぬ内に、何処からともなく弾幕が飛んできたために二人と彼は分断され、例の目玉は浮力を失ったのかそのまま崖下へと落下していった。
そして急にオープン状態のVCから、まだ成熟してない声変わりの途中らしい声の数々が流れてきた。
『うっわwwwまだこんなクソミッションやる初心者居るんだwww』
『しかも3人とかw
ぜってーガン逃げしたやろwwこのザコwww』
「ッ!(まさか…!!クソ!難易度の運任せって、お子様PK集団の事かよ!!)」
どうやらこのミッションはPKの格好の的だったらしい。
「カル!そこの岩陰にッ!!」
「ああっ!!
…クソッタレ共が!」
咄嗟にデンが指し示した物陰へと二人は跳び込もうとする…が、その直前にカルがその物陰に仕掛けられた地雷とセントリーガンを発見したため即座にビームガンで地雷を撃ちぬきセントリーガンに誘爆させた。この事によって物陰がやっと安全地帯となったのである。
『うっわ…アイツ地雷壊しやがったウザ』
『そこ貫通できねぇんだけど、死ねよザコ』
「チッ、好き勝手言いやがる…!」
「…」
「…。
…!、おい、デン、デン!」
「ッ!!
な、何?カル」
かなり投げやりな言葉遣いになってる辺りデンは非常にキレているらしい…というか、自分はデンと感覚をある程度共有できるので断言できるが…今、彼女はこの上なく頭に血が上っている。
何が彼女をそこまでさせるのかは分からない…いや、単にイラつくモノはイラつくだけだろう。気持ちだけは分かる。
「あんまキレるなよ…どうせガキの戯言だ」
「アはッ。
…でも私達生まれて数か月ちょっとぐらいだし、向こうの方が年上だよね」
「…。
…マジで落ち着け、いいか、こんなのキレた方が負けだ。分かるだろお前…」
そうだデン、どうせお前と奴らじゃ実力の開きが激しいんだ…お前らの方が強い、何言われた所でしょうもないやられ方するのは向こうだという話なんだ。
「――――――――――――――――だよね、あんな奴らより僕らの方が強いし」
「おいデンの中のヤロウ余計な事言ってんじゃねえ!!
…デン、頼むよ」
「…」
「顔真っ赤だなんて知られたら…アイツら余計煽るんだぞ」
カルの言う通りである。
煽られた時こそスマートになるべきなんだ。怒るな、やり返せ…という言葉もこの世にはあるのだ――――
『いつまで芋ってんだあのザコ。
もしかして反撃できないんでちゅかーwwww』
『というかこんなミッションやる初心者だから回避とか全然知らなそwwww』
――――…おいデン、【ストライダーフォーム】寄越せ。
あのクソガキ全員潰す。
「――――――――――――――――ストライダーフォーム…?ダメだよ、僕らの獲物だよ?
思い知らさせてやるんだ…あいつらが、何処に喧嘩を売ったのかって…」
「そいうの私のセリフだろ。
そもそもストライダーは扱えなかったじゃねぇか」
「後、すぐ壊れるからね。
どうしようかな?武器と手足だけ破壊して放置したら…どう?」
「本当にやめてくれ!こんなのデンじゃない!」
「これが僕だよ?
…もう行こう?僕らの動きを…あいつら、捉えられるハズがないんだ」「やめろ!今出るんじゃない!」
完全に頭に血が上って、無暗に身を晒そうとするデンを必死に抑えるカル。
向こうのPK共も流石に一点のみの監視だからか直ぐ二人の動きに対応して弾幕を張り始めた。そしてその攻撃全てを外すとお決まりの様に暴言を吐き続けてはそのせいでデンが青筋を立てるという悪循環に陥っていた。
…正直、こちらの堪忍袋の緒が切れるのも案外時間の問題だ。
しかし下手に飛び出せば、いくら機動性に優れたカイザーと言えども、一点に集中した状態の反射神経を超える速度を出すのは難しい。いや…出来ない事も無いが、それには機体のリミッターを外す必要がある。そうなるとフレームは数分と持たない上に向こうは明らかに一方的な攻撃による持久戦を仕掛けるつもりなので倒しきる前に袋叩きにされる可能性が高い。
敵の位置さえ分かればいいのだが…彼女らの装備では先ずそんなことは出来ない。
詰みを覚悟した時――――何処からともなく爆音が響いた。
「(ッ!とうとう爆撃まで始めたか!)おいデン!もうヤバい…!
…いいか、一か八かで“逃げる”ぞ!」
「なんで?なんで逃げるの?」
「アホ!相手は射線からして崖上に陣取ってるんだ!私とお前じゃ狙ってる間にオジャンだ!分が悪すぎる!
変形するとか言うなよ?ここの狭さじゃ無理だし、外出てやるっても変形してる途中にやられるのがオチだ!」
カルが必死に抑えている中、再び爆音が響いた。
――――ここで彼女たちは、状況のおかしさに気付く。
何故か爆音が響く場所が何処も彼処も見当違いなのだ…こちらの位置を特定しているPK集団がそんな事をする意味が分からない。
…その答えは、オープンVCから直ぐに流れてきた。
『は?何?
誰が攻撃して――――』
『え…え?誰?誰なん?』
『はぁ?コイツまさかモルドールの――――』
『わ、もう4人もやられたんだけどクソ』
『何アイツ、絶対マスだろマス――――』
「は…?(何だ?誰かが奴らを攻撃してるのか)
一体だれが」
「確かめてくる」「あ!オイ待て!!」
デンがカイザーのフリューゲルフォームで飛び出した瞬間、脚部にビームが掠め、空中をきりもみ状態で不安定な飛行をしながら徐々に落下していった。慌ててカルが飛び出しカウンタースナイプを行おうとするが…その方角からまた爆音が鳴り響き、爆発の勢いで雪が天高く舞い上がる。
「ッ!、アレは…」
カルが見上げた先――――遥か崖の上には、まるでファンタジー小説の魔王のような禍々しいMSがPK集団の一人と思われる改造ブリッツガンダムの首根っこを掴み、正しく“君臨”という雰囲気を醸し出して立ちはだかっていた。
その“魔王”…いや、“冥王”はブリッツガンダムの頭部をグシャリと握りつぶすとゴミの様に投げ捨て、背後から斬りかかってきた別の改造ブリッツガンダムを手に持ったメイスの一振りで薙ぎ払った。
…この一撃の際にメイスから噴き出した、神々しい衝撃波がメイスが只の鉄塊でない事を示している。
冥王の実力はPK集団の…いや、それどころかデンやカルの比ですらなかった。
メイスを大地に向かって振り下ろせば先ほどの様に爆発を起こし、それによって巻き上がった雪をスモーク代わりに突撃…そしてメイスの二振りで幾多のガンプラを風前の塵が如く吹き飛ばしていた。
…余りにも浮世離れした光景に、カルは一時見惚れていたが足元に収縮されたビームが着弾した途端に気を戻してデンの救助に向かった。
「デン!!
大丈夫か!!」
「う、うん…」
「馬鹿野郎!だから飛び出すなって言っただろ!!」
「ごめん、カル。僕…どうかしてた」
「…今大丈夫ならそれでいい。
――――さっさと反撃するぞ、今は何処かの誰かが奴らを攻撃してくれてる」
「誰って、サイナンタンさん?」
「さあな、それは分からん。
…だが向こうは一人らしい上に想像以上に奴ら数をそろえてる。加勢に行くぞ!」
「…分かった!
次は…ちゃんと足並みそろえるよ」「そうしてくれ、是非ともな…!」
完全に立ち直った二人は、もう一度武器を構えて崖下から一気に飛び上がりPK集団への反撃を開始した!
一気に崖上へと上り詰め、PK集団との高低差が無くなった彼女達は一気に鬱憤を晴らすように、まるで修羅が如き暴れっぷりを見せてくれた。カルが全身をGNフィールド展開ビットで強烈な特殊GNフィールドを張った状態で5連装デスマシーンを両手に構えた。
「デスマシーン、スピンアップだ…!」
2機のデスマシーンが回転を開始して数秒、暴風雨のような鉛玉が吐き出されPK集団を圧倒する!
その隙にデンがフリューゲルフォームで上空からビームショットマシンガンの掃射を開始、PK集団たちは逆に一方的な攻撃を喰らい散り散りに逃げるが圧倒的な面制圧を前には逃げ切れず、既に多くのPKダイバーが撃沈していた。
「カル、交代!!」
「あいよッ!」
デンは背中の断艦剣槍をフリューゲルフォームの状態のまま切り離し、カルのステッペンネロに向けて飛ばした。そしてカルが断艦剣槍へ飛び乗りSFSとして使い飛び上がった。
その際、弾丸が尽きたデスマシーンを捨てる。
「次はコイツだ…!」
次に手にしたのはリボルバー式の高性能グレネードランチャー…通称ウォーマシーンと呼ばれる、これまた定番の強カスタム武器だ。
ポンポンポンと、間の抜けた発射音の後には凄まじい爆風が吹き荒れ敵をまとめて吹っ飛ばしていく。
そして今度は地上にてカイザーがビームサーベルの二刀流で、爆炎の間を縫いながら敵を切り裂き“武装解除”していく。
…どうやらデンは奴らを何もできないままじっくりと(トドメをカルに任せて)倒していくようだ。
しかも質の悪いことに、全て無意識でやっているようだ。
「――――――――――――――――何か言った?MtoE。
…!、あの大きいのが、助けてくれた人?」
遂にデンが冥王を見つけた。
そして今判明した事だが、冥王の全長は25m級と(MSとしては)かなり巨大である…そこかしこに見えるフレームの特徴から、どうやらグレイズ・アインをベースにしたようだ。
…そして冥王もまたカイザーを見つけ、互いに目が合った瞬間にデンへと通信が入った。
「!!、デンさん…無事、だったんだ…!」
何と、冥王の正体はサイナンタンだったらしい。
「え!?サイナンタンさん!?
僕は無事…って、そっちも大丈夫だったんですか!?というかその機体は!?」
「ああ…あの、アレ、目玉に隠してました。
…実は僕、ここら辺だとちょっと有名でっ――――て、それどころじゃない、か…!」
彼の会話の途中にPK集団が勢いをまた取り戻して集団で斬りかかってきたので二人が近接戦闘で対応する。
改造M1アストレイが放ったビームライフルを、サイナンタンはまるでそよ風のように無傷で受けつつ一気に間合いを詰めてメイスでグシャグシャに叩き潰し、その際に発生したあの衝撃波で周囲の敵も巻き込んで倒していく。
衝撃波から逃げ切ったPKダイバーも、二刀流状態のデンに某兵団よろしく回転斬りでうなじに当たる部分を削がれては戦闘不能状態にされて、若しくはカルの容赦ないウォーマシーンによる爆撃をモロに受けて蒸発するかのどちらかしか運命が残されてなかった。
『ハァ、マジ最悪だわ、萎えるわこんなん』
「勝手に萎えてろ、ガキ」
すっかり意気消沈したPKダイバーのVCに対し、カルが吐き捨てるように言い返してトドメのウォーマシーンを放つ………そして爆発。これによってPK集団の全滅が確認された。
…実はデンが“武装解除”した達磨状態の機体が何体か残っているが、この状態では破壊されたも同然なので(VCが煩い以外は)何も問題がない。
「…やれやれ、まともに遊べねぇもんかね奴ら」
「ごめんなさい二人とも…あんまり脅かさない様にと、プレイヤー狩りのこと、言わなかったばっかりに」
「そんな…。
――――今回に関しては…僕も悪い事しましたし…」
「…もう気にすんなよ、終わったんだし。
で、サイナンタン。このミッションの終了条件は?」
「あ……それはすぐソコを通り過ぎれば、です。
これ、サーバーでも比較的簡単なミッションなので難しい条件とかはありません」
「結局高難度じゃなかったんだな…と言いたいけど、このミッションはPKの温床になってたのか」
「はい。
運営も、対応していたらしいのですが…完全にいたちごっこだった、ようで…」
「どのゲームも同じですよきっと、いたちごっこになるのは…」
「…そう、ですね」
彼女ら3機が雪道を歩く間にどうやらゴール地点へと踏み入ったようで、それぞれにミッションクリアの表示が出現した。
それぞれが機体から降り、ふぅ…と、一息ついて休憩に入った。
「ふぅ…RIへの土産話には十分過ぎるくらいになっちまったな、旅の始めで」
「だね、カル…」
サーバーはどうやら夕方時刻になったようで、彼女ら二人は宝石の様に綺麗な夕日を眺めながらしんみりとしていた――――その後ろではサイナンタンがまたエ〇ル顔で口をパクパクさせ、あからさまに驚愕した表情を見せていた。
「え、あ…あ、あ…」
「?。
サイナンタンさん、何か…?」
「え、あ、え、えっと…皆さん、あの、ロッテンアイアンの…に、所属して、いらっしゃるん、です…?」
「ああそうだ。
言ってなかったな…私達、RI所属のELダイバーだ」
「あ、ああ、え、え、える、え、EL、ダイバー…!?
そ、そんな…!」
…彼の、サイナンタンの目論見が少々読めてきた。
多分これまでの発言からして、この男はある程度GBNを休止していたらしい。その前後で恐らくは所属していたフォースを脱退、もしくはフォース自体が解体されたのだろうか…ソロプレイ状態で復帰し、そして新しくフォースを設立しようとしていた所でデン達を見つけ、そして勧誘しようと跡を付けていた…のだろう。
なんにせよ、この仮説が正しければ…コミュ障を乗り越えてなんとかたどり着いた結果がこれなので、なんとも運の無い男である。とち狂ってお友達になりにきた、というのもあながち間違いでもなさそうだった。
……ここまで哀れだとかけてやる言葉も無いから俺はそっとしておくことにした。
「…あの、サイナンタンさん?」
「は、はい…?」
「えっと…案内の続き、お願いできますか?」
「はい、分かりまし、た…。
次は…どこに?――――」
まあ嫌な奴では無さそうであるので、彼はその内に所属先が決まるか新しいフォースを結成するに至るだろう。多分。
ソレとこの話の続き、かもしれないが…この数日後、どうやらニュージーランドサーバーに嘗て存在していた伝説的なダイバーが復帰したとの噂が出回っていた。本当に関係性は謎だが。
――――――――――――――――ああそうそう忘れてた。忘れてしまうところだった。
BorV…あの、ちょっと早いけど、誕生日おめでとう。
【軽いキャラクター解説】
・サイナンタン
ビルダー、ファイターとしての実力は非常に高いがコミュニケーション能力が引き換えのように最低値の男。嘗てはニュージーランドサーバーのとある伝説的なフォースのリーダーを務めていた(約一か月)。
使用ガンプラは【グレイズ・サウロン】、グレイズ・アインを指輪物語のラスボス“冥王サウロン”を元ネタに改造した機体である。
・デン
何故か小中学校じみた煽りに対して本能的に弱い。
・カル
何気に煽り耐性が高い。でもやり返す。
・MtoE
煽りは自分が(煽ってきた)相手を煽る大義名分だと思っている、煽られたら「コイツ煽ったww」とはしゃぐ、そうなりゃ死体撃ち・屈伸・糞団子・下指し・シャゲダン上等。
・BorV
煽りは全スルー、レベルの低いものは一切気にしていない。