…ようやくファイル一つ分の記録が出来た、ここからはファイル2の記録である。
記録担当は引き続きMtoEことマーシレスで行かせていただく。
それで今は…ああそうだ、前々からデンに戦闘の手ほどきを受けさせてたのだが…それがある程度まで行ったので“最初のステップ”の最終試験として、適当に見繕っておいたミッションを単独で受けさせている、というより今から始める所だ。
場所は廃墟都市、中央にかなり広い広場があるので以外とCQBばかりとは行かないフィールドだ。
――――デン、自分のタイミングで出るんだ。
「――――――――――――――――うん、分かった。
…ッ!!」
以外と始めるの、早かったな。
「先ずは…居たッ!サーペント3体!
アレなら剣槍で斬れる。ハァああああッ!!」
1、2…3と4まとめて撃破。
――――いいぞ、出だしは順調だ。
「ッ!後ろ…ッ!
ジム系8体…!?一気に増えた」
――――怯むんじゃない、お前の相手ではない。
さて…ここでどう踏むか。
…スタッフフォーム、か。成程…後方の高所に陣取るガトリング持ち3機もコイツなら然程脅威ではない、装甲である程度無視できる上に瞬発力を用いて射線を振り切る事も可能だ。
そして問題は杖の使い方だが………まあ及第点だな、もっと回避と攻撃を同時並行した効率的な攻撃が出来る様になっていればもっと得点を与えられたが、始めたてならこんなものだろう。むしろ彼女は素質がかなり高い方だ…俺が文字通りの体感で教えられるのも大きいかもしれない。
「3機の死角になるのは、えっと…ッ!そこっ!」
判断力か…少し迷いがある。
――――どうした?止まってるぞ?
「――――――――――――――――分かってる…。
………よし!」
次に彼女はフリューゲルフォームへと変形、ビルとビルの間を潜り抜けるような低空飛行で死角から死角へ、大回りして飛んで行き、遂に3機の背後を取った。
…発送は良い、が、ルート選びが少々残念だったな。激突事故を恐れて一番の近道を避けたようだが、体感を共有している者として言わせて貰えば十分あの近道は彼女が通れるものだった。
とは言え慣れない内は危険を冒すべきではないという判断は評価できる。
「やぁあああッ!!ハァアッ!ッだアアアッ!!!」
棒立ちの3機を某立体起動よろしく2本のビームサーベルで1機ずつ丁寧に処理していく。
――――随分と悠長だな。
「――――――――――――――――うん、斬りたかったから」
成程。
まあ、そういうのもアリだ。
さてと…ここまでがこのミッションの導入だ。ここからはさっきまで出てきた奴らが絶え間なく、しかもかなりランダムにスポーンしてくる…無論、山盛りだ。そんなわけで本来は推奨ランクのダイバーが3人いる事を想定した難易度であるこのミッションを(少なくとも今の彼女と同じランクのダイバーで)単独プレイしようとする奴は中々いない。
しかし彼女の実力はそこらの同ランクダイバーの比じゃない、ランク詐欺の新生…そう呼ぶ奴はまだ少ないがソレは事実だ。
「流石に数が多い、チマチマ避けられないし悠長に耐える暇は…ッ!」
彼女はフリューゲルフォームからブレードフォームに切り替え、その高い運動性を十分に発揮できる状態で再び裏路地へと跳び込んだ。さっきより判断が早かったな…十分な加点対象だ。
かなり事象が連続しているので詳しくは書けない*1が、自分が教えたことを彼女は忠実に守っている。教えたてのように何かとフォームチェンジに縛られて一々変形時の隙を見せるような事をしなくなったのを見ていると彼女の成長を感じられて、教える側として非常に喜ばしい。
…これくらいのことも、昔は出来てやれなかった。
今の自分は何だ?何のための罪滅ぼしだ?一体何をやっている…。
…しまった。記録を忘れてしまった。やっべここ消さないと…
この間の分は全部加点分として入れておこう。
…うん、ステップ1として完璧な戦い方だ…フォームチェンジする際のタイミングも流れも美術点含めて非常に高い評価を与えたいくらいだ。まだまだ「そこはそうじゃないだろ」という部分は多々見られるものの何度も言うようだが彼女への授業は始めたてだ、寧ろ始めたてでこのレベルは…。
――――何だ?BorV、甘すぎる?俺の採点が…?そうかな…それじゃお前は何点ぐらいだ…え?もうちょっと点数高くないか?
「――――――――――――――――ちょっと!何話してるの二人とも…ッ!見てる!?」
――――問題ないぞ、続けててくれ。
――――それはそうとだなBorV、お前もしかして逐一適当に理由つけて減点しちゃいないか?……いや、俺がそうみたいな言い方は…………あ、ハイ………はい、はい………………で、でもこれ実戦とかじゃなくって一応ゲームなので………あ、ハイ、ハイ。はい、おっしゃる通りでございます。ハイ…………はい、はい、はい誠にその通りでございます。私の怠惰でしたごめんなさい。
…彼女の言い分が最も過ぎて何も言い返せなかった。
だがBorVもまたレッスン1の最終試験としては合格と判断した、やっぱり俺の目は間違ってはいなかったのだ。
さてと、彼女の戦闘の記録に戻らなければ………………終わってる?
「やった!
――――――――――――――――ノーダメージだよ!!MtoE!BorV!これって絶対合格だよね!?」
――――…ああ、文句なしに合格だ。
因みにこの最終試験で合格したらギターの練習に付き合う事になっている。何故か最近、デンがギターの上達について意欲的になっているのだ…本当に理由は不明、だがギターと歌唱ならこちらも心得があるので練習に手こずる事は無い…ハズだ、きっとGBNはギターの再現とかもちゃんとやってる、やってる筈だ、ウン。
それとこれは後で知った事だがこの最終試験、ベースエリアで大々的に中継されてたみたいで今この瞬間を境にデンの知名度が上がっていた事はまだ知らない。
「よ。
お疲れさん」
「カル…態々待ってなくていいって言ったのに」
「お前置いてどこ行くってんだ?」
「まあ…そうだね」
デンは戦闘禁止エリアで待機していたカルと合流し、また彼女達の旅は再開した。
次はサンクキングダムの宮殿(というより王宮?)へと向かうそうだ…またしばらくは会話の記録となるのだろう。
「じゃあ、行こうっか…サンクキングダム」
「ああ、サンクキングダムな」
「うん、サンクキングダム」
「そう、サンクキングダム」
「サンクキングダムなのか」
「サンクキングダムなんだよ」
「サンクキングダムですか」
「…いつまで続けるつもりだったの?」
「そりゃこっちのセリフだ。
――――道ぁ、こっちであってるのか?」
「多分ね」「多分ってなんだよ、多分って」「方角は合ってるってこと」「ああ、そうか…まあいいや」
随分杜撰な旅路である。
――――俺の記録よりマシ?やめてくれ、俺だってこの文章力で精いっぱいなんだ。
「…あぁ、そうそう。
ちょっと聞いてくれよデン」
「どうしたの?」
「いやさ、私さ、キンゴの姐御んちに住んでる…って話はしたっけか?」
「いや…多分、初めて聞いた…かも」
「そうか?いやまあ、そうなんだけど…姐御んちに住んでるんだけどさ。
昨日ヤバかったんだよ姐御さ……ウイスキー、って酒あるだろ?」
「あるある」
「それのさ…でっかいやつ。
こーんぐらいの、丁度ウチ(ロッテンアイアン)でアクアコーラを溜めるのに使う携帯用タンク…あるだろ?」
「あるね。
…まさかそれ全部飲んだ、とか?」
「そーーーなんだよぉ…それでまあ姐御も何時もの倍くらい息が酒臭いし、やたら私に絡むしでさぁ!」
「それは…大変だったね。
引っ越す?僕の所に」
「いやいや、いいって…今エクハザール体調不良なんだろ?そんな所に二人もお世話なったらやべえじゃねえかよ」
「カルがすごいマトモなこと言ってる…」「私ぁ元からマトモだ!トビカスとかノヴェン太の親父なんかと一緒にするんじゃない!」「いやノヴェン太さん比較的マトモでしょ…レンダとかいるよね」「それお前が個人的に嫌いなだけだろ」「ま、まあね…」
「はーっ。
…いや別に姐御には不満はねえんだよ、姐御大好きだよ「あれ?カルってソッチ系?」違う違うそういう意味じゃ………ない」
「え?そこ何で溜めたの?
溜めるような要素やっぱり…その…」
「いやそーじゃねぇっつってんじゃん。
大好きってそういう意味じゃないよ、人としてってか…なんてか…」
――――LIKEじゃなくてLOVEの意味でも人として好きは俺は使うぞ。
「…だってさ」
「誰が何言ってんだよ…ああそうかデンの中の奴か。
ヨケーな事言ってたらぶん殴るぞ?あ”ぁ”?」
――――残念ながらそれはお前の親友を殴る事にもなる。
「僕を殴る事になる、ってさ」
「いいだろうお前そこ(デンの中)からさっさと出てこいオラぁ!オーストラリアサーバー引き回しにしてやるぞゴラァ!!」
「ああもうごめんって、カル。
僕もからかって悪かったって」
「え、ああ…うん、こっちもゴメン。
……うん、まあそれはそうとな?姐御がすげー飲んでた理由なんだけどさ」
「(切り替え早ッ!?)うん、何?」
「なんでもよ…昔のアルバムが出てきてクソ程腹が立ったらしい」
「え…どうゆうこと?」
「あー………なんでもコダイ、って奴に一瞬でも惚れてた自分が許せない~だとか何だとか…」
「…ねえ、コダイってエクハザールさんの本名だよ?」
「…マジ?」
「大マジ」
「………」
「………」
「………な、なぁ。
エクハザールってそんな、その、女たらしなの?」
「女たらし?」
「いや、異性にだらしない、ってか…えっと………あのさ、お前アイツんち泊ってて女の人が来たーって事ある?」
「?。
そういう事は…なかったけど…」
「ああ…あ、でもそういうのデンの前でやったりしねぇか。というかアイツそんな根性ありそうに見えねぇし」
――――既婚者の意見として言わせてもらうと、彼は余程奇跡的な出会いをしない限り結婚とか無理な類だ。
「だってさ。
…ああ、エクハザールさんは奇跡でも起こらない限り結婚できなさそうって、MtoEが…」
「え?お前の中の奴結婚してたの?そういえば男女二人つってたな…。
………んんんんんんんんん、まあいいやアプローチを変えよう。エクハザールってリアルだとどんな顔なんだ?」
「リアルの顔?
それは…あー、えっと…」
「うんわかった、トクベツかっこいいか?不細工か?」
「いや…ちょっと僕も…あんまり人の顔の美醜ってのがよくわからないし…」
「わかった。
…あー、誰に似てる?」
「誰…。
………………………あ、そっか」
「どうした?なんか思い当たるフシでもあったのか?」
「うん。
あの、前にニュージーランドサーバーで案内してもらったサイナンタンさん、って…」
「まさかアイツが!?
アレかなりのエルフ顔だよ!?めっちゃハリウッド映画気味に盛ってるエルフ顔だぞ!?本気でいってるのか!?エクハザールのリアル顔がアレに似てるって!」
「う、うん。
髪も女の人みたいに長いし…流石にサイナンタンさんみたいに耳尖ってたり凄く白い肌って訳じゃないけど…」
「マジか…ガチモンのビナンシじゃねえか。
さぞかしバレンタインデーはチョコ貰ってたんだろうなぁ…」
「…いや、それはないって言ってたよエクハザールさん」
「は?」
「バレンタインチョコなんて小学2年生以降全く貰ってないってさ」
「…」
「いや本当だからね?
多分、本当、だと思う…」
「…なんか、妙に説得力あるな。
さしづめバレンタイン当日に一般的なガノタよろしく血のバレンタインがどうとか叫んだりしたんだろうか…」
「流石にそれはおかしいよカル。
いくらちょっと…その、ふざけ出すと歯止めの利かなくなるようなエクハザールさんでも…「その歯止めの利かないってのかもう事実肯定してるようなもんじゃんか。どうせ顔だけの危険人物とかいうレッテル張られたんだろどーせ」言い方が酷いよカル」
「ゆうてあんなガンプラ作ってるような奴だし…というかデン、エクハザールの作業場って絶対見てるだろ?」
「見てるも何もそこが僕の寝室なんだけど…」
「どんな感じだ?
すごい散らかってるのか?それともほとんど何もないとか?」
「えっと…なんだろ、滅茶苦茶な感じのガンプラが…綺麗に飾られてるというか…」
「滅茶苦茶な感じ?」
「うん、上半身と下半身が逆だったり…胴体が平行に連結されてたり…それとガンタンクの下半身の上に素ジムの上半身が四つ束ねられてくっつけられてたり…」
「…もう殺人鬼のコレクションのソレじゃん、エドゲインじゃん。
そんなのにチョコ渡したくないよ誰も!絶対ガンプラのパーツとかにされるよ!」
「エドゲイン?」
「え、あ、あー、エドゲインは忘れろ、忘れてくれ」
「うん。
…それと、ものすごくおっきい牛の角みたいなのがあった」
「牛の角?」
「うん。
厚さは僕が両手広げたくらい…ああ、MDの時だよ?それよりも太くて、それで…なんだろ、三日月?みたいな感じ、っていうと違うなぁ。うーん………………丁度この水筒ぐらいの円柱に、こーーーんなぐらいのおっきい角が生えてるみたいな」
「あー、脊髄と肋骨みたいな?」
「ごめんそれがちょっとよく分からない」
「えっとな?
人間の骨ってさ、まず…ちょっと背中貸せ。ここに背骨っていう棒みたいなのがあるんだよ。
で、胸のあたりはまあ…大体こーんな感じで肋骨が中に…お前胸でけぇな」
「ちょっと、握らないでよ」
「わり」
「…でも、そう言われてみると…骨、っぽいよね」
「というかさ、たまにオーストラリアサーバーで牛の骨落ちてたりするだろ?」
「そうなの?あんまりそういうの気にした事無かったから…」
「いや結構所々にあるって」
「そう、なんだ…。
今度探してみるね」
「おう。
……というかエクハザールはそんなデカイのなんか作ってどうしたかったんだよ」
「…さあ?」
「まあアイツの頭ん中なんて分かりっこねえか」
「今度聞いてみるね」
「聞けたらいいな。
………………お!もうそろそろ時間だ!」
「時間?何の?」
「コルディスダイの時報演説だよ。
毎週木曜日のこの時間にやってるんだ」
「コルディスダイって、たしか前に手伝ってもらったブラックオプスにいた人が作ったフォースだよね」
「ああ、そうそう。
GTuberの【メネンデェス】、通称【メネちん】が作ったフォースだ。そろそろ始まるぞー」
「…(どんなのだろ)」
…あ、ここ地の文入れるか。
二人は互いにカルが出したインターフェースを覗き込んだ。
『ぴーんぽーんぱーんぽーん↑。
コルディスダイのバエラーこと、マクギリフミヒロが、午後16時をお伝えいたします…はいメネちん後はよろしく』
『ああ、ありがとうマッキー。
…あー、あー、駄目だこの瞬間が一番緊張する…ダメだ、頭真っ白になりそう…気持ち悪い…おかしくなりそうだ』
『メネンデェェェェェス!しっかりやれー!』『一体何をしてやがる!!』『待ってるぞー!メネちーーーーん!』『メネンデェェェェェス!』『コルディスダ…『まだ早ぇよバカ』』『メネンデェェェェェス!』『最高のショーはまだかー!』『メネンデェェェェェス!!』『メネンデェェェェェス!』『メネンデェス!』
『あ、ああ…。
コルディスダイ!!!同志たちよ!世界はまだ変わる!!』
『うぉおおおおおおお!!!コルディスダーーーーイ!!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』『cordisdie!』
『ああ…何で皆そんなに発音良いんだ…』
「すっごい…RIの人達に負けないくらい。
でもちょっとメネンデェスって人、顔の割におとなしそうなんだね」
「まあメネちんだからな」
『あー、あー静粛に。えっと、もうこの演説何回目だっけ?そろそろ話題も無くなって来る。
…もうこの際自分の思い出話でもいいか。えっと、まあこれは3日前くらいの事なんだけど…ちょうど犬の散歩してたら道端にいい感じに育った野生のからし菜があったんだ。からし菜って、アレだよ、茹でると美味しい奴。その時は夕飯の献立は決めてないし冷蔵庫もすっからかんだった。だからおじいちゃんに教わった通りに食べ頃のからし菜を見分けて採取してたんだ。
それで…あんまりにも見事なぐらい食べ頃のからし菜が多くて…夢中になって…気が付いたら、用水路に右足から、ズボッ!って…』
『『『『『『wwwwwwwwwwwwww』』』』』』『メネちん最高www』
『ああ、ありがとう…滑ってたら立ち直れなかった。
取り合えず今日はここまでにしよう。前回より半分以上短いけどもう話すネタがない…次回は何かこう、20分は話せる内容持ってくるから――――解散!!』
『ぴーんぽーんぱーんぽーん↓。
以上、コルディスダイの時報でした』
「…なんか、エクハザールさんのオフの時のテンションを更に丸くしたような人だったなぁ』
「まあこの人ガンプラバトルでは本当に容赦ない事で有名だからな…無言で凄んだまま散弾砲ぶちまけてくるし」
「へえ。
ベルさんとの縁で戦うことってあるかな?」
「さあな…もしかするとメネちんも偶にはヴァルガ入りしてるかもしれないな。
……よし。時報も見終わった事だしサンクキングダムまでつっぱしるか!」
「勝てるの?カルが僕に」「うっせ!次は追い抜かしてやらぁ!」「じゃ、よーいどん!」「あ、ちょ、待て!!ちょっと待て!!」
二人はこのままサンクキングダムへと向かったのであった。
――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
◆ 陰我の夜、三度訪れたり ◆
――――――――――――――――――
――――――――――――――――――
「また仕事?
――――そっか、やっぱりか。それで場所は…………ハイハイ、いつものね」
暗闇の中、男は差し出された手紙をライターから噴き出す蒼く白い炎で燃やした。
すると燃え殻が空中に文字を作り出す…。
「…了解」
男は不敵に笑った。