深海共が最初に攻撃したトコは知っとるか?そう、アメリカとロシアや。沿岸部にドワー押し寄せて、軍港やら何やら滅茶苦茶にしよったんや。
そん時はまぁ何とか押し返したんやけど、運命っちゅうのはホンマ気紛れなもんで、ウチと両親はそれに巻き込まれてもうた。
父ちゃんがカリフォルニアで勤めとってな?遊びに行ってたんよ、母ちゃんと。まぁガキやったさかい、よぉ覚えとらへんケド。
んで、目が覚めた時はベッドの上。看護師が大騒ぎしとったわ。奇跡やー言うて。
父ちゃんなんぞ大泣きやったなァ。ありがとう、ありがとう言いながら。
さて本題はこっからや。
ウチは向こうで母ちゃんと両足を失ってもうてたんや。挙げ句丸々5年近く寝とったみたいで、時世も随分変化しとった。
海路空路と深海共に獲られかけ、世の中すっかりナイナイ尽くし。退院したら学校は一旦諦めて、働いてくれ言われたから、父ちゃんかなりキツかったんやと思う。
ただ戦中の、しかも押されとる時期の日本に、足も学も無い小娘が働ける場所なんぞ、な?
あん時は辛かったわぁ。父ちゃん笑とる顔に、もう無理って文字がしっかり浮かんどったから。借金もこさえとったみたいやし。
そんでウチが目覚めて一月くらいか?最悪の最悪、身体でも売るかぁなんて考えとったある日、ビシッとした服装の兄ちゃんが病室に入って来た。ソイツは海軍の技術将校で、ウチに新型艦娘のテストヘッドになるよう勧めてきよった。
勿論断ったで。何が艦娘や夢でも見とんかと。まだ日本への本土侵攻が無かった時やったし、何より怖いやん?突然戦争へ行け言われても。
それは父ちゃんも同じやったみたいで、よぉ兄ちゃんと揉めとったわ。
「このパンフレットだけでも!今、日本を救えるのは適正のある・・・」
「軍隊に大切な娘を送りたがる父親は居ませんよ。お引き取りを」
そら嬉しかったで。愛されとるって伝わるやん、こんなもん。
だからこそ、ウチは自分を呪ったわ。父ちゃん日に日に顔色悪くなっとったし、多分風呂にも入れてなかったわ。
んでな、こっそり聞いてみたんや。兄ちゃんがコソコソ来とるの知っとったからな。
「あの、艦娘になれば、給料貰えますか?」
「当然です。貴女達は国の宝、終戦後は豊な人生を送れるようになるでしょう」
「足を取り戻す事もできますよ。費用は全て軍が負担させていただきます」
「ちなみに入隊から任期満了まで、こちらが支払わせていただく給金を危険手当て込みで試算しますと・・・」
こんな話、受けな勿体ない思たわ。
だってそうやろ?車椅子とサヨナラ出来る。父ちゃんにマンション買うてやれる。良いコトだらけやん?
ウチは兄ちゃんから紙をふんだくって、自分の名前を書き殴った!さぁ、これでウチも艦娘や!
「未成年の方は、ご両親の承諾が必要ですので・・・」
結果だけで言うたら、見ての通りや。
まぁ、大喧嘩したケド。父ちゃんがあそこまで怒ったんは、後にも先にも無かったわ。
そりゃぁ、今なら解るで?親心とか、父ちゃんのプライドとか。子供はおらへんのやけど。
こん時仲直りせぇへんかったのは、今でも後悔しとるよ、ほんまに。
もしあん時、未来が見えていたら?何て、しょうも無い事をずっと考えとるよ。まぁきっと、出した答えも行き着く先も、きっと同じやと思うけどね。
もしもあの時なんてのは人生には無い。それでも、寝れん夜とかに考えてしまうんやから。
子供なだけかもしれんな、ウチが。