ウチは龍驤   作:瑞彩

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変化

勝利と生還の興奮も覚めんまま、帰還したウチら戦闘部隊は初めて尽くしの実戦なもんやから念入りな調査と整備を受けた後、二日間の休暇を貰ったんや。

 

「素晴らしい働きだったな!短いが休暇を用意した。存分に羽を伸ばしてくれたまえ。諸君、ご苦労でした」

 

司令官のおっちゃん、佐々木海将が満面の笑みとちょっとした小遣いを渡してくれてさ、いい気分だったもんや。

 

さてせっかくの休み、久しぶりに父ちゃんに会いたいなぁと思ったんやけど、よぉ考えると何処に住んどるか全然分からん。

 

と言うか日本に来て覚えとる場所が病院と鎮守府周りと海の上って年頃の娘としてはどうなんや?

 

とにかくこれじゃ動けんと困っとったらエグいスリットの入った艦娘の眼鏡の方…大淀に声を掛けられた。

 

「龍驤さん良いところに。今呼び出し掛けようと思ってたんですよ」

 

「は、はい!すみません!!」

 

「いえいえ!何でそんなビクビクしてるんですか?」

 

大淀はこの巨大な軍事施設、その上機密だらけの艦娘部門を取り仕切る事務局長なんやけど、あの司令長官に真正面から反論する女傑でもあったんや。

 

ちょっと問題のある艦娘が呼び出されたー思ったら別人みたいに静かになったり、こいつの前ではクセの強い睦月型がですます口調になったりと。

 

…ちょっとビビるやん!そんな相手にはさ?

 

「また駆逐隊の連中が何かしよりました?許して、許したって下さいよ…まだほんの子供ですやん…」

 

「いやいや何の事ですか?」

 

「え?また説教やないんですか?」

 

「違いますよ!一体私を何だと思ってるんですか!!大体またって!」

 

「すみません!!!」

 

「だからそう言うのを…もう良いですっ。それより龍驤さんに来客ですよ。随分と良い格好の」

「はぁ…誰やろ」

 

「ええと。木之下」

 

名前を聞き終わる前に、ウチは走り出した。後ろで大淀が走るなと怒鳴ったが無視や無視。

 

今思えば木之下姓の人間なんぞそこら中に居るんやけど、仕方ないやん。ほんまに久しぶりやったもん。

 

正面口を飛び出し、忘れようがない人影を前にして、息がつっかえて、やっとこ言葉が出てきたわ。

 

「お父さん!!」

 

ってな。

 

この話、続けなアカン?あんま良い思い出やないんよ。…そう?いやそんな真面目な顔せんといてセンセ、話す、話すって。

 

父ちゃんが運転する車ん中でウチはずっと喋っとった。楽しかった事、辛かった事。二艦の仲間達の事。統制されとる事以外、全部喋った気がするわ。

 

ウチがやんやん捲し立てるもんやから、父ちゃんはうんうん首を振るだけやった。

 

こん時、もっと色々な事が見えとれば、また違う未来があったかもしれんわ。いや、多分同じやったな。

 

ほんで到着した我が家はエライでかい一軒家やった。戦中とは思えんくらいに。

 

案内されるままリビングに行くとな、そりゃあ豪勢な食いもんが並べてあったわ。何とかちゅう海外のもんまでありよる。戦中やで?マトモな輸送なんぞ空路しか残っとらんのに。そらたまげたもんや。

 

「お父さん、これ、凄いね」

 

「お前のお陰だよ」

 

「私たちが硫黄島で勝ったから?」

 

「そうだよ。ありがとう」

 

「そっか…そっか!うん!」

 

静かすぎる?いやだって、さっきまでベラベラ喋りすぎたせいで急に冷静になってしまったんや。一人暮らしが長くなるといざ帰ったら親と会話弾まん言うやん?よぉ知らんけど。

 

それに、どうも気になってさぁ。

 

「家、凄いね。仕事調子良いの?」

 

余りにもこう、現実離れした空間ちゅうか。どうにも守府の執務室みたいな雰囲気でさ。色々変な感じがしてさ。

 

「お前が振り込んでくれた給料のお陰だよ。勿論全部じゃない。今では預金がそのまま手付かずさ」

 

「えっそうなの?ウチ…私そこまで貰ってないはずなのに」

 

「資金にするには充分だったのさ。お父さんの仕事覚えてるか?」

 

「金融会社…あっ」

 

「その通りだ。戦中は金の流れが極端だからね。しかも日本は今、その最前線にいる…簡単なものだよ」

 

「う、うん」

 

「そうだ、この際だからお前も勉強しておくと良い。寝る前の数分でもこれを読みなさい。基地の物資、コンテナを調べてみろ。恐らく…」

 

「あはは…」

 

こっからずっとこんな感じやったわ。別に悪い事やないで?むしろ嬉しかったもん。やっと父ちゃんに恩返しできた思ったし。

 

でも、でもさ?もっと足の事とか、色々さ?髪型だって全然違うのにさ?せめて、せめて一言、おかえりって言ってほしかったんや。ウチは。

 

すっごいご馳走食べてるはずなのに、全然味せぇへんかったもん。変よね、きっとウチが変わってしまってたんやな。

 

こっからの会話はよぉ覚えてないわ。次の世界の覇権とか、やれ物流から見た軍事作戦だの、どうでもええやろそんなもん。

 

なぁんか居心地悪くてなぁ。次ん日早々に出てったよ。当て付けに飯だけ作ってサ。背ぇちっこいから苦労したんやで?情けなくて涙出て来たわ。

 

ほんで玄関出たらエライ綺麗な姉ちゃんと入れ違ったんや。家政婦にしちゃあ洒落た格好やなぁなんて思っとったら声掛けられてん。

 

「娘さん…龍驤さんですか?お勤めご苦労様です。ご飯作りに来たんですが、一緒にどうですか?」

 

だってさ!笑っちゃうよね。なる程ねそう言う事!母ちゃんの写真無かったもんね!ウチが必死に戦っとった間にきっと色々あったんや。

まぁ男だもんね?しゃあないしゃあない。

 

そう、物事全部しゃあないんや。深海のドブネズミ共に襲われて母ちゃんが死んだのも、ウチが艦娘になったのも!ボロボロ泣きながら電車に乗って呉に向かってるのも!!こんな気分になるなら休みなんて欲しくなかったわ。

 

はぁヤメヤメこんな話。湿っぽくなっちゃった。あれかね?ウチが敵ぶっ殺して、血だの硝煙だの浴びまくって、そのせいで誰か分かんなくなっちゃったのかね。

しゃあない、しゃあない。

 

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