如何にして人生の墓場へと突き進んでしまったのか~byクリス・レッドフィールド~   作:とある一人の感染者

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それはifの物語

こんな幸せな物語もある。

そんなお話。




華麗なるゴリスの日常 [前編]

 

朝7∶00 起床

 

「………ゔぉ………あ………」

 

「おはよう、あなた♡」

 

ツヤツヤとしている妻に起こされる若干干乾びたクリス(45歳)。

それもその筈、昨夜というかほんの4時間ほど前まで絞りに絞られて、ラスボス前に残弾が尽きてリセットを考えるレベルにまで追い詰められた男の姿がそこにはあった。

ゲームのライフ表示にすれば真っ赤な心電図が映ることだろう。

 

そんな満身創痍になりながらも、夜の営みを頑張ってくれた夫の頬へ、愛おしそうに優しくキスをするリサ。

そして若々しい裸身の上にお気に入りである前日までクリスが着ていたワイシャツをそのまま羽織り、鼻歌を歌いながら寝室を後にする。

一人ベットに残されたクリスは、プルプルと震える腕を横にあるランプシェードの付いた棚に伸ばし、その上に置いてあったタブレットケースを掴み取った。

 

「…………ゴクリッ………死ぬかと思った」

 

そこからグリーンハーブのタブレットを十数個取り出し、そのまま飲み込むと、ようやく落ち着く。

ここ数年でこのタブレットのお世話になる回数や量が増え続けているのが目下の悩みである。

しかし、その原因である行為は止められない。

何故なら彼女が悲しむからだ。

 

「というより一服盛られるからなぁ………」

 

あの時に本当に淫魔という存在が居るという事を実感したクリスは、二度と彼女からのお誘いを断るという愚行をするまいと心に誓ったのだ。

下手するとバディのジルを失ったと勘違いし、ウェスカーを追いかけながら戦ったアフリカでの日々よりキツく感じてしまう。

それにあまり彼女を一人にしてはいけない。

長期に渡って家を空けるなんて、バイオハザードが発生したアンブレラの研究所より状況が酷くなる。

クリスの銃から弾を撃たせに撃たせ、バイアグラや食事と言う名のドーピングによるガンパウダー製造からの弾の生産までを一週間続けられたあの日々………

 

「…………………忘れよう」

 

頭を振ってベットから出るクリスは、思い出しそうになる日々を振り払うかのように無心でクローゼットからジーンズとTシャツ出し、それを着て寝室を後にした。

 

8∶00 朝食

 

「はい、どうぞ」

 

「いつもありがとうリサ」

 

「ふふ♪どう致しまして♪」

 

そんないつものやり取りをしつつ始まる朝食。

今日はカリカリに焼いたベーコンとスクランブルエッグ、そしてサラダというシンプルな物だ。

そこにバターを塗った程良い焦げ目の付きのトーストも追加でやってきた。

飲み物もリサが愛情を込めてブレンドしてくれた特製コーヒー。

こんな幸せがあっていいのか悩むクリスだが、目の前の食事に集中する。

愛しい妻が心を込めて作ってくれた食事なのだ、それに対して他の事を考えながら食べるだなんて失礼な事はしたくない。

 

日々の幸せに対しての感謝の祈りを捧げて食事を開始する。

フォークで刺したベーコンを齧ると滴る油が更なる食欲を唆ってきた。

そこにスクランブルエッグも一緒に食べると、卵のほんのりとした甘さが口に広がってなんとも言えないハーモニーを奏でてくれる。

口の中を空にしてサラダを口にすれば、それまで口の中に存在していた油っぽさが消えていくのが分かり、リサが最近手作りしているドレッシングソースのあっさりとした風味と香りが鼻を抜けて楽しませてくれる。

 

それはまるでグリーン、レッド、ブルーのハーブが組み合わさった最強のハーブを口にした時の清々しい心地良さを感じた時のようだ。

アレに勝るとも劣らないこの料理を作ってくれたリサには本当に感謝しかない。

 

「今日も美味しいよリサ。本当に君の作る料理を食べられる俺は幸せ者だよ」

 

「もう、そんな嬉しい事を言って………おかわりもあるからしっかり食べていってね?」

 

「ああ、頂くよ」

 

互いに笑みを浮かべながら進む食事。

朝からどこぞの警察署内にバラ撒かれる神経ガスのように、室内を覆う甘ったるい空間を形成する二人なのだが………これが毎日の出来事なのである。

成人して独り暮らしを自ら始めた、もしくは学校の寮に住むと言い出した子供達に二人は首を傾げていたのだが、これはムービー中に襲われるNPCの末路より簡単に想像できた事だろう。

想像しても欲しい。

朝から甘ったるい空気を吸わされ続ける子供達を。

相当ウンザリする事だろう。

それこそウスタナクやネメシスに何処までも追い続けられる位にはウンザリする事この上ない。

 

しかもこのゴリスとリサはその事に気が付いていないというのが致命的だろうか。

そんな感じで過ぎる朝食の時間は、まさにリア充爆発しろと言いたくなる空間であった。

 

9∶00 出勤

 

「それじゃ行ってくるよ」

 

「うん、行ってらっしゃい………ちゅっ」

 

「んっ………今日も定時で帰ってくる」

 

「うん、待ってる」

 

玄関から出て人目も気にせず互いに絡みつくように抱き合いながら、行ってきますのキスをリサにかまして出勤するゴリス。

周りの通勤通学で歩く人達はまるでドレインディモスに無理矢理口を開かれて、パラサイト状態にさせられたかのような表情を浮かべて足早にその場を後にする。

だがこのリア充、その事に全く気が付いていない。

 

そんな一騒動を起こしつつもここからBSAAの支部まで車で出勤する。

そして車に乗り込んだ瞬間、ゴリスの、いや、クリスの雰囲気が変わった。

それはBSAAとしてのクリス。

日夜バイオテロと戦う男としての姿。

愛する家族を守る為に絶対にテロを許さない最強の主人公へと切り替わる。

 

「………」

 

ムッツリとした表情を浮かべながら今日の会議での議題や、今後のテロで使用されるであろうBOWについて考える。

そこに一切の妥協はない。

苦手だった書類作成等も乗り越えて、家族の為ならば何処までも強くなれる父親の姿がそこにはあった。

こんなクリスに憧れて入隊したBSAAの隊員は数多く居る。

愛を知ったクリスの力強さ、そして何者にも曲げられない鉄の意志に惹かれた男達と共に今日もまたバイオテロを未然に防ぎ、潰していく。

部下からの信頼も厚く、日々をバイオテロ撲滅に捧げるクリス。

そんなクリスは知らない事だが、女性隊員から色んな意味で熱烈な視線を向けられている事はBSAAの公然の秘密である。

 

「………バイオテロを無くしてみせる」

 

車内でハンドルを壊さない程度に強く握るクリス。

妻の為に戦う、愛する人の為に強くなれる男という者は、どの時代においてもモテるらしい。

まぁ、その男の視界には妻しか映っていないので、女性隊員からの熱を持った視線に気が付いていないのだが。

 

このモードに入ったクリスに何人の女性が熱を感じ、そして涙を流したのか………

同僚で、バイオテロの被害者となり、金髪へとイメチェンした現在リハビリ中のジル・バレンタインはこう語った。

 

 

 

「確かに頼れる人よ彼は………仕事もこっちからするとやり過ぎって思える位にね。でも自慢の愛妻弁当をニコニコしながら開いて食べるからなんだか毒気を抜かれるわ」

 

 

 

ちなみに苦笑いを浮かべて肩を竦めながらそう言う彼女は、現在彼氏募集中である。

本人は何故かモテないのだと話すそうなのだが、同僚のクリスからすると

 

 

 

「周りからはオリジナルイレブンということもあって、高嶺の花のような印象を与えているのかもしれないな……ああ、これはジルには言わないでくれよ?」

 

 

 

という事らしい。

流石は任務中で長年バディを組んでいただけはある。

相棒の事は分かるようだ。

そんな蛇足は置いておき、クリスはBSAA支部へと到着する。

支部内に入るとすぐに建物内に居る隊員達から挨拶を受けた。

それに軽く手を振って返すと自身のオフィスへと向かい、昨日までに纏められたレポートに目を通していく。

どうやらこのレポートは、あのネオアンブレラ事件から昇進し、精鋭部隊の隊長となったピアーズと副隊長のフィンからの物らしい。

 

「……頼もしくなったものだな」

 

二人の活躍を記したレポートに頬を緩ませながらもしっかりと読み込んでいく。

思い返せば運命の分かれ道だったと思う。

あのネオアンブレラによる大規模バイオテロの始まりと言っても過言ではないリドニアの事件で、間一髪で落ちてくる鉄格子の外へと新人だったフィンを引き込んだクリス。

ちょうど監視していた重要参考人のエイダ・ウォンを見失い、クリスに報告しようと近寄った瞬間に、第六感が働いたクリスはフィンの襟首をタイラントが掴みあげるように握り締めて自分の後ろへと投げ捨てた為に生き残れたのだ。

 

その時にフィンは水平方向に5m程飛んで恐ろしい思いをしたらしい。

しかもクリスの馬鹿力で投げられた影響で足の骨に罅が入ってしまい身動きが取れず、そんなフィンを庇ったクリスがナパドゥに壁に叩きつけられ、何発も殴られて負傷し記憶喪失となってしまった。

そんな足手まとい二人を庇いながら救い出したピアーズは本当の英雄である。

 

そんなこんなで迎えた最終決戦。

海底プラントでのハオスとの激闘の最中、怪我から復帰して後詰めとして応援に来たフィンのC4爆弾による蛹の破壊や、応援物資として持ち込んだロケランなどによりネオアンブレラの切り札であるハオスは沈黙。

念には念を入れてリサを不老不死の呪縛から解き放つ為に開発したワクチンの失敗作である、始祖ウイルス系統の遺伝子を持つウイルスを死滅させるワクチンを投与して事件を終息へと導いた。

 

そんな二人にクリスは後を任せて前線から身を引いたのだが、二人は今も精鋭部隊を率いて活躍している。

こんなに誇らしい気持ちになれるのは、やはりあの時に頑張ったからだろう。

クリスは二人の活躍に今後も期待しながら、次のレポートを読み始めた。

 

12:00 昼食

 

「………ん?もうこんな時間か」

 

様々なレポートを読みながら、各地で起こるバイオテロの脅威に対しての対策を考えつつ書類の作成をしていると、ちょうど昼食の時間だ。

そろそろリサが持たせてくれたお弁当を味わう楽しみな時間がやってきた。

鞄から大きなランチBOXを取り出すクリス。

その目は何が入っているのか楽しみでしょうがないと言っている。

 

「今日は………おお!!」

 

今日のお弁当は分厚いハンバーグを挟んだハンバーガーが3個に、保温性のある容器に入ったチキンスープ。

そして今日も頑張ってねと書かれた愛する妻からのキスマーク付きのメッセージカードだ。

メッセージカードのキスマークに軽くキスしたクリスは、早速ハンバーガーを手に取った。

手に持つとズッシリとした重みを感じるハンバーガーは、冷えても美味しく食べられるように工夫されたリサの愛が籠もった一品。

そんな妻へ感謝の思いを込めて大きく開けた口で思い切り齧り付いた。

 

「……………あぁ………最高だ」

 

唇に付いたリサ手作りケチャップを、リッカーの様に舐めて口に含みながら何度も頷くクリス。

一口では足りないと何度も何度も齧り付いていると、あっという間に一つ目を食べきってしまった。

だがクリスは止まらない。

飢餓状態になったゾンビのようにすぐさま2個目も平らげてしまい、3個目も程なくして彼の胃袋へと収まってしまった。

後に残るのはチキンスープのみ。

チキンスープはアメリカのお袋の味と言われる家庭料理だ。

 

「うん、旨い」

 

容器の蓋を取って、一口飲めばクリスの頬がまた緩む。

この光景をもし宿敵ウェスカーが見ていたら、その場でサムライエッジを抜き、無言で全弾ブチ込むレベルであった程の緩み具合だ。

しかし、今のクリスの幸せな一時を邪魔する者は居ない。

愛する妻の愛情がたっっっっっっっぷり詰まった愛妻弁当を堪能したクリスは、とても幸せな気分の余韻に浸る。

 

「…………午後からも頑張れそうだ」

 

オフィスの窓から見える外を見ながらクリスはそう呟いた。

愛する家族を守る為に、午後からの職務もまた全力で取り組もう。

そう心に決めるクリスの顔は…………ウーズよりも弛んでいた。

 

 

後編へ続く…………

 

 

 




 
アフターストーリーが遅くなり、申し訳ないです。

私の矮小な想像力ではここまで時間が掛かってしまいました。

後編はもう少し時間がかかりますが、もうしばらくお待ち下さい。
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