黒の軌跡   作:八狐

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冤罪

ようやくホテルに帰ってこれた・・・。思えば今日は色々あった気がする。

 

Ⅶ組の彼らと鉢合わせしそうになったり、興味本位で砦に忍び込んで、大騒ぎになったり。

 

二つ目は私のせいではないけど・・・。

 

ホテルに入って、部屋に向かおうと歩き出した所で、足が止まる。

 

Ⅶ組(かれら)が居る。

 

同じ旅先なだけじゃなくて、同じ場所に泊まっている事に策謀的な何かを感じずには居られない。

 

あの変わり者男爵あたりが何か仕掛けたのか・・・それとも単なる女神様のいたずらなのか。

 

できる事ならあまり、彼らと関わり合いになりたくは無かった。

 

気配を消して密かに移動すれば、見つからずに行けるかもしれない。

 

月光蝶を使えば確実に行けるだろうが、一応は秘伝の技なのだから、こんな事にわざわざ使うのは憚られる。

 

そうと決まれば私は気配を消して、彼らの後ろを普段通りに、でも足音は立てずに動き始めた。

 

全員がフロントと話しているようで、こちらには全く気づいていない。

 

ただ一人を除いて。

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

なにやらメンバーの中でも、一際ちいさい少女が私の事を見ている。

 

お互い無言の時間が続く中で、私の方からコンタクトを試みてみる事にする。

 

人差し指を立てて口に持っていき、『静かに』というメッセージを送る。

 

少女からの反応は無く、またしばらく沈黙が続く。

 

時間の無駄であると判断した私は、自分の部屋に向かって再び歩きだす。

 

三歩ほど歩いた所でようやく、少女からの反応があった。

 

「なんか、怪しいのが居る」

 

私の作戦を台無しにしてくれました。

 

「怪しいの?」

 

「一体私のどこが、怪しいと?」

 

「普通は、ホテルで気配を消して動く人なんか居ない」

 

「いつかそれが普通になります」

 

「俺はそんな世界、嫌なんだが・・・」

 

「お久しぶりですね」

 

「あなたもお変わり無いようで安心しました」

 

 

思わぬアクシデントで私の存在がバレてしまったお陰で、私の存在が彼らに知られる事になってしまった。

 

僅かな気配に反応して、私を見つけた小さい少女。あの子が居なければ絶対にバレなかった筈だ。

 

現に、あの子が私の存在を知らせるまで、あの場に居た全員が気づかなかったのだから。

 

月光蝶を使っていないとはいえ、私の気配に気付いた彼女は何者なんだろうか・・・。

 

少なくとも、数年は実戦で経験を積んでいるだろう事は、間違いないと思う。

 

色々と想像を膨らませていると、いつの間にか部屋の前まで来ていたらしい。

 

部屋の前まで来ると何だかどっと疲れが出た気がする。

 

でも今日は道具を使ったから、日課の手入れを念入りにしなければいけない。

 

次の日にやれば良い、などと言って怠けていると、そういう癖が付いてしまう。

 

部屋に入ると、荷物の中から手入れ道具を出して、懐から小太刀を取り出し、私は徐に手入れを始めた。

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

───・・・・・・、・・・・・・。

 

───・・・・・・!

 

 

「・・・ん」

 

鳥のさえずりで目を覚まし、カーテンを開けると光が差し込んでくる。

 

テーブルの上を見ると、手入れ道具が散乱していて、途中で眠ってしまっていた事がわかる。

 

いつもの癖か、小太刀だけはしっかりと鞘に収まっている状態で置かれていた。

 

「・・・・・・とりあえず片付けよう」

 

 

久しぶりに夢を見たけど、内容が思い出せない。

 

どこか懐かしいけど、何故か息苦しくなる・・・そんな夢。

 

近頃は夢なんか見た事なかったはずなのに、ここ最近になってたまに見るようになった。

 

夢の内容はいつもあやふやで、誰かが喋っているというのはわかるけど、それ以外はぼんやりしていてハッキリとはわからない。

 

わからないものは、いくら考えた所でわからないのだから、私は気分を変える為に町にくりだした。

 

適当に町を散策していると、何やら人だかりが出来ている。

 

怒鳴り声も聞こえてくるから、喧嘩とかしているのかもしれない。

 

人だかりを掻き分けて前に出ると、そこにはリィン達Ⅶ組がいた。

 

「なぜマキアスを連れて行くんですか・・・罪状はなんですか!?」

 

ああ、また君達はそうやって問題に巻き込まれるのか・・・。

 

申し訳ないけど、今回私は関わっていないから関与はしない。

 

立ち去ろうと彼らに背を向けて歩き出すと、ある単語が聞こえてきた。

 

「不法に砦へ侵入した疑いが掛けられている」

 

私は思わず立ち止まった。

 

「俺達はずっと一緒に居た、マキアスはそんな事してません!」

 

「うるさいぞ!」

 

「何ならお前達も連行してやろうか、罪状ならいくらでも作れるぞ?」

 

「リィンさん、ここは一旦引き下がりましょう・・・」

 

「くっ・・・」

 

兵士がマキアスという緑髪の青年を連行していき、野次馬たちも普段の生活に戻っていった。

 

 

私を除いて。

 

 

砦に侵入したのは私だ。本来なら捕まえられるのは私のはずだが、顔を隠していたので私とは思わないだろう。

 

そしてもう一人の侵入者である、白い少女は顔こそ隠していなかったが、私と同じく所属も潜伏場所も不明。

 

そこで思いついたのが彼、マキアスを利用する方法だろう。

 

昨日話を聞いたところ、彼はレーグニッツ帝都知事の息子らしい。

 

彼を捕まえて、政治的に有利に立とうという算段なのかもしれない。

 

彼が捕まえられた原因は、私だけではないけど・・・原因となる一端を担ってしまった。

 

ここは後始末しておくべきだと思う。

 

私はケルディックのように、自ら近づいて彼らに声を掛けた。

 

 

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