黒の軌跡   作:八狐

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適性試験

私は部屋で荷解きをしていた。昨夜は色々とあり、あの後泣き疲れてそのまま寝てしまったのだ。本来なら旅行者である私は後で荷物を詰め直すのが面倒なために、あまり広く荷物は広げない。しかし、この部屋への定住が昨日決まってしまったので一旦、全ての荷物を広げる事にした。

 

「こんなに荷物を広げたのは久しぶり・・・かな?」

 

荷解きをどんどん進めていくと、お姉ちゃんからもらった日記が出てくる。・・・そういえばほとんど書いていなかった。今夜にでもまた1ページ埋めようと心に決め、私がそっと机に日記を置くと、部屋の扉をノックする音が聞えた。

 

「起きてる~?少し話があるんだけど、今良いかしら?」

 

(この声はサラさんか・・・昨日の今日で何の用だろう)

 

「大丈夫ですよ~」

 

「はぁーい。お、ちゃんと準備してるわね~」

 

「何の用ですか?」

 

「実はねぇ、あんたに適性試験があるのよ」

 

「適性?」

 

「そ。詳しくは学院で説明するから」

 

「あとコレ。あんたの制服ね」

 

「昨日決めたばかりなのに、もう制服があるんですか?」

 

「そんなわけないでしょ、コレは平民クラスの制服。後で注文して後日、正式な制服がくるわ」

 

「外で待ってるから、着れたら学院に行くわよ」

 

そう言ってサラさんは部屋の外に出て行った。まさか仮とはいえ、もう制服を着るとは思わなかったけど、見た感じ着られそうな感じだったので早速着替え始めた。

 

 

 

 

「それにしても中々様になってるじゃない?」

 

「茶化さないでください…それで、どこまで行くんですか?」

 

「なにやらどんどん薄暗いほうに進んでいるみたいですけど」

 

「こっちぐらいしかおあつらえ向きの場所がなくてねぇ。ほら、着いたわよ」

 

「・・・なんですか?この古びた建物」

 

「今の校舎は新校舎、こっちが旧校舎ね。さぁ、中に入った入った」

 

サラさんに言われて建物の中に入ると、外の外見と違わず、やはり中も暗かった。

 

「ここで試験をするわ」

 

「試験って、何をするんですか?・・・適性試験と言っていましたけど」

 

「この場所はね、何故か魔獣が住み着いてしまっているのよ」

 

「その魔獣を倒すのが試験と?」

 

「半分正解よ。今からARCUSの戦術リンクがちゃんと繋がるかをテストするわ」

 

「戦術リンク?」

 

「仲間とARCUSを通じて繋がり、仲間の一挙一動を見ることなく把握して、戦術的に有利に立ち回るシステムよ」

 

「説明するより実際に体験してもらったほうが良いでしょう」

 

「分かりました。それで、誰とテストをするんでしょうか?」

 

「決まってるでしょ?私とよ」

 

「・・・」

 

「あからさまに嫌そうな顔するわね、あんた・・・」

 

「いえ、大丈夫です。問題ありません」

 

「まぁ良いわ。これはあんたがうちのクラスに来てもらうためにも必要な試験なんだから、真面目にやるのよ?」

 

「分かっていますよ・・・」

 

 

 

 

「はっ!」

 

サラが魔獣に切りかかり、隙を作ると即座にルディが爆裂する暗器を投げつけ、魔獣を木っ端微塵に吹き飛ばす。ルディが前衛になると目にも留まらぬ速さで魔獣の群れを駆け抜けて通り抜け様に切り裂いていく。カマイタチのような攻撃に堪らず怯んだ魔獣に、すかさずサラは自慢の導力銃を乱れ撃ち、群れを一掃する。

 

「爆裂する暗器に、フィークラスの速さ。ただのお嬢さんには到底思えないわね?」

 

「ただのうら若き乙女ですよ?」

 

先に進んでいくとまたしても二人の行く手を魔獣の群れが阻む。今度はサラが突っ込み、雷の力を宿した剣を群れの中心で地面に突き刺す。すると剣から稲妻が迸り、サラの周囲にいる魔獣の体を焼いていく。放出が止まったころを見計らって、サラが飛び退るようにジャンプして銃を乱射して追撃する。完全に怯んだ魔獣の群れにルディがクラフトを発動した。

 

「斬!」

 

ルディが円を描くように群れを撫で斬りにすると、魔獣達は複数回斬られたようなダメージの受け方をして霧散する。群れが消えた後には、月輪のような残影が残っていた。

 

「お見事~。さすがにやるわね」

 

「戦術リンクって便利ですね」

 

「便利ってあんた・・・それだけ?」

 

「仲間の動きを見ないで済むだけですよね?」

 

「・・・まぁ今は別にそれでも良いわ」

 

「ほら、終点よ」

 

二人は大きな扉を潜ると、その先はかなり大きな広間になっていた。サラはルディに振り返り、手を広げて到着~とにこやかに宣言する。

 

「これでもう終わりですか?」

 

「あら、誰も終わりとは言ってないけど?」

 

そう言って剣と銃を構えるサラ。

 

「さぁ、二次試験を始めるわよ!」

 

「正直あんたの実力は未知数だわ。だからこそ、どの程度の力か把握しておきたいの」

 

「でもここまで見てきた限り、そこらのお嬢様の道楽ってレベルじゃなかった」

 

「というわけで、私もある程度本気でやらせてもらうから・・・」

 

サラは剣の切っ先をルディに向けて闘気を漲らせ、ルディにも武器を抜くように促す。

 

「あんたも少し本気で掛かってきなさい」

 

「分かりました」

 

そう言ってルディも獲物を取り出し、闘気を漲らせ、サラへとぶつける。

 

(少し手を抜くくらいで大丈夫か・・・?)

 

「準備は出来たみたいね。それじゃあ、いくわよ!」

 

サラが銃を数発撃ち込みながらルディに一気に近づいてくる。ルディはまず弾をその場から飛び退るように避けるが、その隙を突かれサラに懐まで攻め込まれてしまう。懐に潜り込んだ後もサラの攻撃はやまず、それだけならばまだ対応できるレベルだったが、サラは強化ブレードと導力銃の二つをルディに向けて動いており、ルディは常に剣と銃の二択を迫られていた。剣が動くかと思えば浅く斬りつけ、銃を撃ち込み、銃を撃ったかと思えば死角から剣が飛んでくる。

 

「っ!」

 

サラの力量を完全に見誤っていたルディは後手後手に回ってしまい、防御一辺倒になってしまっていた。しかし、彼女もただやられているわけではない。サラの動きに慣れてきたルディはサラの弾を弾きながら後退し、爆裂する暗器をサラの周囲に突き刺して爆破する。

 

「ちょっと・・・本気出しすぎじゃないですか?」

 

「普通の生徒相手なら過剰なくらいは出しているけど、しっかり対応出来てるじゃない?」

 

「・・・そっちがその気ならこっちもレベルを上げますよ!」

 

ルディは精神を集中させ、自分の中の気を練り上げるとそれを一気に開放する。すると彼女から金色のオーラのようなものが溢れ出し、彼女の周囲をその金色で埋め尽くした。

 

「東方の武術でいう気の開放って感じかしら?」

 

「さすがにその状態のあなたとやるのは分が悪いわね」

 

そういうとサラは高ぶった精神を落ち着かせ、闘気を研ぎ澄ませていくとその闘気を次の瞬間、すべて解き放つ。

 

「はぁぁ!」

 

サラのまわりを紫色の光が包み込み、彼女の体はまるで雷を纏ったかのようにバチバチとした闘気を纏っていた。

 

「これで条件は同じね」

 

「生徒相手にそこまで本気出すなんて・・・本当に教師ですか?」

 

「ええ、もちろん。それに生徒相手だからこそ、全力なのよ?」

 

お互い全く動かず、相手の一挙一動を見逃さないように相手を睨みつける。耳が痛いほどの静寂がしばらく続く。時間にして1分も立っていないのに、この時間が永遠のように長く感じる二人。このままずっと続くかに思われた静寂と均衡はルディによって崩された。

 

ルディはサラの目の前から消えると、こんどは側面に現れサラに攻撃をしかける。サラは初めからそこに彼女が現れるのが分かっていたかのようにバックステップで攻撃を避けて雷の力を込めた弾をルディに浴びせる。ルディは体に電流が走り、苦しそうな声をあげると、またその場から消えうせた。

 

「やるじゃない~?いつ入れ替わったのか全く分からなかったわ」

 

たった今消えたルディは、どうやら分け身だったらしく、本物のルディはどこかに隠れている。サラだけになった空間でサラの疑問に対する答えはなく、サラの声が山彦のように辺りに響き渡るだけだ。それでも彼女はルディが近くにいることを直感で感じ取っていた。

 

「隠れても無駄よ・・・そこね!」

 

サラが背後に向かって鋭い突きを繰り出すと、剣と剣がぶつかり合う音が響き、ルディがその姿を現した。

 

サラの突き出した剣の切っ先と、ルディの突き出した小太刀の先。二本の剣はその鋭い先端をピッタリと突き合わせ止まっていた。

 

「姿も見えない、気配も無い相手の攻撃を攻撃で止めるなんて・・・本当に人間ですか?」

 

「失礼しちゃうわね、ちゃんと人間よ?」

 

ルディがサラの剣を逸らし、再びサラに向けて剣を振るう。サラもルディに合わせて剣を振り、さらに至近距離で銃を撃つ。ルディの攻撃を防ぎながら剣と銃で嵐のように攻撃するサラと、銃弾を避け、叩き落しながらサラを攻撃するルディ。目にも留まらない速さで攻撃と防御が入れ替わり、剣と剣が交差し銃弾が飛び交う。

 

この二人はお互いの剣が届きあう、超至近距離で互角の戦いを繰り広げていた。その戦いはもはや普通の人間が理解できる次元を超えており、まさしく達人同士の戦いといえるだろう。

 

二人が剣と剣をぶつけ合わせた時に生じた強烈な衝撃で互いに後ろに押され、距離が離れるとコレで終わらせる。そう言わんばかりに二人は闘気を一気に開放し、大技を同時に放った。

 

「舞うは闇、詠うは月。眠れ・・・夜に惑う者よ・・・」

 

「はぁぁぁぁ!」

 

広間の中心で今まさに二人の大技がぶつかろうとしていた時だ。中心に謎の力が発生したかと思うと、見た事も無い3匹の魔獣が現れた。魔獣は二人を攻撃しようと動き出すが・・・。彼らはタイミングが悪かった。

 

 

「夢月!!!」

 

「オメガエクレール!!!」

 

 

二人の大技がぶつかり合い、辺りをとんでもない爆風が襲う。3匹の魔獣は攻撃は愚か、鳴き声すらあげることなく此の世から消え去った。

 

「まさかコレも対応されるとは思って無かったわ・・・」

 

「奥義も通用しないとは流石に予想して無かったです・・・」

 

「あなたの実力も何となく分かったし、今日はコレで終了よ」

 

「疲れました・・・」

 

「若いのにだらしないわねぇ」

 

「サラさんが本気だすからじゃないですか!」

 

「別にそこまで本気は出して無かったわよ?」

 

「最後の大技だって手加減したし」

 

「もう嫌ですこの人・・・」

 

「ほら、シャキッとしなさい!帰りに駅のカフェで何かご馳走するから」

 

「・・・コーヒー以外でお願いします」

 

 

こうしてルディの適性試験は無事終了した。しかし忘れてはならない・・・今日、此の世で最も運が悪かったであろう哀れな魔獣3匹が、誰にもその存在を知られる事なく此の世を去った事を。





ルディのクラフト


爆雷符 CP20 即死50%              威力B 範囲 単体
『爆裂するクナイを相手に投げ、息の根を止める』


月輪  CP25 遅延+25・崩し発生率20%      威力B 範囲 円M(地点指定)   
『剣を居合いの要領で抜刀、月を描くように駆け抜け一閃する』


影打ち CP40 駆動解除・遅延+20・崩し発生率50% 威力A 範囲 単体
『敵の背後に一瞬で回りこみ、急所を一撃する』


麒麟功 CP30 STR・SPD+50%(3ターン)          自己 補助
『気を高め、開放する事で爆発的に肉体を強化する』


月光蝶 CP35 SPD+50%(3ターン)・ステルス        自己 補助
『月明かりに紛れ、周囲と同化して完全に気配を消す』


Sクラフト

夢月 CP200 即死100%          威力SS+ 範囲 全体
『月影を舞い、敵を永遠の夢へと誘う』
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