黒の軌跡   作:八狐

17 / 25
普通の勉強

試験勉強。学生ならば、誰もが避けては通れない道だ。

 

それはⅦ組であろうと同じようで、クラスのみんなはあまり良い顔はしていない。暗記が得意な私としては、どうしてみんなが苦い顔をしているのか理解できなかったけど。

 

勉強が好きな人や得意な人は少数らしく、Ⅶ組で言うと、エマ委員長とマキアス副委員長がソレに当たるみたいだ。

 

クラスのみんなはそれぞれ自分が落ち着ける場所に向かっていき、教室にはリィンと私だけになった。

 

「みんな大変そうですね」

 

「俺達も負けずに勉強しないとな」

 

「勉強なんて日曜学校ぐらいでしかした事ありません・・・」

 

「その割には授業で当てられても、スラスラと答えていたんじゃないか?」

 

「アレは暗記しているだけですよ」

 

「暗記?」

 

「教科書の文章を暗記しました」

 

リィンは驚いたのか、それとも呆れているのか。どっちとも取れるような顔で困惑するような声を出している。

 

「勉強というのは、要は暗記ですよね?」

 

「結論を言ってしまえばそうなんだが・・・」

 

「暗記も勉強法の一つだけど、自分で問題を作って、それを解いたりとか同じ問題を反復して復習したり・・・」

 

「俺はいつもそうやって勉強しているよ」

 

「勉強・・・奥が深いです」

 

「人それぞれに様々な勉強法があるからな、コレを機に自分なりの勉強法を探してみたらどうだ?」

 

リィンにお礼を言って私は教室から退出する。他の人にも聞いてみようと思い、私は校舎を回って見ることにした。

 

 

勉強と言えばやはり図書館じゃないだろうか?そう思って何かヒントがないか探しに外に出る。図書館には【書】とあるように大量の本がある。その中に自分の欲しい答えがあるんじゃないかと、そう思って図書館に来たのだ。

 

受付の人に勉強法を記した本が無いか聞くと、どうやら貸し出しされているらしい。そういう本があるのは分かったが、結局は無駄足に終わってしまったみたいだ。

 

「あれルディじゃないかな?お~い」

 

声の方を見てみるとエリオットがこちらに手を振っていて、マキアスは椅子に座ったまま手をあげて自分の存在を私に教える。手を振って二人に近づくと、彼らの居る机の上には勉強道具が置かれていて先ほどまで二人で勉強していたであろうことが分かる。

 

「ルディも図書館で勉強?」

 

「勉強というか・・・勉強の勉強と言いますか・・・」

 

「なんだそれは・・・?」

 

「勉強法にどんなものがあるか探しているんですよ」

 

「勉強法の勉強ってこと・・・?」

 

「試験が間近に迫っているというのに、君は一体何を勉強しようとしているんだ・・・」

 

「私にとっては死活問題なんです」

 

「ふぅ・・・そうか、なら僕の勉強法でよければ教えよう」

 

「本当ですか!?」

 

マキアスの言う勉強法とは、何度も繰り返し問題を解き、問題を理解する・問題の答えがどうしてそうなったのかを理解する。この二つを重視して勉強をするそうだ。彼が言うには、「問題を理解し、その問題が行き着く先を理解すればおのずと答えが出る」らしい。

 

エリオットの方は詰め込み勉強といって、とにかく重要なキーワードや単語を覚えて、それに関連した文章の一部などを覚える方法のようだ。私の暗記と少し似ているかもしれない。

 

二人にお礼を言うと私は図書館を後にした。

 

 

「マキアスが教えるって言った時、なんだかルディが輝いて見えたよ・・・」

 

「ああ、僕もだ・・・勉強疲れかもしれないな・・・」

 

 

さて次は何処に行こう。そもそも勉強法が分かる場所というのは何処だろうか。図書館は結果的にはあたりだったのですが、それ以外と言うとやはり誰かに聞くのが一番かもしれない。クラスのみんなが居そうな場所を探してみようか・・・

 

「よう、そんなとこで突っ立って考え事か?」

 

「・・・えっ?あ、ごめんなさい」

 

「いや別に謝るこたーねぇだろ・・・」

 

「んで、なんか考え事か?よければ先輩が相談に乗ってやるぜ?」

 

先輩と名乗る目の前の人は緑色の制服を着て、白髪の頭にはヘアバンドのようなものをしていた。

 

「自分に合った勉強法が無いか探しているんです」

 

「勉強法・・・か。なんでまたそんなのを探す?」

 

「今まで普通の勉強をする機会が無かったので・・・経験してみたいなと」

 

「・・・勉強に普通も何もねぇと思うんだがな」

 

「・・・」

 

「わかったわかった、俺が教えんのは無理だが、知り合いに勉強が得意なやつが居る」

 

「そいつのとこに案内するから、後は自分で教わってくれや」

 

ジッと先輩の方を物欲しげな顔で見ていると、勉強専門の人の場所に連れて行ってくれると言う。そういう知り合いがさらっと居るあたり、流石は先輩といった所だろう。ついてこいと言うように歩き出した先輩の後ろを追いかけるように自分も歩き始めた。

 

 

 

────────────────────────────────────────────

 

 

 

「つーわけでだ、このお嬢さんに勉強を教えてやってくれや」

 

「うん、良いよ!」

 

生徒会室に連れて行かれたと思えば、いきなり勉強を教えてくれと入っていく。そしてあっさりとそれを了承する生徒会長。生徒会ってこんなにてきとうな場所で良いんだろうか・・・。

 

「そんじゃ、後はよろしく・・・」

 

「何を言ってるのかなクロウ君?」

 

「俺の役目はお嬢ちゃんをここに連れてくるまでのはずだぜ?」

 

「クロウ君、たしか今回の試験で赤点取ると不味いんだよね?」

 

「・・・」

 

「まさか忘れてたわけじゃないよね?」

 

「い、いやいや!ちゃんと覚えてたぜ!」

 

「ついでだからここで一緒に勉強しよ?」

 

「自分の部屋でやるから遠慮しとくぜ、そんじゃあばよ!」

 

「アンちゃん、捕まえて」

 

「任せたまえ」

 

先輩が扉を開けて走り去ろうとするが、扉を開けた先にはいつから待機していたのか、黒いライダースーツを着た女の人が待ち構えていた。彼女は先輩の腕を掴むと間接を極めてギチギチと音を鳴らしながら腕を締め上げていく。

 

「いででででで!ゼリカおまえいつから・・・!?」

 

「トワからクロウを見つけてつれて来るよう言われてね」

 

「見つけて後を付けたら、案の定というわけだ」

 

「二人が来る少し前に、アンちゃんから連絡があったの」

 

「筒抜けってわけかよ・・・ちくしょう」

 

「・・・ぷっ、ふふふ・・・」

 

「クロウ君ももっとしっかりしないと。ほら、後輩の子に笑われちゃってるよ?」

 

「すいません・・・なんだか先輩方のやり取りが面白くて」

 

「まぁ・・・気心が知れた仲だしな」

 

「我々は学院に入ってからずっと同じグループで活動していたからね」

 

「うん、だから遠慮が無いのかもしれないね」

 

「・・・さて、昔話も良いが俺はもう行く・・・」

 

 

「何処に」

 

「行くというんだい?」

 

会長がそう言うと、黒い女の人が扉を閉め部屋を外界から隔離する。空気の出入りが無くなったこの部屋には先まで漂っていなかった威圧感のようなものが漂い始め、それは主に会長から発せられている事がわかった。後ろで扉の前に立ちふさがっている女性は威圧感こそ会長には及ばないものの、見ている感じ隙を見つけられない。

 

私が勉強について教えて欲しいなどと言わなければ、こんな事にはならなかったかも知れない。しかし会長と黒の女性は何が何でも先輩に勉強をさせようと探し回っていたようだから、結局はここにつれて来られて勉強をさせられていただろう。つまり、最初から詰んでいたというわけだ。

 

青ざめた顔をして会長と後ろの扉を交互に見る先輩。かわいそうだけど、先輩には勉強をする事でしかこの場を切り抜ける方法が無い。なによりこの会長・・・

 

 

「さぁ、勉強の時間だよ」

 

 

学生でありながらサラさんクラスの威圧感を笑顔のまま出せる時点で、私は先輩に同情するという考えを捨てた。

 

 




6月15日

試験前日ということもあり、クラスのみんなだけでなく、学校中が勉強ムードになっていて何処に行っても勉強をしている人が居た。
私もみんなに倣って自分なりに勉強をしてみようと図書館に行ってみたりもしたけど、あまりいい成果は得られなかった。
どうしたものかと悩んでいたときに声をかけてくれたのがクロウ先輩だ。先輩に連れられて生徒会室に行くと、先輩達の嵐のようなやりとりに思わず笑ってしまった。
その後は先輩と私の二人が会長に教わっていたけど、気づけば途中から私も先輩の勉強を見てあげていた。先輩は「後輩に教えてもらうなんて・・・」とぼやいていたけれど。

                                Rudy Mao
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告