Ⅶ組の者達は慣れない時間に起床し、寝ぼけ眼で身支度を進める。朝食の支度が出来たということなのでガイウスが起こしに着てくれたようだ。昨日の夕食を食べたテントに向かう。
「このニオイは・・・?」
「甘い香りがするわね・・・。」
「今日の朝食は妹たちが手伝ってくれたようだ。」
「なかなか出来た妹たちのようだな。」
Ⅶ組のメンバーがテントに近づくに連れて香ってくる料理の優しいニオイの話題に始まり、ガイウスの妹の話をしながら歩く。1分もかからない移動距離だが、それでも話は弾み、彼らは顔に笑顔を浮かべる。
「そういえば・・・ルディさんはどうしたのでしょうか?」
「ルディなら集落を見て回っていた所を見つけて、先にテントに向かうように伝えておいた。」
「元気ね・・・。わたしはまだちょっと眠いわ。」
テントの中に入るとラカン、ファトマ、そしてシーダたちとルディが居た。全員揃うまで食事をしないのが決まりなのか、まだ誰一人食事を始めている者はいない。
「おはようございます、みなさん。」
夜中に駆け回った疲労など残っていないかのような笑みを浮かべ、Ⅶ組に挨拶をするルディ。それに対して各々あいさつを述べると席に座る。食事がよそられるまでの間、気になったアリサがルディに眠気は無いのかという質問をすると・・・。
「眠気は無いです。」
「あれ?でも昨夜、どこかに行きませんでしたか?」
「実は寝付けなくて・・・。少し外の空気を吸ってました。」
「え、でもしばらく戻ってきませんでしたよ?」
「ついでに散歩でもしようかと・・・。」
「・・・寝たのはいつなの?」
エマから始まり、アリサに問い詰められて引け腰になりつつ、ルディが答えた時間は・・・。
「1時ぃ!?」
「は、はい・・・。」
「私達がベッドに入ったのは10時よ!?」
「そ、そうでしたっけ・・・?」
「それから3時間も散歩してたってこと!?」
「そう・・・なります・・・ね?」
「はぁ・・・。よくそれで眠くないわね。」
「あ、あはは・・・。」
騒がしくも食事は進んでいき、食事を終えて食器が片付けられると、ラカンが封筒を取り出す。
「あれ・・・。なんだか少ないような・・・。」
「ノルドは広い。こんかい初めて訪れた君達にあまり負担をかけない様、午前と午後にわけた。」
「つまり、これが午前の分というわけか。」
「そういうことだ。昼には一度ここに戻ってきてくれ。
やる気に満ち溢れたⅦ組の面々はラカンに元気な返事を返す。ガイウスが『父さん、行ってくるよ。』と言うと、ラカンは力強く頷き、見送ってくれた。
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最初の課題は流行り病を治療する花の採取だ。ガイウスが言うには黄色い花が目印の草花ということで、全員で手分けして採取していく事にした。リィンとガイウス、アリサとエマ、ユーシスとルディ。それぞれ二人ずつに分かれて効率よく探していた。
「黄色い花、黄色い花・・・。」
「む、アレではないか?」
「あ、確かにそれっぽいです。」
「しかしあれでは採取する事はできんな。」
ユーシスが指を刺す方向・・・。山から出っ張った場所に生える黄色い花。まさしく彼らが探していたエポナ草と呼ばれる薬草だった。しかし目当ての花は切り立った崖のような場所にある出っ張りに生えていて、とてもではないが人の手で採取する事は不可能だ。
「面倒だが、別な花を探すぞ。」
「・・・。いえ、行けるかも知れません。」
「なに・・・?」
ルディが袖の中から暗器を取り出し、扇のように広げたかと思うと、目の前の岩山めがけて投擲した。突然何をしだしたのか困惑するユーシスを放置して、山肌に突き刺さった暗器を足場にして飛び上がっていく。
「お、おい!何をして・・・!?」
気づけば黄色い花を採取して、したり顔でユーシスを見下ろすルディが崖の上に立っていた。
「エポナ草ゲットですね。」
「・・・話には聞いていたが、まさかここまで規格外とはな。」
「まぁいい。落ち着いて降りくるがいい。」
「・・・。」
「・・・?どうした。」
「いえ・・・。この岩肌に刺さったヤツ、どうしようかと思いまして・・・。」
「・・・。」
ユーシスが呆れ顔で上を見上げ、思案顔で岩肌に突き刺さる暗器を見るルディ。他のメンバーも花を見つけて無事に5つ採取する事に成功し、その後合流して報告に向かった。
「あ、引き抜きながら降りれば・・・。」
「間違いなく危険だからやめておけ・・・。」
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その後は監視塔に集落からの荷物を届ける事になっていたが、リィンの後ろに居るルディの顔は微妙な顔をしている。昨夜、監視塔でちょっとした事があったために、自分から向かうのはあまり良い気分ではなかったのだ。それでも実習の課題があるので行かなければならない。あの時に
「ふぁ~・・・。暇だねぇ~。」
「すいません、あなたがザッツさんですか?」
「いかにも俺がザッツだが。」
リィンが話しかけたザッツという兵士。彼の声は昨夜の兵士と同じ声だった。上手く彼が忘れていてくれることを願ってリィンを見守る。荷物を渡すと、どうやら心待ちにしていたようでザッツはとても喜んでいた。
「そうだ、せっかく君らも実習でここまで来たわけなんだし・・。よければ見張り台からの景色を見ていかないか?」
「いいんですか?」
「ああ。ゼクス中将からも便宜を図るように言われているからね、遠慮せずに付いてきてくれ。」
「ありがとうございます!」
ザッツの後を付いて行くと周囲の岩山と同程度の高さの見張り台に上がらせてもらえた。そこからの景色ははるか遠くの山も見えるが、それと同時に高原に似つかわしくない軍事基地のようなものが遠くに見えた。間違いなく共和国の基地だろう。遠目にしか分からないがいくつか戦車や飛行艇があるようで、こちらに何か動きがあれば即座に対応できるようにしているのは明らかだ。
一通り見て気が済んだのか、再びザッツの先導で見張り台から降りていくⅦ組。ザッツからキルテさんへのお返しだという帝国のワインを受け取り、Ⅶ組は見張り台を後にする。
「ところでお嬢ちゃん。」
誰に向けてでもなくザッツが呼びかけるが、ルディ以外のみんなは聞えなかったのかスタスタと歩いていってしまう。仕方なく彼女は立ち止まると、ザッツに向き直った。
「なんでしょうか?」
この兵士は間違いなく覚えている。そうルディは確信してどう誤魔化すかを考えていると、兵士はニヤリと笑って口を開いた。
「あんまし夜更かしすんなよ?」
自分の能力や素性などを聞かれると思って身構えていたルディは驚いた。この兵士は黙っていてくれるようで、『ほら、置いてかれるぞ?』と何食わぬ顔で言う。そんなザッツに対して『あなたが引きとめたんじゃないですか・・・。』と憎まれ口を叩いて監視塔を後にする。
ルディがみんなに追いつくと既に馬に乗っていて、彼女を待っていてくれたようだ。
「よし、全員揃ったな。」
「遅れて申し訳ないです。」
「大丈夫よ、別に時間に余裕がないわけじゃないし。」
「ああ、昼までにはまだ時間がある。問題ない。」
「次はゼンダー門のゼクス中将の課題だったな。」
ルディがリィンの後ろに乗ると、すぐにⅦ組のメンバーはゼンダー門に向かって馬を走らせる。その後ゼクス中将に話を聞きに行ったのだが、気づけば手配魔獣が消えていて影も形もなかったそうだ。このままでは危険と判断したゼクス中将はⅦ組に魔獣の捜索と討伐を依頼したが・・・。
「あの・・・。」
「む、何か質問かね?」
「それって魚のような魔獣ですか・・・?」
「そのとおり。電気を操り、周囲に放電現象を起こす危険な魔獣だ。」
「・・・えっと。昨日、私が倒してしまったかもしれません・・・。」
ルディの挙手から始まり、空気が凍りつくような爆弾発言が飛び出す。全員が、は?と言うような顔でルディを見つめる中、彼女は昨日の散歩をしている最中に放電する魔獣と戦ったと言う。そしてそれは大きな魚のような魔獣だったようだ。
「ふむ・・・。」
ゼクス中将はⅦ組のメンバーを改めて見渡し、こう言った。
「諸君は全員が同じくらいの強さなのかね?」
『違います!』
原因を作った当事者を除く、全員の心が一つとなった瞬間であった。