ベッドから起き出して下の酒場に行くと、いつもと何か様子が違う。ルディと一緒に酒場で働いているルイセが、マゴットと何か話しているようだ。
「また大市で揉め事が起きた見たいです!でも今度は領邦軍が止めに来てくれたみたいですね」
「領邦軍ねぇ・・・面倒な事にならないといいけど」
(事件が公になったみたい。でも領邦軍が止めに来た・・・?)
事件の真相を大分深いところまで知っているルディには、領邦軍が騒ぎを止めに来た事が奇妙に思えてならない。止めに来るメリットが無いのだ。
大市で騒ぎを起させて何かをしようとしているのは既にわかっている。もし止めに来たわけではないとすれば・・・。
(・・・様子見?)
とりあえず、自分も現場を見ておこうとルディは急ぎ足で大市へ向かった。
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大市へ着くと既に騒ぎは一旦落ち着いたようで、少し遅れながらも大市は開かれていた。
まず目を惹かれたのが正面にある、壊された店だ。商品が置かれる筈だったであろう棚が目も宛てられないほど、めちゃくちゃになっている。
(これは酷いですね・・・ここまでする必要は無かったのでは・・・)
ここに帝都の商人が居ないということは、彼は奥に居るのだろう。ルディが帝都の商人の様子を見に奥へ向かうと、Ⅶ組の面々が聞き込みをしていた。
「なるほど、犯人は見ていないと言う事ですね」
「ああ、そうだ。・・・はぁ、帝都から来て
ようやく噂に名高いケルディック大市に店を出せたと言うのに・・・」
「今、私には商品サンプルひとつしかない・・・」
「あの・・・よろしければサンプルをお見せしてもらえませんか?」
「・・・これだよ」
(あれは確か・・・管理員が持ち去ったいくつかの荷の中にあった物・・・)
(やはり彼らが犯人で間違い無いようですね)
(しかし、何故彼らが聞き込みをしているんでしょうか?)
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「やはり、どちらも犯人とは思えないな・・・」
「犯人は別に居ると、考えた方がいいわね」
「でも一体誰が・・・」
「・・・これまでの行動に説明がつかない人たちが居ないか?」
「彼らが何故そんな行動を取ったのか・・・そこに何らかの意図がある気がする」
「そ、そんな人たちが・・・?」
「ああ、それは・・・・・・・・・領邦軍のことだよ」
「彼らはこんな事件が起きたのにロクに調査もしていない
それは一体どうしてだった?」
「元締め御老人の話では、増税取り下げの陳情を
出したのがそれらの原因だという話だったな」
「そのせいで、大市の喧嘩の仲裁にも一切来ないと聞いた」
「・・・だったら何で今朝は仲裁に来たんだ?」
「言われてみれば・・・!」
「無視しているのかしていないのか、ちぐはぐだね」
「お見事ですね」
「え?」
気配を消し、彼らの推理をこっそりと聴いていたルディが、彼らに歩み寄り話しかける。
今の今までルディの存在に気づかなかったようで、四人は驚いた顔を見せた。
「あなたは確か・・・」
「酒場でお会いしましたね。ルディと言います」
「私達の話を聞いていたんですか?」
「ええ、聴かせていただきました」
「ははは・・・拙い推理ですけど」
「詰所に行くのでしたら、私も一緒にいって良いですか?」
「構わぬが、理由を聞いてよいだろうか?」
「・・・今回の事件、私は盗人の存在について調べていたら
領邦軍の名前が出たんです」
「えぇ!?領邦軍が・・・」
「はい。折角同じことを調べている方々が居るのですから
そちらがよろしければ、協力して調査できればと」
「・・・・・・・・・わかりました。では一緒に行きましょう」
「では、まず私の持っている情報を」
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「お前達は確か士官学院の生徒だったな」
「今日は何の用だ?」
「お忙しいところをすいません・・・。
今朝の大市の事件について、お話を聞かせて
いただけませんか?」
「何・・・?」
「部外者のお前達に何の関係があるんだ?」
「我々は特別実習でこの町を訪れている」
「トールズ士官学院の生徒として、軍の先輩方
の仕事について勉強する機会を頂きたい・・・・・・」
「そういった理由では駄目だろうか?」
「む・・・」
「ふぅ・・・わかった。
少し待っていろ。」
「だがそこのお前は駄目だ。
士官学院の生徒でもない、唯の旅行者だからな」
「このまま紛れていれば誤魔化せるかと思ったんですが・・・。
仕方ありません。みなさんでお話を聞いてきて下さいな」
「こんな事になってしまって、ごめんなさい・・・」
ルディは素直にその場を立ち去り、別行動を取る事にした。彼女も彼女で少し調べたい事があった。それは、犯人の潜伏場所だ。
昨晩、彼女が犯人を最後に見た場所はルナリア自然公園。あの場から移動していないという事は考えにくい。
彼女は少し早足で、ルナリア自然公園へと向かった。
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自然公園の前へとたどり着くと、隠形を解いてルディが姿をあらわす。
「・・・錠の使い方を間違えていますね」
門には立派な南京錠が掛けられていた。ただし、逆側・・・門の内側に。
南京錠が正しく使われていれば、針金の類で開錠することも出来る。しかし、内側から掛けられたのでは、その方法は使えない。
「まったく・・・面倒極まりないですね」
そういって門に近づき、門の前に立つと・・・。
「ふっ!」
彼女は門を軽々と飛び越え、門の向こうに着地した。
「さて・・・彼らが大人しくここに居てくれると良いんですが・・・あ」
「ここに犯人が居るは・・・ず?」
門の内と外。ルディとリィン。ふたりの目が合ってしまう。
「・・・おかえりなさい、お話の方はどうでしたか?」
「じ、実はですね・・・やはり領邦軍が今回、間接的にですが
関わっていそうです」
「やはりですか・・・」
「・・・ルディさん。何か抜け道でも使ったんですか?」
「いいえ?普通に入っただけですよ」
「普通にというのは?」
「門を飛び越えて」
「それは一般的に普通とは言いません!」
このままではリィン達が入れないので、ルディは仕方なく、南京錠を針金でこじ開けた。
「外れましたよ」
「まだ、ほんの少ししか一緒に居ないのに・・・。
ルディさんには驚かされてばかりだね」
「ふふ・・・自分に出来る範囲の事しかできませんけどね」
「随分と出来る範囲が広いわね・・・。
門を飛び越えられるし、鍵開けは出来るし」
「私が聞いた話では、東方の武術も使うそうだが」
「一体何者なんですかルディさん・・・」
「唯の旅行好きな一般人です」
『絶対違うと思う』