黒の軌跡   作:八狐

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別れの夕日

駆けつけた領邦軍は、すばやい動きで犯人を囲みこんだ。

しかし、彼らが囲んだのは・・・。

 

 

リィン達だった。

 

「・・・なぜ、彼らではなく我らを囲むのかな?」

 

「だまれ!」

 

「大人しくしろ」

 

「たしかに、盗品もあるようだが・・・。

 彼らがやったと言う証拠はあるまい」

 

「可能性で言うならば、お前達が犯人という事も

 考えられるのではないか?」

 

「そこまで我らを愚弄するか・・・!」

 

領地を守る役目を担う領邦軍は、犯人達と共謀していた。犯人達が問題を起こし、領邦軍がそれを見て見ぬ振りをする。

もし、彼らⅦ組がケルディックに来ていなければ、町の陳情が取り下げられていたかもしれない。

 

領邦軍にとって既に、彼らは後輩や学生ではなく唯の邪魔者だ。

 

そんな彼らを領邦軍が放置しておくはずが無かった。

 

 

(どうする・・・どうすればこの状況を何とかできる?)

 

リィンが打開策を見つけようと周囲を見渡す。彼は、そこで異変に気づいた。

 

(ルディさんが居ない!?)

 

先ほどまで居たルディが居ないのだ。周囲を探しても、いくら気配を探っても見つからない。

彼女は完全にそこから消えていた。

 

(彼が気づきましたね)

 

ルディは遥か上から、リィン達を見下ろしている。

 

(誰か一人でも逃れていれば、後のフォローが出来ますから・・・)

 

(悪く思わないでくださいな)

 

彼女は上からしばらく状況を見守り、切り抜けられなそうならば、何らかの手段で彼らを助け出すつもりだった。

しかし、状況はどんどん悪くなっていく・・・このままでは適当な理由をつけて、捕まえられてしまうだろう。

もう無理と判断して、ルディが飛び出して助けようとする。

 

「そこまでです」

 

その時、凛とした声が響き渡った。

 

 

 

 

 

_______________________________________________________________________

 

 

 

 

 

「お時間を取らせてしまい、申し訳ありません」

 

「いえ、気にしないでください」

 

「こちらこそ、危ないところを助けていただいて・・・」

 

「そういえば、危ないところって言えば・・・」

 

「誰か居ない様な・・・?」

 

「居ない?

 みなさんは四人では無いのですか?」

 

「ええ・・・俺達は四人なんですが・・・。

 途中で一緒に調査することになった、ルディと言う人が・・・」

 

「気づいたら消えていたんです」

 

「ほんと、どこへ行ったんだか・・・」

 

「呼びました?」

 

「ひゃあ!?」

 

突然、アリサの後ろにルディが現れ、彼女の耳元でささやく様に声を掛けると、アリサは余程驚いたのか飛び退るようにルディから離れた。

 

「なななな・・・何なのよ!?」

 

「どうやって現れたのだ?

 まったく気配を感じられなかったぞ」

 

「ああ、消えた時と同じだ。

 まったく、その気配を感じ取れなかった」

 

「皆さんの反応から推測すると、あなたがルディさんですね?」

 

「ええ、初めまして大尉さん」

 

「自己紹介は必要無いようですね」

 

「もう少し早く現れてくださったら、あなたも調書作成に

 参加していただいたのですが」

 

「それは残念です」

 

「次の機会にはぜひ、協力していただきたいですね」

 

「では、まだ仕事が残っているので、これで失礼します」

 

「今日はありがとうございました」

 

「いえ、もしかしたら余計な事だったのかも知れません」

 

「あのような事態も含めて、特別実習だったと思いますから」

 

 

「さすがにそこまでは、考えてなかったけどね」

 

 

「サラ教官!」

 

「サラさん・・・」

 

「久しぶりね、半年振りぐらいかしら?」

 

「・・・そうですね、お久しぶりです」

 

「あんたがココに来ているって事は・・・。

 全部お見通しだったってわけ?」

 

「あくまで状況に対応するために動いているだけです」

 

「それに、すべてお見通しというのは買い被りですよ」

 

「ある情報筋からの連絡が無ければ、気づけませんでした」

 

「あんたの兄弟筋あたりが知らせたんでしょう。

 随分と抜かり無く立ち回っているようで」

 

「そろそろ、私達は失礼します」

 

「特科クラスⅦ組・・・・・・

 私も応援させていただきますね」

 

クレア大尉は部下を伴って、駅の構内に入っていった。

 

(クレア・リーヴェルト)

 

(通称、氷の処女・・・か)

 

(何気ないちょっとした会話だったけど、こちらを探るような目をしてた)

 

(少しでも隙を見せると、私も危ないかも知れない)

 

「ところでそっちのお嬢さんは?」

 

「今回の事件解決を手伝ってくれた、ルディさんです」

 

「初めまして、教官さん。

 ルディ・マオと言います、酒場で臨時ウェイトレスをさせてもらってます」

 

「・・・そういえば、酒場で働いてたわね。

 サラ・バレスタインよ、この子達の教官をさせてもらっているわ」

 

「それで、この娘はどんな活躍をしてくれたのかしら?」

 

「それはもう、色々と助けてもらいました」

 

「別な情報を提供してもらったり・・・」

 

「公園に掛かった南京錠を外したりとか」

 

「別行動していた犯人グループを捕まえてくれもしたな」

 

「俺を魔獣の攻撃から庇ってくれたりもしました」

 

 

「・・・・・・なるほどね」

 

「そこのお嬢さんが、ただのウェイトレスじゃないってことがわかったわ・・・」

 

「とんでもないです!」

 

「私は酒場で働いている、タダのウェイトレスですよ?」

 

 

『絶対嘘だ!』

 

 

「・・・・・・息ぴったりね」

 

 

「・・・・・・行っちゃいましたね」

 

リィン達を乗せたトリスタ行きの列車が発車し、それを見守るルディ。

 

燃える様な夕日の光を受け、その光に後押しされるかのようにスピードをあげる列車。

 

列車はあっという間に見えなくなり、その場に残されたのは一人の少女だけ。

 

夕日に照らされ歩く少女の姿は、どこか寂しそうに見えた。

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