換骨奪胎   作:メラニンEX

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ここからは完全オリジナルのお仕事編です。涼利が依頼された仕事の話を4つか5つやって、そのあと過去編、それから渋谷事変の予定。


お仕事編 郡上涼利と新たなる3人の居候
第一話「むしかんなぎ 上」


2014年1月某日。

 

 

 

細かい雨が、けぶるように降っている。真冬の最中なのに、雪にはなり損ねたように冷たいそれは、相変わらず液体のまましとしとと音を立てて、道ゆく人々の差す傘や服や、あるいは頭上に掲げたカバンを濡らしている。今はまだ正午を過ぎて間もない頃なので、もうあと何時間かして更に冷え込みが激しくなれば、雪に変わるかもしれない。そんな予感を感じさせる、恐ろしく寒い雨だった。

 

 

少女は傘を持ってくればよかったな、と後悔しながらバスのロータリーの中で屋根を叩く雨粒を眺めていた。あともう少ししたら来るバスに乗って最寄りのバス停に着いたとしても、そこから更に家までは距離がある。この季節の雨に打たれて帰るのはかなり嫌だった。普段なら我慢できたのかもしれないが、今は一年間の苦行がやっと終わって疲れているところなのだ。駅中のコンビニでビニール傘を買って帰るか、母親に連絡をしようか少女は迷った。振り返って、ロータリーと隣接している私鉄の駅を見れば、少女のような受験終わりの子供を迎えに来たのであろう親らしき人がぽつぽつと立っている。

 

少女の母親は専業主婦なので頼めば迎えに来てくれるのだろうが、何となく少女は自分の傘が壊れかけていたことを思い出して、コンビニに足を向けた。ウィーン、と音を立てて自動ドアが開き、中の暖まった空気が流れ込んでくる。コンビニのどこかで聞いたようなポップスをBGMに、背後の会話のいくつかが少女の耳に届く。

 

「ウチの子大丈夫かしらねぇ………」

「なかなか来ないんだけど」

「あっ、やっと出た!ちゃんと連絡してって言ってるでしょ!」

 

などなど。そう言う心配と高揚と、その他色んなものが混じった声は、コンビニを出ても減るどころか、時間が経つにつれて少しずつ増えてすらいた。そのざわざわとした音の群れは、コンクリート造の駅のなかを白い呼気とともに薄ぼんやりとした形を成しているようにも見える。

 

少女が、買った傘のビニールをぺりぺりと爪で引っ掻いて剥がしていたところで、またすこし種類の違うざわめきが大きくなった。その声に視線を上げれば、一台のバスがちょうど着いたところだった。

ぷしゅう、とため息のような音とともに、一段と濃い白でバスの周りの空気が濁る。

 

バスから降りてきた受験終わりの中学生たちは、みな少女と同じように疲れた顔で制服と防寒具に身を包み、同じようにやはり傘を持っていないものが多い。天気予報では降水確率の低かったはずの、冬の冷たい雨に顔をしかめている。

その中で、ぱっと不意に傘がひとつ開くのが見えた。朝顔の花が咲くように、鮮やかな変化がいやに少女の目を引く。あいにくと朝顔のような美しい色合いではなく、無骨で男性が使うような黒いものだ。折り畳みではないしっかりとしたそれは、受験会場に持ち込むにはかさばりそうなものを、わざわざ持ち歩く奇特な人間もいたらしい。

 

傘の主はそのまま、速い歩調で駅の方に向かってきて、屋根のある場所に入ったところで傘を畳んだ。2度、3度と雫を振って落とし、するすると淀みなく傘を巻いていく。

傘を畳んで現れた顔は、少女の見知ったものだった。成長途中の中学生の中でも飛び抜けて高い身長は、見慣れないオーバーサイズのモッズコートを纏っている。耳の長さで切られた、黒い短髪が少しだけ湿気でうねっており、つるりと硬そうな白い頬には大きなガーゼが貼られていた。

 

 

「–––あれ、郡上さん?」

少女が思わずこぼした声に、脇を通り過ぎようとしていた短髪の少女が振り返った。きりっとした二重に上から見られると、なんだか訳もなく居心地が悪くて、少女はたじろいだ。

やはりクラスメイトの郡上涼利だった。コートの中に着ているのは同じ中学校の制服なのに、少女とは脚の長さが違うせいで、まるきり別の服のようになっている。

 

「お疲れさま、郡上さんも今受験終わったとこ?」

「そう、ちょっと前に。烏丸さんもお疲れ」

静かな声だった。陶器製のコップをかつんと爪弾くような、硬く低い響きがある。

「ありがとう。そう言えば、郡上さんてどこ受けてたの?あ、別に言いたくなかったら良いんだけどさ」

「■■高校。あそこの数学結構難しかったな」

 

出た名前は、中学からはそこそこ離れた公立高校だった。ここら辺の公立では偏差値が2番目くらいに高いところでもある。彼女は中学を結構な頻度でサボっている割に頭がいい、とは聞いていたが噂は本当だったらしい。少女は今更ながらに驚いていた。

少女と郡上涼利は大して親しい訳でもない。3年に上がってクラスが変わったばかりのころには、出席番号が近いせいで席が隣だったことが一度あるが、それでも彼女の学力や志望校を知らない程度の仲である。こうして呼び止めた自分に、内心で少女は意外なことだと思っていたくらいだ。受験終わりの疲労を、誰かと共有したいような感情でも湧いたのだろうか。

 

「あそこ割と難関でしょ。郡上さん頭いいんだね」

「そうでもない。それに私は内申悪いから、受かるかどうかは怪しいところだな」

 

さらりと放たれた言葉に自虐の色は薄かったが、少女は思わず苦笑した。この同級生は決して非行に走るような人ではない。テストの日には一度も休んだことはないし、提出物もきちんと出している。運動能力が並の男子よりよほど高いことで有名で、文武両道を地で行くタイプとして同性からひそやかに人気だった。

なのだが、彼女が学校をそこそこの頻度で休むこともまた、同じくらい有名なことだった。テストや出席が義務付けられるイベントごとは除いて、少なくとも月に一度、多ければ三度ほど、彼女の席は一日中空っぽだった。もちろん事前に連絡などない、正真正銘のサボりである。

 

これがいわゆる、荒っぽくて頭の悪い不良生徒なら、まだ思春期特有の青っぽさ、と言い換えることもできるのだろうが、彼女は至ってそう言う風でもなかった。教師に何故休んだのかと聞かれても、けろりとして「急用があったので」と毎度答えるだけなので、教師たちからは大人を舐めきっている、と言われて評判の芳しくないというのは学年でも知られた話だった。内申点が悪いというのは謙遜や誇張されたものではなく、まごうことなき事実なのだろう。

 

「そう言う烏丸さんはどうだったんだ。手応えはあった感じ?」

「まあまあかな………模試の判定はBだったし、そのまま本番にも反映されてるといいんだけどね。落ちてたら困るな、一応滑り止めのとこはあるけど」

「私立はやっぱ高いしな。学費」

 

さらりと、郡上は少女の母親と同じようなことをつぶやいた。やはりトーンの低い声なのだが、ざあざあと激しくなってきた雨音に不思議とかき消されてはいない。その陶磁器の如く白い横顔と同じように、周囲からふうっと浮かび上がっているような錯覚を、少女は覚えていた。

 

「郡上さんは滑り止めどこだったの?◇◆学院?」

「私は滑り止め受けてない。受験料節約したいし、それに、」

 

不意に郡上が言葉を切って、視線をつ、と上げた。彼女の薄い茶色の瞳孔の動きを半ば反射的に追ってしまい、少女はその時初めて自分たちの間横に立っていた人間を認識することになった。

 

 

 

「––––や、涼利。受験お疲れさま」

 

 

柔和な笑みを浮かべる、髪の長い男だった。頭の天辺を視界に収めるためには、普段使わない首の後ろの筋肉をかなり傾げる必要のあるほど背が高い。その割にひょろっとした印象がすこしもなく、がっしりとした筋肉が、その長身には満遍なくついている。

黒髪を背中の半分ほどまで伸ばしており、頭の後ろ側でハーフアップのお団子にしている、という日本人男性ではあまり見ない髪型がよく似合っていた。大きなピアスの開けられた耳は、縁起の良さそうな福耳型で、細い目と相まってどこか美術の教科書に載っていた菩薩像のような雰囲気のある男だった。

年の頃は不明瞭で、老成した青年のようにも、若作りをした中年にも見える。

 

「……迎えに来なくて良いって、言っただろ」

ごく僅かに眉を寄せた郡上を他所に、男のやんわりとした笑みはひとつも崩れることはなかった。男はさりげなく彼女の背負っていたスクールバックを持ってやろうとして、郡上は無言でそれを拒否した。

 

見た感じ恐らくは郡上と親交のある人なのだろうが、一体誰なのだろう。郡上の父親にしては若すぎるし、そもそも血族にしては顔の系統があまりに違う。

それに、サラリーマンや、人前に立つ殆どの職でこの長さの髪やピアスはありえない。口さがなく言えば堅気の人間にはあまり見えない格好だし、彼女とどんな関係で、何の職業についている人間なのだろうか、と言う要らぬ疑問は湧いてきた。

「たまたま近くで用事があったから、そのついでだよ。この天気じゃあ、歩いて帰るのは辛いだろう?車で来ているし、せっかくだから涼利を乗せていこうかと思ってね」

「気遣いはありがたいが、事前に連絡をくれ」

 

ぽんぽんと行ったり来たりする言葉の応酬に、置いてけぼりになった少女はぽかんとしてしまった。

どうやら彼女の予定外らしいとは言え、迎えが来たのなら折を見て退散したほうが良いのか、挨拶でもしておいたほうが良いのか。これが彼女の親などであれば「いつも娘さんにはお世話になってます」くらいで済ませられるものを、声をかけるにしてもこの謎の男にどのように言えば良いのか分からないので、少女はちょっと迷った。

 

「試験中かと思って、連絡は入れない方がいいのかと思ったんだよ。意外と終わるの早かったんだね。結構待つことになるかと思ったけど、入れ違いにならなくてよかった」

 

そうか、と言ってため息をひとつ吐き出した郡上は、思い出したかのように少女の方を振り返って、疑問符の飛び交う顔の少女に何と説明しようか迷ったようだった。

その視線を追うように、今までは郡上にのみ目をやっていた男が初めて少女の姿を捉えた。黒目の小さい、三白眼よりのそれと目がかち合った少女は、ぞくりと背を震わせた。冬の寒さとはまた違う、産毛がそそけ立つような、底知れない感覚だった。

 

「すまないね、こちらだけで会話を進めてしまって。君は、涼利のお友達かな?」

背を僅かに屈めてこちらを見やる男の顔は、端正だった。人目を引くような華やかさはないが、女の子たちがこっそりと「かっこいいよね」「わかる」と囁き合うタイプだ。残念ながら少女の好みではないが、それでも整った顔立ちだとは思う。なのだが、何故か同時にひどく怖い、とも少女は感じてしまっていた。背が高い、とか知らない男性だからと言う理由ではない。もっと得体の知れない恐怖だった。

15年生きてきた中で、今まで一度も感じたことのない種類の眼差しで、男は少女を見ていた。

「………えっと、」

「同じ学校のクラスメイトだ」

男への尻込みと、大して仲良くもない彼女との関係をどう言ったものか、少女が悩んでいるうちに、郡上はきっぱりとそう言い切った。澱みのない答えは、暗に友達ではないと言っているようなものだが、郡上は全く気にしていない風である。

 

「そうなの?私はこの子の保護者みたいなもので、夏油傑と言う。いつも涼利がお世話になってます」

苗字が違う。聞いたことはないが、郡上の実の両親は亡くなっているのだろうか。不躾な問いが、少女の頭に浮かんだ。

得体の知れない悪寒は続いていたが、存外に郡上への柔らかい感情の込められた仕草で軽く彼女の頭を撫でると、夏油と名乗った男は細い目をいっそう弓なりにして笑みを深めた。

「なにかと気難しいところのある子だけど、卒業までの間もクラスメイトとして仲良くしてやってくれると嬉しいな」

「あ、ハイ。それはもう、こちらこそ」

 

反射的にそう答えて頭を下げると、ふ、と雨の匂いの空気がゆれる気配があった。顔を上げて見ると、にこにこと微笑んだ男が何故か右手を差し出していた。握手、ということだろうか。現代日本で、中学生とその同級生の保護者がやるような行為ではないだろうが、戸惑っている少女を前に夏油が手を引っ込める様子もないので、少女はおずおずと手を出した。

 

分からないふりをしてやり過ごせば良かったのかもしれない。なのに、胸の内にあった疑念や警戒とは裏腹に、少女の腕はするりと上がった。夏油と名乗った男の穏やかな声や物腰には、そう、不思議な引力のような何かが確かに備わっていた。例えて言うなら、底の見えない深い水の中に、爪先を濡らしてみたくなる衝動のような。

 

男の骨張った手があと少しのところで触れる、というところで握手が実現することは無かった。ぱし、と軽い音を立てて男の手首を郡上が掴んで止めていたからである。

 

「先生。そういうこと、人前でするのやめろ。後から妙な噂を立てられて困るのは私なんだぞ」

「おや。涼利はどうせ学校でも浮いているんだろうから、保護者の私だけでも同級生と仲良くしておこうと思っただけだよ」

くつくつと笑う夏油の手首を掴んでいる郡上は、顔をしかめて少女の方を見た。

「悪いな、烏丸さん。この人のことは気にしないでくれ」

「あ、うん。全然大丈夫だよ」

「なら良いんだ。次学校に行けばいいのって、月曜日だよな」

「多分そう、だと思うけど………」

「ありがと。じゃ、また来週に」

 

かなり強引に話を打ち切った郡上は、そのまま夏油を引っ張って駅の外へと歩いて行った。慣れた様子で男が傘を持ち、黒い小さな屋根の中に納まった2人の姿は、白く煙る雨のカーテンの向こう側へと消えていった。あっという間に現れて去っていった同級生とその妙な保護者に、やや唖然としていた少女は、ふと辺りを見回して変わったことに気が付いた。

 

少女の周囲で、受験帰りの子供を待っている母親らしき人や、バスを待っているOL、そのうちの数人が郡上と夏油が歩き去っていった方向を惚けたようにじいっと見ているのである。

まあ綺麗な女の子と家族っぽくない男の組み合わせで、しかもどちらも整った顔立ちと来たら目立つのも当たり前だろうが、それにしてもこんな漫画みたいな光景も起こるもんだなぁ、と少女は半ば呆れと感嘆の思いだった。

 

 

(あの人、『先生』って呼ばれてたな)

 

あの男。夏油と呼ばれていた、黒髪の男。温度の低い、少女の体験したことのない感情の込められた視線で、少女を見ていたひと。その呼称にはどんな意味があるのだろう。

日本で「先生」と呼ばれる職業はいくつかある。教師、医者、政治家、あとは芸術家くらいだろうか。あの髪の長さを許される職業は限られるだろうし、芸術家くらいしか当てはまらなさそうである。受験終わりで酷使された頭がさらにこんがらがりそうになったところで、少女はひとつ思い出したことがあった。

 

まだ2年生に上がったばかりの頃に、クラスに必ず1人はいる、情報通気取りの女子生徒がしたり顔で、聞いてもいないのに教えてきた噂話だった。

 

–––ね、知ってる?

–––1組の郡上って、ヤバい宗教やってるんだって。

 

ひそひそと。結局大した根拠もないらしかったその噂は49日の半分すら持たず、あっという間に消え去ったはずだ。少女も聞いたときはとんだ法螺話もあったものだ、と内心馬鹿にしていたはずのその響きが、今になって雨音にまじって耳の奥で木霊していた。

ざあざあ、ひそひそ。ヤバい宗教やってるんだって………しとしと、ざあざあ………

 

雨足はさらに勢いを増しており、一月の寒空は雨のカーテンに阻まれて駅の外の様子は全く見えなくなっていた。天から地に向かって叩きつけられる雨粒は白く濁っており、その向こう側に去っていった人の後ろ姿はとうにない。

少女はぶるり、と身を震わせた。その震えが寒さ故のものなのか、未知への恐怖なのかは少女自身もよく分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぎゅっと、手に呪力を纏わせて力を持って込めると、手のひらの中にいた小さく醜悪なハエ型呪霊は、短い断末魔を上げて潰れた。ぐしゃりと黒い霧となり、跡形も残らない。呪霊を殺す上での利点のひとつは後に残るものがないことだ、と涼利は常々考えている。血痕を拭き取ったり、鋸を使ってバラしたり、そういう煩雑な手間とはかけ離れた場所にある。

 

片手で呪霊の残りかすを払うように涼利は一度、二度と手を振って、その持ち主の方をじろりと睨んだ。もともと目つきの悪い彼女のそれは、時に大人ですら気圧されるほどのものだったが、夏油にはまるで効いていない。黒い傘の下、涼利より遥かに高いところにあるその横顔は、寒さで少し鼻が赤くなっているものの、いつも通りの薄笑いが浮かんでいる。

先生、と涼利が呼ぶと夏油が顔をこちらに向けた。黒い瞳が面白そうに光っている。

 

「あれ、祓っちゃったのかい。返してくれて構わなかったのに」

「蠅頭一匹でガタガタ言うなよ。あんなの山程持ってるだろ」

「そうでもないさ。弱すぎるものは戦力にならないし、蠅頭をいちいち集めるのは手間だからね。君が考えるより数はずっと少ないと思うよ」

 

薄い唇をゆるく、にやりと上げてみせた夏油に、涼利はため息をつく。先刻、受験帰りの駅で偶然会った同級生、烏丸の目には同級生の保護者がいきなり握手を求めてきて、それを涼利が止めたようにしか見えなかったのだろうが、実際には違う。

 

「そもそも、初対面の弟子の同級生に呪霊けしかけるのはどうなんだ。いきなりすぎるだろ」

「ああ、いや、別に殺そうとしたわけじゃない。彼女、私を見てちょっと警戒していただろう?もしかして『視える』人間なのかな、と思って確かめてみようとしただけだよ」

 

彼曰くそういう意図が込められていたらしいが、どちらにせよやった行為には違いない。涼利にしてみれば、連絡なく迎えに来た師匠が同級生に向かって差し出した手の中に、ばっちり蠅頭を乗せていたものだから大変驚いた。涼利があわてて手首を掴むふりをして蠅頭をとったからいいものの、蠅頭一匹でも非術師であれば体に不調くらいは出かねない。これで後から『郡上涼利の保護者と握手した日から体調が悪くなった』などと噂を立てられてはたまったものではない。夏油の先刻の行いは涼利にはまったく都合の悪いものでしかなかった。

 

「だけど、当てが外れたようだね。彼女もやっぱり、どこにでもいる猿でしかなかったみたいだ」

 

すこしトーンの落ちた声は、ひどく冷え切っていた。雨音に紛れたその声は穏やかな響きをしているのに、ひどくぞっとするような色が宿っている。涼利はフン、と鼻を鳴らした。

 

郡上涼利が師事する呪詛師、夏油傑は業界内でも非術師嫌いで有名だ。術師という普通の人間には見えず、使うことのできない能力を持っている人種は誰であれ、多少なりとも非術師への見下しのようなものを持つ。勿論それは個々人により大小の差はあれど、完全にゼロ、というものは少ないだろう。

 

その傲慢さは通常、歴史の長い術師家系の出身者になればなるほど濃く根深くなる。我々はこれほど長きに渡って普通の人間とは異なった術師を輩出し続けてきた、その歴史の一端であるという自負と選民思想が家中に蔓延しているからだ。

ところが夏油傑と言えば、非術師家系の出身者であると聞いたにも関わらず、その非術師嫌いは徹底して苛烈で、潔癖で、ビタ一文もまからないものだった。非術師のことを『猿』と読んで憚らず、その私生活においても非術師の手が加わったものをなるたけ口に入れようともしないのだなら、その嫌悪は筋金入りだった。

 

「穢れた猿が世の中にはどうしてこうも多いのか。嘆かわしいことだよ、全く–––涼利?聞いてるかい?」

「聞いてない。先生のナチスみたいなご高説は、この5年で耳が腐るほど聞いてるだろうが。ただでさえリスニングで酷使したんだから休ませてくれ」

 

興味なさげに、湿気で跳ねた髪を指でいじる弟子のつむじを見下ろして、夏油はその髪をかき混ぜた。どうやら精神的にタフネスなこの弟子も、流石に受験を終えて多少は疲弊しているらしい。

 

小学生のときから背の高い子供だった涼利は、ここ最近の成長期に入って日毎に夏油とも視線が近づいてきていた。その骨が軋む音が聞こえそうなほどの伸びの速さは他ならぬ彼女の成長と変化の証だが、同時に変わらないものもまた、存在する。郡上涼利という呪詛師の、術師と非術師の区分に重きをおかないところも、そのひとつだった。

 

師とは打って変わって、郡上涼利は術師という理由で人間を愛さない。同様に非術師という理由で人を排除しない。徹底して、その時の自分の損得勘定によって、両方の人間に対して殺害も救済も躊躇いなく行うのが、この呪詛師のあり方である。

 

 

涼利は、伸びかけてきた前髪を鬱陶しそうに耳に引っ掛けた。黒く艶やかな短髪が一房するりとかき上げられる。露出した白い耳は1月の寒さに赤く染まっており、ふとそれを見下ろした夏油は見慣れた「あるもの」が無いのに気づいて、口を開いた。

 

「そう言えば涼利。開けたピアスの穴、ようやく安定したんだね。ファーストピアス、外してるじゃないか」

「外したのは1週間ぐらい前だな。流石に受験会場につけていくと減点くらいそうだし、それより前に安定したから助かったよ」

 

中学3年の夏ごろに、何を思ったかいきなりピアッサーで穴を開け出した涼利の耳には、ずいぶん長い間、透明の目立たないファーストピアスがついていたのである。普通耳に開けた穴が安定するまで3ヶ月程かかるところを、持ちうる天与呪縛の特性上、彼女は倍近い時間がかかってやっと、ということらしい。

世間一般的に、充分不良の部類に入る彼女でも流石に受験会場にピアスつけて行く度胸は無かったらしい。志願書に貼る証明写真はどうやったのか、気になるところではあるが。

 

「ふふ。涼利が夏にピアスを開けたときには、いきなりどうしたのか心配したけどね」

「先生だってどうせ高校デビューでピアス開けたクチだろ。半年くらい大した違いじゃないと思うぞ」

まさに高校デビューでピアスを開けた夏油は、痛いところをつかれて苦笑いした。

 

「そうだ。高校に入学したら、セカンドピアス買ってあげようか。涼利に似合うかっこいいやつ、選んであげるよ」

 

夏油の提案に、涼利がじいっと彼の顔を見上げた。もとよりくっきりとした二重瞼の、薄い茶色の瞳孔が瞬きもせずに見上げているのはちょっと怖い感じがするが、夏油にとっては慣れた仕草である。どうしたの、と問うと涼利は首を横に振った。

 

「やめとく。先生のつけてるピアス、正直私の趣味じゃないし、自分でつけるアクセサリーは自分で買う」

「…失礼だな。流石に私だって、女子高生に拡張ピアスをあげたりしないよ。それに、せっかくなんだから、私からの入学祝いということでいいじゃないか」

 

真正面から、気に入ってる拡張ピアスをディスられた夏油は悲しかったが、彼は術師に甘く、そこに輪をかけて弟子に甘い男である。ぐっと堪えて言い募ると、涼利は少し賢しらに冷めた顔で小首を傾げた。

 

「入学祝いって。別に大したことじゃないし、いちいち祝ってもらわなくていい。中学から高校に通う学校が変わるだけだろ」

 

その、妙に大人ぶった涼利の言葉に、ふっと夏油は笑みをこぼした。常日頃から、既に呪詛師として働いており、価値観が老成しているこの少女も、ときに年相応の振る舞いを見せるときがある。今もそうだった。彼女の「自分のことは何でも分かってます」とでも言いたげなその横顔こそ、子供の証だと知らぬもの特有の表情だ。

 

「そうでもないさ。君の高校時代は人生で一度しかないんだから、とてもおめでたくて、祝福されるべきことだよ。大切な弟子の青春が良いものになるように、師である私が勝手に祝いたいんだ。–––ま、」

 

歯の浮きそうな台詞を切った夏油は、ちょっとくちびるの端を上げてにやっと笑った。信者から金を巻き上げるときの教祖スマイルより、すこしやんちゃそうな、いたずらっぽい笑い方をすると、彼の顔は普段と比べて若々しく見える。きれいで、不思議と愛嬌のある顔つきだった。

 

「その貴重な青春を、わざわざ猿山で迎えようとする君の気持ちは理解しづらいけどね」

「……最後の一言で台無しだ。途中まで1ミリくらいは感心した時間を返してくれ」

 

涼利は深めにため息をついた。くすくすと笑う夏油は楽しげで、いつものどこか張り詰めたような静かな雰囲気が、僅かに緩んで、ひらかれている。その広い肩の端っこが、涼利の包帯に傘を傾けているせいで濡れて色が変わっている。涼利は傘を奪い取って逆側に差しかけた。

 

相も変わらず、傘の1cm外は土砂降りで、おまけに靴の中に水がうっすら沁みてぬかるんでいたけれど、涼利は気にしなかった。

勝手に祝ってくれるんだったら、うんと高いピアスをせびってやろう。そんな可愛げのないことを考えつつ、受験帰りの中学生呪詛師はほんのちょっとだけ、唇を綻ばせて笑った。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

はっと、嫌な汗が首の裏側を伝う感触に、涼利の意識が一気に覚醒して浮き上がった。体の奥底からせり出されるような、そんな感覚を覚えたのちに、視界の焦点が僅かな時間で定まっていく。

どうやらうたた寝をしていたらしい。横に置いた荷物の向こう側に座る人物は、そのことに気づきもしないで窓の外を落ち着かなげに眺めている。車中に吹くクーラーの風が伝った汗を急速に冷やしていく。やや肌寒いほどのその温度に、無意識に涼利は腕をさすった。

 

 

 

タクシーの窓の外に目をやれば、初秋の彩度の高い青空の下、緑の深い山並みや、何の植物かも分からないものが植えられた畑や、首を垂れ始めた稲穂が見渡す限り一面に広がっている。全体として都会より、風景そのものが明るく色鮮やかに、生き生きと光っているような錯覚すら湧いてくる。ありふれた地方の田舎町の光景ではあったが、都会のコンクリート製の建物に目が慣れた涼利の目には、ひどく新鮮で懐かしいものだった。

 

密やかな振動が足に伝わったもので、涼利は窓の外の風景から、車の反対側の席に座る人物に目を移した。視線の先の青年と言えば、車窓からの風景にぼんやり見いったり、かと思えば天井を挑むような目つきで睨んでみたり、足を小刻みに揺らしていたり、襟巻きをいじってみたり、とにかく一時もじっとしていられないという感情を体全体で表現していた。

「脹相、頼むからじっとしてくれ。車に慣れてないんだろうから動くなとは言わんが、せめて貧乏ゆすりを止めろ」

「………貧乏ゆすり?」

 

青年が血色の悪い顔をこちらに向けた。

黒髪を二つ結びにした青年は、その精悍な面差しの真ん中にボディペイントのような線を横切らせている。年の頃は涼利とそう変わらないように見えた。青白く不健康そうで、やや威圧感のある顔立ちの彼は、皺ひとつない、真新しいグレーのシャツと黒のスラックスに身を包み、首元に黒に近い赤の襟巻きを巻いていた。いかにも服に着られている青年は涼利をじろりと見た。

 

「足を揺らすなってことだ」

 

涼利の言葉に、ぴたりと素直に足を止めた脹相は、少しのあいだ黙って大人しく座っていたが、1分も経たぬうちにまた振動が始まったので、涼利はすっぱり諦めて耳にイヤホンを突っ込んだ。流行り物のポップスに耳を傾けながら見る脹相の顔は、窓の向こうを透かすように憂いを帯びた表情である。分かりにくいが、どこか不安そうに眉がひそめられたまま、遠くを見つめている。

 

しばらくの間、車内にはしんとした静寂のみが流れ、スマホをいじる気にならなかった涼利は手持ちぶさたで、ぼんやりと瞼の裏側に残る夢の名残りに思いを馳せていた。

夏油傑。11歳の初夏に出会って18歳の冬に彼の下を出るまでの7年間、涼利の師であった人物が夢に出てくるのは久しぶりだった。彼が死んでからもうすぐで1年近く経つが、涼利の薄情さは無意識領域でもしっかり健在なようで、彼のことを夢に見たり、あるいはその喪失に枕を濡らす………などということはこの1年でただの1度もない。正真正銘、これが初めてだった。

 

夢の中の夏油は鮮やかで、涼利の記憶に残る、在りし日の姿はそのままだった。笑うと糸のように目が細まって胡散臭くなる顔も、あの受験帰りの日に珍しく着ていた黒いコートも、非術師への苛烈な憎悪を隠そうともしない潔癖さも、何一つ変わってはいなかった。

 

ひどく懐かしい気分だった。生々しく痛む傷などではなく、古い写真を偶然本棚の中から見つけたような、そんな感覚。

 

(………あのひと、今何してるんだろ)

 

ふと、そんなことを考えた。涼利は無神論者で、死んだ後のことなど全く興味はない。けれども、死後にも続く世界があるとするのなら、間違いなく地獄行き。それに相応しいだけの罪科を重ねてきたのが、夏油傑と言う男だ。

–––では、生きていたのなら?

今も生きて、涼利がやろうとしていることを知ったなら、止めたのだろうか。

 

 

 

「お客さん」

 

運転席の方から声が掛かって、涼利は前を見た。運転手がハンドルを握ったまま、バックミラー越しに視線を寄越していた。いつの間にか、遠くに見えていた濃い緑の山々はぐっと近いところまで迫った距離にあり、辺り一面の田畑の中には民家がほとんど見当たらなくなっていた。

 

生部野(うぶの)さんのお屋敷はですね、もうすぐの所にある登山道の前で降りてそこから歩くか、あと20分くらいの所にある車道を上がって行くかになります。どちらになさいますか?」

涼利は少し考えてから、尋ねた。

「登山道なら、屋敷まで何分かかりますか」

「あー、そうですな。あすこは結構傾斜がきつくてね、歩き慣れていない人なら30分以上はかかるかと」

 

涼利は深い緑の山並みに目をやった。未だに目的地である生部野家の邸宅は、よくよく目を凝らせばそれらしき屋根瓦が豆粒大に見える程度である。かの家の持ち物である山の、その頂上に位置する屋敷なら確かにそれくらいの時間がかかるだろう。車が入れる道は見えている山の、反対側にあるのだろうか。

 

「なるほど。じゃ、登山道の手前で下ろして下さい」

涼利の言葉に、タクシーの運転手はぎょっとしたように後ろを振り返り、また慌てて前を向いた。前方で危うい位置にいたバイクの運転手が通り過ぎざまにこちらを睨んでいく。

「いいんですか?行けば分かりますけど、登山道というかほとんど整備されてないような道ですよ。時間はかかりますけど回り道して車道で行った方がいいと思いますがね。足元も悪いし、それに–––」

 

年配の運転手はちょっと口をつぐみ、バックミラーの中で視線が迷ったようにうろうろと動くのが映っている。たっぷり10秒近く口籠った彼は、結局言いにくそうに口を開いた。

 

「あの辺りの山は、地元の人間はそもそも立ち入らない場所なんですよ。あんまり良い噂がない。迷い込んだ子供が帰ってこないだとか、幽霊がでるとか、一帯の山を管理してる生部野さんの一族もなんだか怖いお人だって話で–––」

そこまで言った運転手は後部座席で黙ったままの涼利を鏡越しに見て、ばつの悪そうに頭を下げた。

「すみません、今から行くのに怖がらせるようなことばかり言ってしまって………出過ぎたことを」

「お気になさらず、その手のことは存じてますので。山歩きには私も彼も慣れてますから、特に心配は不要です」

 

土地に根付いて家ぐるみで呪詛師稼業を営むような一族は一定数存在している。そう言う者たちは、非術師たちには何をしているか正しく理解できずとも、何か得体の知れない邪悪なことをやっているのだ、ということだけは分かるので、そこに住む住民から白眼視されることはザラにある。今回の目的地である生部野家などはその筆頭であった。

 

山登りに関しても、仕事柄ありとあらゆる場所に足を運んできた涼利と、脹相も涼利よりずっと頑丈な肉体を生まれながらにして持つ身である。2人の足なら多分10分もかかるまい、と涼利は踏んだ。

 

「そうですか、ならいいんですが……。それにしてもここいらは大した観光地もありませんで、外から訪れる方は少ないんですよ。お客さんたちのような若いご夫婦がいらっしゃるのは珍しいもんですから、驚いてしまいましたよ–––ここらへんでよろしいですかね」

 

車が狭い車道の端に寄せられて止まった。ブレーキが滑らかにかかり、ぼうっと窓の向こうを眺めていた脹相が、不審げに周りを見渡したので「降りるぞ」と声を掛けると涼利は財布を取り出した。

 

「釣りは取っておいて下さい。一応口止め料ということで」

「えっ。口止め、ですか」

多めに5000円札を渡し、釣銭を出そうとした運転手を制してそう言うと、男は手にした札と涼利の顔を交互に見て、困ったような顔をした。

「誰かに何か聞かれたら、適当にはぐらかしてもらうだけで結構です。流石にこの値段じゃ買収というには安すぎますので」

 

涼利は財布をリュックサックに仕舞うと、ドアを開けて外に出た。途端に、10月の初めだというのにまだ夏の気配の色濃い温度が、頬を撫ぜる。恐る恐るといった風で涼利の出した5000円札を仕舞い込んだ運転手は、頭を下げると一目散といった勢いで車を走らせて去っていった。

 

 

 

 

 

 

降りた場所の少し先に古びた石碑があり、その脇から幅の狭い山道が伸びていた。タクシーの運転手が言っていた通り、登山道とは名ばかりで足元は僅かに木でできた階段らしきものはあるだけで、地面は凸凹としてひどく歩きづらそうである。深い森の梢に遮られた道はこの時間でもひどく暗く、100メートル先すら危ういほどだった。それに、何だか–––

 

(–––何かに、見られているような)

 

ふつふつと、さわさわと。肌が粟立つようにひどく不愉快で、それでいて形のない感覚に脹相は顔を僅かにしかめた。ひとつ、ふたつではない。無数の小さな何かが、音もなくこちらを見据えている。受胎九相図の受肉体、人間と呪霊の狭間に立つ者ゆえの鋭敏な五感が、薄気味の悪い視線と潜められた息遣いを確かに捉えていた。この山に住まう呪霊の類だろうか、と脹相が考えたところで涼利が彼を呼んだ。

 

 

プシュウーー、と長い一吹き。振り向けば、特有のつんとする薬臭いスプレーを脹相の顔面にかけた涼利は、続けて彼の体全体に満遍なく纏わせていき、30秒ほどもすれば青年の体はすっかりその匂いがついていた。

 

「……いきなり何をする」

「虫除けスプレーだ。ここでは絶対必要になるからな」

 

噎せた青年の責めるような視線にもどこ吹く風、自分にも同じように煙を満遍なく振り撒いた涼利は「持っとけ」と脹相にスプレー缶を投げて寄越した。

 

「ここの連中にはバルサンも蚊取り線香も効かないけど、気休め程度にはなるだろ。出発前にも言ったけど、この山を降りるまでは絶対虫を殺すなよ。呪霊もそうじゃない奴も区別なく、蚊一匹、蠅頭一体も禁止だ。破ったらその後のことは保証しない」

 

そうなったら置いて帰るからな、とあながち脅しでもなさそうな調子で淡々とそう言った涼利は、リュックサックから取り出した、骨伝導マイクつきの小型ヘッドセットを右耳につけ、黒いキャップを被っていた。

ここ数日で脹相が見慣れたその動作は、彼女の仕事の始まりの合図に他ならない。

 

キャップを被った瞬間に、彼女の顔がたちまちの内にぐにゃりと変化した。無機質で中性的な麗貌から、どこにでもいそうな平凡で特徴のない女の顔に変わった涼利は、それでも隠しきれない冷めた眼差しで深い木々の奥を睥睨して、口を開けた。キィン、と僅かなハウリングののちに、合成音の声が濃緑の闇の向こうに吸い込まれてゆく。

 

「屋敷の人間に伝えてくれ。『御当主のお招きにあずかった式盗りが、この度の通夜に参列するべく参りました』と」

 

その、誰に向けたものか分からない呼びかけに脹相は胡乱な目で涼利を見たが、その言葉が終わると同時に、肌を絶え間なく刺していた謎の視線がふつりと途絶えるのを感じて顔を上げた。

先程まで確かにそこにあった、姿のない視線、薄気味の悪い温度、それでいて濃密な気配は、最初から何もなかったという顔で完全に消え失せている。

                            

「それじゃ、行くぞ。ここから先は業界最大手の巫蟲(ふこ)どもの巣窟だ、妙な行動は慎めよ、長男。」

 

黙したまま頷いた脹相に、涼利は少し肩をすくめてキャップを被り直すと、登山道の中に入っていった。レインコートの透明な輪郭はすぐに深緑に染まって溶け込み、その家主の後ろ姿を追うようにして脹相もまた一歩暗い道に足を踏み入れた。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

呪詛師とは、非合法ではあるが職業の名だ。

少なくとも郡上涼利にとってはそれだけの認識であって、別段生き様だとか人種を指す言葉ではない。

金銭を稼ぐ手段であり、それを生業とする人が一定数存在し、法もモラルもない職種だが、暗黙に定められた独自のルールのようなものは確かに横たわっている。

 

涼利はその術式によって業界でも特殊な立ち位置にいるが、それでも呪詛師という職種に属する以上最低限守るべき節度があるのだ。つまり何が言いたいかと言えば、涼利は同業者たちから無制限に、片っ端から術式を奪い取ることはできない、ということである。可能か不可能かで言えばもちろん可能だが、そんなことをすれば業界からたちまちのうちに干されることになるので、そこらへんには涼利も細心の注意を払っていた。

 

郡上涼利が他者から術式を手に入れるルートは主に3つ存在する。

 

ひとつ、強奪。

これは主に敵対した呪詛師や呪術師から、というよりも呪霊からの方が多い。理由は先程述べた通り、無闇矢鱈に術師から奪うと面倒なことになるため、後腐れのない呪霊から奪う方が楽なのである。無論暗殺な術式を奪うことがメインの仕事や、敵対して奪った方が都合の良い場合には術師から盗るときもある。これが手持ち術式の割合で最も大きい部分を占めている。

 

ふたつ、買収。

意外に思われることが多いが、呪詛師界隈ではそこそこ需要がある。大抵誰かが死んだ後、金に困った遺族が死体から術式を奪う権利を涼利に売り渡し、涼利は金を支払って術式を奪う。この額については事前に擦り合わせが行われて決まる。もっとも涼利自身が何年か前までは金銭的余裕がまるでなかったどころか借金を持つ身であったため、この手段はごく最近になって使い始めたものだった。

 

最後に、譲渡。

これが最も少ない。当たり前だが、術式偏重のこの業界なので、自らの最大の武器でありステータスでもあるそれをわざわざ得体の知れない奴に渡す馬鹿はそういないのだ。とは言え、ゼロではない。例として、涼利の4桁にも及ぶ手持ち術式の中でも1、2を争う希少なものとして「未来視」と呼ばれるものがあるが、これは高校3年生のときに術式の保持者だった女性から涼利に仕事の報酬として譲られたものだった。

 

 

そして本日、2018年10月初頭。郡上涼利が電車とバスとタクシーを乗り継いで、ここ山梨と静岡の県境に位置する蠱毒の名門「生部野(うぶの)家」まで訪れた理由は上記のうちで2番目–––すなわち亡くなった家人の術式の買い取りを、現当主に打診されたからだった。

 

 

 

 

 

 

恭しく紙垂をぶら下げた、荘厳な造りの八脚門を超えた先にあったのは広々とした庭だった。芝とは違う、色鮮やかな花をつけた秋草や、ふっくらとした射干玉やその他にも千紫万紅、天然の草木を生かした風でありながらきちんと人の手で世話がされていることが窺える様子である。これ以上ないほど、自然との融合がそのまま形をとったような光景だった。

その背の低い草花の生い茂る庭の上を、カラスアゲハやら赤とんぼなどがひらひらと風に舞っており、ともすれば五月蝿いほど賑やかにコオロギの鳴く声が一面に響いていた。

 

その、まさに秋の盛りと言わんばかりの光景とは裏腹に屋敷の建物の壁には、黒と白の鯨幕が張り巡らされている。涼利と脹相の他にもちらほらと、庭を抜けて屋敷の中へと向かっていく人間もまた一様に黒い喪服を纏っていた。秋の美しい庭をゆく黒い服の人々と、それを取り囲む鯨幕。何となくうら寂しい気持ちになるような取り合わせだった。

 

 

 

庭の真ん中を突っ切るだだっ広い石畳の道を進み、建物の中でも一等大きい、寺院の講堂のような場所に足を踏み入れた中には大勢の人がたむろしていた。ざっと見た限りでもゆうに50人は越しているだろう。皆どこか目つきの悪く、喪服を纏ってはいるのだがとても故人を悼みに来たとは思い難いような雰囲気のものばかりである。

 

ほとんどは葬式らしく黒い服をきちんと着ているのだが、中には何故か蛍光色のアロハシャツを着た老人や、白いレースで幾重にも飾り立てられたワンピースを着た女、薄汚れた青いジャージ姿の中男男性など、未だ肉体を得て日が浅く人間社会の知識など最低限しかない脹相から見ても、明らかに場にそぐわない人間が何人か混ざっていた。

それ以外にも、かろうじて喪服を着ている人間でも身の丈を越すような呪霊をそのまま出しているものや、果ては–––

 

「………おい。あれは人間の葬式に持ち込んでいいのか」

「そんなわけあるか。普通にアウトだが、主催者側が何か言わないかぎりは特にお咎めなしだ。安心していいぞ、あのレベルは流石にこの業界でも一握りのネジの飛んだ奴だ」

 

脹相の視線の先、若くかっちりとした紋付袴姿の男性は手に一抱えあるほどの大きさのガラスケースを携えており、淡い緑の水が揺れるそこにはスイカ大の何かが揺蕩っている。黒い房のようなものが水の動きに合わせて揺れ動くそれは、見ようによっては人の首みたいに見える–––というかばっちり人の生首だった。まだあどけなさの多分に残る顔立ちの女の首は、青褪めて生き物の気配がなく、息を呑むような美しさと目を背けたくなるような痛ましさを兼ね備えている。

 

「あの生首野郎、それなりに有名な呪詛師なんだよ。それだけじゃない、あそこにいるのは弓削だろ、その隣にいるのが神島。『Q』のお使いっぽい奴もいる。桐敷、祟井–––今年は加茂も来てるのか。珍しい」

「加茂、だと?」

つらつらと指差しながら名を列挙した内のひとつに、脹相がぴくりと片眉を上げた。加茂、という名は受胎九相図にも縁深い。

明治の世に、加茂の汚点とも称される呪術師、加茂憲倫の手によって人間の女性が呪霊との間に宿した胎児。その堕胎した胎児たちは150年間高専に保管されていたのを、真人ら呪霊によって交流戦の隙をつく形で盗み出された後に受肉していた。脹相はその受肉した3体の内の1人である。つまるところ、脹相にとっての創造者であり、ある種の父とも呼ぶべき存在が加茂憲倫なのだ。加茂家の人間は、その縁者である。

 

「そう、加茂だ。御三家のな。気に触ったか?」

その仕草に、涼利は自らの失言に気づいてそう聞くと、脹相は首を横に振った。

「いや。俺たち兄弟にとって加茂憲倫は母の仇ではあるが、だからと言って加茂と名のつく人間の全てを恨むようなことはない。ただの赤の他人だ。知った名だったから気になっただけだ」

 

むっつりとした仏頂面ながらそう言い切った脹相はしかし、釈然としない顔で辺りを見回した。

 

「ここは呪詛師の家柄なのだろう。なぜ加茂家のような呪術師側の人間が、その家の葬儀に来ている」

「生部野はいろいろ治外法権でな。年中山に引きこもって出てこないし、積極的に犯罪に手を染めるような連中でもないから上にはほっとかれてんだよ。おまけに歴史は御三家より長いし、呪術界の発展に少なからず関わってきてるから、下手に手出しできないってわけだ」

 

とつとつと、機械音声で平坦に語られる涼利の声は、賑やかな講堂の中でさしてうるさいわけでもなかったが、脹相は次第にレインコートとスーツを纏った呪詛師に向けられる視線の多さに気づいて、内心で驚いてもいた。ちらちらと興味深そうに、あるいはあからさまに顔を顰めて涼利を見るものの何と多いことか。

 

(–––レインコートに、10本の銀の指輪)

(–––式盗りだ。あの忌々しい盗人が)

(本物か?以前見たときと顔が違うぞ)

(今度は誰の術式を奪いに来たの?)

(恐ろしい………まさか私の術式を…)

(どこ?本当に来てるの?写真とろっかな)

(近頃の生部野は金に困っているとか………)

(横の男は誰?)

(術式を売り飛ばすなど犬にも劣る行いを)

 

そのどう考えても好意的ではない視線や囁き声を受けた涼利はけろりとしており、いかにも慣れた様子であった。

脹相は彼女の正確な年齢を聞いたこともなかったが、少なくともここに集まったなかでは若い方だろう。その若さでここまで、彼女より年上も含めた呪詛師たちから恐れられているというのは並大抵のことではない。

 

「お前は、随分同業者から嫌われてるんだな」

ぼそりと呟いた脹相に、そりゃな、と涼利は短く返した。機械の硬く冷たいフィルター越しのそれは、僅かに見下したような響きがある。

「術式偏重の業界だからな。一族が継いできた伝統も、重ねてきた努力も関係なく術式を奪えるのが私の剥式呪法だ。今までさんざん馬鹿にしてきた『視えるだけの猿』に成り下がると思うと、怖くてたまらないんだろ」

 

 

努力ではなく生まれ持った才能でほとんどが決まってしまう呪術界は、その性質ゆえに持たざるものを徹底的に蔑み、自分よりも下のものを見下そうとする方向性がある。呪力を持たぬ人間、術式を持たぬ人間、術式は持っていても家系の相伝ではなかった人間。全て、その対象だ。

 

そうして『術式を持たざるもの』を強制的に作り出せるのが、郡上涼利が恐れられる所以である。偉大なもの、世に二つとないもの、つまらないもの、ありふれたもの、大きな可能性を秘めたもの、みな平等に涼利にとっては奪いとれる的でしかない。涼利の手が触れ、涼利によって新しい名を付けられれば、等しくそれは涼利のものとして体に刻まれる。

 

彼女とて無闇矢鱈に術式を取り上げるわけではないが、それを奪われたと気付いた術師は大抵似た顔をする。持つものが持たざるものに零落した驚き。自分が今まで見下してきたものと同じ位置にまで蹴り落とされ、こらから先の人生を術式なしで生きていかねばならないという恐怖。涼利がこれから先、恐らくは味わうことのない感情に埋め尽くされた目で、涼利を見るのだ。

 

術式を持たぬものを見下した経験が一度でもあるものは、涼利を恐れずにはいられないのだ。誰も持たざるものにはなりたくない、見下してきたものと同じ位置から世界を見たいものなどいやしないのだから。

 

 

これまで一度も、そしてこれからも「術式を奪われる恐怖」を味わうことのない涼利は、そんな風に傲慢さの滲んだ響きで皮肉ったが、脹相は分かったのか分かってないのか曖昧な顔つきでひとつ頷いただけだった。

 

 

 

 

少しして。式盗りさま、と潜めた声がかかって2人が顔を上げると、講堂の入り口付近に小柄な少年が立っており、視線に気づいて深々と会釈をした。黒い着物に同色袴を合わせた品のいい装束。育ちの良さをあちこちに纏わせた立ち振る舞いが、一度の会釈に表れている。切り揃えられた前髪の下、彩度の高い金茶の瞳が初秋の光を背にしてなお、炯炯とひかっていた。

 

「お待たせいたしました。支度が整いましたので、どうぞこちらへ」

「今いく」

 

 

連れ立って講堂の外に出る。からりとした秋晴れの空の下、どこか香ばしいような初秋の匂いと、未だに薄く残る夏の残り香の入り混じった風に落とされたのか、落葉が1枚、脹相の頬を掠めた。

反射的に掴んでみると、僅かに黄色味がかった、名前の知らない木の葉である。木の中には季節が変われば色が移ろう、というのは知識としてしか知らなかったもので、本物のそれを目にしたのは初めてだった。何となく新鮮に感じてそれをしげしげと眺めた脹相は、はてどこの木から落ちたのだろうと、美しく整えられた庭をきょろきょろと見渡せば、講堂を出て左手奥、潜ってきた門のすぐ横に、それらしい木を見つけた。門と背丈を争えるほど高く育った、がっしりとした古木である。その1番上の枝には、黄色の葉の波に落とされた一滴の墨汁のように、ぽつねんと一匹の烏が止まっていた。黒く艶やかな羽を持ち、小柄な体格だが賢そうな目で脹相たちのことを見下ろしている。

 

そういえば、と。その時になって脹相はふと微かな違和感を覚えた。山の麓からこの邸の中に入って今にいたるまで、彼は虫以外の動物を見ていない。ひとつの気配も感じなかった。鳩や鳶などどこにでもいる動物も、ここ位の田舎であればいそうな鼬や狸にしても一匹も目にしていないのだ。この山が、それでなければこの烏は何か特別なのだろうか、と脹相が思い至ったところで、笛の鳴るような音が一度鳴り、すごい勢いで頬の真横を通り過ぎた。

 

 

『–––この矢、当たるなら烏に当たれ』

 

1秒前まで白かった涼利の肌を、赤い文様のような文字が這っていた。シルバーリングの嵌った手先から、僅かに見える首、顔の一部、歯の向こうの舌にまで。読めないほど細かく詰まった、緋文字の羅列にびっしりと埋め尽くされた手は、アーチェリーに使うアルミ製リカーブボウを指輪から呼び出して握り、一瞬で弦を引き絞って矢を打ち出していた。

 

少々変わった呪言の通り、放たれた矢はあやまたず逃げようと羽を広げた烏を捉え、その体を貫く–––とはならず、当たる直前で矢はその形を変えた。細長く鋭い立体がほどけてリボンのような平面と化し、それが間髪入れず烏の体にからみついて締め上げた。必然、身動きの取れなくなった哀れな烏はもがいてその拘束から逃れようとするも、今度は、ぐん、と見えない何かに引っ張られたようにして、次の瞬間には涼利の赤い文字に覆われた手で首根っこをひっ掴まれていた。

 

「………この烏がどうかしたのか?」

感情が出にくい彼女にしては割と分かりやすく嫌そうに、眉がぎゅっと寄っていたので脹相が思わずそう尋ねると、涼利は烏の頭を突っついた。烏が苦しそうにぐえ、と鳴く。

「使い魔みたいなもんだ。物凄い守銭奴の主人が使役してる」

そう言うと、涼利の目の色が薄い茶色から烏と同じ黒へと滑らかに染まっていき、彼女は硬い声で誰かに向かって宣言した。

     ・・・

「いいか、冥さん。次から勝手に見たら金とるぞ」

 

低い響きは淡々としてはいたが、その言葉には決して良い感情の含まれない冷たさが確かにあった。

もう一度きゅ、と強めに烏の首を締めた涼利は、1秒、2秒哀れっぽいその姿の向こう側を透かすように(実際に離れて烏を操る術師が見えているのだろうが)睨むと、首から手を離した。同時に巻きついていた白いリボン状の拘束が消えて1枚の紙に戻り、涼利の肌からもすう、と赤い文字が吸い込まれるように消えていく。

 

いきなり手を離され、苦しげに一度二度とバタついた烏は、地面に激突する寸前でかろうじて方向転換し、体勢を整えて秋の高い空へと飛び去っていった。

 

「烏の目を通して見られていたのに、殺さなくてよかったのか」

「殺すとえぐい金額ぼったくられるからな。昔一回やって死ぬほど後悔したから、2度としないと決めてる。5人と1匹の居候がいると、ただでさえ出費が嵩むし」

 

重い実感の篭った、苦々しい口ぶりでそう言った涼利は弓を指輪に戻すと、黙して置物のように立っていた案内役の少年に向かって「足を止めて悪かった」と言うと、まだ10代前半であろう幼い彼は「いえ」と首を横に振って、また歩き出した。てくてくと、美しい庭を淀みなく進む少年の細い喉元には、透明な糸を何重にも巻きつけたような不思議な飾りがつけられており、それが秋の透明な陽射しに反射してきらりと光っている。脹相の遥かに下にある首元がふと、もぞもぞと動いたように見えて、彼はふと目をそこにやった。

 

少年の白く薄い皮膚の下が、盛り上がるようにしてぼこぼこと何かが蠢いていた。それはしばらくの間皮膚の下を動き回るだけだったが、とうとう我慢ならなくなったように、首の後ろ側からぷつりと皮を破って這い出してきた。蜘蛛である。灰色の体に赤い線が2本走っており、けざやかな毒々しさこそないがよく肥えていて、人の親指と変わらないほどの大きさだった。人の体の中から出てきたというのに血の一滴も纏わないその蜘蛛は、狡猾そうな8つの目で脹相をじろり、と確かに見て、また少年の首に糸をくるくると巻きつけると、すすす、と服の内へと潜り込んでいった。怖い、とは思わなかったが、生理的な不快感をもよおす光景に、脹相は眉をしかめた。

 

「あんなのは可愛い方だぞ」

脹相の視線の先に気づいたのか、涼利がぽつりと呟いた。機械音声の、僅かにノイズが混じったその響きは乾いていて、明日の天気を口にするときのように平然としている。

「この家の術師連中はほとんど体内に虫型の呪霊を飼ってるけど、中にはどこから出したか分からんようなデカい奴もいる。何年か前に会った先代は、メシ食ってるときに口から百足出てきたから、危うく殺虫剤をかけるところだった」

「やめろ」

 

思わずその光景を想像しそうになった脹相の眉間の皺がますます深くなり、彼はもうすでに帰りたくなっていた。あの事故物件で待っている弟たちは今頃何をしているだろうか、と現実逃避がてら見上げた空は場違いなほど高く明るく、どこからか、カア、と烏の鳴き声が響いた。




用語解説

郡上涼利
仕事に勤しむ呪詛師。九相図3兄弟を「君の監視兼戦闘経験を積ませてやってよ」と偽夏油に押しつけられた。当然ミミナナから大ブーイングを食らって家内が若干ギスギスしてる。葬式なのでパンツスーツにレインコート。3兄弟にかかる諸経費は偽夏油持ちだが、家賃分だけは九相図たちに労働で払ってもらってる。


脹相お兄ちゃん
まだ箸も使えないうちに涼利の仕事に付き合わされ、呪詛師界隈の治安の悪さに引いている。仕事のときは「長男」呼び。着てる服はシャツとネクタイは涼利のお古だが、足の長さが5kmあるためスラックスだけユニクロで買ってもらった。費用は偽夏油に涼利が(上乗せして)請求した。

生部野家
山梨と静岡の県境にある蠱毒の名門。一応開祖のモデルはいる。代々女が当主を務め、家訓は「上蠱・中女・下男」。掛け値なしにヤバい家だが独自の技術をたくさん持ってるのでお目溢しされてる。相伝が維持するのに金がかかる術式なので涼利にお鉢が回ってきた。

生首の人
呪詛師。割と歴が長い。

夏油傑(真)
やっと登場した。ピアスは拡張じゃないやつをあげました。仲は良いけど根本の思想が違うので、お互い色々目を瞑ってる。涼利にとって「信頼してるし信用もしてるし尊敬してる部分もあるが、けして共感できない人」。でも大切な人。

烏丸さん
中学校の同級生。夏油の怖さにきちんと気づいたデキるJC。

未来視を涼利に譲った女性
あとで出てくる。涼利にとってこの人は、夏油にとっての理子ちゃんに近い立ち位置にあたる。故人。

キャップ
顔を変えて見せる呪具。3級ぐらい。

骨伝導マイク
仕事のとき声変えてるって前の話で書いちゃったので急遽登場した。アニメでオペレーターキャラが付けてるみたいなやつ。
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